東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
目次
交通事故の通院は、ケガの症状に合わせた期間や頻度で行いましょう。
必要以上に通院すると、過剰診療にあたると判定されて自己負担額が増えてしまう可能性があるので注意が必要です。
通院の頻度は医師の方針などで異なりますが、一般的には週3日程度の通院が必要だといわれています。
通院期間は、主な症状別にみると次のとおりです。
【症状別】交通事故後の通院期間
交通事故で通院治療した被害者は、加害者から治療費と併せて通院慰謝料を受け取ることができます。
この慰謝料を最大限に受け取るためには、ケガの症状に見合った期間と頻度で治療を受けましょう。
通院慰謝料は、自賠責保険で通院日数、任意保険で通院期間を考慮して算出されますが、医師の指示がないのに毎日通院しても増額されることはありません。
最大限の通院慰謝料を受け取るためには、一般的に週3日程度の通院で十分だといわれています。
ただし、痛みがひどくなったときや症状が悪化したときなどは、我慢せずに通院を増やしてもらいましょう。
交通事故で被害を受けた人は、慰謝料を請求することができます。
慰謝料は、被害者の精神的苦痛を和らげるために、加害者から被害者に対して支払われるものです。
精神的苦痛と病院への通院は、直接関係ないようにも思われますが、実は慰謝料の請求は通院していない場合には認められません。
慰謝料には3種類あり、それぞれ請求できる原因が異なります。
入通院慰謝料は、交通事故により入院あるいは通院した場合に、ケガの痛みに対する精神的苦痛、入院を余儀なくされたことに対する辛さなどを和らげるために支払われます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定を受けた場合、障害を負って生活しなければならなくなったことに対する精神的苦痛を和らげるために支払われます。
死亡慰謝料は、交通事故により亡くなった人やその遺族に対して支払われます。
これらの慰謝料は、いずれも医療機関に通院したことが条件となります。
通院していない人の場合は、人身事故ではなく物損事故とみなされるため、慰謝料を請求することはできません。
交通事故に遭った人でも、大きな被害がなかった場合、病院に通院しないままにしていることがあります。
しかし、このような人が後から何らかの身体的な異常を感じて病院に通院したとしても、交通事故の影響によるものか判断することができません。
また、病院に通院しなければ、そもそも身体的な異常を発見することができない可能性もあります。
このようなことから、交通事故に遭った後、遅くとも10日以内に通院することが望ましいといえます。
交通事故から10日以内に通院し、交通事故によって身体に損傷が生じたとする因果関係が認められた場合、慰謝料を請求することができます。
交通事故に遭った後、病院に通院していれば、必ず慰謝料の請求が認められるわけではありません。
病院への通院日数が少なくなってくると、もうケガは治っているのではないかと、加害者やその保険会社にみなされる可能性があります。
ケガが治ったのではないかと考えられると、それ以後は慰謝料の計算対象となる通院日数や期間が減ってしまい、慰謝料の金額が減少することとなります。
慰謝料の金額が思わぬ形で減額されないよう、月に10回以上通院することが望まれます。
特に通院が1か月以上途切れてしまうと、その後は治療費の支給も打ち切られる可能性が高くなるので、通院のペースを考える必要があります。
交通事故に遭ってケガをした場合、実際にどれくらいの慰謝料を請求することができるのでしょうか。
ここでは、交通事故によるむちうちで3ヶ月通院した場合、どれくらいの慰謝料をもらうことができるのか、その金額を確認していきます。
慰謝料の金額を算定する基準はいくつかあるため、その違いも知っておきましょう。
自賠責基準とは、自賠責保険により支払われる慰謝料の算定の基準となるものです。
法令で金額が定められているのですが、その金額は他の基準で計算した金額よりかなり低くなるという特徴があります。
自賠責基準では、入通院慰謝料の金額は、1日あたり日額4,300円となっています。
この日額に①初診から治療終了までの期間、②実際の通院日数の2倍のいずれか少ない方の日数を乗じて慰謝料の金額を求めます。
1ヶ月30日、実際に通院した日数が10日とすると、①の日数は30日、②の日数は10日×2=20日となるので、20日を使って計算します。
その結果、自賠責基準による慰謝料の額は、4,300円×20日=86,000円となります。
任意保険基準による慰謝料の金額は、損害保険会社が定める基準のことであり、会社による違いがあります。
ただ、以前はすべての損害保険会社で共通の相場表があり、現在もその相場表を参考にした基準額が定められています。
そのため、かつての相場表の金額が、任意保険基準の目安となります。
むちうちにより入院することなく、1ヶ月通院した場合の慰謝料の金額は、この相場表によれば190,000円とされています。
ただ、実際に損害保険会社で定めている金額の基準は、この相場表の金額のままではない可能性もあるため、あくまで参考として考えておきましょう。
弁護士基準とは、裁判所により判断する際の慰謝料の基準となるものであり、裁判所基準と呼ばれることもあります。
弁護士基準による慰謝料の金額は、任意保険基準による慰謝料の額よりさらに大きな金額になります。
入院することなく、1ヶ月通院した場合の慰謝料の額は、弁護士基準によれば28万円となっています。
この金額は、任意保険基準による場合の金額の約1.5倍にもなっています。
交通事故の被害者は、基本的に弁護士基準による慰謝料の金額を基にして、加害者に請求することとなります。
後遺障害慰謝料は、交通事故によるケガが原因となって、後遺症が残ってしまった被害者に対して支払われます。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺症の障害の重さに応じて、その金額が決められます。
この場合、金額の算定に必要なのは、何によって障害を負ったのかではなく、ケガによってどの程度の障害が発生したのかです。
後遺障害の程度が14級に該当する場合、後遺障害慰謝料の額は自賠責基準で32万円、弁護士基準では110万円となります。
また、後遺障害の程度が7級に該当する場合は、自賠責基準で419万円、弁護士基準で1,000万円となります。
ここでは、交通事故に遭ってケガをした被害者について、事故発生から治療の終了までの流れと注意点を説明していきます。
交通事故の当事者は、事故が発生したら車両の運転停止・負傷者の救護・危険防止・警察へ通報などの緊急処置をとらなければなりません。
また可能であれば、加害者である相手方の情報確認をして、任意保険に加入している場合は事故発生日から60日以内に保険会社へ連絡をしてください。
事故直後の最初の受診は、必ず病院で診察を受けてください。
軽い捻挫だからといって整骨院を受診してしまうと、治療費や慰謝料などの賠償金が減額または受け取れなくなることもあります。
また、事故直後に痛みなどの自覚症状がなくても、接触した、転倒したなどで怪我の可能性があれば必ず病院を受診して、レントゲンやMRI検査などをしてもらいましょう。
被害者は、適切な頻度と相当な期間で通院治療を継続しなければなりません。
これを怠ると、保険会社から治療費の支払いが打ち切られたりして十分な賠償が受けられないことになります。
被害者のケガが完治すると治療は終了しますが、被害者の症状がこれ以上治療を続けても良くも悪くもならないと医師が判断した「症状固定」になったときも治療が終了します。
また、症状固定と判断された時に後遺症が残っていれば、後遺障害等級の認定がなされるか否かで、被害者が受け取れる慰謝料などの賠償金が違ってきます。
人身事故の慰謝料などの賠償金については、自賠責保険から被害者が受け取れる額(自賠責基準)が法律で定められています。
しかし、自賠責基準で被害者の損害が十分に賠償されないケースでは、不足している額について当事者の話合い(示談交渉)で具体的な金額を決めることになります。
ここでは、慰謝料を増額させる具体的な方法を説明していきます。
交通事故でもらえる慰謝料を増額させる方法
それでは、1つずつ見ていきましょう。
加害者側の保険会社は、少しでも慰謝料などの賠償金の支払いを抑えようとして、被害者の落度を探してきます。
慰謝料を増額させたい被害者の方は、通院治療を決して怠らず保険会社に指摘されるような落度を作らないことが大切です。
示談交渉は、交通事故による損害額が確定してから始めます。
人身の被害では、完治または症状固定がなされ、治療が終わって入院・通院の必要がなくなったときに損害額が確定します。
加害者側は、治療費や慰謝料などの支払いを抑えるため、早い時期に示談の成立を促してくることがあります。
治療の途中や症状固定の前などに示談に応じてしまうと、後になって症状が悪化しても治療費を支払ってもらえなくなるので注意が必要です。
交通事故の当事者には、双方または一方に何らかの過失があります。
この過失を数値化したものが過失割合で、9対1や6対4などと表されていて、数値が大きい方を加害者、少ない方を被害者と呼んでいます。
過失割合の判定は、過去の裁判例から事故の状況をパターン化して、事故の類型ごとに定めた過失割合の基準表が用いられます。
保険会社もこの基準表をもとに過失割合を判定していますが、特殊な事案で個々の特別な事情を考慮したとして過失割合の調整を行ってきます。
この場合、示談交渉では、被害者の過失割合が大きくなっていないか注意しなければなりませんが、逆に、被害者が相手方の過失割合を上げる証拠を示して、慰謝料を増額させることも可能になります。
示談が成立せずに交渉が決裂した場合、裁判所へ訴訟を提起することも視野に入れておきましょう。
訴訟では、被害者が加害者の過失と自身の損害を積極的に証明する必要があるのでハードルが高いですが、裁判所の基準で請求できるので慰謝料を増額することができる可能性が高まります。
交通事故の被害者は、加害者から通院慰謝料を受け取ることができますが、後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料も併せて受け取ることができます。
交通事故による慰謝料を請求することができる場合、弁護士に交渉を依頼することもできますし、自分で交渉を行うこともできます。
仮に慰謝料の交渉を自分で行った場合、その交渉の相手方は加害者の加入する損害保険会社となります。
交渉の相手は保険のプロである一方、被害者となった人は保険について熟知しているわけではないことから、交渉は加害者の加入する損害保険会社のペースで進められることとなります。
しかし、弁護士に依頼すれば、こちらも交渉のプロを味方にすることができます。
弁護士の主張は、法律に基づいたものであり、相手方の損害保険会社も無視することはできません。
その結果、慰謝料の額は自分で交渉した場合より大きな金額になると考えられます。
弁護士に依頼すると弁護士費用が発生することを心配する方もいるかもしれませんが、それ以上のメリットがあります。
ここでは、被害者が通院治療をする上で、慰謝料が減額されるケースを理解しておきましょう。
慰謝料が減額するケース
それでは、1つずつ見ていきましょう。
交通事故の被害者の治療は、医学的に必要かつ相当な範囲にとどめなければならないので、必要もないのに毎日通院、または長期入院などをすると過剰診療にあたると判断されることがあります。
この場合、保険会社から治療費の支払いを拒絶されることになります。
被害者が自由診療で治療を受けた場合、健康保険の適用される治療と同じ内容でも自由診療の方が5〜10倍も高額な治療費となることがあります。
この場合、保険会社が高額診療にあたるとして治療費の支払いを拒絶してきます。
もっとも自由診療の治療費は、各医療機関が独自に設定するものなので被害者が関与できるものではありません。
自由診療を受けなければならない特別な理由を医療機関に示してもらうことが大切になってきます。
漫然治療とは、適正な検査がなく、症状の改善について客観的に効果が期待できない治療が続けられていることです。
具体的には、同じ種類のビタミン剤や湿布薬などを必要以上に受け取る、マッサージ中心のリハビリを継続するなどが挙げられ、保険会社が治療費の支払いを拒絶してくる原因になります。
被害者の過失で加害者に損害が生じたときは、被害者といえども当然に加害者へ賠償しなければなりません。
この場合、被害者が受け取る賠償金から加害者への賠償分を差し引く「過失相殺」の処理がされます。
加害者側の保険会社は、示談交渉の中で被害者の過失を主張して、過失相殺による賠償金の減額を提示してくることもあります。
なお、被害者が加害者の新たな過失を証明することができれば、慰謝料を増額させることも可能となります。
交通事故の被害者の多くの方は、交通事故の賠償問題についての知識や経験がないため、保険会社を相手に自己に有利な条件で交渉をすすめ、示談を成立させるのは非常に難しいでしょう。
裁判所の基準で慰謝料を請求したい、少しでも受け取れる慰謝料を増額したいと考えている方は、交通事故に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。