東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
逸失利益は交通事故の影響で後遺障害が残ったとき、または死亡事故になったときに請求できるもので、計算方法にも以下の2種類があります。
どちらも計算式はオープンにされていますが、各項目には馴染みのないものが多いでしょう。
適正な逸失利益の計算には各項目の理解も欠かせませんが、早見表を使えば目安となる金額を把握しやすくなります。
逸失利益を計算するときは、以下の項目を計算式に反映させます。
それぞれ以下のような考え方になりますが、一部の項目にはわかりやすい早見表もあります。
逸失利益を計算する場合、事故の前年の収入が基礎収入となります。
年金収入も含みますが、学生や家事従事者などが被害者だったときは、厚生労働省が公表する賃金センサス(賃金構造基本統計調査)を基礎収入の参考とします。
賃金センサスは雇用形態や年齢別などに細かく分類されているので、自分に該当する項目を参照してください。
職業 基礎収入 給与所得者 事故前の収入(源泉徴収票) 事業所得者 前年の所得(確定申告書) 会社役員 労務提供の対価部分 学生や児童など 賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額 家事従事者 賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額 高齢者 賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別、年齢別平均の賃金額 失業者 就職すれば得られると想定される収入
労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われた労働能力を割合(%)で示したものです。
後遺障害の等級に応じた目安があるので、以下を参考にしてください。
障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
事故前の状態を100%として考えるので、喪失率が100%であれば、労働への従事は不可能ということになります。
後遺障害が労働能力に影響し続ける期間を労働能力喪失期間といい、原則として症状固定日から67歳まで、または平均余命の1/2のどちらか長い方となります。
喪失期間のスタートは事故発生日と間違えやすいので注意してください。
労働能力喪失期間はケガの症状なども考慮されるため、軽度の後遺障害(むちうちで14級9号など)であれば、3~5年程度となるケースが一般的です。
ライプニッツ係数とは、逸失利益の増額分(中間利息)を控除するために用いる係数です。
逸失利益は将来的な収入を前倒しで得ることになるため、運用によって増額させることが可能です。
増額部分を中間利息といいますが、中間利息が発生しない給与や事業収入と比較した場合、公平性を欠いてしまうことになります。
そこでライプニッツ係数を使い、利息部分を控除して元本だけの価値に換算します。
ライプニッツ係数は民法改正により、2020年4月1日以降の法定利率が5%から3%へ変更されています。
逸失利益を計算するときは以下の早見表を参照してください。
労働能力喪失期間(年) | 係数 | 労働能力喪失期間(年) | 係数 |
---|---|---|---|
1 | 0.971 | 46 | 24.775 |
2 | 1.913 | 47 | 25.025 |
3 | 2.829 | 48 | 25.267 |
4 | 3.717 | 49 | 25.502 |
5 | 4.580 | 50 | 25.730 |
6 | 5.417 | 51 | 25.951 |
7 | 6.230 | 52 | 26.166 |
8 | 7.020 | 53 | 26.375 |
9 | 7.786 | 54 | 26.578 |
10 | 8.530 | 55 | 26.774 |
11 | 9.253 | 56 | 26.965 |
12 | 9.954 | 57 | 27.151 |
13 | 10.635 | 58 | 27.331 |
14 | 11.296 | 59 | 27.506 |
15 | 11.938 | 60 | 27.676 |
16 | 12.561 | 61 | 27.840 |
17 | 13.166 | 62 | 28.000 |
18 | 13.754 | 63 | 28.156 |
19 | 14.324 | 64 | 28.306 |
20 | 14.877 | 65 | 28.453 |
参照元:国土交通省
被害者が亡くなったときには死亡逸失利益を請求できますが、将来的な生活費はかからなくなるため、生活費分を逸失利益から差し引く必要があります。
生活費控除率は生活費分の控除用となり、以下のように被害者の立場によって控除率が異なっています。
被害者の立場(家庭内) | 生活費控除率 |
---|---|
一家の支柱(被扶養者が1人のとき) | 40% |
一家の支柱(被扶養者が2人以上のとき) | 30% |
女性(主婦、独身、幼児) | 30% |
男性(独身、幼児) | 50% |
就労可能年数は労働能力喪失期間と同じ考え方になるので、逸失利益が発生する期間と理解しておきましょう。
逸失利益は計算方法が決まっているので、各項目さえわかれば誰でも金額を算出できますが、賃金センサスやライプニッツ係数の見方が少し複雑かもしれません。
見方を間違えると金額差も大きくなるので、具体的な計算例とともに賃金センサスの見方なども解説します。
ちなみに、以下の計算では「令和3年賃金構造基本統計調査」の第1表を使用しています。
女児に後遺障害が残ったケースとして、以下の条件で逸失利益を計算してみます。
事例女児に後遺障害が残ったケース
まず、賃金センサスを参考に年収を計算します。
(1)賃金センサス第1表の産業計から企業規模計(10人以上)を参照
(2)女学歴計の行を参照
(3) (決まって支給する現金給与額×12)+年間賞与その他特別給与額で年収を計算
上記の計算結果は以下のようになります。
次にライプニッツ係数を参照しますが、18歳未満は以下のように調整します。
(1)就労終期67歳から5歳を差し引いた62歳の係数を参照(28.000)
(2)就労始期18歳から5歳を差し引いた13歳の係数を参照(10.635)
(3)「(1)-(2)」がライプニッツ係数となる(28.000-10.635=17.635)
次は専業主夫(男性の家事従事者)の逸失利益を計算してみます。
事例45歳専業主夫・障害等級4級の場合
専業主夫も賃金センサスを参考に年収を計算します。
(1)賃金センサス第1表の産業計から企業規模計(10人以上)を参照
(2)女学歴計の行を参照(家事従事者の場合は男性でも女学歴計を参照します)
(3) (決まって支給する現金給与額×12)+年間賞与その他特別給与額で年収を計算
上記(3)の計算結果は以下のようになります。
ライプニッツ係数は、就労終期67歳から被害者年齢45歳を差し引いた22歳を参照するので、15.937となります。
被扶養者がいる会社員の死亡逸失利益について、以下の条件で計算してみます。
事例35歳男性会社員・被扶養者2人の場合
ライプニッツ係数は、就労終期67歳から被害者年齢35歳を差し引いた32歳を参照するので、20.389となります。
逸失利益をいくら支払うか、逸失利益を認めるかどうかは相手方の保険会社の判断となります。
しかし、下位の障害等級に認定されるなど、適正な逸失利益を支払ってもらえないケースも少なくありません。
また、損害賠償の内訳には逸失利益以外の費用等もあるので、請求漏れにも注意する必要があります。
逸失利益などの請求で損をしないためには、以下のように対処してください。
交通事故の損害賠償は以下のような内訳になっているので、発生した費用等は必ず請求しておきましょう。
通院交通費や入院雑費は請求を漏らしやすいので注意してください。
逸失利益の計算は基礎収入やライプニッツ係数の適用が複雑なので、不慣れな方が計算すると間違ってしまう確率が高くなります。
些細なミスでも数百万~1千万円単位になる可能性があるので、不安のある方は弁護士に計算してもらうことをおすすめします。
弁護士のサポートがあれば、後遺障害の等級が上がりやすくなります。
交通事故に強い弁護士は医師と連携してくれるので、診断内容が不十分であれば、追加検査や補足資料の作成などを提言してくれます。
後遺障害の等級は書類審査のみで決定されるので、担当医が等級認定に詳しくないときは、弁護士のサポートを受けておいた方がよいでしょう。
保険会社が提示する逸失利益は低く見積もられるケースが多いため、示談交渉が難航する、あるいは裁判に発展する可能性もあります。
納得できない条件を提示されたときは、弁護士に示談交渉を依頼してみましょう。
弁護士は交通事故の判例にも詳しく、交渉力にも長けているので、有利な展開に持ち込める可能性が高くなります。
交通事故の示談金も裁判所の基準(弁護士基準)で算定してくれるため、慰謝料などの増額も期待できるでしょう。
交通事故の被害に遭った場合、後遺障害が残ったために退職や廃業を余儀なくされるケースがあります。
被害の状況によっては再就職も困難になり、経済面や精神面でも追い詰められてしまうため、十分な損害賠償を請求しなければなりません。
しかし、逸失利益が適正に算定されるケースは少なく、裁判で争うことが多いのも現状です。
保険会社の提示内容が妥当性を欠くときは、弁護士への相談も検討してみるべきでしょう。
交通事故に詳しい弁護士は示談交渉にも強く、被害者補償を最優先に考えてくれるので、十分な逸失利益を獲得できる可能性が高くなります。