東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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自転車は便利な交通手段ですが、道路交通法では軽車両になるため、左側通行や夜間のライト点灯などが義務付けられています。
しかし、自動車やバイクに比べて違反に対する意識が低く、傘差しの片手運転や一時停止を守らない運転も少なくありません。
警察庁でもスマートフォンの操作や画面を見ながら運転する「ながらスマホ」を問題視しており、自転車事故防止のために公式サイトでも注意を呼びかけています。
ながらスマホの自転車運転では死亡事故も発生しているため、加害者になったときは高額な損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
今回は、ながらスマホで自転車事故を起こしたときの罰則や責任、損害賠償請求される費目などをわかりやすく解説します。
参考:自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~(警察庁・交通局)
目次
自転車を運転しているときの「ながらスマホ」は、以下のように定義されています。
ながらスマホは片手運転と前方不注意が重なり、ブレーキも前輪または後輪のどちらかしか利かないため、ほとんど減速なしで被害者に突っ込むケースがあります。
衝突のダメージはそれほど大きくなくても、被害者が転倒すると骨折や打撲になる可能性があり、死亡事故に至った事例もあるので注意しなければなりません。
ながらスマホで自転車事故を起こした場合、以下のような罰則や責任が生じる可能性があります。
ながらスマホで自転車事故を起こした場合、加害者には以下の罰則や責任が生じます。
軽車両とはいえ決して軽い罰則や責任ではないので、ながらスマホの自転車運転は絶対にしないでください。
ながらスマホで交通事故を起こすと、道路交通法第120条1項9号の規定により5万円以下の罰金刑となります。
運転中のながらスマホは道路交通法第71条第5の5号違反となりますが、自動車やオートバイ、原付バイクや一定出力を超える電動キックボードが対象です。
ただし、自転車のながらスマホは各都道府県の公安委員会が規則を定めており、運転中の通話や画像などの注視を禁じています。
道路交通法第71条第6号では、車両等を運転する者は公安委員会の規則に従うことを定めているため、自転車のながらスマホにも罰則が適用されることになります。
ながらスマホで交通事故を起こした場合、加害者は刑事・民事の責任を負わなければなりません。
スマホの通話や画像注視は著しい過失になりますが、事故状況によっては過失運転致死傷罪に問われる可能性があります。
過失運転致死傷罪が成立すると、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金刑に処される可能性があるでしょう。
また、被害者に対しては民事上の損害賠償責任を負うことになります。
被害の状況にもよりますが、治療費や慰謝料、休業損害や逸失利益の補償が必要になった場合、数百万~数千万円の損害賠償になるケースもあります。
ながらスマホで自転車事故を起こした場合、被害者への損害賠償責任が生じるため、以下のように治療費や慰謝料などを支払わなければなりません。
損害賠償請求に応じるのは基本的に保険会社ですが、未加入の場合は自己負担になるので注意が必要です。
ケガの治療費には診察料や入院費用、投薬料などが含まれています。
相手の被害が大きかった場合は手術費用や車いす・装具などの費用も加算されるため、高額な請求になる可能性もあるでしょう。
慰謝料には以下の3種類があります。
入通院慰謝料 | 入院や通院によって発生する精神的苦痛への補償 |
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後遺障害慰謝料 | 後遺障害に伴う精神的苦痛への補償 |
死亡慰謝料 | 被害者と遺族が受けた精神的苦痛への補償 |
後遺障害慰謝料や死亡慰謝料は高額になるケースが多いため、1千万円以上の請求になる可能性もあるでしょう。
なお、被害者が自宅療養していた場合は入通院慰謝料を請求できません。
後遺障害慰謝料も、後遺障害等級に認定された場合のみ請求可能となっています。
被害者がケガの治療で休業することになった場合、休業日数に応じた休業損害を請求されます。
休業損害は「日額収入×休業日数」で計算しますが、無収入の人でも原則的に請求が認められるため、学生や家事従事者(専業主婦など)も補償しなければなりません。
交通事故の被害に遭わなければ得られたはずの将来的な収入を逸失利益といい、以下の2種類があります。
後遺障害逸失利益 | 基礎収入と労働能力喪失率を基準に計算 |
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死亡逸失利益 | 基礎収入と生活費控除率を基準に計算 |
交通事故の被害に遭う前の収入が基礎収入となり、労働能力喪失率は後遺障害等級に連動した割合が定められています。
被害者が死亡した場合は本人の生活費がかからなくなるため、生活費控除率を用いて「生きていれば発生したであろう生活費」を控除します。
逸失利益は数千万円になるケースもありますが、自動車保険や自転車保険に加入していなかったときは自己負担で補償しなければなりません。
自転車との衝突程度で大きな被害は出ないだろうと思われるかもしれませんが、2017年12月には神奈川県川崎市でながらスマホが原因の死亡事故が発生しています。
ながらスマホによる交通事故は加害者・被害者双方の人生を狂わせてしまうので、以下のように気を付ける必要があります。
自転車は軽車両の扱いになりますが、スピードが出ている状態で衝突すると、歩行者は転倒する可能性が高いでしょう。
路面がアスファルトやコンクリートの場合、頭部の強打によって脳挫傷になるケースもあるため、被害者に重い後遺障害が残ってしまうかもしれません。
交通ルールを守らなければ自転車といえども危険な乗り物には変わりないため、車両に乗っていることを意識しなければならないでしょう。
被害者に後遺障害が残ったときや、死亡事故になった場合は損害賠償請求も高額になります。
多くの場合、自己負担できる金額ではないため、もしもに備えて任意保険や自転車保険に加入しておきましょう。
道路交通法は自転車にも適用されるので、自動車やバイクと同様に安全運転を意識しなければなりません。
冒頭でも解説したように、自転車が守らなければならない交通ルールを再確認し、十分な注意を払って運転しましょう。
自転車の運転中にスマホで通話する、または画面を注視すると周囲の状況が見えなくなり、ブレーキも片側だけしか利きません。
比較的軽めのロードバイクでも重量が10kg近くはあるので、「自分の体重+自転車の重量」で衝突されると歩行者が跳ね飛ばされる可能性もあるでしょう。
ながらスマホで死亡事故に至ったケースをみると、「安全意識の欠落」としか言いようがないため、自転車の運転を考え直してみる必要があります。
すでにながらスマホが原因の自転車事故を起こしてしまい、刑事・民事の責任を追及されている方は、できるだけ早めに弁護士へ相談することをおすすめします。