東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
居眠り運転は、道路交通法に定める「安全運転義務」と「過労運転等の禁止義務」の違反に該当する行為です。
安全運転義務違反とは、「車両を運転するドライバーは、ハンドルやブレーキなどの運転装置を確実に操作し、道路の状態、周囲の交通状況を的確に判断して、事故を起こさないようにしなければならない」という義務に反することです。
これは、運転免許を取得したばかりの初心者ドライバーよりも、運転に慣れたベテランとも呼べるドライバーに多いといわれ、運転中の緊張感が薄れて注意力が散漫になることが原因に挙げられます。
人間は仕事や学習、遊びなどの娯楽中であっても、睡眠から覚醒した状態で活動していると体内に疲労物質が蓄積してきて、一定の基準を超えてくると疲れを自覚するようになります。
この疲労物質は、軽く疲れを自覚しているだけの「疲労」の状態から、更に体内に蓄積してくると「過労」の状態へとなり、身体能力や判断能力を低下させるほどの影響を及ぼします。
睡眠や身体的・精神的な休息を十分にとれば疲労や過労の状態が解消されますが、これを怠って正常ではない状態で車両を運転してしまうと、過労運転等の禁止義務に反することになります。
居眠り運転は、ほんの一瞬、数秒でも意識を失った状態であるため、交通安全義務に違反していると言えます。
そのため交通事故の原因が加害者の居眠りにあるときには、そのほとんどで加害者の過失が100%と認定されています。
ただし、居眠り運転であったことが認定されるためには、加害者である運転者本人が認めるか、警察の捜査や目撃者の証言などが必要になってきます。
交通事故によって身体に損傷を負った被害者は、加害者に対して入通院に関する費用・休業損害の賠償・入通院慰謝料を請求できます。
また、被害者の症状固定後に後遺障害の等級認定がされると、後遺障害慰謝料も請求できるようになります。
そして、交通事故による身体への傷害が原因で被害者が死亡したときには、被害者と遺族に対して死亡慰謝料が支払われることになります。
これらの慰謝料は、その算出の根拠に自賠責基準、任意保険基準、裁判基準(弁護士基準)があります。
ここでは、一般的に公開されていない任意保険基準を除いた2つの基準について、それぞれの計算方法と相場を説明します。
入通院慰謝料とは、交通事故によって入院や通院しなければならなくなった精神的苦痛に対する賠償金です。
入通院慰謝料の自賠責基準による算出方法は、次の2つの計算式で算出された金額のうち、いずれか少ない方が上限120万円まで支払われることになります。
入通院慰謝料の裁判基準(弁護士基準)による算出方法は、過去の裁判例をもとに作成された軽傷・重症別の慰謝料算出表から求めることになります。
軽傷には、むち打ち症・程度の軽い神経症・程度の軽い打撲などが該当し、重症には、骨折・臓器等の損傷・軽傷に含まれない症状などが該当します。
後遺障害慰謝料とは、交通事故による後遺障害を負った事故後の人生を過ごさなければならなくなった精神的な苦痛に対する賠償金です。
後遺障害慰謝料の自賠責基準による算出方法は、後遺障害の程度に応じて要介護レベルで1級と2級、介護が必要ないレベルで1級から14級までの全16種があり、それぞれに応じた金額が法定されています。
後遺障害慰謝料の裁判基準による算出方法は、過去の裁判例をもとに後遺障害の程度に応じた金額が設定されています。
裁判基準と自賠責基準を比較すると次のとおりとなります。
等級 | 裁判基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
1級 | 2,800万円 | 1,650万円 |
2級 | 2,370万円 | 1,203万円 |
等級 | 裁判基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
1級 | 2,800万円 | 1,150万円 |
2級 | 2,370万円 | 998万円 |
3級 | 1,990万円 | 861万円 |
4級 | 1,670万円 | 737万円 |
5級 | 1,400万円 | 618万円 |
6級 | 1,180万円 | 512万円 |
7級 | 1,000万円 | 419万円 |
8級 | 830万円 | 331万円 |
9級 | 690万円 | 249万円 |
10級 | 550万円 | 190万円 |
11級 | 420万円 | 136万円 |
12級 | 290万円 | 94万円 |
13級 | 180万円 | 57万円 |
14級 | 110万円 | 32万円 |
死亡慰謝料とは、被害者が死亡したことについて本人と遺族の精神的苦痛に対する賠償金です。
死亡慰謝料の自賠責基準による算出方法は、次のとおり定められています。
対象者 | 金額 |
---|---|
被害者本人 | 400万円 |
請求者1人 | 550万円 |
請求者2人 | 650万円 |
請求者3人 | 750万円 |
被害者に被扶養者がいると上記に200万円追加 |
死亡慰謝料の裁判基準による算出方法は、死亡した被害者の家庭内での立場によって、次のとおり定められています。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
交通事故の慰謝料相場については、以下の記事で計算できますので、ご覧ください。
交通事故の原因が加害者の居眠り運転であるときに、被害者がとるべき行動を順番に説明します。
事故現場では、被害者が病院へ急搬送されずに行動できるのであれば、次の対応をおすすめします。
居眠り運転では、飲酒運転と同程度に判断能力や作業能力が落ちるといわれています。
事故発生前から蛇行運転や信号無視、急発進や急ブレーキなどの異常行動が表れているため、目撃情報が集まりやすいといえます。
交通事故が発生した場合、その事故の当事者は、加害者・被害者にかかわらず警察へ事故発生の通報をしなければなりません。
交通事故によって身体に損傷を負った被害者の中には、目立った外傷や痛みなどの症状の自覚がなかったが、現場を離れた後になってから症状が表れてくることがあります。
事故によって少しでも衝撃を受けた可能性があるのであれば、痛みがなくとも必ず病院を受診して必要な検査をしてもらいましょう。
また、事故発生日から数日が経過して症状が表れたときでも同様に必ず病院を受診してください。
病院を受診したときには、必ず診断書を作成してもらい、警察や保険会社へ提出できるようにしておきましょう。
事故当初に物損事故で処理していたのであれば、病院からの診断書を警察署へ提出して人身事故として処理してもらうよう届け出ることを忘れないでください。
これを怠ると、被害者が加害者から人身事故の賠償金としての治療費や慰謝料などが受け取れなくなることになります。
被害者は、まず加害者が加入している任意保険会社へ連絡をして、治療費の支払いについての任意一括対応が可能か確認しましょう。
任意一括対応は、治療費について保険会社か通院治療先の医療機関へ直接支払うことになるため、被害者が一旦立替えて後日精算するということがなくなります。
通院治療は、医師が完治または治療しても症状が良くも悪くもならない状態である症状固定と診断するまで継続しなければなりません。
通院治療の期間と頻度は、加害者から受け取れる賠償金である治療費や慰謝料の額に影響を与えることになるため、決して怠らないようにしてください。
人身事故では、被害者の通院治療が終了すると、次の事項が事故による損害として確定することとなります。
被害者に症状固定がなされたときの後遺症について、後遺障害の等級の認定がなされると、次の事項も損害として加害者へ請求できるようになります。
示談交渉では、被害者の全ての損害が確定してから開始されることが一般的です。
しかし、加害者側の保険会社の中には入通院の期間や頻度を減らして賠償金の支払い額を減らすため、早い時期に治療の終了や症状固定を促して示談をまとめようとすることがあります。
また、被害者にも過失があれば、被害者が加入している任意保険会社に支払い義務が生じるため業務として交渉を代行してくれますが、居眠り運転では被害者に過失がないため代行サービスを使うことができません。
特に、被害者が弁護士に依頼していないときには、保険会社が独自の基準で示談をすすめてくるため、交渉において注意が必要です。
居眠り運転が原因の交通事故によって身体に損傷を負った被害者が慰謝料を増額させたいときには、次の方法をおすすめします。
ただし、被害者の損害が少なかったときは、居眠り運転という事実だけをもって慰謝料などが増額されることはありません。
過失割合は、事故当事者の話合いによって認定されることになりますが、特別な事故の状況などについて修正要素を加味して加算・減算されることになります。
居眠り運転では、修正要素として加害者の過失割合が2割ほど加算されますが、加害者が居眠り運転を認めていないと、被害者の方でこれを裏付ける根拠を主張していかなければなりません。
そのため、目撃者や防犯カメラ、あるいはドライブレコーダーなどの加害者の居眠り運転を裏付ける証拠集めに労力を割くことになります。
被害者が弁護士へ介入を依頼したときは、示談交渉や裁判手続きなどにおいて、過去の裁判例をもとに算出した裁判基準(弁護士基準)を用いながら、慰謝料などが最も高額となるよう請求していくことが一般的です。
また、前述した証拠集めについても個人で行うより弁護士の方が効果的だといえます。
居眠り運転が原因の交通事故では、一般的に加害者の過失割合が高くなるため、被害者の損害が少ないときには、加害者が居眠り運転自体を認めずに示談交渉が難航することがあります。
確実に被害者が損害賠償を得るためには、交通事故に強い弁護士に早い段階で相談しておくことが得策といえます。
この記事を参考にして、被害に遭われた方が少しでも多くの賠償金を受け取ることができれば幸いです。