東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故で負傷しても、それほど痛くない程度の軽症で済めば不幸中の幸いです。ただ、軽症の場合は慰謝料や示談金は期待できないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
軽症とはいっても、ほとんど治療する必要がない場合もあれば、ある程度の治療が必要な場合もあるなど、状況は様々です。状況に応じて慰謝料や示談金はもらえます。
この記事では、軽症の場合の慰謝料や示談金の相場を症状別にご紹介し、適切な慰謝料を獲得するためにやるべき事故後の対応についても解説していきます。
交通事故で軽症を負い、慰謝料や示談金が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
この記事では、「軽症」とは入院する必要がない程度の、軽い症状の負傷を意味することを前提としてご説明していきます。
軽症には擦り傷やかすり傷のように数日の治療で治るものもあれば、数日から数週間で治る打撲のほか、捻挫のように治るまでに数週間から数ヶ月かかるものもあります。さらに、むち打ち症など症状が軽くても半年から1年以上治らないこともあります。
症状か軽いとはいえ、交通事故を原因として精神的苦痛を余儀なくされた以上は慰謝料がもらえます。
通常は精神的苦痛の他にも何らかの損害が発生しているので、慰謝料以外の損害賠償金も含めた示談金をもらうことができます。
軽症の場合の慰謝料・示談金についてさらに詳しくみていきましょう。
交通事故で負傷した場合に損害賠償請求可能な項目は、類型化されています。負傷が軽症であろうと重症であろうと、損害賠償請求が可能な項目は同じです。
ただ、軽症の場合は賠償額が少額になる傾向があるというだけの違いです。
軽症の場合に損害賠償請求が可能な項目は、以下のとおりです。
慰謝料というのは上記の損害賠償項目の一つであり、「通院慰謝料」というのがそれに当たります。
負傷によってこうむった精神的苦痛に対する慰謝料は通院期間に応じて計算されるので「通院慰謝料」と呼ばれています。重症の場合の後遺傷害慰謝料と対比するために「傷害慰謝料」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。
慰謝料は通院期間に応じて算定されますが、算定基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判基準」の3種類があります。
自賠責保険基準では、1日あたり一律4,200円で計算した慰謝料が支払われます。
日数は、通院期間の全日数または実際に通院して治療を受けた日数の2倍の、どちらか少ない方が基準となります。
各任意保険会社において独自の慰謝料算定基準が定められています。独自の基準とはいえ、おおむねどこの保険会社もほぼ同様の基準で、自賠責保険基準よりは全体的にやや高額になる傾向があります。
ただし、通院期間が短い場合は自賠責保険基準で計算した方が、慰謝料が高くなるケースも多くなります。したがって、任意保険会社と示談する場合でも、軽傷の場合は通院慰謝料については自賠責保険基準が用いられることがあります。
過去の裁判例の集積に基づいて定められた裁判基準で計算すると、3つの基準の中で最も慰謝料が高額となります。
基本的には裁判をした場合に適用される基準ですが、弁護士に依頼して相手の任意保険会社と示談する場合にも適用されることがあります。
裁判基準にも2種類ありますが、他覚症状のないむち打ち症や軽い打撲、捻挫などの場合に適用される基準は以下のとおりです。
通院期間 | 慰謝料額 | 通院期間 | 慰謝料額 |
---|---|---|---|
1か月 | 19万円 | 7か月 | 97万円 |
2か月 | 36万円 | 8か月 | 103万円 |
3か月 | 53万円 | 9か月 | 109万円 |
4か月 | 67万円 | 10か月 | 113万円 |
5か月 | 79万円 | 11か月 | 117万円 |
6か月 | 89万円 | 12か月 | 119万円 |
それでは、症状別に慰謝料の相場をご紹介していきます。
擦り傷やかすり傷、打撲など1回から数回の通院で治る負傷の場合の慰謝料の相場は、数千円~数万円です。
打撲でも重いものや捻挫など全治数週間~1か月程度の負傷の慰謝料の相場は、10~20万円程度です。
重い捻挫や骨折などで全治数ヶ月程度の負傷の慰謝料の相場は、30~60万円程度です。もう少し具体的にいうと、2か月なら36万円程度、3か月で53万円程度、4か月で67万円程度となります。
むち打ち症の治療期間は3~6か月と言われており、それを前提とすると慰謝料は53~89万円程度が相場です。
もちろん、その後も治癒せず治療を継続した場合は慰謝料は高額となり、1年通院すれば119万円程度が相場となります。
ただし、あまりに治療が長引くと通院慰謝料は打ち切られ、後遺障害の問題として扱われる場合があります。
症状が軽いむち打ち症の場合は後遺障害等級が認定されない場合も多いので、十分に治療を受けることが大切です。
交通事故で慰謝料や示談金をもらうためには、事故後にやっておくべきことがいくつかあります。軽症の場合は「大したことない」と思って油断してしまい、事故後の処理もおろそかになってしまうケースも見受けられます。
しかし、やるべきことはしっかりとやっておかないと慰謝料や示談金をもらえなくなるおそれがあります。以下、特に注意すべき点をご説明します。
交通事故に遭ったら、どんなに軽微な事故でも警察に通報しましょう。これは法律上の義務でもありますが、警察に通報しておかないと交通事故として認められないことは覚えておく必要があります。
保険会社に損害賠償を請求する際には、「交通事故証明書」という書類が必要です。警察に通報しておかないと、この書類は発行されません。
また、事故からある程度の期間が経ってから通報しても実況見分を正確に行えなくなることがあります。その場合、過失割合を適切に立証することができずに慰謝料や示談金が減額されてしまうおそれがあります。
事故に遭ったら、必ずその場で警察に通報しましょう。
事故後、少しでも気になる症状があったら早めに医療機関で受診しておきましょう。負傷した事実も証明しなければ慰謝料や示談金はもらえないので、どんなに軽症でも受診することが必要です。
軽症の場合はつい受診を怠りがちですが、むち打ち症などの場合は後日症状が悪化することもよくあります。
しかし、事故から受診までの期間が空いてしまうと因果関係を疑われ、慰謝料や示談金の支払いを拒否されてしまうおそれがあります。
できる限り、事故に遭った当日に受診しておくようにしましょう。
軽症だと思っても、実は身体の深い部分が傷ついているケースもあります。当初は単なるむち打ち症だと思っていても、なかなか治らないためMRIを撮ったところ、脊髄が損傷していたということも珍しくないのです。
事故から検査までの期間が空いてしまうと、やはり因果関係を疑われるおそれがあります。
受診した際には気になる症状は全て医師に伝えた上で、数日経っても症状が改善しない場合は早めに詳しい検査を受けるようにしましょう。
交通事故で負傷したことによって仕事ができなくなった場合は、休業損害を賠償してもらえます。しかし、休業の必要性がないのに自己判断で仕事を休んだ場合は、休業損害はもらえません。
軽傷の場合は休業の必要性が認められないことも多いので、仕事を休む場合は主治医の判断を仰いだ上で、保険会社の担当者にも確認しておきましょう。
なお、療養や通院のために有給休暇を使った場合も休業損害をもらえることも覚えておくといいでしょう。
通院するためには交通費がかかるのが通常なので、通院交通費は当然賠償してもらえます。
電車やバスなどの料金や自家用車のガソリン代は問題なく請求できますが、タクシー代は軽傷の場合はほとんど必要性が認められないでしょう。
足の捻挫や骨折などのためにどうしてもタクシーの利用が必要と思う場合は、保険会社の担当者に確認をとりましょう。
軽傷の場合は慰謝料や示談金もそれほど高額にはならないため、弁護士に依頼すると費用倒れになってしまうことも多いのが現実です。
しかし、場合によっては軽傷でも弁護士に依頼することでご自分の取り分が増えるケースがあります。弁護士に依頼した方が得するのは、以下のようなケースです。
慰謝料の算定基準には3種類あり、弁護士に依頼すれば高額の裁判基準で示談できる場合があることを先ほどご説明しました。
しかし、通院期間が短いとどの算定基準によっても差が小さいため、弁護士に依頼すると費用倒れになります。
弁護士費用を負担しても取り分が増える通院期間の目安は、おおよそ半年程度です。通院期間が半年に及ぶと、慰謝料額は裁判基準で89万円程度、任意保険基準で62万円程度となります。
交通事故では、当事者の双方が過失割合で争うことがよくあります。被害者に2割の過失が認められると慰謝料や示談金も2割減額されるので、過失割合は重要です。
こちらの過失割合について、相手の主張が7割、こちらの主張が3割というケースを例にとってみましょう。
満額の慰謝料が50万円だとすると、過失割合7割だと15万円、3割だと35万円と20万円の開きが出ます。
慰謝料だけでこの程度の開きが出ると、弁護士に依頼した方が得する可能性が高くなります。
ここまで、弁護士費用との兼ね合いで弁護士に依頼するのが得かどうかをご説明してきました。
しかし、ご自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合は、自己負担なしで弁護士に依頼することができます。
軽症の場合でも、自分で示談するよりは弁護士に依頼した方が少しでも慰謝料や示談金の額が増えることがほとんどです。
弁護士費用特約が付いていれば法律相談費用も保険会社が負担してくれるので、まずは弁護士に相談してみるといいでしょう。
この記事では「軽症」という言葉を使っていますが、「軽傷」という言葉を目にしたことがある方も多いと思います。
「軽傷」とは、1か月(30日)未満の治療を要する負傷のことをいいます。入院が必要かどうかとは関係ありません。
一方、「軽症」とは冒頭でご説明したとおり、入院する必要がない程度の軽い症状の負傷のことをいいます。治療期間とは関係ありません。
「軽傷」は警察が定義した言葉であり、保険会社も「軽傷」という言葉を使います。
「軽傷」であれば、慰謝料は通院期間1か月分しかもらえません。しかし、この記事でご説明してきたとおり、症状が軽いと思っても通院期間が長引いてそれなりの金額の慰謝料をもらえる場合もあるのです。
症状が軽いからといって「軽傷」として少額の慰謝料しかもらえないという誤解はしないように注意しましょう。
軽症であっても、通院期間によっては数十万円から100万円以上の慰謝料や示談金をもらえることは珍しくありません。
保険会社は軽症であることを理由に慰謝料額を抑えようとして通院の打ち切りを打診してくることがありますが、治療は納得できるまで続けるべきです。
適切な慰謝料や示談金をもらうためには、一度弁護士に相談してみるといいでしょう。