最終更新日:2022/6/7
起業セミナーは千差万別!選ぶコツを知って賢く活用しよう
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
アイデアをビジネスにしたい、経験や資格を生かしたいなど、起業する方が年々増加しています。
起業に際しては、必要な知識や情報を効果的に充実することができる方法として、起業セミナーがあります。
起業セミナーのメリット、テーマや内容、対象者や業界、開催の形態、選ぶコツについて解説します。
起業セミナーのメリット
起業の現状
起業する会社の数は、増加を続けています。
2006年に会社法が新しくなったことが、大きな要因の一つとなっています。
新しい会社法では、株式会社を設立する際の最低資本金や役員の人数など、さまざまな制約が緩和されました。
手続き上、会社法の制限が緩和されたことなどもあって、起業しやすくなっていることは事実です。
その一方で、せっかく起業しても経営を続けることができず、廃業する会社も多いことが実態です。
個人事業は特に淘汰が激しく、中小企業白書などによれば、1年後に事業を継続している割合は62%3年後は38%、5年後には25.6%にまで低下します。
これは、様々な業種の中でも廃業の割合の低い製造業についての数字ですが、起業したビジネスを続けていく難しさがあることは間違いない事実でしょう。
知識や情報を得る有効なチャンス
起業の課題としては、「資金調達」が起業時、「質の高い人材の確保」が起業後に挙げられていますが、経験や人脈を活かしながら、販売先の確保、事業内容の選定、専門知識や技能の習得を続けていくことが成功の要因として指摘されています。
起業する動機や目的は、所得を増やしたい、自己実現をしたい、 自分の裁量で働きたい、社会貢献をしたいなど、様々ですが、積極的な動機や目的があれば、継続していける可能性が高くなることは確実です。
起業を始める時やビジネスを展開する際には、新しい知識や情報を継続的に得ることが必要不可欠です。
知識や情報を得る方法は、いろいろあります。
インターネットで検索する方法や、起業者向けの書籍のほか、自治体や金融機関などが提供する起業の相談窓口もあります。
なかでも利用しやすいものとして、公的な機関をはじめとして、金融機関、NPO、企業などが開催する起業セミナーがあります。
これらの起業セミナーは、課題解決やビジネスの発展につなげていくための有効なチャンスとなります。
セミナーとはどんなものかを知って、積極的に利用することがおすすめです。
どんな知識や情報が得られる?
起業について、知識や情報を得ることは重要です。
起業するための準備や手続き、起業した後のトラブル回避など、知っておくべきことは山ほどあります。
知っておくべき知識や情報を手っ取り早く、ポイントを外さずに得ることができれば、成功への近道となることでしょう。
自分だけで知り得る知識や情報には限りがありますから、経験や実績を積んだ方の話を聞くことや、税務や金融などの知識、資金融資に関する情報など、専門家からかみ砕いた分かりやすい説明を聞くことができれば、ポイントを捉えた知識や情報を短時間で得ることができます。
リアルタイムでの理解
セミナーは、会場に足を運ぶ手間暇はかかりますが、ポイントを掴んだ内容を短時間で得ることができることに加え、リアルタイムで理解が深まるメリットがあります。
疑問があればその場で解決することもできることや、他の参加者の質問などを通じて、自分では気づかなかった視点で理解を深めることもできます。
また、セミナーで知り合った講師や参加者は、起業後の相談相手や交流相手になる可能性も期待できます。
セミナーには、起業に関心のある方や具体的な準備をしている方などが集まり、自分と同じような立場の参加者に巡り合うことも珍しくありません。
テーマや内容は千差万別
起業セミナーは、企画意図や主催者によって、テーマや内容もさまざまです。
起業の心構えや経営についての一般的なものから、個々具体的なテーマや内容があります。
具体的なものとしては、起業の手続きに関するもの、資金調達に関するもの、集客やマーケティングなど経営に関するもの、会計処理や税金など運営に関するもの、人事や労務など雇用に関するもの、年金や社会保険など労務に関するものなど様々です。
これらの中でも、起業するきっかけにつながるものや、個人事業でも法人でも経営を続けて行くために最低限必要となるテーマや内容について触れておきます。
全般的なテーマや内容
起業に関する全般的な知識や、起業の手順などをテーマとするセミナーも多く開催されています。
起業経験者の失敗談や成功体験などを聞くこともできます。
成功体験者の話は、リアルで心を惹きつけます。
起業を迷っている場合など、初期段階からモチベーション向上に効果があります。
起業を決心した要因としては、資金や事業内容の目途や必要な技術やノウハウを習得したなど、自身の実務的な自信が挙げられますが、既に起業している人から勧められたことや仲間の存在も、起業を決心した動機の一つとなっています。
また、起業の全体像を知ることができれば、全体の流れやスケジュール感をつかむこともでき、起業に対しての心構えもできることになります。
資金調達
資金調達は、起業する際の最大の課題としてとらえている方が多いことが実態です。
政策的な融資や自治体融資、金融機関の融資などについて、詳しく知ることができます。
また、資金調達の際には、自己資金の額や起業者の経験や能力、資金の使い道のほか、返済ができるかどうかが問われることになります。
資金調達に関するセミナーは、起業して始めたいビジネスについて、実現可能性を含め、じっくり深く考える絶好のチャンスとなります。
集客やマーケティング
資本や労働を投入するからには、利益をあげたいのは当然です。
継続的に利益を上げるためには、ビジネスモデルをはじめとする経営やマーケティングについての知識や情報が重要になります。
セミナーで紹介や説明されるものが、そのまま自身に当てはまることは少ないかもしれませんが、自身に当てはめた経営やマーケティングを考える際の考え方やヒントを与えてくれます。
対象となる業界や対象者を絞り込んだセミナー
業界
資金調達や集客、マーケティングといったテーマは共通していても、業種や業界ごとに知識や情報は異なります。
集客の対象や販路、調達可能な融資、ノウハウや情報など、サービス業や建設業、飲食業、宿泊業、農業など業界によって、業界特有の事情があります。
より具体的な知識や情報を、効率的に得るためには、専門性の高いセミナーに参加することが効果的と言えます。
対象者
対象者を絞って開催されるセミナーも、多くあります。
勤めながら副業などで起業を目指す方向け、女性起業家向けに特化したもの、定年退職後の起業を考えている方向けなど対象者を絞り込み、テーマや内容を特定の対象者向けに特化させているものも開催されています。
起業に関心がある方とは言っても、経験や知識、自己資金の状況、希望する職種や業種など、それぞれ前提条件が異なることが一般的です。
対象者が限定されれば、ベースとなる前提条件が類似してくるため、テーマや内容をより対象者にマッチするものに絞り込むことができることになります。
開催の形態
起業セミナーの料金設定や主催者も、選択する際のポイントになります。
料金設定
セミナーの料金設定は、有料のものと無料のものがあります。
有料だから優れている、無料だから効果が低いといった見方もありますが、誰がスポンサーか、セミナーの目的は何かに注目すると選びやすくなります。
セミナーは、公的な機関が施策への誘導のために行うもの、金融機関が準備している融通資金の利用を促すもの、NPOなどが非営利活動として行うもの、企業がPRや社会貢献活動の一環として行うもの、セミナーの開催で収益をあげようとするもの、セミナー後のオープンエンドとして自社のサービスの購入を期待するものなど、様々です。
公的機関や金融機関が開催するセミナー
起業や創業に関するセミナーを開催している、主な公的機関や金融機関について紹介します。
広範な中小企業支援策や資金融資制度について知る機会となります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構
国の中小企業政策の中核的な実施機関として、起業や創業期から、会社の成長段階に合わせた幅広い支援策を提供しています。
新たな販路を開拓したい、人材を育成したいなどについての具体的な支援策の提供をはじめ、創業支援として、様々な分野について、経営者としての知識を提供するセミナーを開催しています。
日本政策金融公庫
創業融資など中小企業の起業施策を展開する上で、日本政策金融公庫は政府に準ずる公的な機関として、創業セミナーや、起業後の経営課題解決セミナーなど、幅広いテーマでセミナーを開催しています。
全国15カ所の創業支援センターや各支店が運営しています。
都道府県などの中小企業支援センター
中小企業支援センターは、新しい中小企業政策を進めるために設けられた、地域中小企業支援センター、都道府県等中小企業支援センター、中小企業・ベンチャー総合支援センターの3タイプの中小企業支援センターを中心とする地域での支援体制です。
地域によって名称が異なりますが、窓口相談、専門家派遣、事業可能性評価、情報提供などが行われていて、起業セミナーも開催されています。
起業セミナーを選ぶコツ
起業セミナーには様々なものがあります。
そんな中から、自分に合ったセミナーを選ぶコツについて紹介します。
自分が起業のどの段階にいるかを知る
起業と言っても、様々な段階があります。
セミナーを選ぶ際には、相応しいテーマや内容を選ぶために、自分が起業のどの段階にいるかを明確にしておくと、選びやすくなります。
起業する時の段階としては、つくりたい会社のイメージを固める段階、株式会社や合同会社、あるいは個人事業主など作る会社を決める段階、本拠地や社名を決め事業の目的を具体化する段階、出資金の額や調達する資金を決める段階、役員や定款を決めて会社を登記する段階などがあります。
また、軌道に乗り始めたビジネスについて、個人事業を法人化する段階、雇用を始める段階、複式簿記での青色申告を始める段階、新たな資金調達が必要な段階、新たな事業展開や今までの事業内容を見直す段階など、やはり様々な段階があります。
セミナーで何を得たいのか目的意識を持つ
起業の段階別にテーマや内容を選ぶ方法とは別に、セミナーで得たい知識や情報が何かを明確にしておくことも、セミナーを選ぶ際には重要と言えます。
何のために参加するのか、目的をハッキリさせておけば、迷いも少なくなるでしょう。
セミナー選びのポイント
数多くの起業セミナーの中から、自分に合うものを見つける際のポイントがあります。
自分がいる起業の段階や、得たい知識や情報をハッキリさせた上で確認すれば、満足度の高いセミナーに巡り合うことができるでしょう。
開催目的や主催者、参加料、何のためにセミナーが開催されるのかなど、セミナーの企画意図を確認することが大切です。
公的な機関が誘導する施策や金融機関が準備している融通資金など、セミナーのテーマや内容が自身のビジネスに無理なく適用できるか、有料の場合は費用対効果は得られるか、不要なサービスや商品に誘導されるものではないかなどが、選ぶ際のポイントになります。
また、講師のスキルや実績は、セミナー選びの大きなポイントになります。
話のテーマや内容ももちろんのこと、具体的に知りたい知識や情報を得られるかどうかを判断することができる、大きなポイントになります。
たとえば、失敗談や成功体験であれば起業経験者、起業手続きであれば実務の専門家、創業融資であれば金融機関の担当者など、セミナーのテーマや内容に精通していることが期待できます。
まとめ
起業には積極性が必要不可欠ですが、新たな知識や情報を継続的に得ることもとても重要です。
起業セミナーは、知識や情報を得る有力な手段となるだけでなく、モチベーションを高め、仲間や知り合いを増やすチャンスともなります。
選ぶコツを知って、賢く活用しましょう。
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