東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、皆様の問題に真摯に取り組む所存です。
警察庁が発表しているデータによると、1日平均1,100件の交通事故が発生しています。
普通に生活を送っていたとしても、誰しもが交通事故の被害者もしくは加害者になってしまう可能性があると言えるでしょう。
いざ、自分が当事者になったとき頭を抱えて悩まないように、交通事故発生から示談までの流れについて確認しておきましょう。
「交通事故に巻き込まれた!とるべき対応とやってはいけないこと」こちらの記事も参照ください。
目次
交通事故の示談とは、「交通事故の被害者側と加害者側が損害賠償金について話し合うこと」をいいます。
一般的には、交通事故の損害賠償請求をするために、相手方の保険会社との話し合い、お互いの望む条件を決定することを指します。
けが人がいる場合、まずは何よりも救護を優先しましょう。
これは道路交通法で定められた義務であり、怠ってしまうと処罰の対象になってしまいます。
また自動車などの運転は停止し、安全を確保するようにしましょう。
けが人がいる場合はもちろん、物損事故の場合であっても警察に連絡をする義務があります。
警察に連絡をすることで現場の実況見分がおこなわれ、実況見分調書が作成されます。
この調書は、過失割合などで争いが生じた場合、重要な証拠資料となります。
そのため当事者双方が実況見分に立ち会い、内容が偏らないようにする必要があります。
また被害者・加害者どちらの立場であっても、保険会社に事故報告をしましょう。
被害者であっても、相手が無保険だったり自分に過失があったりすれば保険を使わなければならない場合があります。
そのため、自分が完全に被害者だと思っていても、保険会社にも連絡することが大切です。
交通事故直後は身体に異常が感じられなくても、翌日になって痛みが生じることも珍しいことではありません。
さらに交渉と賠償の点においても、すぐに病院に行くことは重要なことです。
病院への診察が遅くなると、加害者とその保険会社は詐病を疑うことがあるので、多少の違和感があるようならすぐにでも病院に行くようにしましょう。
「交通事故の痛みがひかない」、「症状が治らない」等の場合には交通事故の後遺障害認定を受けられる可能性があります。
この認定を受ける際に重要なものが、医師の後遺障害診断書です。
後遺障害診断書は、事故直後の症状だけでなく治療経過や入通院の情報をもとに作成されます。
そのため、病院機関で適切な診察・治療を受けましょう。
治療を続けても痛みがとれず効果が感じられない等、症状に改善がみられない状態を症状固定といいます。
この状態になったとしても、症状が残っていれば後遺症として、後遺障害等級認定を受けて、加害者側保険会社に後遺障害慰謝料などを請求することができます。
事故による治療の終了時期を決めるのは医師です。
症状固定は、医師が「医学的にこれ以上症状を改善する余地がない」と判断した場合をいいます。
しかし、通院や入院が長引けば長引くほど、加害者側保険会社は症状固定にするよう促してきます。
この連絡の目的は保険金の払い出しを抑えることにあるので、主治医が治療を必要と判断している場合、治療をやめる必要はないので安心してください。
万が一、まだ治療が必要な状態であるにもかかわらず症状固定としてしまうと、その後発生する治療費や通院費を請求することができなくなり、休業損害や入通院慰謝料を計算する期間が短縮されてしまうかもしれません。
そのため、症状固定の判断は余計に焦らず慎重になることが重要になります。
後遺障害の等級認定は、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)という機関がおこないます。
基本的に、相手方の保険会社が症状固定までの治療費用を支払っていた場合、後遺障害の認定についても相手方の保険会社を通じて申請することが多いと思います。
後遺障害の等級認定は、主治医が作成する後遺症障害診断書が重要な資料になります。
この診断書は、交通事故直後からの具体的な症状・治療経過などの記録をもとに作成されるものです。
後遺障害診断書を自分の目で確認したときに、自分が感じる症状の感覚と異なっていたり、不鮮明な部分を見つけたりすることがあるかもしれません。
そのようなときには、医学的な知見がある専門家に診断書の添削などをしてもらい、納得のいく後遺障害等級認定を受けられるようにしましょう。
介護を要する場合には1級と2級があり、それ以外については1級から14級に分かれています。
数字が小さくなるほど重症で14級が最も軽症になります。
この認定基準は、後遺障害の箇所やその症状の詳細によって定まっています。
加害者側保険会社に申請を代行してもらう方法(事前認定)と被害者自身で申請手続きを行う方法があります。
加害者に請求する場合、任意保険会社が手続きをおこなってくれるため、資料や書類を集める手間が省けるというメリットがあります。
ただし、代わってくれるのが加害者側の保険会社なので、被害者の立場に沿って手続きをしてくれることは期待できません。
被害者自身が請求する場合、必要な資料と書類を自分で集めるので、内容をしっかり把握することができ、被害に対して適切な等級認定を受けられる可能性が大きいというメリットがあります。
ただし、病院の資料や書類まで自分で集めなくてはならなくなるため、非常に手間がかかります。
審査結果が判明するまで約1ヶ月程度、複雑な事案では約3ヶ月以上かかる場合があります。
後遺障害の等級が認定されるまで長い時間がかかったのに、自分が想定していた等級と違ったということもあるので、苦労を無駄にしない為にも適切な資料と書類を用意するようにしましょう。
認定された等級が自分の思っていた以上に低かったり、そもそも認定してもらえなかった時には、異議申し立てをすることで再審査を請求することができます。
ただし、同じ資料と書類をそのまま提出しても結果は変わらないので、前回の認定を誤りだと指摘できるような新たな医学的な資料を提出することが必要です。
損害保険料算出機構の等級認定については、何度でも異議申し立てをおこなうことができます。
ただし、自賠責保険・共催紛争処理機構に紛争処理申請をした場合、申請は一度しか認められません。
二つの機構はそれぞれ別機関なので、異なる認定を受けられる可能性がありますが、申請は慎重におこなったほうが良いといえるでしょう。
示談金は損害賠償金を言い換えたものに過ぎません。
つまり、示談交渉で交渉する費目は損害賠償金の費目と同様で、主に以下のものが挙げられます。
・治療費
治療に要した費用です。
治療費には、診察料、検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料などが含まれます。
示談交渉前に保険会社から病院へ支払われている場合は、その分だけ示談金から控除されます。
・通院交通費
通院のために要した費用です。
ガソリン代、電車代、バス代などが含まれます。
タクシー代は個別の具体的事情によって異なります。
治療費と同様、示談交渉前に支払いを受けている場合は、その分だけ示談金から控除されます。
・休業損害(逸失利益)
交通事故により受けた傷害の治療のため休業を余儀なくされ、その間収入を得られなかったことによる損害をいいます。
治療費、通院交通費同様、示談交渉前に支払いを受けている場合は、その分だけ示談金から控除されます。
・死亡、後遺症による逸失利益
逸失利益とは、仮に死亡せず生きられていた場合や後遺症が残らなかった場合、将来得られたであろう利益のことをいいます。
被害者が死亡、後遺症が残る重大な傷害を負った場合は獲得できる可能性があります。
・死亡慰謝料、傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺症慰謝料
慰謝料は、精神的損害の程度を金銭で換算したものをいいます。
慰謝料の種類は上記3つです。
死亡の場合は被害者固有の慰謝料と遺族固有の慰謝料に分けられますが、まとめて受け取れます。
なお、後遺症による逸失利益、慰謝料分の示談金を受け取るには後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
・物的損害
以上は人の身体にかかわる人的損害の主たる費目です。
これ以外にも、車などの修理費等の物的損害についても費目に加わることがあります。
交通事故が発生し、示談交渉を行う場合、物損事故であればおおよそ2か月程度で示談が成立することが多くなります。
また、人身事故になれば、物損事故より長期間かかるのが一般的です。
交通事故が発生してから示談が成立するまでの期間は、どのようなケースでも必ずこれだけの期間がかかるというわけではありません。
というのも、示談交渉はすべて裁判ではなく、交通事故当事者の話し合いによって行われます。
そのため、当事者の状況により、連絡を取れる頻度が異なります。
また、事故の内容によっては、判断に迷いが生じることもあるため、どのような事故についても一律に考えることはできません。
交通事故にあって何らかの被害を受けた場合、加害者から補償を受けることができます。
その補償の内容を決定するために示談交渉が行われますが、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
ここでは、交通事故の被害にあった人が、さらに不利な状況にならないためのポイントをご紹介します。
示談交渉を行う際に、加害者側が交通事故を物損事故として処理することを望むことがあります。
物損事故になると実況見分が行われず、交通事故の状況について十分な証拠を得ることができません。
そのため、被害にあった人が様々な主張をしても、その立証が困難になってしまいます。
さらに、物損事故となった場合には、治療費や慰謝料の額が少なくなる可能性があります。
そこで、示談交渉は人身事故として行うようにします。
もし物損事故としての交渉が動き出してしまった場合でも、病院で診断書を書いてもらい、管轄の警察署に提出したうえで人身事故への切り替えを行うことができます。
示談交渉は、交通事故当事者の話し合いであることから、非常に軽く考えている方もいます。
そのため、もし納得できないと考えた場合、追加で加害者に請求すればいいと考えていることがあります。
しかし、示談交渉は法的な効力を持つ契約の一種であり、いったん成立した場合、後からやり直したり追加で支給したりすることはできません。
示談が成立した後、交通事故が原因でまったく予想外の後遺症が発生した場合などは、損害賠償を請求することができる場合もあります。
しかし、このようなケースはレアケースであり、通常は示談の内容を撤回することはできません。
示談交渉の場では、加害者から被害者に対して支払われる損害賠償金の額をいくらにするかを決定します。
そのため、損害賠償金の金額を何らかの基準を使って計算し、お互いに提示しなければなりません。
加害者側から提示される金額は、加害者が加入する損害保険会社が計算したものです。
この時、損害保険会社は、自賠責基準あるいは任意保険基準と呼ばれる基準を使って補償額の計算を行います。
ただ、自賠責基準や任意保険基準で計算した金額は、過去の裁判例などで認められている金額と比較すると、非常に低い金額になります。
そのため、加害者側から提示された金額を受け入れてはいけません。
弁護士基準あるいは裁判基準と呼ばれる基準を使って計算すると、補償金額が倍以上になることもあるため、必ず被害者側でも損害賠償金の計算を行いましょう。
示談交渉は、長期間かかることも珍しくありません。
そのため、できるだけ早く、当事者同士の話し合いで簡単に済ませたいと考えることがあります。
しかし、示談交渉を早急に成立させることは、被害者側が不利な条件を飲んでいることがほとんどです。
しかも、いったん成立した示談交渉は後日撤回することはできないため、後から被害の全貌が明らかになっても、交渉できません。
交通事故にあった場合は、必ず弁護士などの専門家に依頼し、落ち着いた状態で交渉を行いましょう。
当事者同士で簡単に解決しても、後日後悔することとなってはデメリットしかないため、安易な示談交渉はおすすめできません。
交通事故に遭うと、概ね冒頭で紹介した経過をたどって示談交渉に至ります。
しかし、のちのち有利な示談金額を獲得するためには、受け取るまでの間、関係者(警察、保険会社および担当者、病院または医師)に対し、適切に対処しなければなりません。
また、状況に応じて様々な難しい書類を取り寄せる必要も出てきます。
しかし、交通事故は一生にあるかないかの事故ですから、「交通事故に遭ってどうしたらいいのか分からない」と不安になるのが当たり前です。
専門家以外の方がそうした事故の対応に慣れているというほうが、むしろおかしな話です。
自分の後遺障害等級が正しいのか、示談金が適正なのか、保険会社との交渉に不安はないか、示談交渉の前から後まで不安を抱えることなく満足できる結果にする為には弁護士のサポートは必要不可欠でしょう。
弁護士に示談交渉を依頼する場合は、「弁護士に交通事故を依頼するメリット・デメリット 費用倒れにならない方法を解説」こちらの記事も参照ください。
交通事故が起きたとき、常に冷静に対処できる人は少ないでしょう。
むしろ、多くの人は不安や悩みを抱えてしまい、その後の手続きなどで適切な判断ができなくなってしまうこともあります。
そんな時には弁護士に相談をして、手続き面だけでなく精神的な面でも心強い味方になってもらうことで、交通事故後の自分の生活が明るくなるように行動していきましょう。