東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
原則、示談金は示談成立後、つまり、治療が完治した後に保険会社にさまざまな書類を出して保険会社と金額の交渉をした後で支払われます。
目安としては、示談成立後(示談書に印鑑を押して保険会社に返却したタイミング)から数えて3日から2週間程度といったところでしょうか。
金額が多額の場合は1ヵ月かかることもありますが、ケース的には稀です。
それでは、示談はいつ成立するのでしょうか。
示談は、治療完治後あるいは後遺障害が認定(病院にこれ以上通院しても治らないと診断)されてから、診断書などのさまざまな書類を準備し、保険会社に送ることによってスタートします。
つまり、病院に通っている間は、後で述べる例外を除き、保険会社と具体的な交渉は行われず、したがってお金も支払われないということになります。
示談は多くの場合、示談開始後2~3ヵ月で成立するのが平均的です。
しかし、実際には加害者や保険会社の対応、さらには被害者の心情もあって、示談がなかなか進展しないあるいはお金が支払われないこともあります。
その要因について簡単に見ていきましょう。
加害者が強制加入の自賠責保険にしか入っていない場合があります。
自賠責保険は、あくまで被害者の最低限の補償を確保しているだけにすぎず、金額に限度があります。
例えば、傷害による場合の支払限度額は1人につき120万円、障害が残った場合は認定された等級に応じて最高4,000万から最低75万円、死亡した場合でも3,000万円までしか補償されません。
この限度額を超えた部分については、任意保険会社から支払われることになるのですが、任意保険会社に未加入の場合は、加害者に支払ってもらうことになります。
被害額が少ない場合や、加害者にある程度の資産がある場合は、そこまで示談成立が遅延することもないのですが、加害者によっては一括の支払いではなく分割払いを求めてくることもあります。
保険会社が一度決まった示談金の支払いが遅れることはありませんが、加害者から直接支払ってもらう場合、きちんと支払ってもらえるか、被害者側からすれば不安です。
さらに、それが分割となるとなおさらです。
つまり、加害者が任意保険会社に未加入の場合、その支払方法を巡って、なかなか示談が成立せず、よってお金も支払われないというケースがあります。
大きな事故などで被害額が大きい場合、加害者側からすればできるだけ支払う金額を低くしようとしますから、被害者側提示額と加害者側提示額との間に差があり、なかなか埋まらないケースがあります。
また、過失割合という面でも、被害者0:加害者100とするのか、被害者40:加害者60とするかで、加害者側が支払うべき金額は大きく異なります。
これらは示談が成立しない大きな原因の一つです。
2020年の民法改正により、人身事故の損害賠償請求の時効について、怪我完治日(障害固定日)を起算日とした3年から5年に延長されましたが、あまりにも示談交渉を長期化させるのは問題です。
先ほど「示談開始は、基本的に治療完治後あるいは後遺障害が認定されてから」と述べました。
つまり、病院に通っている間は示談が開始されません。
また、後遺障害認定は「病院からもうこれ以上治らない」と診断された時点の症状(車椅子など)を元に、要介護1級2級及び(非介護)1級から14級(数値が低い程、症状が重い)として判断されますが、外見的に分かりづらい症状(むち打ちなど)の場合などは、その認定結果を巡って、何回も審査のやり直しを求めることがあります。
正式な後遺障害が認定されないと示談は開始されませんから、これも示談成立が遅れる原因の一つです。
では、示談が成立するまで被害者は全くお金を支払ってはもらえないのでしょうか。
交通事故の場合、治療費の支払いは本来加害者が支払うべきものですから、治療費の支払いを待ってくれる場合もあります。
しかし、病院によっては、治療期間が長期化すると、支払いを求めてくる場合もありますし、会社を休んでいる場合は生活費にも影響が出てしまいます。
この場合、被害者が自賠責保険会社に対して、示談成立前に一定のまとまった金額を請求することができます。
このことを仮渡金請求(かりわたしきんせいきゅう)もしくは被害者請求といいます。
金額は事故の症状によって異なり、死亡事故の場合は290万円、入院14日以上+治療期間が30日以上必要な場合あるいは足などの骨折の場合40万円、入院14日以上+治療期間が30日以上必要な場合あるいは腕などの骨折の場合20万円、治療期間が11日以上必要な場合は5万円となっております。
被害者が請求してから1週間程で入金されますが、被害者が1回だけしか請求することができませんので、注意が必要です。
先ほどの仮渡金請求は一度しか行なえないと説明しましたが、何回も請求できる制度があります。
これを内払金請求といいます。
この制度は、限度額を10万円単位で120万円を限度額として何回も請求することができます。
しかも、被害者だけでなく、加害者も利用することができます。
押さえるべきポイント
被害者の場合:治療費や休業損害などの実費が10万円を超えたとき
加害者の場合:被害者や病院にすでに支払った金額が10万円を超えたとき
にそれぞれ自賠責会社に請求することができます。
また、被害者の過失がそれほど大きくない場合は、任意保険会社によっては内払い制度を採用している場合もあります。
自賠責会社に対して、仮渡金請求・内払金請求を使ってしまってお金に困っている場合は、加害者あるいは被害者本人が加入している任意保険会社に相談してみて下さい。
仮渡金請求、内払金請求は法律的に認められた制度です。
金銭的に余裕がない場合は積極的に活用すべき制度ですが、注意点があります。
これらの制度は、相手方の保険会社に対して請求します。
したがって、保険会社からすれば「この人は早くお金を受け取りたいんだな」ということがわかってしまいます。
このことは示談交渉の際に被害者に不利な材料とされ「●●円なら、早期解決できますよ」と、被害者の弱みにつけこんだ低い金額での交渉を求めてくる場合があるので注意が必要です。
もちろん、「銀行や消費者金融から借金してでも、仮渡金や内払金制度は活用しないほうがよい」とは申しませんが、これらの制度を活用する場合は、むやみやたらに活用するのではなく、最小限度の利用に努めましょう。
示談金の相場はどのくらいなのか、気になるところではないでしょうか。
示談金は、怪我の程度や治療期間、後遺障害の有無などによって金額が異なるため、一律に金額を計算することはできません。
示談金として請求できるものは、大きく分けて「財産的損害」と「精神的損害」の2つがあります。
財産的損害には、治療費や交通費・宿泊費、自動車修理費用、休業損害、後遺障害による逸失利益などが含まれます。
一方、精神的損害は、一般的に慰謝料といわれるもので、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つがあります。
慰謝料には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があり、どの基準を採用するかによって金額がかなり違ってきます。
示談金の相場や具体例、示談金増額のポイントについては、下記の記事を参考にしてください。
よくある話として、まだ治療が続いているにもかかわらず「示談をもちかけられた」とか「保険会社から治療費の立て替えを拒絶された」という話を聞きます。
保険会社にもよりますが、打撲は事故から1ヵ月後、むち打ちは3ヵ月の後、骨折は6ヵ月を目安に、保険会社の方から治療を完治したと判断され、このような対応を取ってくることが多いようです。
治療がまだ継続しているならば、毅然とした態度を取ればいいのですが、なかには横暴な方法でなんとか示談をさせようとする担当者もいるようです。
その場合は、早めに弁護士に間に入ってもらい、交渉の窓口になってもらうのも方法の一つでしょう。
保険会社のオプションの一つである弁護士費用特約に入っていなければ、弁護士費用がかかってしまいますが、結果として、自分が交渉するより早くかつ高額な示談金で和解することも少なくありません。
示談金の支払時期は、原則として示談成立後の2週間前後となっています。
しかし、さまざまな要因で示談が遅れることがあります。
示談が遅れることによりお金に困った場合は、仮渡金請求や内払金請求の活用も可能です。
しかし、その際は保険会社から低い額での早期解決を打診されるリスクがあることを念頭に置いたうえでよく検討しましょう。
また、相手方の対応によっては、早めに弁護士に依頼することも重要です。