東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故にあってけがを負うと、多くの場合は複数回にわたって病院に通い、治療を進めなければなりません。
けがの状態や本人の回復力など、通院回数は交通事故の状況によって千差万別だと思いますが、通院日数の多寡は、慰謝料の金額にどのように影響するのでしょうか。
また、妥当な慰謝料を受け取るために、通院時に注意しておきたいことをあわせて解説いたします。
結論からいうと、毎日通院をしなくても自分の治療状況に合わせた通院ができれば問題ありません。
交通事故の怪我で多い「むちうち」の場合は、週3回程度通えば、十分な慰謝料請求ができます。
また通院回数を増やすことも大事ですが、弁護士に依頼して「弁護士基準」で慰謝料請求する方が手っ取り早く慰謝料増額に繋がります。
慰謝料とは、交通事故被害者が自己によって味わった精神的苦痛に対する賠償金です。
民法709条は、故意または過失により他人の生命、身体、財産に損害を与えた者はその損害を賠償することと定めています。
そして、民法710条はその損害とは、財産的損害に限らないとしていて精神的な苦痛に対する損害についても、被害者から加害者に対する金銭的賠償を請求することを認めています。
慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つがありますが、この記事では、入通院慰謝料と通院の関係について解説していきたいと思います。
交通事故にあったら、すぐその足で病院に行きましょう。
交通事故にあった当初には特段痛みや自覚症状がでなくても、数日後からむちうちや神経の損傷などの症状が出てくる可能性があります。
痛みの有無にかかわらず、必ず病院にいきましょう。
病院に行かない場合、治療が遅れてしまうという健康上のリスクがあることに加えて、受け取れるはずの入通院慰謝料に影響がでてきてしまう可能性もあります。
むちうちなど、時間差をあけて発症する障害は、交通事故当日に医師に状態を確認しておいてもらわなければ、事故との因果関係がなく別の理由から発症した病気だという主張を相手方からされてしまう可能性があるからです。
事故直後の医学的状態を診断書にきちんと残してもらうことが、適切な慰謝料をもらうためにも非常に大切なこととなります。
こういった理由から、すぐに通院を始めるべきなのです。
なお、交通事故にあった場所が自宅から遠い場合は、とりあえず事故現場の最寄の病院を受診し、その後は自宅の近くの病院に紹介状を書いてもらうなどして転院をすることもできます。
なお、交通事故直後の検査に訪れた受診も、慰謝料計算に影響する通院日数に数えてもらうことができます。
入通院慰謝料の算定は、通院期間や通院日数に日額をかけて計算しますので、一般的に通院期間や日数が長くなればなるほど、慰謝料の金額も高額となります。
長い通院を強いられるほど大きなけがを負っていることが通常であり、通院ストレスも大きくなるので当然の帰結といえるでしょう。
ただし、もちろん慰謝料を高くしたいために、治療の必要もないのにだらだらと通院期間を長くしても慰謝料の対象としてみてもらえないので注意が必要です。
入通院慰謝料の計算対象となる通院期間は、通院開始からけがが治癒、あるいは治癒しきれない後遺症が残ってしまった場合の症状固定までの通院期間となります。
また、通院期間中に実際に病院に行った通院日数を計算指標にする場合もあります。
慰謝料を含む交通事故の示談金の計算基準は一つではなく、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。
それぞれについて、入通院慰謝料はどのように計算するのでしょうか。
自賠責基準は、3つの基準の中では最も低い基準となります。
自賠責法という強制保険に基づく基準ですべての被害者の損害を最低限保証する目的のものであるためです。
計算式としては、日額4,200円×対象日数(入通院期間または入院・通院日数の2倍を比べてのいずれか少ない方を対象日数とする)となります。
さらに、慰謝料のほかの賠償金である治療費や交通費や会社を休んだ場合の休業損害と120万円の上限が設定されています。
真ん中の任意保険基準は、加害者が加入している任意保険会社が独自で設けている支払い基準です。
保険の自由化までは、支払い基準が保険業界で統一されていましたが、現在では各社ばらばらの基準をもっています。
しかし、多くの場合は、自賠責保険よりも少し高い程度か、高くても自賠責基準と弁護士基準のちょうど間程度の金額になると考えられています。
保険会社は営利法人ですので、なるべく被害者への支払い金額は押さえたいという事情が働くからです。
弁護士基準は交通事故の過去の裁判例を、裁判所がまとめて策定された基準です。
慰謝料が示談では決まらずに裁判で争われた場合はこの基準が使われますし、弁護士が保険会社と示談交渉をするときもこの基準を使います。
3つの基準の中で、最も高い慰謝料基準となります。弁護士基準では、通院期間をベースに慰謝料の金額を計算します。
入通院慰謝料は、治療期間中、つまり完治か症状固定するまでの間について支払われる金額です。
保険会社は営利法人ですので、治療を続けていくうちに、そろそろ症状固定をしませんかというように打診をしてきます。
症状固定をすると、これまで支払われていた傷害慰謝料である入通院費用、薬代、交通費、休業損害、松葉づえなどの費用が打ち切りになります。
しかし、症状固定は保険会社が決めるべきことではなく、患者さん本人と医師がよく相談して本当に治療を終了させるべきだと納得したときに行われるべきものです。
保険会社から症状固定を勧められたとしても、医師とよく相談して納得がいくまで治療を続けましょう。
また、たとえ保険会社が保険会社の判断で、まだ通院途中であるにもかかわらず、治療費の支払いを打ち切ったとしても、痛み等の自覚症状が続いていて治療を継続して受けたいと考えているのであれば、自費だとしても通院を続けたほうが得策であることも多いです。
被害者としては弁護士基準で入通院慰謝料を請求していくことになりますが、算定基準としては通院の期間や頻度が基準となるので、完治していないにもかかわらず治療をやめてしまうと通院期間が短くなり、入通院慰謝料が減ってしまうからです。
また、仮に本当に治療が必要であるのにもかかわらず治療費が打ち切られた場合、事後的に示談交渉や裁判の際に、主治医から治療継続が必要だったことの意見書などをもらう等して、必要性を証明できれば請求できることもあります。
このあたりは、医師や弁護士と相談して慎重に決断しましょう。
通院をする場合の病院選びには注意しましょう。
一般的には、整形外科で医師による治療を受けるために通院する必要があります。
症状が長引く場合に整体院などを選ぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、医療行為ではないとして通院とはみなされないことがあるため注意が必要です。
交通事故にあった場所の近くで通院を続けていたけれど自宅からは遠くて通うのが大変になってきてしまった場合や、医師との相性や治療の方針があわない場合など、治療期間中に転院をしたい場合もあると思います。
基本的には、どの病院で治療を受けるかは、患者である被害者の自由です。
しかし、これまでのメディカルレコードを転院先の病院にしっかり受け継いでもらうためには、主治医に理由を伝えて転院についての同意をとり、協力してもらいましょう。
また、加害者の加入している任意保険会社にも事前に伝えておきましょう。
また、転院までには至らなくても、普段通院している病院が休みだったり、外出先で痛みがでたときに、普段通院している病院と別の違う病院へ行っても、基本的には通院日数に数えられます。
慰謝料の請求をするにあたり、相手方の保険会社が資料の取り寄せなどをする必要があるので、この場合も保険会社には連絡しておきましょう。
一時的に症状が良くなった気がしたり、仕事や日常生活に追われて一時的に通院を中断し、時間ができたら再開をしたいと考える場合もあるかもしれません。
この場合に注意しておかなければならないこととして、通院の中断から再開まで30日以上空いてしまった場合、交通事故と残存した怪我の症状との因果関係が希薄になってしまいます。
そのため、通院が終了したものとされ、再開以降の通院期間や日数が計算されないリスクがあります。
しかしながら、海外出張や家庭の事情等、やむを得ない理由で通院を中断しなければいけない場合であって、その後も再開により治療効果が望めると考えられる場合は、主治医と相手方の保険会社に相談して、事前に了承を得ておきましょう。
通院回数も慰謝料増額には繋がりますが、簡単に増額するなら弁護士への依頼がおすすめです。
なぜなら弁護士に依頼すれば、弁護士基準で慰謝料金額が決まるため、請求金額がもっとも多くなるから。
慰謝料の請求には、下記のような3つの基準があります。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険機基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
裁判所基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
もっとも金額が高いのは弁護士基準ですが、弁護士基準の適用には条件があります。
弁護士に依頼しないと、弁護士基準を適用できません。
つまり自分・保険会社で交渉しても弁護士基準は適用できず、慰謝料を増額したいなら弁護士依頼は必須です。
弁護士に依頼をすれば、面倒で手間のかかる示談交渉を弁護士に任せられます。
交通事故の賠償金を支払うのは、相手の保険会社です。
そのため相手の保険会社は「なるべく支払いを少なくしよう」と交渉してきます。
通院しているのに「治療を打ち切ってください」と提案されるケースもあります。
交通事故の示談交渉では、保険会社を相手にして、賠償金を勝ち取らなければいけません。
法的な知識・交渉のテクニックが必要になるため、自分だけで交渉せずに弁護士に依頼した方が間違いないでしょう。
弁護士に依頼するときに気になるのが、弁護士費用だと思います。
「弁護士に依頼したいけど、費用を出す余裕がない・・・」という人もいるかもしれません。
そこでおすすめなのが、弁護士特約の利用です。
弁護士特約とは、自分の加入している保険会社が弁護士費用を払ってくれる特典。
会社によって異なりますが、一般的に300万円まで費用を出してくれます。
交通事故の弁護士依頼で300万円を超えることはほぼないため、実質無料で依頼ができます。
ただし自分の契約している保険に弁護士特約がついてないと、利用できません。
保険の契約内容は人によって異なるので、自分は弁護士特約を利用できるか確認してみましょう。
いかがでしたでしょうか。
通院しながら慰謝料のことを考えたり悩んだりすることは非常に負担が大きいことだと思います。
しかし、通院日数が慰謝料額に影響を与えるため、自己判断による通院の中止や症状固定前の打ち切りには注意しましょう。
本記事が少しでもご参考になれば幸いです。
悩んだときは、交通事故案件に詳しい弁護士に一度相談してみましょう。