東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
Contents
廃業とは、経営者が自ら事業をたたむことです。
会社の場合は、会社をたたむということになりますので、会社の従業員や取引先など様々な方面に影響を及ぼすこととなります。
会社を廃業することは、その会社が取引や事業を継続しないこととは異なります。
会社が廃業するためには、所定の手続きを行う必要があり、その手続きをしていない状態では廃業したとは認められません。
単に事業を行っていないだけの会社は休業中という扱いになり、法律上は廃業とは異なるものとされます。
また、会社を廃業するための手続きには、その会社を解散する手続きと、会社を清算する手続きの2種類があります。
このいずれかを選択するというわけではなく、会社を解散した後に清算するという流れになります。
解散とは会社が法人格を失うことを意味するものではなく、清算を行うための手続きに入ることを意味します。
一方、清算とは会社が保有しているすべての資産と負債を処分し、会社としての存在が消滅することを意味します。
年 | 休廃業・解散 | 前年比 | 倒産 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
2016 | 60,168 | 9.63% | 8,446 | ▲4.15% |
2017 | 40,909 | ▲0.61% | 8,405 | ▲0.49% |
2018 | 46,724 | 14.21% | 8,235 | ▲2.02% |
2019 | 43,348 | ▲7.23% | 8,383 | 1.80% |
2020 | 49,698 | 14.65% | 7,773 | ▲7.28% |
2021 | 44,377 | ▲10.7% | 6,030 |
2021年までの6年間に休廃業・解散した会社と、2021年までに倒産した会社の状況を上記の表であらわしています。
2021年の会社の廃業の状況については、以下のように考えることができます。
休廃業・解散した会社の数については、ここ数年4万件を大きく超えていましたが、2020年には大幅に増加し、5万件に迫る件数となっています。
これは、会社の業績の悪化や借入金返済の見通しが立たないために会社をたたむ倒産とは違い、自主的に廃業を選択するケースが増えているためと考えられます。
特に中小企業の経営者の高齢化や後継者不足は深刻であり、その影響が会社の廃業件数にも大きく現れていると考えられます。
2021年は、前年の大幅増の反動から10%程度件数は減少していますが、それでも2019年の件数よりは多く、依然として多い水準にあります。
一方、倒産件数はここ数年で最も少なくなっています。
新型コロナの影響で、飲食店や旅行関係など非常に苦しい状況が続いていますが、政府や金融機関などの支援策により、倒産を選択せずに残っている会社が数多くあるものと考えられます。
会社の事業を停止させたい場合、完全に終了させたい場合、また事業を継続することができない状態に追い込まれた場合と、会社の事業活動の中止についてはいくつかのケースがあります。
その中でも、事業を完全に終了させたい場合は、廃業を選択することになります。
ここでは、廃業を選んだ場合のメリットとデメリットについて説明していきます。
廃業を選択した場合、手続きによって会社そのものが消滅しますので、会社の税務や、経営者の業務、責任といったすべてのものから解放されます。
廃業の場合、経営の負担から解放されるというのが一番のメリットです。
廃業の手続きや業務は、手間と時間がかかりますが、きっちりと事業をたたむことで、頭を悩ませる資金繰りや、従業員などの雇用問題からも解放されます。
また、それまで法人にかかっていた税金が一切なくなります。
休眠を選択した場合、会社が不動産を所有していると固定資産税が課されますが、廃業の場合は、そのような心配もありません。
そして、休眠の場合は毎年の税務申告が必要ですが、廃業すれば定期的な役員変更登記も必要なくなります。
会社が赤字経営など、経営状態が悪いまま無理に経営を継続し、最終的に倒産ということになってしまうと、法人破産の手続きも必要になります。
法人破産ということになると、会社の資産・負債は清算され、会社にお金は残りませんし、手続き費用も必要です。
さらに、中小企業の場合、経営者自身が会社の債務(借金)の連帯保証人となっていることが多く、会社の破産は、経営者個人の資産にも影響を及ぼすでしょう。
無理に事業を継続することなく、余力のあるときに廃業を選択することで、会社の資産や個人の資産を守ることができます。
廃業の一番のデメリットは、すべて消滅してしまうことではないでしょうか。
会社が抱える負債も清算されますが、廃業によって、事業用資産、従業員、取引先からブランド、信用といった目に見えない資産もすべて失うということになります。
倒産と違って、資産と負債の清算手続きは、会社主導で行うことができますが、最後に会社が消滅するということは、変わりがありません。
また会社が消滅すれば、その時点での従業員はすべて退職しなければなりません。
従業員が仕事を失うことは、廃業する際には避けては通れないのですが、少しでも理解を得られるよう、従業員の再就職支援を行うことが求められます。
さらに、会社が廃業で消滅すると、それまでの取引先にも大きな影響が出ます。
取引先は、これまで依頼していた仕事を他の会社に依頼できるのか、あるいは他の会社に依頼できても単価が上がるなどの影響はないのか、といったことを行わなければなりません。
急に廃業を伝えると、取引先が検討する時間を取れなくなってしまうため、早目に伝えるようにしましょう。
さらに、会社が行政庁などから許認可を得て事業を行っていた場合、廃業によって許認可も失いますので、再び同じ事業を始める際には許認可もすべて取り直すことになります。
そして、会社の廃業の場合、清算手続き費用、解散登記などの登記費用、解散公告を掲載する官報公告の費用などがかかります。
廃業を選択するときには、これらのメリット・デメリットを考慮する必要があります。
廃業の検討をする場合、一旦会社の事業活動を停止する休眠という方法もあります。
また廃業の検討に時間がかかり、会社の経営状態が悪化すると、最終的に倒産という結果になることもあります。
ここでは、会社の休業・休眠・倒産について廃業との相違点を交えながら説明します。
会社の休業・休眠とは、会社を登記上存続させたままで、経営や事業活動を一時的に停止させることをいいます。
事業活動を一時停止している会社を休眠会社と呼びますが、税務署などに対して、所定の手続きを行った自主的な休眠と、登記の放置などで自動的に休眠会社として扱われる場合があります。
休眠の場合、廃業と違って会社の事業活動を一時的に停止するだけで、会社は消滅しません。
ですから、休眠となっても、環境や状況が変われば、会社を再開させることができます。
事業活動の停止の原因が、一時的なものであれば、廃業ではなく休眠を選択するという手もあります。
ただ、休眠中、会社を存続したまま事業活動を停止できるといっても、会社が不動産を所有している場合は、固定資産税が発生しますし、毎年税務申告を行う必要もあります。
会社の倒産とは、会社が経営破綻し、債務の支払いが困難となった状態をいいます。
廃業が自ら事業をたたむのに対し、倒産は事業を続けることができなくなる状態を指します。
つまり、倒産自体は選択できるわけではありません。
倒産となった状態で選択できるのは、倒産手続きです。
倒産手続きには、民事再生や会社更生などの再建型と、破産などの清算型の2種類に分かれます。
再建型には、様々な条件をクリアする必要があるため、一般的には清算型の法人破産を選択することになります。
法人破産は手続きが複雑ですが、清算手続きによって債務をゼロにすることができる法的手続きです。
会社の資産はすべて現金化され、債務に充てられますので、何も資産は残りませんが、会社の経営状況が悪く、自主廃業では債務返済の見通しがつけられないときは、法人破産の選択も止むを得ないでしょう。
ただし、法人破産は債務をゼロにできるというメリットだけではありません。
中小企業の場合、会社の債務について経営者自身が連帯保証人になっていることが多く、そのような場合、法人破産の手続きとともに、経営者個人も自己破産せざるを得ません。
個人破産の場合、経営者個人の持ち家などの資産も現金化され、債務に充てられます。
また、法人の破産手続きには、費用もかかりますので、費用を捻出できる余力がある内に、弁護士等専門家に相談しましょう。
廃業は、会社全体が消滅する際に用いられる言葉です。
これに対して、閉店は会社が運営する店舗の一部を閉めることを意味します。
複数の店舗を運営している会社の場合、その一部を戦略的に閉鎖することがあります。
閉店した店舗の代わりに、新しい店舗を開店して、より大きな売り上げを狙う場合があります。
あるいは、店舗数を減らして経営資源を集中させたり効率的な運営を目指す場合もあります。
閉店した後も会社は存続し、必ずしもマイナスを意味するものではありません。
会社の廃業手続きは、ボリュームもあり複雑です。
ここでは、簡単に流れを説明します。
以上が、会社を廃業し解散させる手続きの流れです。
細部は省略していますが、廃業には多くの手続きが必要で、解散公告のために最低でも2ヶ月以上の期間を要します。
廃業手続きに必要となる費用は、「各種登記関連」で4万円強、「解散公告掲載料」に約3万2千円です。
これに加え、手続きを専門家に依頼した場合は、司法書士(登記関連)に5~10万円、税理士(会社の清算関連)に20~30万円程度の報酬額が必要となります。
会社の資産状況や専門家によって報酬額は大きく変わりますので、依頼前にご確認ください。
会社の状況によって、廃業、休眠・休業、倒産を選択できる場合があります。
そのような中、廃業を選択したほうがよいケースについて紹介します。
事業活動を一旦停止する必要がある場合、休業期間が想定できないときは、廃業が妥当といえます。
経営者の健康状態で約1年の入院・療養期間が必要というような場合、多少期間が延びても復帰して事業を再開するのであれば、休眠・休業を選択した方がいいでしょう。
しかし、事業不振が続き、経営環境が改善されない限り、事業の再開の目途が立たない等、休眠期間が長期に渡る可能性や、再開しないかもしれないような場合は、廃業が妥当といえます。
休眠会社であっても、会社自体は存続するため、税務申告が毎年必要ですし、会社が不動産を所有している場合では、固定資産税も発生します。
つまり、休眠期間は費用や手間が全くかからないという訳ではないため、再開の想定ができないような場合は廃業によってリセットした方がいいでしょう。
経営者自身の健康状態の悪化や、高齢化に伴い、事業承継を考えていても、すぐに後継者が事業承継できないことがあります。
たとえば、経営者の子が学生である場合や、他企業に勤務していてすぐに後を継ぐことが難しい場合などです。
そのような場合、事業承継が可能になるまで、会社を休眠させるということも可能です。
ですが、事業承継をしたいものの、経営者の子が会社を継ぐ気がない場合や従業員も高齢で事業承継が難しいような場合、当てのないまま会社を休眠させても、結果としては廃業となることもあります。
ですから、事業承継の予定を冷静に判断し、難しいという結論であれば、廃業が妥当といえるでしょう。
廃業とは、経営者が自ら事業をたたむことを指します。
廃業を選んだ場合、会社が抱える負債が清算されて経営の負担から解放されるというメリットがあります。
一方で、会社の資産や従業員などすべてを失うことになるというデメリットがあることも忘れてはいけません。
廃業の他にも休業・休眠・倒産など、選択できる方法がいくつかあります。
廃業は会社の従業員や取引先など様々な方面に影響を及ぼすため、ベストな選択は何か、幅広い視野をもって慎重に検討しましょう。