最終更新日:2025/11/25
定款認証の必要書類は?初めてでも自分で準備できる!定款認証の基礎知識も解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 定款認証の必要書類
- 電子定款と紙定款の違いと費用の目安
- 定款認証の流れと具体的な手順
会社を設立する際に最初の関門となるのが「定款認証」です。株式会社を設立する場合は、公証人に定款の内容を確認してもらう定款認証が必要になります。
定款認証を受けるためには多くの必要書類をそろえなければなりません。不備があれば手続きをやり直すことになります。
この記事では、定款認証の流れや必要書類、費用の目安をわかりやすくまとめ、スムーズに会社設立を進めるためのポイントを解説します。


定款認証の必要書類
定款認証を行うためには、事前に多くの書類をそろえることが必要です。定款認証の必要書類は定款の種類によって異なります。
定款には「電子定款」と「紙定款」があり、どちらを選択するかで必要な書類は少し違います。さらに、発起人が個人か法人かによっても違いがあるため、事前に確認しておくことが大切です。
ここでは、それぞれのケースごとに必要な書類を整理して解説します。事前に必要書類をリストアップし、余裕をもって準備を進めましょう。
定款認証の前に用意する書類一覧
定款認証の手続きをする際には、さまざまな書類が必要です。準備ができておらず不備があると認証が受けられず、再度出直さなければならないケースもあるため注意しましょう。
電子定款の場合
電子定款を利用して定款認証を行う場合に必要な書類は次のとおりです。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 印鑑証明書 | 発起人が個人の場合: 発起人の印鑑証明書 海外在住の個人が発起人の場合: 発起人が日本の法人の場合: |
| 登記事項証明書 | 発起人が法人の場合、登記事項証明書(=登記簿謄本、履歴事項全部証明書)や株主名簿(法人印での押印)が必ず必要 |
| 実質的支配者となるべき者の申告書 | 発起人が個人か法人かを問わず必要。日本公証人連合会のWebページ「9-4 定款認証」からダウンロードできる。設立会社の実質的支配者が法人の場合、その出資法人の実質的支配者(筆頭株主)の本人確認書類が必要 |
| 実質的支配者となるべき者の本人確認書類 | 発起人が個人か法人かを問わず必要 例:マイナンバーカード等 |
| 委任状 | 代理人が公証役場で認証手続きを行う場合に必要 |
| 代理人の本人確認書類 | 代理人が認証申請する場合 |
| 発起人の身分証明書 | 身分証は原本ではなく写し(コピー)でも可 |
上記以外に、電子定款の場合はPDFファイルの定款となるため、USBメモリやDVD-Rなど、データを受け取れるものを用意する必要があります。
電子定款の場合、実印を持参する必要はありませんが、書類に不備があった場合に備えて発起人の実印を持っていくと安心です。また、公証役場に出向く代わりにテレビ電話を利用して認証手続きを進めることも可能です。
紙定款の場合
紙定款で定款認証を受ける場合の必要書類は以下の通りです。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 定款 | 3通必要 発起人全員が実印を押印し、3通すべてに割印が必要 |
| 印鑑証明書と実印 | 発起人が個人の場合、全員分が必要 |
| 登記事項証明書 | 発起人が法人の場合は、代表者事項証明書・現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書のいずれかが必要 |
| 実質的支配者となるべき者の申告書 | 個人・法人を問わず必要。電子定款と同様、日本公証人連合会のWebページからダウンロード可能 |
| 実質的支配者となるべき者の本人確認書類 | 個人・法人を問わず必要。設立会社の実質的支配者が法人の場合、その出資法人の実質的支配者(筆頭株主)の本人確認書類が必要 例:マイナンバーカード等 |
| 委任状 | 代理人が認証手続きする場合に必要 |
このように、紙定款の場合は実物の書類を複数そろえる必要があり、押印や割印など細かい形式にも注意しなければなりません。

定款認証の費用
定款認証を行う際には、費用がかかります。
必要な費用は「資本金の額」「発起人の数」「定款の種類(電子か紙か)」によって変わります。会社を設立するうえで必ず発生する費用であるため、あらかじめ把握しておきましょう。
| 定款認証手数料 ※電子・紙で共通 |
資本金の額等が100万円未満 | 1万5,000円(発起人が法人ではない・3人以下・取締役会がない) 当てはまらない場合は3万円 |
|---|---|---|
| 資本金の額等が100万円以上300万円未満 | 4万円 | |
| その他 | 5万円 | |
| 収入印紙代 ※紙定款のみ |
4万円 | |
| 各種手数料 ※電子定款のみ |
データ保存手数料 | 300円 |
| 提供手数料 | 1通700円 | |
| 書面交付手数料 | 20円×枚数 | |
認証手数料は、紙定款でも電子定款でも、そして全国どこの公証役場でも同額です。設立する会社の資本金をいくらに設定するかによって必要な費用が変わるため、資本金の額を決める際にはこの点も考慮しましょう。
紙定款の場合に必要な収入印紙代
紙定款を利用する場合には、収入印紙代として4万円が手数料とは別に必要になります。収入印紙は定款に貼り付けて消印を行うため、必ず用意しなければなりません。
一方で、電子定款を選択すれば印紙代が不要です。そのため、紙定款に比べて電子定款は4万円分のコストを削減できるという大きなメリットがあります。
電子定款にかかる追加費用
電子定款の場合、収入印紙代は不要ですが、代わりに次のような細かな費用が発生します。
- データ保存手数料:300円
- 提供手数料:1通700円(定款データを受け取る場合)
- 書面交付手数料:20円×枚数(電子定款を紙に印刷して交付してもらう場合)
これらは1件あたりの金額は小さいものの、複数部の提供を依頼した場合には合計で数千円単位になることもあります。必要に応じて発注数を調整しましょう。
定款認証のあとで必要になる書類
定款認証が完了したら、次のステップは会社設立の登記です。新たに必要になる書類がたくさんあるため、定款認証だけで安心してしまうと登記の段階で準備不足になりかねません。
会社設立をスムーズに進めるために、定款認証のあとで必要になる書類を整理しておきましょう。
登記申請に必要な書類
登記を行う際には、以下のような書類を法務局に提出します。
| 書類 | 概要 |
|---|---|
| 株式会社設立登記申請書 | 会社設立のための正式な申請書 |
| 収入印紙貼付台紙 | 登録免許税を納める印紙を貼る台紙 |
| 認証済みの定款 | 公証役場で認証を受けた定款の謄本 |
| 払込証明書(払込みを証する書面) | 資本金を払い込んだことを証明する書類 |
| 発起人決定書(発起人の同意書) | 定款に記載されてない場合 |
| 就任承諾書 | 代表取締役や取締役、監査役などに就任したことへの承諾を証明する書類 |
| 印鑑証明書 | 設立時の役員全員分が必要 |
| 印鑑届書 | 会社の代表者印を法務局に届け出るための書類 |
| 印鑑カード交付申請書 | 設立する会社の実印の証明書 |
| 登記すべき事項を記録した別紙または電磁的記録媒体 | 「登記すべき事項」をまとめたもの書面もしくはCD-R |
| 委任状 | 代理人が手続きする場合 |
税務署や役所に提出する書類
会社設立後は、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に必要書類を提出しなければなりません。主なものは次のとおりです。
- 法人設立届出書
- 青色申告承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 社会保険や労働保険の手続き書類
定款認証を終えた後で提出する書類は少なくありません。定款認証後に慌てないように準備しましょう。
会社設立のステップ
株式会社を設立するためには、一定の手順を踏む必要があります。定款の作成・認証は最も重要な手続きの1つです。定款認証を済ませたうえで、登記申請や銀行口座開設といった次のステップへ進むことができます。
ここでは、会社設立の流れを簡単に整理します。
会社設立のフローチャート
会社設立の一般的な流れは次のようになります。
会社設立の流れ
- STEP1会社名や事業目的などの会社概要の決定
- STEP2会社の印鑑の作成
- STEP3定款の作成・認証
- STEP4出資金の払込み
- STEP5設立登記申請
このように、定款認証は会社設立に欠かせない重要な手続きであり、全体の流れの基盤となります。
株式会社の設立では、定款認証を受けなければ設立登記はできません。
外国籍の方の場合の印鑑証明
発起人に外国籍の方が含まれる場合、必要書類に注意が必要です。日本で住民登録をしている場合は印鑑登録が可能なため、印鑑証明書を提出できます。
しかし、海外在住の場合、印鑑登録制度がない国が多いため、代わりにサイン証明書が必要になることが多いです。
定款認証は必要書類の不備があると受理されないため、外国籍の方が発起人となる場合には特に早めの準備をしましょう。
定款とは?
「定款」とは会社の重要書類のひとつです。定款は会社の基本的なルールをまとめた文書であり、会社のルールブックとも言われるものです。
株式会社を設立する場合には、この定款を公証人に確認してもらう手続きがあるのですが、これが「定款認証」です。
定款認証を理解するためには、まず定款とは何かを正しく理解することが大切です。ここからは定款の性質や役割を確認しましょう。
定款は会社の基本的なルール
定款とは、会社の「ルールブック」です。
会社の商号、所在地、事業目的、発行可能株式総数、取締役や監査役の人数といった、会社運営の根幹となる重要事項が記載されていて、会社は定款に沿って活動を行います。
必ず作成する書類
会社を設立する場合、定款の作成は法律で義務付けられています。
これは、株式会社だけでなく、すべての会社で定款の作成義務があるということです。定款がなければ登記申請もできず、会社を成立させることはできません。そのため、会社設立の最初の大きな準備として「定款の作成」があるのです。
定款認証とは
定款認証とは、会社の基本ルールである定款の内容をチェックしてもらい、公的な「お墨付き」をもらう手続きのことです。このお墨付きがあることで「問題のない定款だ」という証明になります。
定款認証は株式会社の設立時に行う
定款認証は株式会社を設立するときに必ず行う手続きです。手続きは公証役場で行いますが、電子定款であればネットで定款認証を受けられます。
電子定款の場合は「登記ねっと 供託ねっと」もしくは「法人設立ワンストップサービス」にアクセスすれば、定款認証の手続きができます。
紙定款の場合は、公証役場に出向いて行います。公証役場は、設立登記を行う法務局とは別物なので注意してください。
また、定款認証ができるのは「法人の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人」に限られています。
公証役場は全国にありますが、どこの公証役場を利用してもよいというわけではないため、事前に場所や予約について確認しましょう。
合同会社の場合は定款認証は不要
定款認証は、株式会社や一般社団法人、一般財団法人、弁護士法人、税理士法人などが行う手続きです。合同会社や合資会社、合名会社では定款認証は必要ありません。
ただし、定款はすべての会社で作成する必要があります。
合同会社の場合は定款認証は不要
定款認証は、株式会社や一般社団法人、一般財団法人、弁護士法人、税理士法人などが行う手続きです。合同会社や合資会社、合名会社では定款認証は必要ありません。
ただし、定款はすべての会社で作成する必要があります。
定款認証の流れ
定款認証は、会社設立の最初の大きなステップです。ここでは、電子定款と紙定款それぞれの流れを整理しながら、手続きの全体像を解説します。
定款認証の手続きのフローチャート
定款認証の流れをチェックしましょう。
- Wordなどで定款を作成
- PDFに変換(電子定款のみ)
- オンライン送信
- 公証人による認証
- 受け取り
- 定款を作成し印刷する
- 必要書類をそろえる
- 公証役場に出向いて手続き
- 認証済み定款を公証役場で受け取る
定款認証の流れは電子定款と紙定款で一部異なります。
電子定款の場合は、作成した定款をPDFに変換してオンラインで送信します。一方、紙定款の場合は、公証役場に出向く必要があります。
電子定款と紙定款について
電子定款は、紙ではなくデータで定款を作成・保存するというものです。
定款は紙というイメージがあるかもしれませんが、法務省の調査によると9割以上の人が利用しています。
大きな理由は、収入印紙代4万円が不要で、費用を抑えられるためです。データでのやり取りができ、効率的に進められるのもメリットです。
一方、紙定款は直接公証役場に足を運んで手続きを行う必要があり、書類の作成や押印、印紙の購入などに手間がかかります。ただ、電子定款に必要なシステムや電子証明書を準備できない人にとっては依然として現実的な選択肢です。
定款認証は自分でできる
自分で定款を作成して、公証役場で認証手続きをすることもできます。ここでは、自分で定款認証をする場合の注意点などをまとめます。
発起人が手続きして問題ない
定款認証は、発起人が自ら行うことができる手続きです。発起人とは、会社を設立する人のことで、設立後は原則として株主になります。
役員とは異なる立場であるため、混同しないように注意しましょう。
自分で手続きする場合の注意点
公証役場での定款認証は、その日のうちに完了します。ただし、必要書類に不備があった場合は受け付けてもらえず、再度出直すことになるケースもあります。
注意点を把握しておけばスムーズに手続きができます。
必ず予約をとる
定款認証をする際には、あらかじめ管轄の公証役場を調べ、事前予約をしましょう。公証役場に突然出向いたりデータを送ったりしないようにしましょう。
予約時には、必要書類の内容を確認されるケースもあります。書類に不備があると手続きができないため、必ずリストをチェックしてから予約に進みましょう。
書類の不備
書類の不備はよくあるミスです。必要書類がそろっていなかったり、書かれるべきことが抜けていたりといった不備は少なくありません。
少しでも不備があると受け付けてもらえないため、完璧に書類をそろえて公証役場に出向く必要があります。
印鑑証明の期限と枚数
定款認証の必要書類の中に「印鑑証明」があります。印鑑証明は比較的なじみがある公的な書類ですが、実はここに不備があるケースがあります。
まず、印鑑証明の有効期限が切れているというケースです。印鑑証明の有効期限は発行してから3カ月以内です。1日でも過ぎていたら印鑑証明の効力がないため書類の不備となります。
次に、印鑑の勘違いです。意外かもしれませんが、印影がとてもよく似ている印鑑を「実印だ」と勘違いしてしまい、公証役場で「印影が違う」と指摘されることがあります。この場合も不備となってしまいます。
他にも、発起人ではなく役員の印鑑証明を用意してしまうケースもあります。定款認証で必要なのは発起人の印鑑証明です。

専門家に依頼できる
定款認証は、自分で手続きすることができます。ですが、必要書類が多く、また「実質的支配者となるべき者の申告書」のような記入するのが難しい書類もあります。
わからないままで公証役場に手続きをしに行っても、書類に不備があれば認証を受けることができません。そのような場合は、再度、出直すことになるため二度手間になってしまいます。
スムーズに定款認証を進めるためには、専門家に依頼するという選択肢が有効です。
行政書士
行政書士は、会社設立に必要な定款の作成や電子定款の認証手続きを代理で行うことができます。行政書士に依頼することで、書類の不備によるやり直しを防ぎ、スムーズに会社設立を進めることができます。
司法書士
司法書士も会社設立に対応する専門家です。司法書士に依頼すれば、定款認証のサポートだけでなく、登記申請の代理まで一括して任せることができます。
特に登記に関する手続きは司法書士の専門分野であるため、会社設立全体をトータルでサポートしてもらえます。
定款認証の必要書類は事前に確認し専門家に相談しよう
会社設立では、定款認証と必要書類の準備が第一のハードルとなります。自分で行うこともできますが、不備があれば認証を受けられず、設立完了が大きく遅れてしまいます。
定款の作成には法律の知識も必要ですし、手続きに慣れていなければ戸惑うことも多いでしょう。
そのようなときには、行政書士や司法書士といった専門家に依頼することができます。電子定款の認証や登記申請まで一貫してサポートを受けられ、安心して手続きを進めることができます。
定款認証をスムーズに進め、会社設立を確実に実現するためにも、ぜひ専門家への相談をご検討ください。



















