会社設立に必要な書類の提出先|作成時の注意点も合わせて解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
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会社設立時の必要書類とは、会社設立にあたって「提出が必要となる書類」ということです。
つまり、用意した書類はどこかに提出する必要があります。
結論からいうと、会社設立時の必要書類は「公証人役場」「法務局」「税務署」の3つの機関に提出することが決まっています。
3つの機関はそれぞれ役割が異なっているため、会社設立時の書類は出し分ける必要があるのです。
今回の記事では、「会社設立時の必要書類の提出先」および「作成時の注意点」について解説していきますが、株式会社・合同会社設立に必要な書類一覧、会社設立の流れ・費用などについては以下のページを参考にしてください。
内容が姉妹のように関わり合っているページのため、本記事と前後にお読みいただくことをおすすめします。
目次
必要書類の提出先は3つ
会社設立時の必要書類は以下の3つの機関に提出する必要があります。
- ・公証人役場
- ・法務局
- ・税務署
公証人役場には、ある事実の存在や法律の効力について、公権力を根拠に証明・認証する「公証人」が常駐しています。
したがって、会社設立時に効力を持たせる必要がある「定款」や「株主全員の印鑑証明書」は公証人による認証を受ける必要があるのです。
また、法務局には「認証済みの定款」や「登記申請書」など、会社設立に関わる書類の提出を行います。
さらに税務署には、企業活動を行う上で発生した利益に対する税金を支払うため、「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」などを提出する必要があります。
公証人役場に提出する書類
公証人役場に提出する書類の一覧は以下の通りです。
- ・定款
- ・株主全員の印鑑証明書
公証人による認証がなければ効力を発生しない手続きですので必ず実施しましょう。
また、法務局に提出する書類「認証済みの定款」は公証人の定款認証手続きによって手に入りますので、会社設立時における書類提出のファーストステップとなります。
定款
定款は、「会社の憲法」と呼ばれ、会社の基本的なルールを定める文書です。
株式会社の設立には必ず必要な書類で、会社保管用原本、公証人役場提出分、法務局提出分の計3通を作成します。
定款では、新しく設立する会社の次の事項等を決めます。
- ・設立日
- ・商号(社名)
- ・事業目的
- ・本店所在地
- ・公告方法
- ・発行可能株式総数
- ・株式の譲渡制限
- ・取締役の員数
- ・取締役の任期
- ・事業年度
- ・設立に際して出資される財産の価額
- ・最初の事業年度
- ・設立時の役員
- ・発起人(設立時の株主)
参考:会社設立の基本的な流れ
定款のひな形をダウンロードしたりして、一般的な定款を真似て作ることも可能ですが、自分の会社だけの、一般的でないルールを設定したい場合は知識が必要になります。
作成が終わると、発起人全員で公証人役場に出向きます。
出席できない発起人がいる場合などは、委任状も事前に準備しておく必要があります。
株主全員の印鑑証明書
公証人役場に出向く際には、発起人、つまり設立時の株主全員の印鑑証明書を1通ずつ用意してください。
この後、取締役に就任する方は法務局でも印鑑証明書を使用しますので、先に2通取得しておきましょう。
各株主それぞれの住所の役所で取得できます。
実印の登録をまだしていない方は、同じ場所で印鑑登録から行なってください。
株主全員が公証人役場に行けない場合は、行けない方の委任状を定款の表紙につけて、実印を押してもらっておく必要があります。
その場合でも、行けない方の印鑑証明書の持参が必要となります。
法務局に提出する書類
法務局に提出する書類の一覧は以下の通りです。
- ・登記申請書
- ・認証済みの定款
- ・取締役・代表取締役の就任承諾書
- ・発起人の決定書
- ・資本金振込を証明する書類
- ・印鑑届出書・印鑑カード交付申請書
- ・代表取締役・取締役個人の印鑑証明書
- ・登記すべき事項を記録した磁気ディスク
法務局には、会社設立にあたって決定したこと、第三者に公開する必要のある情報を記載した書類などを提出する必要があります。
ある会社の定款(ルール)を公証人によって認証してもらい、会社設立の事実を証明するための書類を法務局に提出する必要がある、と覚えておきましょう。
登記申請書
法務局で設立登記を依頼するためには、法務局への登記申請書が必要です。
登記申請書は、会社名や本店所在地、登録免許税額や添付書類の一覧などを記載する書類で、書式が定められています。
書式や記載例は、法務局のホームページで確認することができます。
登録免許税の額は、資本金の額の0.7%と定められています。
0.7%と定められています。
ただし、最低額が設定され、株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円です。
登記申請の際は、登録免許税を収入印紙によって納めます。
収入印紙は、貼付用の台紙を作成して登記申請書に添付します。
特別な様式があるわけではないため、A4版の白紙を利用します。
なお、収入印紙の消印は法務局で行うため、申請時に押印してはいけません。
認証済みの定款
「公証人役場への提出」の手順を終え、手に入った定款(公証人役場で認証が済んだもの)を添付します。
紙の定款の場合には認証を受けたもの、電子定款の場合にはCD-Rなどの磁気ディスクを提出します。
合同会社の場合は、認証は必要ありません。
取締役・代表取締役の就任承諾書
設立時の取締役、代表取締役、監査役が就任を承諾した証明書を添付します。
取締役が複数名いる場合、代表取締役になる人は、取締役と代表取締役の両方の就任承諾書が必要となります。
また、監査役は、取締役会を設置しない場合や、取締役会を設置しても会計参与を置く場合は必要ありません。
発起人の決定書
発起人全員の合意により、本店所在地を決定したことを証明するための書類が、発起人の決定書です。
定款では、会社の本店所在地について、番地まで記載しなくても構わないこととされているため、定款に番地が記載されていない場合に必要となります。
資本金振込を証明する書類
発起人から資本金を集めるには、発起人(株主)のどなたかの個人の銀行口座を使用します。
とくに新しい口座を開設する必要はありません。
会社の準備段階では、まだ新しい会社の法人口座は開設できないため「発起人となる個人の銀行口座」に資本金を振り込んでください。
また、資本金の払込があったことを証明する書面を「払込証明書」として準備します。
払い込みがあったことを証明するために、払込み口座の通帳のコピーやインターネットバンキングの利用履歴をA4用紙に印刷して綴ります。
印鑑届出書・印鑑カード交付申請書
作成した会社の実印(代表者印)は、法務局に登録しなければなりません。
設立登記の申請に合わせて、印鑑(改印)届書を提出し、印鑑登録を行います。
印鑑届書の用紙は法務局で用意されています。
印鑑届書には、代表取締役個人の実印の押印と、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書を添付します。
また、届け出た印鑑の印鑑証明書を発行してもらうために必要な印鑑カードを発行してもらうため、印鑑カード交付申請書を提出します。
会社の実印は事前に発注しておくと、印鑑作成の待ち時間が発生しないためスムーズに手続きできます。
代表取締役・取締役個人の印鑑証明書
取締役会を設置しない会社の場合は、取締役全員の就任承諾書に個人の実印を押印し、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書を添付する必要があります。
取締役会を設置する会社の場合は、代表取締役が就任承諾書に個人の実印を押印し、代表取締役個人の印鑑証明書を添付します。
この場合は、他の取締役の印鑑証明書は不要となります。
各役員それぞれの住所の役所で取得できます。
実印の登録が済んでいない方は、役所で印鑑登録から行ってください。
登記すべき事項を保存したCD-RまたはFD
申請書とセットで、実際に「登記すべき事項」を記録したファイルを保存した磁気ディスク(CD-R)か、必要事項を記載したA4版の書面を提出する必要があります。
申請書が申請内容の概要を記載する書面に対し、実際に登記される事項を記載します。
定款や印鑑証明書など添付書類に記載されている事項を、全く同じように記載しなければなりません。
税務署に提出する書類
法人の登記が終わり、履歴事項全部証明書が入手できたら、「会社を設立しました」という報告を税務署にも行わなければいけません。
ここでは「税務署」へ提出する届出書の説明だけをしますが、同時に「都税事務所」「県税事務所」
「市区町村役場」にも同様の届出書を提出する必要があります。
内容はほとんど同じなので同時に
作業してしまいましょう。
なお、税務署に提出する書類の一覧は以下の通りです。
- ・法人設立届出書
- ・給与支払事務所等の開設届出書
- ・青色申告の承認申請書
- ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
法人設立届出書
本店所在地を管轄する税務署に、設立の日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
定款の写しや履歴事項全部証明書も添付して提出します。
給与支払事務所等の開設届出書
法人の設立日から1ヶ月以内に提出します。
「会社設立直後にスタッフは雇わない」という方も代表取締役にはお給料を払うことになりますので、法人設立届出書とセットで提出しておいたほうが良いでしょう。
青色申告の承認申請書
法人の設立日から3ヶ月以内に提出しなければ、設立初年度の青色申告のメリットを得ることができなくなりますので、設立後の書類のなかで税理士が最も注意を払うものです。
青色申告とは、毎年の法人税の確定申告をするにあたり、「きっちりとした帳簿を作成して適正な経理をしますよ」という会社の意思表明であり、そういった会社には税務署が税金的な優遇措置を設けてくれているのです。
青色申告を選ばない法人の申告は「白色申告」と呼びます。
帳簿を作成しない法人はほとんど存在しませんので、9割以上の会社が青色申告を選択しています。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
当該書類の提出義務はないのですが、提出しておいて損はありません。
会社設立後に給料の支払い(代表取締役・取締役に対する報酬も含む)が発生した場合は、源泉所得税を天引きし、会社が本人の代わりに納税しなければならないのですが、その納税の期日を先延ばしにできる書類です。
通常、お給料を支払った月の翌月10日までに毎月納税しなくてはならないのですが、当該書類を提出しておけば半年に一度、まとめて納税すれば済むことになります。
要件や、納税時期についての詳細は国税庁のホームページを参照してください。
まとめ
会社設立時に必要な書類の提出先、作成時の注意点について解説しました。
3つの提出先それぞれできちんとした役割がありますので、1つも欠かすことなく手続きを行うようにしましょう。
会社設立に向けて日々の業務は多忙を極めますから、困った時は気軽に税理士に相談してみてください。
手続きの効率化だけでなく、設立コストの軽減に関するアドバイスも受けられますよ。
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