東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
交通事故の当事者は、個人対個人のみならず「会社」が関係する場合もあります。
例えば、加害者が勤務中の事故のケースです。
死亡事故ともなれば、高額賠償金が認められるケースも少なくありません。
その場合、被害者のご遺族は示談交渉を誰と行えばよいのでしょうか?
会社?
やはり個人の責任?
勤務中の事故なのだから、個人と会社両方?
「疑問だらけで、誰に相談すればよいかわからない・・・。」
「大切な家族を失ったばかりでショックが大きくとても示談交渉できる余力がない。」など
誰に相談したらよいのかわからない、現状が辛過ぎてどうしたらよいか困惑している、そのような被害者ご遺族の方のお役に立てれば幸いです。
目次
『加害者が業務中に起こした交通事故は、加害者本人だけではなく会社にも損害賠償を請求することができるのでしょうか?いったい誰に請求すればよいのでしょうか?』
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
ただでさえよくわからない示談交渉ですが、関係当事者が増えればなおさらです。
どれが正解かもわからずに無闇に動くのは、現実的ではありません。
また、個人が加害者側の会社を相手に示談交渉などを行うことはかなり難しいでしょう。
なぜなら、会社はこのような問題に直面すると弁護士を依頼するケースが多いからです。
示談交渉が決裂し裁判へ移行することとなれば、個人で争うことは現実的ではなく困難です。
そのような場合は、弁護士に依頼して交渉を進めることが賢明といえます。
“誰(加害者、勤め先の会社)を相手に何を請求するべきか”を明確にして効率よく示談交渉を進めていきたいものです。
そのためには、正しい知識を備えておくことが大切です。
すべてを理解しようとすると難しいので、始めは全体像をざっくりと掴んでいただければと思います。
まずは、使用者(会社)の負う責任についてみていきましょう。
以下の3つをおさえておきましょう。
(key word 雇主の使用者責任)
民法では、雇主に「使用者責任」を定めています。
つまり、従業員が業務中に起こした交通事故の場合、会社に使用者責任が認められれば、会社にも損害を賠償する義務が発生し、被害者は会社に対して損害賠償を請求することができるということです。
また、使用者責任が認められるためには以下の要件を満たさなければなりません。
それでは、会社側が十分な注意を払っていた場合でも会社側に責任が生じてしまうのでしょうか?
(key word2, 立証責任は使用者(会社)にあり)
民法では、以下のように定めています。
この“選任及び監督”については、立証する責任を果たさなければ免れることができません。
そして、立証責任は使用者(会社)にあります。
(key word3, 使用者(会社)は「運行供用者責任」)
また、使用者(会社)には使用者責任とは別に自動車損害賠償保障法により「運行供用者責任」を負います。
以下の項目についてすべて証明できなければ、「運行供用者」としても責任を負うこととなります。
民法及び、自動車損害賠償保障法では以下のように定めています。
(民法第715条 使用者等の責任)
(自動車損害賠償保障法第3条 自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。
※自動車損害賠償法は、いわゆる「自賠責保険」のことです。
自賠責保険は強制加入とされており、未加入の場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金など、罰則が与えられます。
交通事故の被害者救済を主な目的とし、昭和30年に制定された法律です。
故意・過失についての証明責任を加害者側に負わせるために民事損害賠償責任の規定を定めています。
被害総額3,000万円を請求できるという例でみていきましょう。
どのようなパターンが請求可能なのでしょうか?
結論:どのパターンでも請求することはできる。ただし、二重取りはできない。
つまり、被害者側から見れば被害総額3,000万円分が満たされるまでは従業員または会社に請求することが可能となります。
決して、二重取りができるというわけではありません。
また、このような使用者(会社)と被用者(従業員)の責任に関する関係を「不申請連帯債務」といいます。
これは、使用者(会社)と被用者(従業員)どちらも3,000万円請求されても拒否できないというもので被害者保護を図るためのものです。
また、場合によっては後に会社側が事故を起こした従業員に対して「求償権」を行使することもできます。
※参考
(民法719条 共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
続いて、交通事故の示談交渉の際にかならずといってよいほど主張の食い違う「過失割合」についてみていきたいと思います。
過失 | 不注意・落ち度 |
---|---|
過失割合 | 交通事故の結果に対する過失の割合 |
つまり、交通事故当事者(加害者:被害者)にどれだけの過失があり、過失に対しての責任を求めることができるのかを示すものともいえます。
8対2や7対3などという言葉を一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
交通事故の場合、よほどのレアケースではない限り当事者双方に過失があるケースがほとんどです。
そのため、被害者が生存している場合は「過失割合」について自らの過失を少しでも減らそうと、被害者自身が事故状況などを詳細に説明するなどで確認をすることができます。
しかしながら、被害者が死亡している場合は被害者自ら主張立証していくことが叶いません。
誰も被害者の過失について主張立証できなければ当然不利な結果となります。
なぜなら、過失割合の大小が「慰謝料額」の金額を大きく左右することとなるからです。(※後述)
先ほどみたとおり、自身の過失割合が下がれば、それだけ慰謝料額は増えることとなります。
逆にいえば、加害者側からしてみれば少しでも加害者の過失を減らして、支払う慰謝料額を抑えたいと思うのが普通です。
故に、争いが生じてしまうのです。
「過失割合」は交渉次第では「増額」も「減額」もあり得る大変重要なポイントとなります。
〈過失割合8対2の計算例〉
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 8 | 2 |
損害額 | 400万円 | 1億円 |
請求できる金額 | 400万円×0.2=80万円 | 1億円×0.8=8,000万円 |
実際にもらえる金額 | 0円 | 7,920万円 |
※「過失相殺」・・・赤字で示した部分が「相手方の過失分」となり、相手方の過失分だけ差し引かれます。
(point)
被害者自身にも「過失」がある場合は、どんなに小さな過失でも相手方に対して損害賠償金を支払う義務が生じます。
上記のケースでは、加害者に過失があると同時に被害者にも2割の過失があります。
したがって、最終的に被害者が受け取ることのできる賠償金は、被害者の過失分(2割)が差し引かれた金額です。
死亡事故のケースでは、誰が損害賠償請求をする権利を有しているのでしょうか。
人身事故や物損事故のように、被害者本人が生存していれば当然に本人がその権利を行使することができます。
ですが、死亡事故のケースでは、本人は死亡しているため自ら手続きを行うことができません。
被害者本人が死亡した事故の損害賠償請求は「ご遺族」が行うこととなります。
つまり、死亡した被害者本人の「損害賠償請求権」が“相続”されることとなります。
一般的には、相続というと土地や預貯金などをイメージされる方が多いのではないでしょうか?
しかし、損害賠償請求権などの「権利」も相続の対象となります。
また、死亡事故においては以下のような手続きが行われます。
昨今では、交通事故に対する厳罰化が進んでおり重い刑罰が科される可能性もあります。
これらの手続きをご遺族は精神的なダメージを負った状態で進めていかなければなりません。
また、死亡事故ともなれば加害者に対して厳罰を望まれるのは当然の感情です。
加害者が起訴されるまでには約6ヶ月~1年かかることが一般的です。
正式裁判に移行し、裁判所に認められれば「被害者参加人制度」を利用することができます。
(参考)被害者参加人(配偶者、直系の親族、兄弟姉妹)ができること
これらの活動を弁護士が代理人として行うことができますので、ご遺族のご負担を軽減することができます。
(参考)事故発生時〜賠償金受け取りまでの流れ
ご遺族が自力で、加害者本人や使用者(会社)と示談交渉を進めることはできますが、かなりの困難を極めることが想定されます。
慰謝料や各種損害についての複雑な計算や手続きだけでも煩雑で手間がかかる上に、示談交渉時に相手方から提示された示談金額が妥当なものか判断することは難しいからです。
これらの妥当性を判断するには、法的な知識や過去の裁判例、慰謝料の計算方法などの知識や経験が何より大切です。
また、命は決してお金に代えられるものではありませんが、慰謝料額を増額できる可能性があります。
「弁護士基準」という慰謝料の算出基準を用いて算出することで、自賠責保険や任意保険会社が提示する金額に比べ2~3倍程度アップした金額を受け取ることが可能となります。
加害者側の会社が弁護士をつけることも多いので、加害者に有利になるように進められてしまうことも考えられます。
また、訴訟に発展した場合は、法律関係の仕事に就いている人でもない限りスムーズかつ適正に進めていくことはなかなか難しいでしょう。
ご遺族にとっては、大切なご家族をある日突然失うことになります。
その悔しさや喪失感、憎しみなどは測り知ることができません。
そのショックからご遺族が精神疾患に罹患することも多いので、まずはご遺族自身の体調を整えて治療を優先するべきです。
「民事訴訟の手続き」についてイメージを下記で掴んでいただくことができるでしょうか。
訴状が無事に受理されるまでには、これだけの手続きを要します。
これだけのことを自力で行うには、専門用語も多いので調べながら進めていくことになり時間も相当かかります。
これらの煩雑な手続きをご遺族が自力で行うことは、あまりおすすめできません。
会社員は労災保険(以下労災)に加入しています。
労災とは、仕事中・通勤中に怪我・病気にかかった場合に補償される保険になります。
例えば工事現場で働いている人が、仕事中に怪我をしてしまった場合に、労災申請をしたりします。
もし自分が仕事中に交通事故を起こしてしまった場合は、労災が使えるのでしょうか?
仕事中の事故であれば、多くの場合は労災が使えます。
労災を使うことで有利な補償が受けられたりするため、必ず労災を利用しましょう。
労災を利用しないと、損をすることになります。
労災を利用すると、補償が手厚くなったり、治療費の負担がなくなったりします。
事故の怪我で通院をする場合は、健康保険が適用されて治療費が3割負担になります。
しかし労災が適用されれば、個人の負担がなくなります。
交通事故の保険金が支給されるのは、相手との示談が終わった後になります。
「お互いにどれだけ責任があるのか?」でモメることが多く、示談交渉が長引くケースもあります。
示談交渉が長引くほど、保険金の支給が遅れます。
ただし労災は示談が成立してなくても支給されるため、早くお金が欲しい人におすすめです。
下記では労災を利用する時の注意点を説明します。
労災を利用するときには、従業員が個人で動くことはありません。
会社の担当者が労災の認定手続きをします。
従業員は会社に対して「労災を利用したい」と言って、具体的な手続きは会社にしてもらいます。
仕事中の交通事故であっても、労災が利用できないケースもあります。
通勤途中で関係のない寄り道をしていたり、プライベートの用事をしていたときの事故を起こせば、労災は認められません。
なぜなら仕事に関係のない用事だからです。
自分が仕事中に交通事故を起こして労災手続きするか悩んでいるなら、プライベートの用事をしてなかったどうか事前に確認しておきましょう。
会社によっては、労災を認めがらないケースもあります。
なぜなら労災の利用によって保険料が上がると思っていたり、労災の手続きそのものが手間になったりするからです。
「労災を利用すると、保険料が上がる」というイメージがありますが、会社の規模・事故の度合いによって異なるため、必ずしも保険料が上がるわけではありません。
また従業員自体が「自分の事故で会社に迷惑がかかるのは嫌だ」と思うこともあるでしょう。
労災の申請は従業員として当然の権利なので、遠慮せずに使ってください。
会社がどうしても労災認定をしてくれない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談するのがおすすめです。
葬儀のときなどに加害者や使用者(会社)から示談を持ちかけられることが少なくありません。
加害者側が持ちかけてきた示談内容(慰謝料額など)は果たして“適正な金額”といえるのでしょうか?
どの基準を用いて算出された慰謝料でしょうか?
保険会社は独自の基準(不当に安いことが多い)で算出した慰謝料で示談金を持ちかけてくるので、鵜呑みにしてはいけません。
営利企業である保険会社は、弁護士基準のように高額な(適正な金額)慰謝料額を提示することができないことが理由です。
少なくとも、示談交渉は以下のタイミングで行いましょう。
最後になりましたが、お亡くなりになられた被害者の方に謹んでお悔やみを申し上げます。
ご遺族にとっても納得のいく形で事件が解決することを心から願わずにはいられません。
「ご遺族固有の慰謝料請求」もできますので、弁護士のサポートを受けながら解決へ向かわれることをおすすめいたします。