東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
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整骨院・接骨院と整形外科にはそれぞれ異なる特徴と役割があり、交通事故やケガの治療で選択に迷うことがあります。
この記事では、整骨院と接骨院が行う処置と、整形外科で行う処置の違いについて解説します。
目次
まず、整骨院と接骨院、整形外科のそれぞれの特色について解説します。
整骨院と接骨院は、名前が異なるだけで、提供するサービスや施術内容は同じです。
どちらも3年間専門的な勉強(解剖学、生理学、整形外科学など)をして国家試験に合格し「柔道整復師」という国家資格を取得した専門家が治療を行います。
柔道整復師は、打撲や捻挫など主に急性のケガに対して応急処置や治療が可能です。
扱うケガは具体的に、交通事故による骨折・脱臼なども含まれます。
また、施術内容には、冷やしたり温めたりする処置(冷罨法や温罨法)、手技療法(マッサージなど)、物理療法が含まれます。
ただし、柔道整復師は医師ではないため、病院のように薬を処方することや、手術を行うことはできません。
さらに、慢性の関節痛や五十肩のような病気は保険対応していません。
整形外科では、医師(整形外科医)が骨や関節、筋肉、神経などの治療を行います。
整形外科医は、X線(レントゲン)やMRIなどの画像診断を行い、具体的な病態を確認してから治療を進めます。
整形外科では、投薬・注射・手術・リハビリテーションなど幅広い治療手段が使われ、捻挫や骨折だけでなく、変形性関節症、椎間板ヘルニア、神経痛などの慢性疾患や病気の治療も保険適応が可能です。
つまり、整骨院・接骨院は、主に急性の外傷に対する応急処置や治療を専門にしているのに対し、整形外科は医師による診断のもと、急性・慢性の様々な運動器の病気やケガに対応できる、より包括的な医療機関という違いがあります。
交通事故でむちうちになった場合は、整骨院への通院がおすすめです。
整骨院には、症状の改善を助ける様々なメリットがあります。
整形外科などの医療機関では、むちうちの治療として、痛みを和らげるための痛み止めや筋弛緩剤の処方、頚椎カラーの装着などが行われることが一般的です。
しかし、これらの治療法は症状を一時的に緩和する対処療法に過ぎず、痛みの根本的な原因に対するアプローチではありません。
むちうちの症状が長引く場合、首以外の身体の部分にも原因が隠れていることがあります。
整骨院や接骨院では、痛みが発生している場所だけでなく、身体全体のバランスをチェックして原因を探ります。
実際、むち打ちで来院した患者さんが、首ではなく骨盤の歪みや姿勢の悪さが首への負担を増幅させていたというケースは少なくありません。
この場合、整骨院では骨盤矯正などの施術を行い、首への負担を軽減し、むちうちの早期改善を目指します。
整形外科では、レントゲンやMRIなどの画像診断が治療の基本ですが、これらの検査で見えない筋肉や靭帯などの軟部組織の問題がむちうちの原因となっていることもあります。
整骨院では、患者さんから詳しく話を聞き、身体全体を確認することで、画像には映らない部分にもアプローチし、症状の改善を図ります。
整骨院や接骨院は、予約制で待ち時間が少なく、診療時間も夜遅くや土日・祝日まで対応しているところが多いです。
そのため、仕事や家庭の都合に合わせやすく、通いやすいのが大きなメリットです。
また、施術師は患者さんの話を丁寧に聞き、症状の原因を探るため、気軽に相談できる雰囲気が整っています。
こうしたことから、整骨院には、安心して通えるでしょう。
一方病院では、予約をしていても待ち時間が長くなることが多く、診察時間も限られているため、通院が困難に感じることがあり得ます。
特に、むちうちのように目に見えない症状の場合、医師にうまく伝えられないこともあるかもしれません。
メリットも多い整骨院ですが、デメリットもあります。
ここでは、むちうちで整骨院に通院する際のデメリットや注意点について解説します。
整骨院での施術は、医療行為とは認められないケースがあり、保険会社によっては治療としての適用外になる可能性があります。
この場合、整骨院での施術にかかる費用や慰謝料が減額されることや、治療費が途中で打ち切られることもあります。
特に、医師の診断や指示なしに整骨院へ通うと、保険会社から治療として認められないリスクが高まります。
さらに、長期にわたる通院が続く場合、保険会社が「治療の必要性がない」と判断し、一方的に治療費の支払いを打ち切られることもあります。
そのため、整骨院での施術を希望する場合は、必ず事前に医師の診断を受け、通院の必要性について確認を取っておくことが重要です。
整骨院での施術は、保険会社に「必要性」や「合理性」が認められにくいことがあります。
これにより、通院期間が慰謝料の対象外とされる、または治療費が保険適用外とされることもあります。
医師の診断に基づいて整骨院に通えば、保険会社も施術の必要性を認めやすくなります。
しかし医師の許可がない場合は、被害者自身が施術の妥当性を証明しなければならず、その負担は大きくなるでしょう。
整骨院に通う場合でも、定期的に病院での診察を並行して受けることで、保険会社とのトラブルを避けることができます。
整骨院にのみ通っていると、保険会社から「治療は終了している」と判断され、治療費や慰謝料の支払いが打ち切られるリスクがあります。
そのため、整骨院で施術を受けながらも、月に1回程度は病院を受診し、医師による定期的な経過観察を受けることが重要です。
整骨院では「後遺障害診断書」の発行ができません。
後遺障害診断書は、病院の医師が作成するもので、後遺障害等級認定のための重要な書類です。
この書類がなければ、交通事故で残った後遺症に対する損害賠償請求が認められないことがあります。
そのため、前述したように、整骨院で施術を受けつつ、定期的に病院で医師の診察を受け、必要に応じて後遺障害診断書を作成してもらうことが、万が一の際に非常に重要となります。
むちうちで整骨院に通院した場合の慰謝料の計算方法は、算定表を用います。
入通院慰謝料に関する算定には、以下の表を使います。
弁護士基準による入通院慰謝料の算定表(むち打ちなどの軽傷用)
(単位:万円)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 0 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 |
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 |
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 |
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 |
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 |
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 |
弁護士基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)
(単位:万円)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 |
4月 | 90 | 139 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 |
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 |
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 |
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 |
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 |
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 |
では、算定表を用いて、具体的なケースをシュミレーションしてみましょう。
まずは通院のみ130日間かかった場合です。
通院のみ130日ということは、4カ月+10日です。
4カ月分の通院慰謝料は、上の表でいうと67万円です。…①
残りの10日分は、5カ月分の通院慰謝料を使って日割り計算します。
具体的には79万円-67万円=12万円を、日割りに直します。
12万円×10/30=4万円となります。…②
①+②=67万円+4万円=71万円
このように、130日分の通院慰謝料が算出できます。
次に入院50日の慰謝料をシュミレーションしてみましょう。
上の表でいうと、35万円+(66万円-35万円)×20/30=55万6,667円です。…①
次に、通院120日分ですが、単に120日分の通院慰謝料を出すのではなく、120日+50日分(入院日数)の通院慰謝料の基準額から、50日分の通院慰謝料の基準額を引くことによって算出します。
170日は5カ月+20日であるため、通院慰謝料は、79万円+(89万円-79万円)×20/30=85万6,667円となります。…②
50日は1カ月+20日であるため通院慰謝料は、19万円+(36万円-19万円)×20/30=30万3,333円となります。…③
②‐③=85万6,667円-30万3,333円=55万3,334円
これが120日分の通院慰謝料となります。…④
①と④を足せば、入院50日、通院120日の慰謝料が算出できます。
55万6,667円+55万3,334円=111万1円となります。
交通事故でむちうちになった際の、よくある質問をまとめました。
交通事故でむちうちになった場合、通院期間はケガの程度によって異なりますが、一般的には4~5カ月程度です。
重症の場合、半年以上症状が続くこともあり得ます。
保険会社は、X線やMRIの画像で大きな異常が見られない場合、症状が続いていても約6カ月を目安に「症状固定」という判断を下すことがあります。
これ以上の治療効果が期待できないと見なされるため、保険会社から治療終了の通知が届きます。
むちうちの治療は、ケガの程度や回復状況に応じて異なります。
治療方法には、安静、施術、運動療法などが含まれ、段階的に進めていきます。
むちうちを受けてすぐの時期は、首の軟部組織が損傷し、炎症や腫れを伴うことが多いため、無理に首を動かさず、安静にすることが重要です。
この時期には、アイシングや電気療法、超音波療法などが行われます。
必要に応じて、首を固定する「頚椎カラー」を装着することもあります。
比較的軽いむち打ちの場合、首や背中に筋肉の緊張が起こりやすいため、物理療法に加えて、手技療法を行います。
これにより筋肉の緊張をほぐし、痛みの軽減を図ります。
手技療法(マッサージ、矯正、筋膜リリースなど)は、症状や回復具合に応じて内容を調整します。
必要な施術を適切なタイミングで行い、無理のない範囲で首の回復をサポートします。
むち打ちの治療を受ける場合、まずは整形外科を選ぶのがおすすめです。
特に、過去に交通事故の治療実績がある地域の整形外科を確認しましょう。
前述したように、整形外科では骨や関節、筋肉などの運動器官に関する専門的な治療を受けられます。
大学病院や総合病院のような大きな病院は、緊急手術や入院患者が優先され、診察までに時間がかかることがあり、むち打ちの症状には十分な対応ができない場合もあります。
地域で開業している整形外科なら、交通事故治療に特化した方針を持っていることが多いため、ホームページなどで確認してみることをおすすめします。
整骨院・接骨院と整形外科の違いを理解した上で、むち打ちやケガの治療を受ける際には、まずは自分の症状に合った医療機関を選びましょう。
特に交通事故の場合は、過去に交通事故治療の実績がある整形外科を選ぶことをおすすめします。
まずは、最寄りの医療機関のホームページを確認し、適切な治療を受けましょう。
また整骨院に通う際には、必ず医師の診断書あるいは紹介状を出してもらうことをおすすめします。