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最終更新日:2024/11/20

会社設立のメリットとデメリットは?個人事業主との比較を解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

会社設立のメリットとデメリットは?個人事業主との比較を解説

事業を始めるには、会社を設立する、または個人事業主になる方法があります。会社を設立した場合と個人事業主とでは、納める税金や社会的な信用、資金調達方法といった面で違いがあります。会社を設立するか個人事業主になるかは、事業規模や将来の目的などによって異なるため一概にどちらがいいとはいえません。

しかし、税金面では会社を設立したほうがメリットを多く受けられる場合があります。個人事業主から法人化するタイミングの参考にもなるので、会社設立のメリットとデメリットを知っておきましょう。
ここでは、会社を設立するメリット・デメリットや会社設立の流れについて解説します。


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会社を設立するメリット

会社を設立するメリットには主に以下の6つが挙げられます。特に上から3つに該当する場合は、会社を設立したほうがいいと考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

会社を設立する主なメリット

  • 節税効果が期待できる
  • 社会的な信用を得やすい
  • 資金調達の方法が増える
  • 決算月を自由に決められる
  • 有限責任になる
  • 事業承継がしやすい

節税効果が期待できる

会社を設立するメリットのひとつに、個人事業主よりも節税効果が期待できることがあります。

事業を通じて利益を上げると、個人事業主は所得税、株式会社や合同会社などは法人税が課せられます。個人事業主の所得税は5~45%の7段階に区分され、所得(利益)が増えるほど段階的に税率が上がる累進課税です。一方、法人税の税率は、資本金1億円以下の会社(普通法人)で所得が800万円を超えると23.2%、所得が800万円以下だと15%です。所得が増えるほど、法人のほうが負担する税額を抑えられるといえます。会社の状況にもよりますが、目安としては年間の利益が500万円を超えると会社を設立することを検討するといいでしょう。

所得税と法人税の税率の違い

また、会社を設立すると、個人事業主よりも経費にできる範囲が広がったり、赤字を10年繰り越せたりします。具体的には、出張の日当や家賃の半分を経費にする、利益が出た年に赤字と黒字を相殺するといったことが可能になり、課税所得(税金の対象となる利益)を抑えて節税効果につながります。
会社を設立して節税効果を高めるには、経費にできる条件や税金についても知っておきましょう。脱税にならないよう、節税については税理士に相談することが大切です。

社会的な信用を得やすい

社会的な信用を得やすいことも会社を設立するメリットの1つです。会社を設立する際には、法務局への登記申請が必要で、法人登記は会社の商号(社名)や代表者名、資本金、事業目的などを登録することを指します。登記が完了すると、会社の情報が一般公開されて誰でも情報を見ることができるようになり、企業の透明性が高まります。また、法人として公的に認められることで法人契約が可能になったり、社会的な責任を持つことになったりします。

「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出するだけで事業を始められる個人事業主に比べると、法人は手間と時間、お金をかけて登記を行い、多くの情報も公開している分、法人は社会的な信用を得やすいといえるでしょう。

取引先によっては、株式会社や合同会社といった「法人であるかどうか」を大事にすることもあります。中には、個人事業主とは高額な取引は行わない、契約しないといったケースもあるかもしれません。社会的な信用を得ることでビジネスチャンスが拡大する場合は、会社設立を検討してみましょう。

資金調達の方法が増える

資金調達の方法には金融機関からの融資や自治体の補助金・助成金などがあります。株式会社なら、新株を発行して出資を募ることができるので、個人事業主よりも資金調達の方法が増えることもメリットの1つです。事業の将来性に期待できそうだと判断されれば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けられる可能性があります。出資であれば返済義務がないので資金繰りへの影響を抑えられるでしょう。

また、会社を設立すると、金融機関の審査において個人事業主よりも有利になることがあります。法人は一般的に月次で会計処理を行いますので、財務状況をリアルタイムに把握することができ、財務状況の管理も厳正で透明性が高いと考えられるからです。
また、万一、経営者が亡くなった場合でも法人としては存続しますので、銀行からすると借入金の返済の信頼性が高いともいえます。

設備投資や人員拡大のために追加で融資を受けたいときには、会社を設立しておいたほうがいいでしょう。

決算月を自由に決められる

個人事業主の事業年度は1月1日〜12月31日と決まっているのに対し、法人は決算月を自由に決められることもメリットといえます。法人の場合、事業年度末ごとに年間の損益をまとめ、決算書類を作成する決算を行わなくてはいけません。

決算の作業は1年間の経理にミスがないかの確認や申告書の作成などもあり、多くの時間が必要になります。そのため、繁忙期を避けて決算月を設定することで、年間を通じて業務を平準化することができます。また、月ごとの売上高に大きな変動があるビジネスでは、決算月の設定次第で決算書に計上される利益が大きく変わります。決算月の設定によっては節税効果が高まったり、資金繰りが大きく改善したりすることもあるので、決算月の設定の際には税理士に相談してみましょう。

有限責任になる

会社を設立するメリットには、有限責任になることも挙げられます。有限責任とは、例えば業務上で巨額の損害賠償請求が発生した場合や、売掛金が貸し倒れて支払いができなくなった場合でも、責任を負うのは出資した範囲のみ、つまり資本金を失うだけになるということです。

一方、個人事業主は無限責任のため、個人の財産で責任を負わなくてはなりません。事業運営においては行き詰まることもあるので、万一に備えておくことが大切です。事業が頓挫した場合の責任の範囲についても吟味し、会社を設立するか個人事業主になるかを選択しましょう。

事業承継がしやすい

会社を設立するメリットとして、事業承継がしやすいことも挙げられます。個人事業主の場合、経営者が亡くなって相続が発生すると、個人名義の預金口座が一時的に凍結されます。そうすると、事業においての支払いが困難になって事業の継続が難しくなるかもしれません。

また、すべての事業用資産が相続財産として遺産分割の対象になります。相続人が複数いる場合は、誰がどの財産を相続するかを協議して決定するまでは、事業が滞ります。従業員がいる場合は、すべての従業員と雇用契約を結び直さなければなりません。

会社なら、経営者が亡くなっても会社の銀行口座は凍結されず、経営者の登記変更を行うことで事業用資産や雇用関係を含めたすべての事業を継続することが可能です。取引先や従業員に負担をかけないようにするなら、会社設立を検討してみましょう。

会社を設立するデメリット

会社を設立すると多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。特に個人事業主と会社とではお金の扱いが変わるので、デメリットも把握した上で法人化を検討してください。

会社を設立する主なデメリット

  • 会社と個人のお金が区分される
  • 社会保険に加入する義務がある
  • 設立手続きや費用が必要になる
  • 赤字でも法人住民税がかかる
  • 事務負担が増える

会社と個人のお金が区分される

個人事業主が事業で得たお金は収入として自由に使うことができます。例えば、大きな売上が入った後や、急に家庭でお金が必要になった場合などは自由にお金を使っても問題ありません。しかし、法人は会社と個人の財産を明確に区別して管理しなくてはなりません。そのため、経営者であっても役員報酬以上のお金を個人的な用途で使う際には、会社からお金を借りる形になります。具体的には、会社との間で金銭消費貸借契約書を交わし、借入金額や借入期間に応じた利息も支払います。個人事業主よりもお金の管理が厳しくなることはデメリットといえるでしょう。

会社と個人のお金が区分される

社会保険に加入する義務がある

会社を設立すると、健康保険や厚生年金保険といった社会保険に加入しなくてはなりません。個人事業主が加入する国民健康保険と国民年金に比べて役員報酬次第では保険料が高くなる可能性があることはデメリットといえます。

また、健康保険と厚生年金保険は労使折半といって、被保険者と会社で保険料を50%ずつ負担します。そのため、従業員が増えると会社が負担する保険料は多くなります。ただし、従業員にとっては安心して働ける環境といえるので、人材確保をするには必要な費用といえるかもしれません。

設立手続きや費用が必要になる

個人事業主は開業に関して、運転資金以外に特別な費用は発生しませんが、会社の場合は設立手続きやそれに伴う費用、資本金などが必要になることがデメリットともいえます。

会社設立にあたっては、会社名や資本金、事業目的などの会社概要を決めて、定款の作成や法人登記を行う必要があります。定款認証の収入印紙代4万円をはじめ、法人登記のための登録免許税では、株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は最低6万円がかかります。

資本金は1円からでも会社を設立することは可能です。ただし、事業の初期費用や運転費用は資本金から捻出するため、極端に少ないとすぐに借入金が必要になります。また、資本金は会社の体力を表すものですので、取引先や融資先といった対外的な信用面で不利になるため、事業運営に必要な資金は資本金として準備しておきましょう。

赤字でも法人住民税がかかる

所得税や法人税は原則として利益に対して課税されるので、赤字であれば税金はかかりません。しかし、会社が負担する法人住民税の一部である均等割という部分については赤字でも課税されます。法人住民税の均等割の金額は自治体によって異なりますが、およそ年間7万円程度です。赤字でも法人住民税の均等割がかかることは、会社を設立するデメリットに挙げられるでしょう。

事務負担が増える

法人の会計処理は厳密な複式簿記のルールに則って行われ、税金の申告手続きは個人事業主よりも複雑になります。また、社会保険や年金事務所などの手続き、株主総会の開催といった事務負担が増えることは会社を設立するデメリットともいえます。

個人事業主は多くの場合、自分で確定申告しますが、会社の場合は法人税の申告や決算、年末調整については税理士に依頼することが一般的です。特に決算の難易度は高いだけでなく、法人税の申告や決算が間違っているとペナルティとして本来納める税額以上に追徴課税されるので、会社を設立する場合は税理士の力を借りることも検討してみてください。

会社設立の流れと費用

会社を設立するか個人事業主になるかを決める際に、会社設立の手続きや費用が気になる方もいるのではないでしょうか。自分で手続きができるか、どれくらいお金を準備しておけばいいかがイメージできるよう、会社設立の流れとそれに伴う費用を見ていきましょう。

株式会社を設立する場合、主に以下のような流れで行います。合同会社の設立も基本的には同じですが、一部は異なる部分があるのでご注意ください。

会社設立の主な流れ

  • 1. 会社概要を決める
  • 2. 提出書類を作成する
  • 3. 定款を認証する(合同会社の場合は不要)
  • 4. 出資金(資本金)を払い込む
  • 5. 印鑑を作成し、法人登記をする

1. 会社概要を決める

会社を設立するにあたって、商号(社名)や事業目的といった会社概要を決めます。会社概要は、会社のルールをまとめた定款という書類に記載します。定款はあらかじめ記載すべき内容が決められているので、以下のような会社概要を漏れなく決めるようにしましょう。

決めるべき会社概要

  • 商号(社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金
  • 1株あたりの金額
  • 発行可能株式総数
  • 取締役会の有無
  • 設立日
  • 会計年度
  • 事業目的
  • 出資者
  • 役員の構成
  • 役員の任期

上記のような会社概要の決め方を誤るとトラブルに発展したり、税負担が多くなったりする可能性があります。特に資本金の設定や会計年度、役員の構成などで不明なことがあれば決める前に税理士に相談することが大切です。会社設立の無料相談を行っている税理士事務所がありますので、まずは相談してみましょう。

会社概要として登記した内容を設立後に変更するためには、株主総会で決議し、変更登記といった手続きが必要になります。変更登記には数万円かかるので、決める前に相談することで余計な費用や手間をかけなくて済みます。

2. 提出書類を作成する

会社概要が決まったら、定款をはじめとした会社設立に必要な書類を作成します。作成する書類は、公証役場に提出するものと法務局に提出するものに分かれており、具体的には下記のとおりです。

公証役場へ提出する書類

  • 定款
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
法務局へ提出する書類

  • 登記申請書
  • 定款
  • 発起人の同意書
  • 取締役就任承諾書
  • 払込証明書
  • 印鑑届出書
  • 印鑑カード交付申請書

3. 定款の認証(合同会社の場合は不要)

株式会社の場合は、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります。定款の認証手数料は資本金の金額によって異なり、資本金100万円未満は3万2,000円、100万円以上300万円未満は4万2,000円、300万円以上は5万2,000円です。また、定款を書面で提出する場合は収入印紙代として4万円がかかります。

オンラインで定款を認証する場合、収入印紙代はかかりませんがその他の手数料がかかります。
なお、認証前に公証役場に連絡して、メールやFAXなどで定款を事前に確認してもらうと認証作業がスムーズです。

4. 出資金(資本金)を払い込む

法人登記の前に法人口座は作れないため、出資金(資本金)は発起人の個人口座に払い込みます。発起人が複数人いる場合は代表者1人の個人口座、発起人が自分1人の場合は自分の口座に振り込みましょう。銀行口座は今まで使っていたもので問題ありませんが、出資金がもともと銀行口座に入っている場合でも振り込みは必要になります。これは資本金の証明が、残高ではなく振込記録になるからです。一度、資本金の金額を引き出して振り込むか、別の口座に振り込みます。

なお、出資金は、事業を始める際の初期費用や事業運営にかかる費用となります。出資金の金額は法人税の税率に影響しますので、設定する際には注意してください。

5. 印鑑を作成し、法人登記をする

法人登記を書面で行う場合は、会社の実印が必要になります。法人登記の前に会社の実印を作成し、印鑑届書を準備しておきましょう。また、後々必要になる銀行印、請求書や領収書に使用する角印もセットで作っておくと便利です。実印の価格は材質によって異なり、柘植なら5,000~1万円程度、黒水牛なら1万~2万円程が目安になります。

法人登記では、認証後の定款や設立登記申請書、印鑑届書といった書類と取締役全員の印鑑証明、登録免許税を法務局に提出します。登録免許税は株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は最低6万円です。登記されれば、会社設立の手続きは完了です。

なお、ベンチャーサポート税理士法人のように会社設立の手続きをまとめて依頼できる税理士事務所もあります。本業に集中したい、設立を急ぎたい場合は、こうした丸投げサービスの活用をご検討ください。

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会社を設立するか悩んだら税理士に相談しよう

事業を始める場合、会社設立と個人事業主の2つの方法があります。利益や事業内容によっては会社を設立したほうが節税効果を期待でき、社会的な信用を得やすいといった多くのメリットがあります。

ただし、会社を設立する際の資本金や法人税の申告などの設定を間違うと、後々トラブルを抱えることにもなりかねません。会社を設立するか悩んだら早い段階で税理士に相談しておくことで、自社に合った資本金の設定や適切な節税についてアドバイスをもらえます。

また、取引数を増やしたいから法人化してほしいと取引先に求められることがあるかもしれません。法人化のタイミングは消費税の免税に関わります。インボイス制度の開始に伴って、法人化の免税条件が複雑になっているので、適格請求書発行事業者になるかは税理士にアドバイスをもらうといいでしょう。

ベンチャーサポート税理士法人では、顧問契約に関係なく、会社設立に強い税理士が無料で「自分は法人と個人事業のどちらが良いのか?」など会社設立に関するあらゆる相談に応じています。また、会社設立の手続きも丸投げで依頼することも可能です。会社を設立するか悩んだらお気軽にご相談ください。

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