東京弁護士会所属。新潟県出身。
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車に乗るとき、運転席や助手席に座った場合は反射的にシートベルトに手が伸びるのではないでしょうか。
また、現在多くの車の運転席と助手席にはリマインダーが設置されているため、シートベルトを着用しなければ発車できないのが通常でしょう。
運転席や助手席はシートベルト着用義務があることは広く知られている一方で、後部座席はシートベルトを着けなくてもよいと思っている方が少なくありません。
あるいは「後部座席でシートベルト着用義務があるのは高速道路上に限られる」という誤解もあるようです。
今回は、後部座席でシートベルトを着用しない場合のリスクや、科せられる罰則と違反点数について、例外的に罰則を受けないケースとあわせて解説します。
目次
2008年に道路交通法第71条の3が改正され、すべての座席及びすべての道路上でシートベルトの着用が義務化されました(同法第71条の3第2項)。
ここでは、シートベルトの全席着用義務化についてご説明します。
同条項は、「自動車の乗車時」が対象となります。
このため、高速道路に限らず、一般道路など自動車が通行できるすべての道路の通行に際して、すべての座席でのシートベルト着用が義務付けられています。
しかし、後部座席でシートベルト着用義務があるのは高速道路(及び自動車専用道路)に限られていると誤解している方が少なくないため、注意が必要です。
シートベルトの着用義務に違反した場合、高速道路・自動車専用道路では座席を問わず、違反点数が科せられます。
一般道路で違反が発覚した場合、運転席・助手席には違反点数が科せられます。
シートベルト着用義務違反の罰則については、後ほど説明します。
警察庁とJAFが合同で、2023年10月~11月に行った「シートベルト着用状況全国調査結果」によると、後部座席のシートベルト着用率は一般道路で43.7%、高速道路で78.7%となっています。
一般道路の後部座席シートベルトの着用率を都道府県別にみると、最も高かったのが群馬県の62.7%、最も低い数値は沖縄県の12.6%となっています。
北海道から九州まででは、地域による数値の差(大都市圏とそれ以外など)はみられません。
シートベルト着用状況全国調査結果(2023年)
【一般道路】
調査箇所数 | 調査対象 | 着用 | 非着用 | 合計 | 着用率 |
---|---|---|---|---|---|
781 | 運転者 | 302,143 | 2,588 | 304,731 | 99,6 |
助手席同乗者 | 45,665 | 1,355 | 47,020 | 98,6 | |
後部座席同乗者 | 24,456 | 31,479 | 55,935 | 78,7 |
【高速道路等】
調査箇所数 | 調査対象 | 着用 | 非着用 | 合計 | 着用率 |
---|---|---|---|---|---|
104 | 運転者 | 55,797 | 236 | 56,033 | 99.6 |
助手席同乗者 | 18,911 | 266 | 19,177 | 98.6 | |
後部座席同乗者 | 10,819 | 2,935 | 13,754 | 78.7 |
(参照元:警視庁)
同調査は、道路交通法改正により後部座席シートベルト着用が義務化される前年の2007年から、全国の調査地点で目視により行われています。
この調査では、幼児や妊婦などの着用免除事由該当者は対象に含まれていません。
一般道路での後部座席シートベルト着用率は、以下のように変化しました。
後部座席でシートベルトを着用せずに交通事故に遭った場合、以下のような危険性があります。
事故の衝撃により、前席や天井、ドアなどに叩きつけられて重傷を負う恐れがあり、最悪の場合命を落とすことになりかねません。
仮に時速60kmで走行している車が壁などに衝突した場合、高さ14m(5階相当)のビルから落ちるのと同じ衝撃を受けるといわれています。
衝突の勢いが強い場合、後部座席から車外に放り出され、命を奪われる恐れがあります。
道路のアスファルトに身体を強打したり、後続車両に轢かれたりする危険があるためです。
警察庁の統計(下図)によると、シートベルト非着用の死者数の中で「車外放出」が約4分の1を占めており、車外放出が起こる可能性は決して低くないことを示しています。
衝突の勢いで後部座席の人が前方に投げ出されると、前席の人はシートとエアバッグに挟まれ、頭部に重傷を負って最悪の場合死に至る危険があります。
このように、後部座席の人がシートベルトをしていなかったことにより、運転席や助手席に乗っていた人まで重大な被害を受ける恐れがあることも知っておかなければなりません。
シートベルトの着用義務違反の罰則や違反点数は、どのようになっているのでしょうか。
シートベルト着用義務に違反した場合、「座席ベルト装着義務違反」となります。
ここでは、座席ベルト装着義務違反の罰則や、違反点数について詳しく解説します。
シートベルト着用義務違反に対しては、反則金の適用はありません。
シートベルト着用義務違反の違反点数は、以下のようになっています。
これに対して、一般道路においては違反点数がなく、口頭注意が行われるのみです。
後部座席でシートベルト着用義務があるのは高速道路(及び自動車専用道路)に限られるという誤解は、この違いに原因があるかもしれません。
全座席でシートベルトの着用が義務化されている一方で、道路交通法及び同法施行令で定める一定の場合に、例外的に後部座席でのシートベルト未着用が道路交通法違反にならないケースがあります。
運転者は、道路交通法施行令第26条の3の2第1項で定める以下の事由に該当する場合に、シートベルト着用義務が免責されます。
助手席・後部座席の同乗者については、上記政令同条第2項で定める以下の事由に該当する場合、シートベルト着用義務が免責されます。
2番目の免責事由が適用されるのは、主に12歳未満の子ども(以下「子ども」と表記)を後部座席に乗せる場合です。
道路運送車両の保安基準第53条2項によると、自動車の乗車定員の数え方は、大人(12歳以上)1人に対して子ども1.5人となります。
たとえば、5人乗りの自動車の場合、後部座席に乗車できるのは大人3人までですが、子どもだけであれば4.5人(実際は4人)まで可能です。
しかし、5人乗りの車で後部座席にシートベルトが装備されているのは3人分なので、子どもが4人乗った場合シートベルトが1人分足りなくなります。
また、後部座席に大人が1人乗った場合、子どもは3人まで乗れますが、この場合シートベルトが子ども1人分不足します。
法令上は、これらの例では後部座席に乗った4人のうち3人がシートベルトを着けていれば、残りの1人はシートベルトを着用しなくてよいことになります。
シートベルトは、後部座席も含めて全席で着用が義務づけられています。
しかし、後部座席のシートベルト着用は徹底されておらず、2023年の調査で一般道路43.7%という状況です。
シートベルト非着用が事故の致死率を高めることは知られていますが、命を落とす危険があるのは後部座席も同様です。
また、交通事故の被害者がシートベルトを着用していなかった場合、被害者側に過失があると判断され、損害賠償や慰謝料を減額される可能性も否定できません。
車に乗る際には、どの座席に乗る場合でも、またどのような道路を走る場合でも、必ずシートベルトを着用しましょう。