東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故に巻き込まれて負傷した場合、治療のために通院が必要になります。バスや電車などで通院する場合、移動に費用が発生します。自家用車で通うとしてもガソリン代がかかります。
これらの交通費については、加害者の保険会社に交通費として請求することになりますが、高額なタクシーを使っても支払いが認められるのか、気になることはたくさんあります。
そこで今回は、交通事故の交通費をどこまで請求できるのかについて、交通手段ごとにご紹介します。
交通事故で生じる損害の種類は、大きく分けて積極損害と消極損害があります。
積極損害とは、交通事故が原因で負担しなければならなくなった支出のことです。事故がなければ必要がなかったはずの支出とも表現できます。積極損害の例としては、入通院の費用や損壊した車両の修理代などがあります。
消極損害とは、事故がなければ得られたはずの経済的な利益のことです。事故で負傷して働けなくなり、仕事ができていれば得られたはずの収入が消極損害の代表例です。
交通事故で生じる損害のうち、交通費は積極損害に該当します。事故がなければ通院のために交通費を支出する必要はなかったからです。
すべての交通費が「通院交通費」として請求できるわけではありません。
交通費として認められるための条件は、下記の2つになります。
まずは「交通事故と関係があるのか?」がポイントです。
交通事故によって怪我をしてしまい、その治療で病院に行くときの費用は交通費としてカウントできます。
ただし交通事故が関係ないプライベートの予定・仕事での出張などは交通費にはありません。
「この交通費は事故によって発生した」と証明できれば、通院交通費として認められます。
次に必要な範囲の支出を超えてないことも大切です。
例えばバスで移動できるところを、高級なタクシーを使って移動していたら、それは「必要以上の支出」になります。
交通事故の被害にあっても、その被害・損害を意図的に大きくしてはいけません。
加害者にとって「被害者が請求してくる交通費」は損害として考えられるため、むやみに支出を増やすことは認められないです。
あくまで「自分にとって必要な交通費」のみが認められるので、注意しましょう。
交通費として請求できる範囲について、通勤や通学、公共の交通機関、自家用車の運転など種類ごとに見ていきます。
バスや電車などの公共交通機関を利用して通院した場合、支出した費用が合理的な範囲内であれば交通費の支払いの対象になります。
具体的には、自宅の最寄りの駅や停留所から、通院先の最寄りの駅や停留所までの往復料金が1回の通院の交通費の目安です。
電車などは複数のルートが選択できる場合があります。この点、必ずしも最も安価なルートでなければならないわけではありません。合理的な範囲内であれば、実際に通院に使用したルートの料金が認められるのが一般的です。
注意点として、電車などは定期券を使用して料金を安くすることができます。実際には定期券を使用していたにもかかわらず、通常の料金を請求していたことが判明すると問題になる場合があります。定期券を購入して使用する場合は、保険会社に確認しておくのがおすすめです。
タクシーを使用した料金は、通院費として認められないことがあります。
通院費は原則として支払った実費に相当する金額が支払われます。一方、タクシーは公共機関と比較して高額なのが特徴です。そのため、タクシー料金を支払っても実費相当の金額の支払いが認められないことがあります。
その場合、実費ではなく電車やバスなどの公共の交通機関を使った場合の金額のみが一般に支払われます。
例外もあります。公共の交通機関を利用できないため、タクシーを使うしかないという特別な事情がある場合です。この場合にはタクシー料金が交通費として認められます。
特別な事情を判断する要素は、傷の部位、傷の状態や程度、被害者の年齢、最寄の駅や停留所までの距離、病院までの距離などです。これらの事情から総合的にタクシーを利用する必要性を判断します。
注意点として、タクシーが使用できるのはあくまで必要な範囲のみです。必要以上にタクシーを利用した場合は、後でタクシー代として支払われた金銭の返還を要求される可能性があります。
交通事故で負傷し、それが原因で交通手段が変わってしまった場合は、そのための費用を交通費として請求することができます。
例えば、事故前は自転車で通勤していたところ、負傷して自転車を運転できなくなったので、バスで通勤することになった場合のバス代などです。
注意点として、通勤や通学に使用する交通手段は相当なものであることが必要です。バスで通勤できるにもかかわらず、不必要にタクシーを使用しても交通費として認められません。
また、交通事故の負傷前から使用していた交通手段は、交通費の支払いの対象から除外されます。例えば、事故前からバスで通勤していた場合は、交通事故の負傷とバスの使用に関連性がないため、交通費の対象にはなりません。
自家用車を使用した場合はガソリン代を交通費として請求できます。交通費は実際に支出した実費に相当する金額を支払う場合が多いですが、ガソリン代については一律の金額が設定されています。
ガソリンにかかる費用は車種、年式、車の状態などによって異なるため、実際に消費したガソリンの量を正確に把握するのは非常に困難です。そこで、車種などに関係なくガソリン費用の金額が定められています。
具体的には、交通費として認められるのは1kmあたり15円です。実際に消費したガソリンの量がそれ以上だったとしても、支払われるガソリンの料金は一律です。例えば、通院のために30kmの距離を走行する場合、交通費として請求できるのは1回の通院につき450円になります。
交通費として認められる費用の計算式は、車の種類に関係なく一律です。ガソリン車、ディーゼル車、ハイオク車、電気自動車など全て同じ計算式になります。
通院のために自家用車を使用した場合、車を停めるために有料の駐車場を利用する場合があります。駐車場の料金については、必要性が認められれば交通費の支払いの対象になります。
必要性が認められない場合は、支払いの対象にならないこともあるので注意しましょう。通院する病院に無料の駐車スペースが十分あるにもかかわらず、有料の駐車場を利用したなどです。
交通費の対象になるのは、原則として通院が必要な本人のみです。親族や友人などの付添人にかかった交通費については、それだけでは支払いの対象になりません。
例外として、付添人が必要な事情がある場合には、付添人にかかった交通費も支払いの対象になります。必要性が認められる例としては、幼い子どもに親が付き添う場合や、車椅子で移動が困難な本人に親族が付き添う場合などです。
注意点として、付添人の交通費は必要な範囲でのみ認められます。子どもの付添人として親が必要な場合でも、交通費の支払いが認められるのは両親2人ではなく1人分が基本になります。
当初は付添人が必要であっても、負傷の回復などで付添人が不要になった場合、それ以降は付添人の交通費の支払いは認められません。
また、付添人が必要な場合でも、交通費の支払いが認められるのは公共の交通機関を使用した場合です。自家用車やタクシーなどは人数が増えても支出する費用は変わらないため、付添人が必要な場合でも交通費は変化しません。
交通費の請求が認められるのは、治療に必要な範囲です。そのため、治療のために通院している期間については、基本的に交通費の請求が認められます。
一般的な期間の目安としては、事故で負った症状がこれ以上良くも悪くもならない、症状固定になるまでと言えます。症状固定になれば治療費の支払いが打ち切られるため、基本的にはそれに付随する交通費も打ち切られると考えられます。
なお、通院費は通院することで生じた費用が確定するので、理論的には通院するたびに請求することが可能です。もっとも、通院1回ごとに請求していては手続が煩雑になるので、一か月分などをまとめて請求するのが一般的です。
痛くないのに通院した場合でも、医師が通院が必要だと判断すれば基本的に交通費を支払いの対象になります。例えば、追突事故などで多いむち打ち症は、事故から時間をおいて痛みが生じる場合があります。
事故直後は明確な痛みがなくても、医師の診察を受けてむち打ち症の診断がされれば交通費の対象になります。交通費の支払対象になるかにおいて重要なのは、明確な痛みがあるかよりも、通院が必要と医師が判断するかどうかです。
逆に言えば、医師がもう通院の必要はないと判断したにもかかわらず、自分の判断で通院を続けた場合は必要な通院とは言えないので、交通費の支払いの対象にはなりません。
症状が治って痛みがないにもかかわらず、痛みがあるなどと偽って通院を続けて交通費を請求すると、トラブルの元になるので注意しましょう。
通院のための交通費を保険会社に請求する方法をご紹介します。
保険会社に通院のための交通費を請求するには、通院交通費明細書と呼ばれる書類を作成して提出します。通院交通費明細書の書式は保険会社によって異なりますが、記載すべき内容は基本的に同じです。
主な記載事項は、通院した医療機関の名称、通院した日付、通院の期間、使用した交通手段、使用した区間、移動にかかった距離、支払った料金などです。
注意点として、通院交通費明細書は事実に即して記載することが重要です。例えば、本当は徒歩で通院したのに交通手段を使用して料金を支払ったかのように記載するのは要注意です。虚偽の申告で交通費の支払いを受けた場合、詐欺にあたる可能性があります。
交通費を申請するには、申請書だけでなく領収書を添付しなければならない場合があります。以下、交通手段ごとに領収書が必要かどうかを見ていきます。
バスや電車などの公共交通機関を使用した場合、領収書の添付は不要です。公共交通機関はルートと料金が決まっているため、使用した区間がわかれば料金も把握できるからです。
自動車を使用した場合、ガソリンの給油代などの領収書は不要です。自動車に対する交通費は1kmあたり15円の単価が決まっているので、通院に必要な距離がわかれば交通費の目安を計算できます。
例外として、高速道路を使用してその料金を請求する場合は、高速道路の領収書を添付する必要があります。実際に高速道路を使用したことを確認するためです。
ETCを使用して高速料金を支払った場合は、ETCカードのクレジットカードの利用明細書を領収書の代わりに添付します。
タクシーを使用した場合、原則として領収証を添付する必要はありません。タクシーの料金は原則として交通費の支払い対象ではないからです。公共交通機関を使用した場合に相当する金額のみが支払い対象になります。
例外は、タクシーを使用しなければならない特別な事情が認められる場合です。この場合には、実際にタクシーを使用したことの証明として、タクシーの領収証を添付する必要があります。
通院のために有料駐車場を使用した場合には、駐車場の料金の領収書を添付する必要があります。実際に駐車場を利用したことの証明になるからです。
注意点として、駐車場代が認められるのは治療に必要と考えられる時間に相当する金額のみです。通院のついでに近くで買い物をした場合など、駐車場の料金が不相応に高い場合は支払いの対象にならない場合があるので注意しましょう。
通院交通費明細書を提出して申請すると、特に問題がなければ保険会社から交通費が振り込まれます。
交通費が振り込まれる時期は保険会社によって異なりますが、2週間程度が目安といったところです。振込までの期間の目安を知りたい場合は、実際に保険会社に問い合わせてみるのがおすすめです。
2週間以上経過しても何もない場合、何らかのトラブルが生じている可能性があります。保険会社に進捗を尋ねてみましょう。
また、交通費は本人が自腹で立て替えるのが原則ですが、立て替えの継続が難しい場合は保険会社に相談するのも1つの方法です。1回の通院にかかる交通費が把握できている場合などは、月単位で支払うなどの対応をしてくれる可能性があります。
交通費の支払いをするのは、相手の保険会社になります。
保険会社はなるべく支払いを抑えたいため、交通費として認めるか際どいものに関しては、認めない方向で話をしてくるかもしれません。
「これは自分じゃ分からないし、判断できない」と思ったら、気軽に弁護士へ相談してみましょう。
保険会社とトラブルになったり、自分だけ不利な交渉をしたりしないように、事前に弁護士からアドバイスをもらっておきましょう。
弁護士に依頼するときに気になるのが、費用だと思います。
弁護士への費用は、相談料・着手金・日当・成功報酬などたくさんあり、決して金額も安くありません。
「弁護士へ依頼はしたいけど、なるべく費用は抑えたい・・・」と思う人もいるでしょう。
そこでおすすめなのが、弁護士特約の利用になります。
弁護士特約を利用すれば、自分の加入している保険会社が弁護士費用を300万まで負担してくれます。
交通事故の弁護士依頼で費用が300万円を超えることはほぼないため、実質無料で依頼できるといえます。
ただし自分が契約している保険に弁護士特約がついていないと利用できません。
自分が加入している保険に弁護士特約がついているかどうか確認して、ついているなら必ず利用してくださいね。
交通事故の負傷を治療するための通院などに支出した交通費は、基本的に相手方の保険会社に請求することができます。バスや電車などの公共の交通機関は支出した実費を請求し、自家用車は1kmあたり15円で計算して請求します。
タクシーの料金は原則として交通費としては認められませんが、タクシーを使用するやむを得ない事情がある場合は例外として認められます。
交通費を請求するには、通院交通費明細書を作成して提出する必要があります。今回ご紹介した情報をもとに、交通費を適切に請求していだだければと存じます。