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交通事故の被害でよくみられる後遺症の一つに、高次脳機能障害という障害があります。脳はデリケートな器官ですので、一度傷ついてしまうと、処理能力に大きな影響を及ぼしてしまうことがあります。この記事では、高次脳機能障害についてご説明します。
高次脳機能障害とは、交通事故や病気などの理由で脳の一部に損傷が発生し、その結果脳のもつ知的な活動、つまり言語、思考、記憶、行為、学習、注意などのレベルが低下してしまうことをいいます。こうなってしまうと、被害者の方はクオリティオブライフに大きな影響がでますし、将来の就労能力にも影響がでてしまいます。
交通事故の影響での高次脳機能障害には、以下の脳の持つ知的活動に障害が生じる症状をいいます。交通事故による高次脳機能障害の場合、具体的には、以下のような症状が現れます。
老人性アルツハイマーにも似た症状があらわれます。たとえば、ものをどこかに置き忘れたままどこに置いたのか忘れてしまう、人と約束した内容が覚えられない、新しい物事や場所が覚えられない、質問をした内容を覚えられず、何度も同じ質問を繰りかえすなどの症状がみられます。
高次脳機能障害となると、注意障害といって、通常人が備える注意能力に欠陥が生じてしまうことがあります。たとえば、そわそわと落ち着かなくて作業を長く続けることができない、注意にかけるために、単純作業でのミスが多くなる、すぐに疲れてしまう、他人が気になってちょっかいをかける、2つのタスクを同時に処理できないなど、仕事に支障が生じます。
物事を頭の中で整理して実行にうつすという遂行機能にも障害が発生します。たとえば、必要な段取りをとって作業ができない、他人から指示がないと行動できない、複数のタスクの優先順位がつけられないという実行段階での障害が発生します。
社会生活を行ううえで大人として行動することが難しくなり、他人への依存か強まり、子供っぽく自分の欲求をコントロールしづらくなります。そううつ状態になったり、人とうまくつきあえなくなったりします。
自分が高次脳機能障害であることを認めず、障害を認識していないパターンが多いです。周りから指摘をされると、自分にはおかしいところはないと言い張ったりします。こうした場合は、家族や周囲の人が事故前との違いに気づき、はやめに病院を受診させることが必要です。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの疾病、細菌やウイルスへの感染のほか、交通事故などの脳外傷があります。自動車事故の強い衝撃を頭部に受けることにより、脳に傷ができたり血種が生じたりします。それにより、植物人間となってしまうような意識障害や運動障害がおこるケースもありますが、上述の高次脳機能障害となる可能性もあるのです。
高次脳機能障害は、治療で完治できないことが多く後遺症として残りますので、後遺障害慰謝料の支払いの対象となります。具体的には、高次脳機能障害の症状の重さや程度によって、後遺障害等級が異なります。
常に介護を必要とするような特に重症なケースは1級1号から、高次脳機能障害の中では最も軽い、知的障害が残ることにより就労可能な業務が制限されるようなものは9級10号まで細かくわかれています。
高次脳機能障害は脳の重要な処理機能に影響するので、後遺障害等級慰謝料も高い等級認定となる可能性があります。本人ではなかなか気づきづらい症状もありますので、ご家族など周りの人は注意して観察し、早めの診察や専門ケアを受けられるようにしましょう。
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。