東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故に遭いお怪我をされた場合、完治する方がいる一方で残念ながら後遺症が残ってしまうことがあります。
事故の後遺症は大変辛いものです。
交通事故被害者の方にとっては、耐え難く一生涯共にしなければなりません。
外見では分からない後遺障害や、一生涯に渡り介護が必要なほどの後遺障害を負う場合もあります。
慣れ親しんだ業務ポジションから外されたり、仕事を失ってしまうことも決して珍しくありません。
後遺症が残ってしまった場合は「後遺障害等級認定」の手続きをしましょう。
自動的に誰かが行ってくれるべきものではありません。
正しい知識を備えて「誰にお願いするべきか」など、疑問やご不安に思われている点が一つでも解消されれば幸いです。
目次
それでは、まず事故発生から慰謝料受け取りまでの流れをおさえておきましょう。
「まさか自分が後遺症に悩まされるとは思ってもみなかった・・・」
交通事故は予期せぬ出来事ですので、このように思われるのも無理もありません。
「後遺症」と「後遺障害」はよく似た言葉です。
交通事故の解決の場面では非常に重要な事柄ですので、しっかりと確認しておきましょう。
後遺症 | 治療後に残った神経症状や機能障害のこと |
---|---|
後遺障害 | 交通事故との因果関係を医学的に証明できるもの 「労働能力の低下や喪失」が認められ、国土交通省が定める等級(第1〜14級に分類)に該当し「後遺障害等級認定」を受けたものに限られる |
交通事故で怪我をした際にもらえる慰謝料は1種類ではありません。
果たしてどのような種類があり、どの慰謝料を受け取ることができるのでしょうか?
「交通事故の慰謝料」とは、交通事故により被害者が受けた精神的苦痛を補償するものです。
交通事事故が起きると被害者・加害者には以下のような権利義務が発生します。
また、事故のケースにより請求できる慰謝料が異なりますので整理していきましょう。
事故のケース | 受け取れる慰謝料 | |
---|---|---|
(case1) | 人身事故(傷害事故)軽傷 | 入通院慰謝料 |
(case2) | 人身事故(傷害事故)後遺障害あり | 入通院慰謝料+後遺障害慰謝料 |
(case3) | 人身事故(死亡事故)即死 | 死亡慰謝料 |
(case4) | 人身事故(死亡事故)治療後に死亡 | 入通院慰謝料+死亡慰謝料 |
(case5) | 物損事故 |
※物損事故は、慰謝料請求権は発生しません。
つまり、精神的苦痛を補償する慰謝料は3種類あるということが分かりました。
「後遺障害認定」を受けることが出来れば、入通院慰謝料にプラスして後遺障害慰謝料も請求することができるのです。
自賠責保険の後遺障害の保険金は、等級ごとに限度額が定められています。
その限度額に含まれるものは「慰謝料」と「後遺障害逸失利益」です。
つまり、後遺障害の認定を受けることが出来れば以下のものを受け取ることができます。
逆に言えば「後遺障害等級」が認定されなければ、たとえ痛みが残っていても「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」を受け取ることができません。
誰かが自動的に申請手続きや審査をしてくれるわけではなく、自ら動かなければなりません。
後遺障害認定手続きの申請をすることにより、国土交通省が定めた「後遺障害等級表」に基づき審査が行われます。
等級ごとに認定条件が詳細に決められており(第1〜14級まで)、第1級が最重度となり14級が最軽度となります。
【自賠責保険の後遺障害慰謝料と限度額】
※2020年4月1日以降に発生した事故に適用
※別表1は介護を要する場合に適用され、別表2はそれ以外のものに適用されます。
等級 | 慰謝料額 | 限度額 |
---|---|---|
1級(別表第1) | 1,650万円 | 4,000万円 |
1級(別表第2) | 1,150万円 | 3,000万円 |
2級(別表第1) | 1,203万円 | 3,000万円 |
2級(別表第2) | 998万円 | 2,590万円 |
3級 | 861万円 | 2,219万円 |
4級 | 737万円 | 1,889万円 |
5級 | 618万円 | 1,574万円 |
6級 | 512万円 | 1,296万円 |
7級 | 419万円 | 1,051万円 |
8級 | 331万円 | 819万円 |
9級 | 249万円 | 616万円 |
10級 | 190万円 | 461万円 |
11級 | 136万円 | 331万円 |
12級 | 94万円 | 224万円 |
13級 | 57万円 | 139万円 |
14級 | 32万円 | 75万円 |
参考元:損害保険料率算出機構
交通事故に遭い、後遺障害が残るほどの怪我を負うと事故以前のように働くことができません。
その場合、収入が減少してしまいます。
つまり、交通事故に遭い、後遺障害が残らなければ将来にかけて得られたはずの収入(減収分)に対する補填するための金銭のことを言います。
働くことすらできないほどの重度の後遺障害のケースでは、相当な高額となりますので適切な手続きを行い、将来に備えて少しでも多くの補填を受けたいものです。
この損害を一定の計算式によって算出します。
後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
聞き慣れない難しい用語が出てきましたので、下記のまとめをご参考になさってください。
何となくでもイメージを掴んでいることが、全体的な概要を把握していただく上でとても大切です。
〈参考〉用語解説
基礎収入額 | 交通事故被害者の年収を考慮する 交通事故以前の収入額を元にする |
---|---|
労働能力喪失率 | 交通事故による後遺障害の影響がどのくらい仕事に影響を及ぼしているのかを示すもの 「等級」ごとに定められている(※下記参照) |
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 | 損害賠償金は、将来得られるはずだった収入を前倒しして受け取るもの したがって「利息分」を調整する必要がある労働能力喪失期間は「症状固定日〜67歳までの年数」のことを指す |
【※労働能力喪失率】
1級 | 100% |
---|---|
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
【※就労可能年数とライプニッツ係数表 18歳以上の一部抜粋】
年齢(歳) | 就労可能年数(年) | 係数 |
---|---|---|
18 | 49 | 25,502 |
19 | 48 | 25,267 |
20 | 47 | 25,025 |
21 | 46 | 24,775 |
22 | 45 | 24,519 |
23 | 44 | 24,254 |
24 | 43 | 23,982 |
25 | 42 | 23,701 |
26 | 41 | 23,412 |
27 | 40 | 23,115 |
28 | 39 | 22,808 |
29 | 38 | 22,492 |
30 | 37 | 22,167 |
参考元:自賠責保険ポータルサイト(国土交通省)
「後遺障害等級表」では、以下のように「等級」により詳細に分類されています。
一部を抜粋してみましたのでご参考になさってください。
イメージがしやすくなるでしょうか。
【自賠責法 後遺障害別等級表 一部抜粋】
8級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
---|---|---|---|
324万円 | 819万円 | ||
9級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
245万円 | 616万円 | ||
10級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
187万円 | 461万円 | ||
11級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
135万円 | 331万円 | ||
12級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
93万円 | 224万円 | ||
13級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
57万円 | 139万円 | ||
14級 | 慰謝料額 | 限度額 |
|
32万円 | 75万円 |
参考元:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
上記の表を参考にして、交通事故の怪我で多いむち打ちのケースで計算してみましょう。
14級9号が「認定」
この金額を見て「適正額」と言えるでしょうか?
結論から言えば、不足分(適正額)を満たすまで任意保険でカバーすることになります。
では、不足分を補うためにはどのような方法があるのでしょうか?
ここでは“弁護士に依頼したケース”をご紹介します。
なぜ、弁護士に依頼したケースなのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その理由は、慰謝料の額をアップさせることができるからです。
勿論、不当にアップさせるのではありません。
過去の裁判例を元にして「適正な金額」を「弁護士基準」と呼ばれる基準で算出していきます。
結果的に、自賠責保険や相手方の任意保険から提示された金額を大幅に上回る金額となります。
また、先ほど見てきた自賠責保険での等級が認定された場合の計算では、「等級」に従い慰謝料と限度額が定められていました。
一方で、弁護士基準では「慰謝料」と「後遺障害逸失利益」は限度額という縛りとは無関係で、別物として計算されます。
【後遺障害慰謝料基準表】
等級 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
参考元:日弁連 赤い本
たとえば、14級のケースで自賠責保険基準と弁護士基準を比較してみましょう。
上記の表は「慰謝料」の基準表ですので、これとは別に「後遺障害逸失利益」も計算されます。
後遺障害慰謝料は「認定」されてはじめて受け取ることができるものだということ、後遺障害慰謝料についてご理解いただけたのではないでしょうか?
続いて、気になる「支払い時期」について見ていきましょう。
結論から言えば、支払い時期は申請方法により異なります。
後遺障害等級認定の申請には、2通りの方法がありますので、メリット・デメリットをおさえておきましょう。
申請方法 | 事前認定 | 被害者請求 |
---|---|---|
申請者 | 加害者の任意保険会社 | 被害者自身 |
支払い時期 | 早くて1ヶ月ほど、遅くて2〜3ヶ月 | 早くて1ヶ月ほど、遅くて2〜3ヶ月 |
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
つまり、準備する書類を被害者自身で集めることができるため、準備が早ければその分認定までの期間は短縮できます。
そこに弁護士のサポートが介入することにより、不備なく確実性をプラスすることができます。
自賠責損害調査事務所のデータによると、90%以上の申請が2ヶ月以内で認定を受けています。
よって、3ヶ月を超えることはレアケースと言えるでしょう。
いずれにせよ、不備なく確実に進めていくことが早期支払いの鍵であるということは間違いありません。
後遺障害慰謝料は等級が一つ異なるだけで、相当な差額が生じてしまいます。
つまり、「適正な等級認定」かつ「弁護士基準で慰謝料や遺失利益を算出」することがとても重要だと言えます。
また、後遺障害の等級は「併合」により等級が繰り上がることがあります。
必ずしも後遺障害が1つとは限りません。
後遺障害が複数ある場合は、より精神的苦痛の程度が重くなることが多いと考えられるためです。
そのような場合に、自賠責保険で設けている「併合」の基準に該当すれば慰謝料額はアップします。
無事に交通事故問題が示談成立に至るまでには、様々なやりとりや手続きをしていかなければなりません。
弁護士に依頼することで、その都度相談し、適切なサポートを受けることができます。
相手方の保険会社の提案にも臆することなく、被害者ご自身が納得のいくまで交渉してもらうことができますので、ご検討されてみてはいかがでしょうか。