東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故にあって入通院した場合、慰謝料を支払ってもらえるということは多くの方がご存じだと思います。
しかし交通事故で一定期間入院・通院した場合の慰謝料の相場はいくらくらいになるかについて詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
保険会社から提示された慰謝料の額が妥当なのかも判断に困るでしょう。
そこで今回、慰謝料がどのような基準で計算されるのかについて、3つの基準とともに6か月入通院した場合の例を表も用いて解説していきます。
目次
令和2年4月1日に自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の支払基準が改正されました。
この施行日以降交通事故の損害賠償の算定には、改められた新基準が適用されることになりますので注意が必要です。
自賠責保険とは、自動車を運転する人が最低限の事故の補償をするために加入が義務付けられている保険です。
自賠責保険では、入院や通院を区別せず慰謝料については一律「日額4,300円」とされています。
旧基準では日額4,200円とされていましたので令和2年3月31日以前に発生した交通事故の場合は日額4,200円が適用されるので注意が必要です。
ここで日数の数え方が問題になります。
治療期間を上限として、治療期間か実際に治療に必要だった日数の2倍のどちらか少ない方の日数をカウントします。
具体的に計算式として説明しましょう。
慰謝料=治療期間×4,300円
または
慰謝料=実治療日数×2×4,300円
後者の計算式の「×2」が4300円にかかっていると考えると、慰謝料が「日額8,600円」になっているのではないかと考える人が現れそうです。
しかし、2日に1回程度通院した場合、どちらで計算しても金額は同じになります。
どういうことかご説明します。
例えば治療期間6か月(=180日)で2日に1回(90日)通院した場合の慰謝料を考えてみましょう。
慰謝料=治療期間(180日)×4300円=77万4000円
慰謝料=実治療日数(90日)×2×4300円=77万4000円
これを見てみるとわかるとおり、2日に1回のペースで通院した場合は治療期間、実治療日数のいずれで計算しても慰謝料の金額は同じになります。
ですので「2日に1回」を上回るペースで通院をしたとしても、治療期間(180日)が上限になるので慰謝料が増額することはありません。
まず、慰謝料とはなにかというと、被害者の精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
交通事故で入院したり通院したりするとそれ自体が被害者にとっては精神的苦痛であると言えるので、治療費や交通費等の実費とは別に「入通院慰謝料」を加害者に請求することができます。
それでは、この慰謝料はどのように計算されるのでしょうか。
慰謝料の計算基準には3つの基準があります。
具体的には(1)自賠責保険基準、(2)任意保険基準、(3)弁護士基準の3つです。
では、これらはどのような基準でどういう場合に適用されるのでしょうか。
以下それぞれについて詳しく説明します。
自賠責保険基準で計算がされるのはどういった場合でしょうか。
自賠責保険基準は、交通事故の加害者が自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)のみに加入していた場合に適用される計算方法です。
先ほど説明したとおり自賠責保険の入院慰謝料額は1日あたり4,300円です。
算定は「入通院期間」と「実通院日数×2」の少ない方に日額4.300円をかけるというものでした。
ここで注意が必要なことは、自賠責保険での傷害による損害賠償は120万円が上限だということです。
「傷害による損害」とは慰謝料の他にも治療費や交通費、休業補償等も含まれています。
そこで、120万円を超えた場合は、加害者が任意保険に加入していれば超えた部分を保険会社に請求可能です。
もし加害者が任意保険に入っていなければ加害者本人に請求することになりますが、加害者に資力がない場合や支払いを拒否した場合にはスムーズな被害回復ができない可能性があります。
任意保険基準が適用されるのはどういう場合でしょうか。
任意保険基準は、交通事故の加害者が自賠責保険に加え、任意加入の自動車保険にも入っていた場合に適用されます。
任意保険は自賠責保険以上の範囲を補償するために加入するものですので、慰謝料の金額も自賠責保険と比較すると高く設定されているのが普通だと言えるでしょう。
しかし、基準金額は保険会社によって異なりますので、以下で説明するものは大体の相場での解説だということを念頭に理解いただければと思います。
任意保険基準のよる入通院慰謝料表(単位:万円)
入院→ 通院↓ | 0か月 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0か月 | 0 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.5 |
1か月 | 12.6 | 37.8 | 63 | 85.7 | 104.6 | 121 | 134.8 |
2か月 | 25.2 | 50.4 | 73.1 | 94.5 | 112.2 | 127.3 | 141.1 |
3か月 | 37.8 | 60.5 | 81.9 | 102.1 | 118.5 | 133.6 | 146.1 |
4か月 | 47.9 | 69.3 | 89.5 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.1 |
5か月 | 56.7 | 76.9 | 95.8 | 114.7 | 129.8 | 143.6 | 154.9 |
6か月 | 64.3 | 83.2 | 102.1 | 119.7 | 134.8 | 147.4 | 157.4 |
この表より一例を考えてみましょう。
例えば交通事故で1か月入院し、6か月通院した場合は、表をみると83万2千円の慰謝料が請求できることがわかります。
また、入院はせず、6か月通院だけした場合は、表より64万3千円請求できることがわかります。
弁護士基準はどのような算定方法なのでしょうか。
弁護士基準は、過去の判例をもとにしたもので、裁判基準とも呼ばれます。
他の2つの基準に比べて高額になるケースが多く、自賠責基準と比べると2倍近く高額になっていることもあります。
弁護士基準での算定方法では、「他人からの客観的に判断できる症状(他覚症状)」の有無で金額も大きく変わってきますので要注意です。
この弁護士基準での慰謝料は、弁護士に依頼した場合か訴訟を提起することで請求できるようになります。
他覚症状がない場合の入通院慰謝料表(単位:万円)
入院→ 通院↓ | 0か月 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0か月 | 0 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 |
1か月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 |
2か月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 |
3か月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 |
4か月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 |
5か月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 |
6か月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 |
他覚症状のある場合も入通院慰謝料表(単位:万円)
入院→ 通院↓ | 0か月 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0か月 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 |
1か月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 |
2か月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 |
3か月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 |
4か月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 |
5か月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 |
6か月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 |
弁護士基準での一例を考えてみましょう。
入院せずに、6か月間通院した場合、他覚症状がない場合は上の表より慰謝料64万3千円を請求できることが分かります。
また、同様に6か月間通院だけした場合で他覚症状がある場合は下の表より慰謝料116万円を請求できることが分かります。
慰謝料は、全ての交渉が終わり示談が成立した後に一括で支払われることになります。
ただ、加害者の資力によって分割で支払われる場合もあります。
それでは、慰謝料はいつからいつまで支払ってもらえるものなのでしょうか。
入通院慰謝料は、事故から症状固定までの期間についての精神的苦痛について支払われます。
したがって、症状固定以降に通院した場合でも治療期間には考えられていませんので請求することはできません。
ここで、症状固定以降に後遺障害が残ってしまった場合はどうかを考えてみます。
症状固定以降、後遺障害が残った場合には後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害とは、交通事故が原因で将来にわたり労働能力が低下又は喪失が認められるものを言います。
後遺症が交通事故と因果関係が認められた場合には、第1級~第14級までの等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料の計算も、入通院慰謝料同様、(1)自賠責保険基準、(2)任意保険基準、(3)弁護士基準の3つの計算方法があるのは同様です。
慰謝料を請求するには交通事故との因果関係を証明しなければなりません。
そのためにはプロである医師の診断を適切に受ける必要があります。
慰謝料を確実に受けとるための治療ポイントは大きく3つあります。
それぞれについて理由を解説していきましょう。
慰謝料を請求するためには、入通院が交通事故と因果関係があると証明されなければなりません。
そのためには、交通事故に遭ってから1週間以内に医師による診断書を作成してもらいましょう。
診断書を作成できるのは整形外科等の診断権のある医師のみです。
接骨院や整骨院は柔道整復師が柔道整復を行う施術所ですので、接骨院・整骨院の先生には診断書を発行できる権限がありません。
まずは早期に医師の診断を受けましょう。
そして、診断時には医師に自覚症状を全て伝え、診断書を作成してもらいます。
当初から症状を伝えていない場合は、交通事故との因果関係が否定され慰謝料を請求できない可能性がありますので注意が必要です。
交通事故と負傷との因果関係が認められる要件として「自覚症状の一貫性・連続性」が要求されます。
そのため症状に見合った治療を継続して受ける必要があります。
したがって、医師の指示に反して勝手に通院を辞めたり、治療を放棄したりしてはいけません。
必ず医師の指示に従って適切に治療を継続するようにしてください。
慰謝料の計算には治療期間が重要になります。
したがって医師から症状固定と診断されるまでは通院を続けましょう。
「症状固定」とはこれ以上治療を継続してもそれ以上症状が改善しない状態を言います。
もし症状固定よりも早期に治療を中断してしまった場合には中断時点で症状固定とみなされ、そこまでの損害賠償しか認められないリスクがあります。
主治医による症状固定の診断がされるまではたとえ忙しくても継続して通院するようにしましょう。
交通事故に遭って病院に通わなければならなくなった場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼すれば被害者に代わって活動してくれます。
基本的には弁護士に任せておけば複雑な手続や熾烈な和解交渉も代わりにやってもらえるので精神的なストレスが軽減できます。
さらにプロに依頼しているため納得のいく金額で示談できる可能性も高いです。
ここまで見てきたように、入通院慰謝料にも様々な計算方法があることがおわかりいただけたと思います。
保険会社は交渉能力に長けています。
保険会社は自社の負担を小さくするために一番低い基準で示談に持ち込もうとするかもしれません。
事故の被害者が入通院を経ながら知識も経験も豊富な保険会社と交渉するのは負担が大きいとは思いませんか。
弁護士が交渉することで基準自体が変わり、自賠責基準や任意保険基準よりも高額な算定基準で慰謝料を請求することが可能になるかもしれません。