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【慰謝料がもらえる交通事故は人身事故のみ】 慰謝料の計算方法・相場と慰謝料をアップさせる方法を紹介

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 人身事故だけもらえる?!交通事故の慰謝料について理解できる
  • 知っておけば損しない!3つの慰謝料基準についてわかる
  • 人身事故の慰謝料の計算方法と相場がわかる
  • 慰謝料増額の方法や増減されるケースについてわかる

交通事故といっても事故態様は様々です。

軽傷の怪我、後遺症が残るほどの重症の怪我、残念ながら死亡に至ってしまうケース、車やバイクの損壊のみで済んだケースなどです。

“怪我を負った交通事故は慰謝料がもらえる”ということは何となく一般的な概念として捉えられています。

ですが、いわゆる物損の交通事故のケースではどうでしょうか?
自分が大切にしている車やバイク、または携行品などはお金には変えられないほど大切なものです。

果たして、これらについても慰謝料をもらうことができるのでしょうか。

今回は、交通事故(人身事故のケース)慰謝料についてみていきます。

被害者の方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。

目次

交通事故の慰謝料とは

交通事故の加害者と被害者の関係図

 

交通事故問題で度々見聞きする用語は、似て非なる物が多く非常に紛らわしいものです。

一度、ここで整理しておきましょう。

慰謝料・交通事故が原因となり、被害者が受けた「精神的な苦痛」を補償するもの。
※人身事故のみに発生する(物損事故は対象外)
示談金の中の一つの項目にすぎない。
【交通事故の慰謝料は3つ】
・入通院慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
示談金・示談交渉を行い合意に至れば支払われるお金のこと。
※『被害者に支払われる損害賠償金+慰謝料』=示談金
もらえる慰謝料事故態様や損害
人身事故
※受け取れる賠償金が多岐に渡り高額なるケースが多い
・入通院慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
人の身体や生命に損害が生じる交通事故のこと。
例:怪我をした、後遺傷害を負う、死亡。
人だけではなく物(車両など)に対する損害も含まれる。
物損事故無し車両など(物だけの損害)が壊れてしまう事故のこと。
人には被害はない。
例:車が壊れた、ガードレールや電柱、フェンスが壊れたなど。
※修理代や代車費用などの損害が発生する。

表からもおわかりいただけるとおり、人身事故と物損事故では「事故後の処理や補償の範囲」が異なります。

人に対する損害(被害)が生じていれば、どんなに小さな事故でも「人身事故」になります

入通院慰謝料

交通事故が原因となり「怪我」を負い、入院や治療のために通院を強いられたことにより生じた精神的苦痛に対する補償のことです。

交通事故に遭えば、今まで通りの日常生活を送ることができなくなり不安が強くなります。

入院や適切な治療を受けるために仕事や学校、家庭などを犠牲にして通院を余儀なくされることとなります。

想像以上に精神的なダメージを負うことも決して珍しいことではありません。

後遺障害慰謝料とは?!

交通事故が原因で「後遺障害」が残ってしまうほどの怪我を負いそれにより生じた精神的苦痛に対する補償のことです。

後遺障害が残るほどの怪我を負うと、その後の人生において不便を強いられてしまいます。

さらには、職を失うほど不利益を負うケースも少なくありません。

一生涯においてやり場の無い悔しさと深い悲しみを共にしなければならず、その精神的なダメージは計り知れません。

「後遺症」と「後遺障害」は似た言葉ですが、慰謝料が受け取れるか否かという大きな違いがありますので、ここでしっかりと確認しておきましょう。

後遺症 治療後に残った神経症状・機能障害のこと。
後遺障害・後遺障害等級認定の申請を行い「認定」を受けたもの(第1級~14級まで詳細に「等級」が分類されている)
・交通事故との「因果関係」を医学的に証明できるもの(医師による診断書を要する)。
・「労働能力の低下・喪失」が認められるものに限る。

例えば、ただ単に「首が痛い、手が痺れる」などという自覚症状のみでは後遺障害慰謝料を受け取ることはできませんので注意が必要です。

死亡慰謝料

交通事故が原因で死亡したことにより、被害者が負った精神的苦痛に対する補償のことです。

  • ・死亡した被害者本人に対する慰謝料
  • ・ご遺族固有の慰謝料
    (配偶者・被害者の父母、養父母含む・子ども〈胎児、養子、認知した子を含む〉)

交通事故により死亡した被害者本人に対しても精神的苦痛は存在したと考えられています。

ある日突然、大切なご家族を不慮の事故で失った精神的ダメージは耐え難くその苦しみは計り知れません。

また、上記のとおり死亡した本人だけではなく、ご遺族に対しても固有の慰謝料が認められています。

(参考)慰謝料請求は法的根拠がある

ご参考までに、交通事故の慰謝料請求について根拠となる民法の条文をご紹介します。

〈不法行為による損害賠償〉
民法709条 故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

〈財産以外の損害賠償〉
民法710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

また、以下の2点についてご不安に思われている方が多いので確認しておきましょう。

・「小さな事故」「怪我の程度が軽傷」でも慰謝料は請求できます

~つまり、事故の大小や怪我の程度により慰謝料請求ができなくなるわけではありません。

なぜなら、慰謝料は「怪我の程度」「怪我の部位」「入通院期間」などに応じて計算されるからです。

 

・原則として年齢や職業により請求できる慰謝料の金額が左右されることはありません

~被害者の方の年齢や職業、社会的地位などにより請求できる金額が異なるものとしてあげられるのは「逸失利益」「休業損害」などです。

したがって、慰謝料の算出には無関係です。

自分は該当しないのではないかというご不安が少しは解消されたでしょうか?

人身事故の慰謝料の3つの基準

慰謝料を計算する際には、一定の基準を用います。

しかし、この基準は1つではなく3つの基準が存在するのです。

慰謝料の3つの基準の説明図

最終的にもらえる慰謝料の金額がかなり異なりますので、損をしないためにも(適正な金額をもらうためにも)正しい知識を備えておきましょう。

示談交渉の際に、きっと役に立つはずです。

それでは、一つずつみていきましょう。

自賠責保険基準について

まずは、自賠責保険をみていきましょう。

  • ・最低限度の「被害者救済のための補償」である(=慰謝料額が3つの中で最も安い)
  • ・車両所有者全員に義務付けられた保険である(強制加入保険)
  • ・人身損害のみを対象としている(物損事故は補償されない)
  • ・他人に対しての損害のみが対象となる
  • ・過失相殺の適用がない(※後述)
補償対象となる項目補償対象外となる項目
・治療費
・通院交通費
・諸雑費
・付き添い看護料
・装具費
・診断書作成料
 など

・慰謝料
入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
死亡慰謝料
(上記のうちいずれか該当するもの)

・車や器物などの「もの・物」に対して受けた損害
・加害者本人の怪我に対する損害

任意保険基準について

規制緩和が進み、現在は保険会社各社が自由裁量で基準を定めています。

算定表のような一覧表で確認することができます。

そのため、計算方法などは非公開となっており推測の域を出ませんが、現在の運用になる以前にあった統一基準(旧任意保険基準)を踏襲した金額設定となっていることが一般的です。

もちろん、各社微妙な金額の差があることを念頭に置いておいてください。

金額に関していえば、自賠責保険基準の金額に少し加算した程度です。

弁護士基準(裁判基準)について

3つの中で最も慰謝料額が高い基準です。

弁護士や裁判所が交通事故の慰謝料額を算出する際に用いる基準で、過去の裁判例を参考にしているため「適正な金額」といえるでしょう。

「高額な慰謝料がもらえる」からといって不当な金額をもらうということではありません。

むしろ、過去の膨大な裁判例から抽出した金額であることから、法的に認められた適正な金額であるといえるのではないでしょうか。

人身事故の慰謝料の計算方法と相場

それではさっそく「慰謝料の計算方法」と、気になる「相場」についてみていくことにしましょう。

  • ・3つの慰謝料を「3つの基準ごと」に解説していきます。

下記のようなイメージです。

  • ・入通院慰謝料(自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準)
  • ・後遺障害慰謝料(自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準)
  • ・死亡慰謝料(自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準)

少し、混乱してしまうかもしれませんが最初はざっくりとイメージだけでも掴んでいただくことが大切です。

入通院慰謝料の計算方法と相場

まず、先に3つの基準による比較をご覧ください。

自賠責保険基準559,000円
任意保険基準568,000円
弁護士基準1,050,000円

(case)交通事故により骨折

  • ・(通院期間)初診~治療終了まで約150日間=5ヶ月間
  • ・(通院日数)病院で治療を受けた日数=65日
  • ・入院なし

自賠責保険と任意保険ではあまり金額が変わらないことがおわかりいただけるかと思います。

驚くことに、それら2つの基準と比較すると弁護士基準では、およそ2倍アップしています。

※今回は、上記の一律上記ケース(骨折)で実際に計算していきます。

自賠責保険基準の場合

任意保険基準や弁護士基準とは違い、いわゆる「算定表」のようなものが存在しません。

〈自賠責保険の限度額〉

入通院慰謝料120万円
後遺障害慰謝料4,000万円
死亡慰謝料3,000万円

※2020年4月1日以降に発生した事故に適用される金額。

日額4,300円を元にして算出していきます。

(※2020年4月以前に発生した事故は日額4,200円をもとに計算する。)

下記のうちいずれか少ない方に、日額4,300円をかけていきます。

  • ・(通院日数)実際に病院で治療をした日数×2倍
  • ・(総日数)初診日~治療終了日(完治または症状固定)までの期間

 
(例)骨折で5ヶ月間通院したケース

  • ・(総日数)初診日~治療終了日(治癒または症状固定)までの期間 150日間
  • ・(通院日数)実際に病院で治療をした日数 65日×2倍=130日間

(通院日数)実際に病院で治療をした日数の方が130日間と少ないので、こちらに4,300円をかけます。

120日間×4,300円=559,000円

(point)「適切な通院頻度を保ち治療を継続する」ことが慰謝料の額アップのポイントとなります。

任意保険基準の場合

それでは任意保険基準の慰謝料額についてみていきましょう。

自賠責保険のように「基本日額」を元に算出するわけではありません。

下記のような算定表を用いて該当する箇所の数字を参考にします。

任意保険基準は加入している保険会社によって異なり、金額等も非公開ですが、平成11年7月以前は統一基準があったため、その金額を参考に解説していきます。

今回のケースのように、骨折のため5ヶ月間通院を行った場合は黒の太字で示した部分(568,000円)が該当します。

(単位:万円)【任意保険基準】

入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月7ヶ月8ヶ月9ヶ月10ヶ月
通院25.250.475.695.8113.4113.4128.6141.2152.4162.6
1ヶ月12.637.86385.6104.7120.9134.9147.4157.6167.6173.9
2ヶ月25.250.47394.6112.2127.2141.2152.5162.6171.4176.4
3ヶ月37.860.482102118.5133.5146.3157.6166.4173.9178.9
4ヶ月47.869.489.4108.4124.8138.6151.3161.3168.9176.4181.4
5ヶ月56.876.895.8114.6129.9143.6155.1163.8171.4178.9183.9
6ヶ月64.283.2102119.8134.9147.4157.6166.3173.9181.4185.4
7ヶ月70.689.4107.2124.3136.7149.9160.1168.8176.4183.9188.9
8ヶ月76.894.6112.2128.6141.2152.4162.6171.3178.9186.4191.4
9ヶ月8299.6116131.1143.7154.9165.1173.8181.4188.9193.9
10ヶ月87103.4118.5133.6146.2157.4167.6176.3183.9191.4196.4

弁護士基準(裁判基準)基準の場合

弁護士基準の金額は、裁判所の考え方や判例などをもとに日弁連の交通事故相談センターの支部等が作成しています。地域によって赤本・青本・黄色い本などがありますが、東京を中心に使われる赤本に従って解説していきます。

※「骨折」など重症の怪我のケースは以下の一覧表を用います。

今回のケースのように、骨折のため5ヶ月間通院を行った場合は黒の太字で示した部分(1,050,000円)が該当します。

(単位:万円)

入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月7ヶ月8ヶ月9ヶ月10ヶ月
通院53101145184217244266284297306
1ヶ月2877122162199228252274291303311
2ヶ月5298139177210236260281297308315
3ヶ月73115154188218244267287302312319
4ヶ月90130165196226251273292306326323
5ヶ月105141173204233257278296310320325
6ヶ月116149181211239262282300314322327
7ヶ月124157188217244266286301316324329
8ヶ月132164194222248270290306318326331
9ヶ月139170199226252274292308320328333
10ヶ月145175203230256276294310322330335

※比較的「軽症」である、むち打ち症などの多角的初見がないケースの一覧表です。

ご参考になさってください。

(単位:万円)【弁護士基準】

入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月7ヶ月8ヶ月9ヶ月10ヶ月
通院356692116135152165176186195
1ヶ月195283106128145160171182190199
2ヶ月366997118138153166177186194201
3ヶ月5383109128146159172181190196202
4ヶ月67955119136152165176185192197203
5ヶ月79105127142158169180187193198204
6ヶ月89113133148162173182188194199205
7ヶ月97119139152166175183189195200206
8ヶ月103125143156168176184190196201207
9ヶ月109129147158169177185191197202208
10ヶ月113133149159170178186192198203209

後遺障害慰謝料の計算方法と相場

後遺障害慰謝料の算出には、複雑な計算を要しません。

国土交通省の「自動車損害賠償保障法施行令別表」で等級ごとに慰謝料額が定められています。

後遺障害等級の認定が得られれば「入通院慰謝料」にプラスして「後遺障害慰謝料」も受け取ることができます。

3つの基準が比較できるように一覧表にまとめました。

※前述のとおり任意保険基準については「非公開」のため推定値となります。

 

等級自賠責保険基準任意保険基準(推定値)弁護士基準
1級1150万円(要介護1,650万円)1,600万円2,800万円
2級998万円(要介護1,203万円)1,300万円2,370万円
3級861万円1,100万円1,990万円
4級737万円900万円1,670万円
5級618万円750万円1,400万円
6級512万円600万円1,670万円
7級419万円500万円1,000万円
8級331万円400万円830万円
9級249万円300万円690万円
10級190万円200万円550万円
11級136万円150万円420万円
12級94万円100万円290万円
13級57万円60万円180万円
14級32万円40万円110万円

比較してみると一目瞭然です。

後遺障害慰謝料についても、かなりの差が生じていることがわかる結果となりました。

死亡慰謝料の計算方法と相場

交通死亡事故では、以下の慰謝料請求のケースが考えられます。

(case即死)・「死亡慰謝料」のみが対象
(case入通院を経た後に死亡) 「入通院慰謝料」+「死亡慰謝料」が対象

  • ・死亡した被害者が請求できる慰謝料(死亡慰謝料、入通院慰謝料)
  • ・ご遺族固有の慰謝料(ご家族が亡くなられたことによる精神的苦痛に対する補償)

これらは基準ごとに異なる部分がありますので、しっかりと確認しておきましょう。

自賠責保険基準の場合

  • ・死亡被害者(本人)の慰謝料 一律400万円
  • ・ご遺族固有の慰謝料(※下記参照)

◆check◆
自賠責保険基準では、「死亡被害者本人の死亡慰謝料」+「ご遺族固有の慰謝料」を合算した金額します。

「請求権者」の人数により金額が異なります。

※請求権者(慰謝料請求権を有する者)とは以下に該当する一定の範囲に属する人のことをいいます。

  • ・配偶者
  • ・被害者の父母(養父母含む)
  • ・子供(養子、認知した子、胎児を含む)
請求権者の人数慰謝料額
1人550万円
2人650万円
3人750万円

※死亡被害者に被扶養者がいる場合は、上記金額に200万円が加算されます。

「被扶養者」とは、死亡被害者の収入で生計を立てている扶養家族(一定範囲に属する)のことをいいます。

任意保険基準の場合

自賠責保険基準とは違い、「被害者の属性」により金額が異なります。

被害者の属性とは「死亡した被害者が家庭内においてどのような立場だったか」という意味です。

死亡被害者の属性慰謝料額(推定値)
子供や高齢者、その他およそ1,100~1,500万円
専業主婦(主夫)、配偶者およそ1,300~1,600万円
一家の支柱(一家の生計を立てている)およそ1,500~2,000万円

◆check◆
任意保険基準では、「死亡被害者本人の死亡慰謝料」と「ご遺族固有の慰謝料」を合算した金額となっているようです。

弁護士基準(裁判基準)基準の場合

任意保険基準同様に「被害者の属性」により金額が異なります。

死亡被害者の属性慰謝料額
子供や高齢者、その他2,000~2,500万円
配偶者や母親2,500万円
一家の支柱(一家の生計を立てている)2,800万円

◆check◆
弁護士がサポートすることにより「死亡慰謝料」のほかに「ご遺族固有の慰謝料」を請求できる可能性があります

交通事故の慰謝料が増額されるケース

弁護士が代理人となり「適切に主張立証」していくことで増額の可能性が期待できるケースがあります。

相手方との交渉がどうしても合意に至らず決裂してしまえば、最終的な判断は「裁判所」に委ねられます。

一般的には、時間・労力・費用がかかる裁判を望まない人が多いですが、徒らに裁判を避けなくてもよいといえるかもしれません。

なぜなら、過去の裁判例では慰謝料がさらにアップしたケースが少なくないからです。

納得のいかないままで悩み続けるよりは、裁判所による「正当な判断」のもと「適正な慰謝料」を受け取る方が気持ちの上でもスッキリするのではないでしょうか。

慰謝料アップとなればなおさらです。

また、裁判で決着をつける場合、裁判官は一般的な相場だけではなく個々の事情を総合的に考慮し判断します。

いったいどのようなケースが該当するのでしょうか?

一般の慰謝料相場よりも増額されたケースをみていきましょう。

(Case1)交通事故の被害者の親族が「精神的な病に罹患」した

例えば、事故現場に一緒に居合わせた兄弟が、事故を目撃したショックにより精神疾患に罹患してしまったケースなどが該当します。

自責の念に陥り、不眠・抑うつなどの症状が出現し、重度のストレス反応であるなど医師による診断が必要です。

  • ・死亡した被害者本人
  • ・精神疾患に罹患した兄弟

それぞれに慰謝料の支払いが認められる可能性があります。

(Case2)交通事故後の加害者に「故意または重過失」がある

度々ニュースなどでも見聞きしますが、例えば以下のようなケースが該当します。

  • ・飲酒
  • ・薬物違反
  • ・ひき逃げ
  • ・無免許
  • ・スピード違反
  • ・信号無視
  • など

正常に運転ができない状態にもかかわらず運転をしていたケース、加害者の過失があまりにも大きい場合には慰謝料がアップします。

(Case3)加害者の対応が「著しく不誠実」である

例えば、以下のような場合が該当します。

  • ・交通事故後に全く謝罪がなかった
  • ・自己保身のために嘘の供述ばかりをしている
  • ・被害者やその家族に対して罵詈雑言を浴びせる
  • など

被害者側からしてみれば、いずれのケースも激しい憤りを感じるのではないでしょうか。

このような微塵も誠意を感じられないようなケースでは、慰謝料額が増額する可能性があります。

このような不誠実極まりない加害者を相手に示談交渉をすることは難航してしまうことが想像に難くありません。

いつまでも関わっていたくないと思われるのが普通の感情です。

裁判に最終判断を委ねることも選択肢の一つに入れておいてもよいのかもしれません。

(Case4)その他認められる可能性のあるもの

そのほかにも以下のようなケースが該当します。

  • ・被害者となった子供が一人っ子だった
  • ・妊婦の死亡事故

ただし、残念ながらこれら「増額要素」は裁判所が自動的に増額してくれるわけではありません。

事故を思い出すことになり、辛い作業になりますが被害者側が主張していかなければなりません。

交通事故の慰謝料が減額されるケース

初めて目にする言葉があるかもしれませんが少し読み進めれば「なるほど」と納得できる内容のものです。

あまりご不安に思われなくても大丈夫ですので、ご安心ください。

  • ・損益相殺
  • ・過失相殺
  • ・素因減額

それでは、一つずつなるべくわかりやすく解説していきますのでご参考になさってください。

 

損益相殺とは?!

端的にいうと「二重取りを防止する制度」のことをいいます。

例えば、被害者が交通事故の治療中(示談前)に「労災保険」などから既に支給を受けている場合
が該当します。

この場合は、示談交渉の際に「確定した慰謝料額」から「既払い労災保険支給分」が差し引かれて計算されます

代表的な例を他にもいくつか挙げてみましたのでご参考になさってください。

  • ・被害者死亡後の生活費など(生存していれば支出していた生活費の「支出を免れる」ことができるため)
  • ・社会保険給付金各種(給付が確定した国民年金や国民健康保険、健康保険、厚生年金保険、など)
  • ・既払いの保険金(所得補償特約のある保険など)
  • など

◆check◆
※勘違いされやすいですが、香典、生命保険金、雇用保険に基づく給付、生活保護に基づく給付(後に返還予定あり)は控除対象外とされています。

過失相殺とは?!

レアケースを除く交通事故の多くは、加害者だけではなく被害者にも「過失」が認められます。

交渉次第では「増額」も「減額」もあり得る大変重要なポイントとなるのが、この「過失割合」なのです。

〈過失割合が8対2のケース 計算例〉

加害者被害者
過失割合82
損害額400万円900万円
請求できる金額400万円×0.2=80万円900万円×0.8=720万円
実際にもらえる金額0円640万円

黒の太字で示した部分が「相手方の過失分」となり、相手方の過失分だけ差し引かれて計算されます。

これを「過失相殺」といいます。

・「過失」とは、わかりやすくいえば不注意・落ち度のことです。
・「過失割合」とは、交通事故の結果に対する過失(不注意・落ち度)責任割合(加害者:被害者)のことです。

◆check◆「過失相殺」とは?「差し引いて帳消しにする(チャラにする)?!」
自らに「過失」があれば、例え1割の過失でも相手方に対して、損害賠償金を支払う義務が生じます。

上記のケースでは、加害者に過失があると同時に被害者にも2割の過失が認められます。

したがって、最終的に被害者が受け取ることのできる慰謝料は、被害者の過失分(2割)が差し引かれた金額ということになります。

素因減額とは?!

「素因」とは、被害者が交通事故の前から有していた要因のことをいいます。

つまり「素因減額」とは、元々有していた「要因」によりよって交通事故の被害が拡大したような場合が該当し、その結果慰謝料が減額されることをいいます。

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • ・精神疾患に罹患しており事故による怪我の治療を適切に受けることができずにいた期間があった。その結果として治療が長引いてしまった。
  • ・ヘルニア(頸椎)を患っており、むち打ちの治療が長引いた。
  • など

交通事故の慰謝料をアップさせる方法

事故後の生活再建のためにも、できるだけ多くの慰謝料を受け取りたいと考えることは決して悪いことではありません。

法外な金額の請求はもちろん許されませんが、裁判所が認めている「適正な金額」はむしろ高額であっても不当とはいえないでしょう。

「適正な方法」で「適正な慰謝料」をもらうためにはどのような方法があるのでしょうか?

治療に最後まで通う

これまでみてきたとおり、主治医の判断のもと治療を行うことは早期回復のためには大変重要です。

少しよくなってくると通院頻度が少なくなりがちですが、適切な通院頻度を保ちながら最後まで通い切っていただくことをおすすめします。

通院日数が少なくなると入通院慰謝料額が下がってしまいますのでご注意ください。

逆にいえば、適切な通院頻度を維持して最後まで通い切ることが慰謝料アップのコツともいえます。

保険会社の提示してきた慰謝料で合意しないこと

「弁護士基準」で慰謝料額を算出しましょう。(弁護士に依頼するのがベター)
→最高額の慰謝料を受け取るべきです

これまでみてきたとおり、任意保険会社の慰謝料算出基準は、最低額を補償する自賠責保険基準に少し上乗せされた程度の金額でしかありません。

“交通事故で負った精神的な苦痛”を本来もらえるはずの「適正金額(弁護士基準)」ではなく、不当な金額で合意してしまってよいのでしょうか。

加害者が悪質なケースであればなおさらのことです。

示談交渉の際には、慰謝料だけではなく他に請求できる項目についても「漏れがないか、敵正な金額であるか」など精査し請求することが大切です。

しかしながら、これらのことを自力で行うことは法律知識と経験がなければ難しいのが現状です。

弁護士のサポートを受けることが賢明といえるのではないでしょうか。

不当な過失割合で合意しない

これまでもみてきましたが、交通事故の場合よほどのレアケースではない限り当事者双方に過失があるケースがほとんどです。

過失を立証していくには「客観的で有力な証拠」を用いることが必要です。

いったいどのようなものが該当するのでしょうか?

  • ・ドライブレコーダー
  • ・防犯カメラの映像
  • ・事故当時の信号機のサイクル
  • ・目撃者の証言 
  • など

これらを用いて、適切に主張立証し粘り強く交渉することで、被害者本人の過失を減らすことが期待できます。

結果的に、慰謝料額から減額される金額が小さくなり(差し引かれる金額が小さくなる)受け取ることのできる慰謝料がアップします。

専門的な知識を要するので弁護士に依頼する

交通事故の解決に至るまでは様々な疑問や不安がつきものです。

手続きの煩雑さや検討要素がその都度出てきます。

これらのことを交通事故の被害者であるご本人や、場合によってはご遺族が行うことは、かなりの労力となり精神的にも大変なご負担となります。

事故後の間もない間に、そのようなお辛い状態で正しい判断ができるのでしょうか?

特に過失割合の交渉などは法的な知識やテクニックが必要です。

難しい言葉もたくさん出てくるので、その度にそれらを調べる必要があり、それだけでも大変な作業です。

関係各所との連絡も頻繁に行わなければなりません。

本来であれば、治療に専念するべきです。

あまり時間をかけずに早い段階で弁護士にご相談だけでもされることをおすすめします。

精神的な負担から解放され治療に専念できるのではないでしょうか。

まとめ

慰謝料まわりについてみてきました。

長くなりましたが、何となくイメージをつかんでいただくことはできたでしょうか?

最後になりましたが、もう一つだけ心に留めていただきたいことがあります。

それは、損害賠償請求権には時効が存在するということです。

“交通事故の慰謝料請求権の時効は原則5年

また、請求する慰謝料の種類によって起算点が異なりますので下記をご参考になさってください。

慰謝料の種類起算点
入通院慰謝料(交通事故による怪我で入院・通院をした場合)事故発生日から5年
後遺障害慰謝料(交通事故による怪我で後遺障害が残った場合)症状固定から5年
死亡慰謝料(交通事故の被害者が死亡した場合)死亡日から5年

※ひき逃げ事故のような加害者不明のケースは、例外的に時効は20年となります。

示談交渉が上手くまとまらないと思いのほか時間が経ってしまいます。

「交通事故専門の弁護士」に依頼することで、スピーディーかつ被害者に寄り添った解決が期待できます。

まずは無料相談などを利用してみるのがおすすめです。

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保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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