東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
「廃業」「閉店」「倒産」「休業」の違いをまとめると、下記のようになります。
廃業とは、その事業の経営者の判断によって、自ら事業や会社をたたむという意味です。
廃業する理由については、経営不振や業績悪化、債務超過などさまざまです。
自主的に廃業を選択したとしても、原因が債務超過や支払い不能等であった場合は、「倒産」と呼ばれます。
このようなケースでは、「廃業」と「倒産」は区別されるものの、そのような状況に追い込まれてしまった、という意味では実質的に同じです。
一方、債務超過や支払い不能状態に陥ったというケースではなく、利益を出して黒字経営だったとしても、別の理由から廃業が選択されることもあります。
たとえば、経営者が高齢で後継者がいないため事業をたたむ、その事業で得た資金で新しく会社を興し別事業を行うためにたたむ、などのケースがそれに該当します。
閉店とは、経営していた店舗をたたむという意味です。
実際の店舗だけではなく、ネット上の店舗などにも「閉店」という表現を使います。
単純に、運営している店舗をたたむという意味ですので、閉店=廃業とは限りません。
店舗をたたむことですべての事業を停止するのであれば、閉店=廃業となります。
しかし、運営する一部の店舗だけをたたむ場合は、廃業とは異なります。
また、実店舗・ネット上の店舗にかかわらず、不特定多数の人に対して商品を販売する小売業を廃止しても、製造業や卸売業などの事業を継続することはあります。
この場合も、店舗は閉店しても廃業はしていないこととなるため、注意が必要です。
また、閉店という場合には、単純にその日の営業を終了すること、あるいは改装のために期間を決めて店舗を閉めることも含みます。
倒産とは、金銭的な理由で事業を継続できなくなったという意味です。
債務超過や債務の支払不能などに陥っていることが多く、従業員への給与の支払いや取引先への支払いも難しい状況です。
倒産した場合の処理は、「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大きく分けられ、法的整理や私的整理を通して、できる限り返済を目指すことになります。
休業とは、会社を残したまま一時的に事業を停止するという意味です。
会社そのものは存続しているため、事業を再開しようと思った時は、所定の手続きをするだけでスムーズに再開できます。
休業すると、法人税・消費税などの税金が発生しないというメリットがあります。
ただし、最後の登記をしてから12年を経過した株式会社は、解散とみなされることがあるため、まだ事業をやめない場合はその旨の届出が必要です。
中小企業庁の中小企業白書によると、廃業を考えている企業の理由としては、トップが「業績が厳しい」で37.3%でした。
続いて「後継者を確保できない」33.3%、「会社に将来性がない」30.7%となりますが、根本的には収益力が悪化している企業が、廃業を考えるという結果になっています。
最近では、新型コロナの影響により、特に飲食業などで閉店や廃業が増加しています。
営業自粛要請や、来客数の低下によって、多くの店舗や事業が経営不振となっています。
持続化給付金などの各種経済支援施策により、持ちこたえている店舗や事業もありますが、長引く自粛モードにより、先行きが不透明なため、廃業を選択する企業も増加していくのではないでしょうか。
事業を終了する廃業には、様々な形態があります。
そして、それらは基本的に法律に基づいて手続きを行わなければなりません。
廃業するといっても、その手続きの違いにより、すべきことはまったく異なることとなります。
廃業の方法としてあげられる3つの手続きについて、それぞれの特徴やどのような場面で利用されるのか、ご紹介していきます。
自主廃業とは、その名のとおり、会社が自主的に事業を終了し、それ以後の事業活動を行わないこととするものです。
ほかの廃業ともっとも大きな違いは、廃業するにあたって返済できない借金や債務がなく、事業を終了することに支障はないことです。
廃業する直前まで借金などがあったとしても、残っていた借金や債務を全額返済することができれば、自主廃業となります。
他の廃業の手続きと比較すると手続きが簡単で、裁判所が関与することはありません。
特別清算とは、通常の清算を行うことができないため、裁判所が清算を進める手続きのことです。
通常の清算ができない場合とは、具体的には以下のような事例が考えられます。
なお、特別清算の手続きを進めるには、債権者の協力が必要不可欠です。
そのため、自主廃業によって会社の廃業ができない場合には、手続きの途中で特別清算に切り替えることもあります。
破産とは、債務超過の状態にあり、その債務の返済ができない会社が会社をたたむために行う手続きです。
特別清算と同じく、裁判所が破産手続きに関与することとなります。
ただ、実際の清算手続きは会社の人ではなく、裁判所によって選任された破産管財人が行います。
会社が破産するのは、債務を完済する見込みがなく、債権者に多大な迷惑をかけてしまう場合です。
そのため、破産する際に会社の財産はすべて換価処分され、債権者への返済にあてられることとなります。
事業を廃業や閉店する場合には、手続きが必要です。
廃業手続きと閉店手続きは、流れが大きく異なりますので、それぞれについて説明していきます。
手続きの順序はケースによって異なりますが、流れに従って、ひとつひとつ説明していきます。
法人の廃業の手続き
法人を廃業するためには、事前に準備が必要です。
解散の準備として、まず従業員や取引先に「廃業すること」を知らせます。
従業員を廃業によって解雇する場合、最低30日前に通知しなくてはいけません。
解散する日を決定したら、各関係者に「廃業のお知らせ」「会社解散のお知らせ」等の書面で通知を送りましょう。
解散の準備の次は、株主総会での解散決議です。
株主総会では、解散決議とともに、清算事務を行う清算人の選任決議も併せて行います。
会社の解散決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする特別決議で行います。
清算人の選任決議については、定款に特別の定めがなければ、普通決議で行います。
普通決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成を必要とする決議です。
清算人は、通常は経営者(社長)一人が選任されることが一般的ですが、定款で清算人会の設置を定めている場合は、3人以上の選任が必要となります。
会社の解散日から2週間以内に、法人を管轄する法務局に解散と清算人選任の登記を行います。
なお解散日は、解散決議を行った株主総会の開催日とするのが一般的です。
法務局への解散登記後、遅滞なく、税務関係を管轄する税務署・都道府県税事務所・市区町村役場へ解散、廃業の届出を行わなければなりません。
これらの届出書には、解散登記後の登記簿謄本の添付が必要です。
税務関係の管轄の説明を補足すると、税務署は法人税、都道府県税事務所や市区町村役場は法人住民税、法人事業税です。
また、税務関係に加えて、法人が事業を行うにあたって許認可を受けている場合、管轄する都道府県や国などに対して、廃業届が必要となります。
会社の廃業によって、従業員を解雇する場合、社会保険および雇用保険の停止手続きが必要です。
会社が解散となっても、従業員が残っている場合は、社会保険を継続しなければなりませんが、従業員がゼロとなった時点で、適用事業所全喪届を管轄の年金事務所へ提出します。
会社に清算できていない借入金や債務が残っている場合、これらの債権を有する債権者を保護する必要があります。
債権者からの申し出を受ける必要があるため、会社解散後、速やかに官報への解散公告の掲載が必要です。
解散公告の期間は2ヶ月以上必要で、この期間内に債権者に債権を申し出てもらうように通知します。
会社を廃業するときには、解散時に決算書類を作成します。
株主総会で、貸借対照表と財産目録について普通決議による承認を受ける必要があります。
このとき、貸借対照表で純資産額がマイナスの債務超過の状態では、自主的な廃業ができません。
そのような状態の場合は、法人破産または特別清算等の手続きが必要となります。
解散日から2ヶ月以内に、確定申告を行う必要があります。
会社の廃業手続きがすべて完了している場合は、この1回で確定申告は終了しますが、完了していない場合、廃業手続きが完了するまで毎年確定申告が必要となりますので、注意しましょう。
清算人は、売掛金などの債権の回収と会社が保有する商品在庫や設備等の資産を売却して現金化します。
これらの資金で会社の債務を弁済しますが、解散公告の債権申出の期間が終了するまでは、原則、債務を弁済することはできません。
すべての債権者を平等に扱う必要があり、一部の債権者に優先的に債務を弁済し、他の債権者が弁済を受けられないという事態にならないようにするためです。
会社の資産と負債を精算した上で、資産が余った場合は残余財産として株主に分配され、清算が結了します。
解散時にも決算書類を作成しますが、清算結了時にも決算書類を作成した上で、株主総会による承認を受けます。
精算結了時の決算報告書が株主総会で承認された日から、2週間以内に管轄の法務局へ清算結了登記を行います。
登記申請時には、決算報告書や株主総会議事録の添付が必要です。
清算が終了し残余財産が確定した日から1ヶ月以内に、税務署に確定申告を行います。
精算結了届を、税務署および都道府県税事務所や市区町村役場へ提出し、手続き終了となります。
特別清算(協定型)の手続きは、以下のような流れで進められます。
まず、会社は協定による特別清算を行うことを裁判所に申し立てます。
申し立ての後に会社の財産の調査を行い、財産目録や貸借対照表を作成します。
株主総会で承認を受けたら、財産目録や貸借対照表は裁判所に提出します。
その後、会社の財産を現金に換えるのと同時に、少額の債務の弁済を行います。
そして、清算人と債権者が個別に交渉し、今後の債務の返済方法を決定し、協定案を作成します。
作成された協定案は、債権者集会で可決されたら、裁判所に協定認可の申立てを行い、その協定の内容が実行に移されます。
破産手続きは弁護士に依頼するのが一般的であるため、まずは弁護士に対して相談・打合せを行い、正式に依頼します。
その後、裁判所に対して破産手続き開始の申立てを行い、裁判所が破産手続開始決定を下します。
破産手続開始決定が下されたら、破産手続に関する内容を官報で公告します。
官報の内容にしたがって、債権者はその会社に債権を有していることを届け出ます。
破産手続を実際に行う破産管財人は、裁判所によって選任されます。
破産管財人が選任されたら、会社の財産を破産管財人に引継ぎ、管財業務を開始していきます。
その後、破産手続に至った経緯や会社の財産の状況について説明する債権者集会が行われます。
すべての財産についての処分が完了すると、残った財産から債権者に配当が行われ、破産手続は終了します。
閉店には、対象となる店舗をたたむという場合の閉店と、事業を含めて廃業する場合の閉店の2種類あります。
廃業するための閉店の場合にするべき手続きは、前述の「自主廃業の手続き」と同じ手続きが必要です。
一方、対象となる店舗をたたむという場合の閉店では、その店舗での営業は停止となるものの、事業は継続した状態となります。
また、店舗を一旦閉店して、店舗改装等を行って再び開店するというケースもあります。
このような場合、事業は継続中であるため、廃業の場合のような税務署や都道府県などへの届出も必要ありません。
また、店舗改装のための閉店の場合の改装費や、複数店舗の中の1店舗閉店の場合の原状回復費などは、経費として計上できます。
また、閉店によって事業が赤字となった場合でも、青色申告であれば、繰越欠損金として翌期以降の利益から控除が可能です。
廃業を選択しなければならないのは、会社の先行きに不安があるからにほかありません。
会社が抱える将来の不安には、借金を返済できるのかといったものや、後継者がいないといったものがあります。
しかし、このような不安から廃業を選択するのではなく、別の選択をすることができます。
それが、M&Aです。
M&Aとは、会社や事業を他の会社に売り渡すことをいいます。
M&Aを行えば、会社や事業を継続することができるため、廃業の手続きを行う必要はありません。
また、従業員の雇用を守ることができ、取引先との関係も継続することができます。
また、会社を売却した場合は株主に、事業を売却した場合は会社に、売却代金が入金されます。
そのため、株主や会社にとっては大きな収益を手にすることができるチャンスとなります。
経営状態が悪化し負債を抱えてしまった場合、廃業するしか道はないのでしょうか。
法人をM&Aなどで譲渡した場合、実質上、現在の法人は廃業ということになりますが、法人ではなく事業の一部を譲渡した場合は、廃業にはなりません。
事業譲渡というと、有益な事業を売却する面だけがクローズアップされがちですが、交渉次第では、借入金などの負債もそのまま引き受けてもらうことも可能です。
これは、法人ではなく個人事業であっても同様です。
負債ごと事業を引き受けてくれる企業は、実際には多くはありませんが、経営者の周囲だけではなく、事業譲渡の専門家などに相談することで、相手先が見つかることもあります。
廃業するためにかかる費用には、以下のものがあります。
その他、官報に公告を出す際に、1行につき3,589円かかります。
また、手続きを税理士や司法書士などの専門家に依頼すると、数十万円程度の費用も追加で必要になります。
中小企業庁によると、6人以上の企業で廃業した場合、50万円〜100万円かかったという企業が22.4%、1,000万円以上かかったという企業が14.1%ありました。
廃業の費用については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
廃業は、閉店・倒産・休業とは違い、自ら事業をたたむことをいいます。
閉店して廃業するということもあり得ますが、閉店=廃業という訳ではありませんので、閉店しても事業自体を継続していれば、廃業ということにはなりません。
そして、法人の廃業の場合は、手続きがかなり複雑で時間もかかりますので、事前に十分検討することが大切です。