最終更新日:2025/7/18
発起人の決定書の書き方とは?押印などの注意点も解説【テンプレートあり】

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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会社設立の際に作成する書類の1つが、発起人決定書です。
登記申請書の添付書類として法務局に提出するものですが、定款の内容によって記載事項が変わってくるため、いざ作成しようとすると混乱してしまいがちな書類でもあります。
この記事では、発起人決定書とはどういったもので、何について記載すればいいのかを解説します。
押印の必要性や、発起人同意書などとの細かい違い、実際のテンプレートと書き方などについても紹介しますので、発起人決定書を作成しようという人はぜひ一度目を通してください。
目次
発起人決定書とは
発起人決定書とは、定款で具体的に定められていない内容について、発起人の過半数が確かにそれを決定したと証明するための書類です。
設立登記申請書の添付書類の1つであり、認証済みの定款やその他の書類とともに法務局に提出します。
あくまで定款の補足をするための書類であり、定款にすべての必要事項が記載されているのならば、作成する必要はありません。
発起人決定書の具体的な概要と内容について解説します。
株式会社を設立しようとする人が「発起人」
発起人とは、株式会社を設立するための出資や手続きを行う人のことを指します。
必ずしも1人である必要はなく、何人かが協力して会社設立にあたる場合は、その全員が発起人となることもあります。
会社設立までの諸作業が発起人の役割であり、設立後は取締役として会社の経営を行ったり、一般社員として業務に当たるなど、それぞれの役割に就きます。
また、発起人は出資額に応じた株式を引き受けるため、株主としての役割も持ちます。
このような重要な役割を担う発起人が、定款の補足事項について確かに了承したことを証明するために、発起人決定書は作成されます。
本店所在地を地番まで定めるために作成することが多い
発起人決定書は、定款で省略された「~丁目~番~号」の部分を補足するために、よく利用されます。
会社設立のサポートを司法書士や税理士に依頼した場合、適切なアドバイスを受け、必要事項をしっかりと備えた定款を作成することができるでしょう。
作成した定款に補足する内容がないのであれば、発起人決定書は不要です。
しかし司法書士などに依頼して定款を作ったとしても、本店所在地に関しては、発起人決定書で補足するケースが多いです。
多くの場合、定款に記載されている本店所在地は「最小行政区画まで」となります。
これは本店を移転することになった場合、最小行政区画内での移動であれば、定款を修正しなくてもよくなるためです。
定款の修正には株主総会での特別決議や法務局での登記変更など、多くの手間と費用がかかります。
そうしたリスクを小さくするために、多くの会社では定款の本店所在地を最小行政区画までしか記載していません。
このような場合の補足として、発起人決定書で番地やビル名、部屋番号までを記載するのです。
合同会社なら発起人決定書はいらない
発起人は株式会社特有の制度であり、合同会社では存在しません。
なぜなら、「合同会社は全社員が出資者であり経営者」という前提があるためです(ここでの「社員」とは、株式会社でいう株主のような意味で、従業員とは違う点に注意してください)。
合同会社の設立を進める人は社員であり、発起人ではないため、必然的に発起人決定書も不要となります。
代わりに、同じように正確な本店所在地を記載した「本店所在地決定書」などを作成する場合もあります。
発起人決定書の書き方・テンプレート
発起人決定書の具体的な書き方を、本店所在地について記載する場合のテンプレートをもとに解説します。
- 発起人の氏名を記載します。
- 本店所在地を丁目や番地まで、すべて正確に記載します。ハイフンなどは使用しないように注意してください。
- 発起人決定書を作成した日付と、設立する会社の商号を記載します。
- 2の内容を決定した発起人の住所と氏名を記載します(実印の押印は不要です)。
2に記載する内容は、定款によって変化します。
設立時取締役の人数や氏名、電子公告のサイトURLなど、定款に詳しく記載していない事項がある場合は、ここに加えて記載します。
発起人決定書の注意点
発起人決定書の作成にはいくつか注意点もあります。
作成する前に一度確認しておきましょう。
発起人決定書の作成日は定款の作成日と同じにしておく
発起人決定書には作成日を記入する箇所がありますが、ここは定款の作成日と同じにしておきましょう。
発起人決定書の作成日は、サイトによっては「定款の認証日よりも前であるべき」や「定款の作成日以降、払込証明書に記入する日付と同一のもの」とあり、見解が分かれています。
基本的に定款の作成日と同じにしておけば、日にちについて法務局から指摘を受けることはありませんし、実務上の問題となることもないでしょう。
発起人決定書と発起人同意書がある
発起人決定書と非常によく似た書類に、発起人同意書があります。
発起人決定書が「発起人の過半数の了承を得て決議したこと」を証明するものであるのに対し、発起人同意書は「発起人全員の了承を得たこと」を証明するものです。
あまり厳密なものではありませんが、書類の名前について不安があるときは司法書士などに相談し、必要があれば決定事項ごとに別々の書類を作成しましょう。
発起人決定書に押印は不要
以前は、発起人決定書には発起人の実印の押印が必須でした。
しかし令和3年1月29日の法務省民商第10号通達により、押印に関する規定が見直され、現在では発起人決定書への押印は不要となっています。
実際に法務局でも、発起人決定書に押印を求められることは基本的にありません。
まとめ
発起人決定書は登記申請書の添付書類の1つであり、定款の内容を補足する書類です。
多くの場合は、定款に最小行政区画までしか記載されていない本店所在地の、正確な住所を補足するために作成します。
ただし定款の記載によっては、発行株式の数や金額、資本金の額、取締役の選任などについて、発起人決定書あるいは発起人同意書などに追加して記入します。
発起人決定書は株式会社のみ作成する書類であり、合同会社などの設立には不要となります。
また、近年では発起人決定書への実印の押印も不要となっています。
発起人決定書の作成で困ったら税理士や司法書士に相談しよう
発起人決定書は定款の内容によって、記載すべき内容が変化します。
定款の補足事項として何が必要なのかを把握しておかないと、正確な発起人決定書は作れません。
初めて会社設立を行う人のなかには「自分で定款を作ったけれど、発起人決定書に何を書けばいいのかわからない」「発起人決定書に書く内容はわかったけど、どう書けばいいの?」といった疑問を抱く人も多いでしょう。
発起人決定書の作成に関して悩みや疑問があるときは、会社設立を専門とする司法書士や税理士などに相談してみてください。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立・運営に関する無料相談を実施しています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。