東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
目次
交通事故の発生直後は興奮状態やパニック状態になっているため、すぐには痛みやしびれに気付かないことがあります。
しかし、半身不随などの後遺障害は事故発生から数時間後や数日後に自覚するため、特に異常を感じていなくても油断はできません。
半身不随になると仕事の継続が難しく、症状によっては介護も必要になるので、具体的な症状や原因、治療方法などを理解しておくとよいでしょう。
半身不随の原因は脊椎(背骨)の中にある脊髄の損傷、または脳の損傷です。
脊髄には脳からつながる中枢神経が通っているため、損傷した場合は麻痺などの症状があらわれ、身体の動作や感覚に悪影響が出ます。
強い衝撃で脊椎を骨折、あるいは脳が強く揺さぶられると半身不随になる可能性が高いため、自転車やバイクで遭遇した交通事故は注意しなければなりません。
車体の損傷から大きな衝撃だったと判断できるときは、痛みがなくても病院で診察を受けるべきでしょう。
半身不随は身体の片側(左右や下肢など)が麻痺する、または思うように動かせなくなる状態ですが、脊髄の損傷個所によって以下のように症状が変わります。
頸椎(首)近くの損傷では手足に麻痺が出やすく、胸椎(頸椎と腰椎の間)近くの損傷は両足に麻痺が出やすくなっています。
脊髄損傷や脳損傷で半身不随となった場合、神経伝達が一部機能していれば不完全損傷の症状、完全に断たれていれば完全麻痺の症状があらわれます。
【不完全損傷の症状】
【完全麻痺の症状】
脳に損傷があると、話す・読む・書くの言語機能が低下することもあり、積極的に家族や友人と話していて指摘されることもあります。
半身不随の症状には以下のような検査方法があります。
【画像検査】
【神経学的検査】
徒手筋力テストや筋萎縮検査など10種類以上の検査方法があります。
半身不随の検査は脳神経外科や整形外科で行いますが、適切な治療を受けるためだけではなく、後遺障害等級の認定や慰謝料請求のためにも必要です。
検査を受けるときは、検査用の機器類が揃っている大きめの病院を選んだ方がよいでしょう。
半身不随となった場合は必要に応じて手術も行われますが、術後はリハビリを中心とした治療が行われます。
リハビリには歩行器や装具などを使った歩行訓練や、手足や指の運動機能回復を目的とした作業療法などがあり、痛みやしびれの緩和には薬剤も投与されます。
なお、脊椎や脊髄を手術しても神経そのものが治癒するわけではなく、あくまでも神経機能の回復促進が目的となっています。
半身不随の治療開始後、1週間程度で症状の改善がみられる場合は回復を期待できます。
数ヶ月~1年程度の期間は必要ですが、被害者の年齢が若く損傷も軽度であれば、完治する可能性も考えられます。
回復までの期間には個人差があり、リハビリには苦痛も伴いますが、症状固定するまでは治療を続けてください。
ただし、治療開始から半年経過しても症状に改善がみられないときは、喪失した機能の完全回復は難しいでしょう。
交通事故の被害で半身不随になったときは、加害者側に入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求できます。
どちらも被害者が受けた精神的苦痛への償いとなりますが、実際に支払われる金額は算定基準や後遺障害の等級によって変わります。
算定基準には以下の3種類があるので、まず各基準の違いを理解しておきましょう。
また、以下の記事でも交通事故慰謝料をわかりやすく解説していますので、計算方法や相場を詳しく知りたい方は参考にしてください。
交通事故の慰謝料には以下の算定基準があり、もっとも高額な慰謝料を獲得できるのが弁護士基準です。
自賠責保険は必要最低限の補償となっており、不足分を任意保険基準で補てんする形となりますが、両者の金額に大きな違いはありません。
弁護士基準は過去の判例を参考にしているため、被害者が真に必要とする慰謝料を算定できます。
なお、任意保険基準は各保険会社独自の算定基準であり、計算方法も非公開ですが、平成10年頃まで使われていた旧基準に従っているケースが多いようです。
では、各算定基準で慰謝料を計算した場合、相場がいくらになるのかみていきましょう。
交通事故によるケガで入通院した場合、慰謝料は以下のような相場になります。
通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1ヶ月 | 12万9,000円 | 19万円程度 |
2ヶ月 | 25万8,000円 | 36万円程度 |
3ヶ月 | 38万7,000円 | 53万円程度 |
4ヶ月 | 51万6,000円 | 67万円程度 |
5ヶ月 | 64万5,000円 | 79万円程度 |
6ヶ月 | 77万4,000円 | 89万円程度 |
自賠責保険は以下のように計算しますが、対象日数は「治療期間」または「入院日数+(実通院日数×2)」のどちらか短い方となります。
自賠責保険の入通院慰謝料
日額4,300円×対象日数
任意保険基準は自賠責基準よりも若干高くなりますが、弁護士基準で算定した場合の慰謝料は任意保険基準の2~3倍になる可能性があります。
後遺障害慰謝料は等級に応じた相場があります。
等級は1級~14級までありますが、脊髄損傷による半身不随は12級以上に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級(要介護) | 1,650万円 | 2,800万円 |
1級 | 1,150万円 | 2,800万円 |
2級(要介護) | 1,203万円 | 2,370万円 |
2級 | 998万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
なお、後遺障害等級の認定は以下の流れになります。
後遺障害の慰謝料は等級に影響されるので、適正な等級認定を受けなければなりません。
等級認定には病院の検査や必要書類の準備もポイントになるため、以下のように対応しましょう。
加害者側の自賠責保険会社に対し、被害者が慰謝料請求することを被害者請求といいます。
被害者請求する場合、まず自賠責保険会社に連絡して必要書類(支払請求書など)を送付してもらいますが、以下の書類は自分で準備します。
必要書類は自賠責保険会社を介して損害保険料率算出機構にも提出され、後遺障害の等級が確定されます。
保険会社から送付される書類は自分で記入するため、後遺障害の症状が正確に伝わるメリットがあります。
必要であれば補足資料を添付することも認められています。
事前認定とは、加害者側の任意保険会社に後遺障害等級の認定を申請する方法です。
事前認定を申請すると任意保険会社から必要書類が送付されるため、自分で書類を収集できない場合は検討してみましょう。
ただし、すべて保険会社側の書式に合わせて記入するため、半身不随の状況を正確に伝えられない可能性があります。
任意保険会社に申請するときには補足資料の添付も認められないケースがあるので、結果的に適正な等級に認定されないリスクも考えられます。
適正な等級を認定してもらうときは、以下のように対応しましょう。
後遺障害等級は書類審査によって認定されるため、半身不随の症状を正確に伝える検査結果が必要です。
しかし、病院の検査はあくまでも治療方針の決定が目的であり、被害者の慰謝料を意識して行われるものではありません。
病院によってはレントゲン検査や神経学的検査のみで治療方針を決定し、より正確に症状を把握できるMRIやCT検査を行わないこともあるので注意しましょう。
後遺障害認定に必要な検査は弁護士の方が詳しいケースも多いため、適正な等級を認定してもらうときは交通事故に強い弁護士にも相談してください。
医師の診断書や意見書は後遺障害等級の申請に必要ですが、判断するのは保険会社や審査機構です。
また、被害者の家族や勤め先に「日常生活報告書」を作成してもらうケースもありますが、内容によっては等級が下がる可能性もあるので注意しなければなりません。
適正な後遺障害等級が認定される内容かどうか、申請前には弁護士にチェックしてもらうことをおすすめします。
半身不随になると慰謝料も高額になるため、加害者側の任意保険から補償を受ける可能性は高くなるでしょう。
しかし、保険会社の提示額は相場より低くいケースが多いため、安易に納得しないよう注意しなければなりません。
慰謝料を増額させたいときは、以下の方法も検討しておきましょう。
半身不随の慰謝料請求に医師の診断書は欠かせませんが、医学的見地によって作成されるため、以下の要素は考慮されていない可能性があります。
担当医が後遺障害等級の認定に詳しくない場合、弁護士のサポートで必要な検査を受ければ、適正な診断書を作成してもらえる可能性が高くなります。
交通事故の示談交渉は加害者側の保険会社が相手となりますが、被害者に寄り添うスタンスではなく、基本的には会社都合で慰謝料を提示してきます。
必要額の半分以下を提示してくるケースもありますが、あくまでも営利を目的としているため、被害者側の主張を聞き入れてくれない可能性もあります。
相場より低い慰謝料を提示されたときは、弁護士に示談交渉を依頼してみましょう。
弁護士は過去の判例も参考にしてくれるので、有利な展開に持ち込める可能性が高くなります。
慰謝料は弁護士基準を用いて算定してくれるため、増額の見込みもあるでしょう。
交通事故によって脊髄が損傷した場合、装具なしでは歩行できなくなることや、食事にも介助が必要になるケースがあります。
半身不随になると要介護の生活を強いられる可能性もあるため、できるだけ早めに適切な検査と治療を受けなければなりません。
また、半身不随は経済的な損失ばかりではなく、精神的な豊かさも損なわれてしまう恐れがあるため、十分な慰謝料を獲得する必要があります。
入院を余儀なくされたために被害者請求の書類を準備できない方や、加害者側との示談交渉が不利な展開になっている方は、弁護士への相談も検討してみましょう。