最終更新日:2025/10/20
合同会社と有限会社の違いは?責任の範囲や今設立できる会社の種類を解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 合同会社と有限会社の違い
- 合同会社と有限会社の共通点
- 合同会社のメリットとデメリット
合同会社と有限会社は、いずれも中小企業や個人事業主の法人化に適した会社形態です。有限会社は2006年(平成18年)以前の制度であり、現在は新しく設立することはできません。
合同会社は、有限会社が廃止されたときに導入された法人です。ですが、両者には違いがあるため、相違点や共通点を正しく理解しておくことは重要です。この記事では、両者の特徴や共通点、信頼性、資本金や出資者数の制限などを比較しながら初心者にもわかりやすく解説します。


目次
合同会社と有限会社とは?
まずは、合同会社と有限会社がどのような制度であるかについて解説します。
合同会社
合同会社は、2006年(平成18年)年から設立できるようになった会社です。一般的なイメージとしては、株式会社よりも小規模な企業というイメージが強いかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
合同会社とは、出資者である「社員」が経営を行うというスタイルの会社です。所有と経営が同一であるため、意思決定がスムーズであるという特徴があります。
2006年より前に設立されていた有限会社とは異なる点がいくつもありますが、入れ替わりで導入されているため「現代版の有限会社」と表現されることもあります。
有限会社
有限会社は、2006年の新会社法施行以前に設立された会社です。現在は新たに設立することができませんが、「特例有限会社」として存続しているケースもあります。有限会社の新設はできませんが、既存の有限会社は引き続き法人として活動が認められています。
合同会社と有限会社の違い
合同会社と有限会社には、多くの違いがあります。ここでは、設立可能性、出資者数、資本金、役職名、信頼性、利益分配の方法を中心に違いを解説します。
有限会社は新しく設立できない
有限会社は、2006年の法改正以前のものですので、現在は新しく設立することができません。ただし、すでに設立されている有限会社については「特例有限会社」として、引き続き運営することが可能です。
有限会社の出資者は50人まで
有限会社は、出資者(社員)の人数が「50人以内」とされています。この上限を超える場合は、有限会社の形態では会社運営ができなくなるため、株式会社など他の形態への変更が必要になります。
一方、合同会社には出資者数の上限はありません。合同会社は、家族経営から複数人の共同経営、大人数での会社経営まで多様なニーズに対応できます。
有限会社は資本金が300万円以上
有限会社を設立するには、資本金が300万円以上必要でした。つまり、ある程度資本力があるケースに限定されていたということです。これによって信用力の確保や安定経営を担保するという目的もあったのです。
ですが、合同会社には資本金の制限はありません。資本金が「1円」からでも設立可能であり、創業初期の資金が限られている起業家や個人事業主にとっては、大きなメリットとなります。経費を抑えて起業したいケースにも適しています。
役員の名称
合同会社では、会社法上の役員は存在しません。出資者である社員全員が経営者であり、「代表社員」「業務執行社員」といった役職名が使われます。対して有限会社では「取締役」「代表取締役」など株式会社に準じた役職名が使用されます。
ただし、合同会社でも実務上、役員という呼称を用いることは多々あります。
信頼度の差
有限会社を設立できたのは2006年の法改正前までであるため、現時点で設立から最低18年は経過している老舗ということになります。
このため、老舗企業として信頼感を持たれるケースは多いです。
一方、合同会社には、2006年以降に設立された比較的新しい会社というイメージがあります。また、合同会社は一般的には株式会社より小規模な事業者というイメージが浸透しているため、信頼感という意味では有限会社よりやや低くなる傾向があります。
ただし、近年では合同会社の知名度も上がってきています。
利益分配の方式
有限会社では原則として出資比率に応じて利益が分配される仕組みでした。ですが、合同会社では、利益分配の方法を出資比率に関わらず定款で自由に決めることができます。
有限会社と合同会社の共通点
有限会社と合同会社には、共通点があります。
ここでは、それぞれに共通する4つのポイントをわかりやすく解説します。
出資者は全員有限責任社員となる
有限会社と合同会社は、どちらも出資者が「有限責任社員」となります。
有限責任とは、会社が多額の債務を負った場合でも、出資者が責任を負う範囲はあくまでも出資額の範囲内に限られるという意味です。事業に失敗して倒産したとしても、個人の財産には影響しません。
この点は、合資会社や合名会社と明確に異なる点でもあります。合同会社も有限会社も、リスクを出資額に限定して事業ができるため、個人事業主の法人成りや小規模経営に適しているといえます。
役員の任期が定められていない
株式会社の場合は、取締役や監査役といった役員に任期が設けられており、一定年数ごとに重任や再任の登記が必要になります。
一方、有限会社と合同会社の場合、役員の任期に関する規定がないため、一度就任すれば変更がない限り登記の必要はありません。
そのため、登記にかかる費用や手間を軽減できるメリットがあります。特に家族経営などで役員が固定される経営体制の企業では負担が少なく済みます。
決算公告が義務づけられていない
株式会社には、毎年の決算内容を公告する義務があります。一方で、有限会社と合同会社には、この決算公告義務はありません。
ただし、銀行融資や取引先の信用調査では決算書の提出を求められることがあるため、社内での財務管理は適切に行う必要があります。
組織変更ができる
有限会社も合同会社のどちらも、組織変更が可能です。
たとえば、将来的に信用力を高めたい場合や外部資本を導入したい場合、株式を発行したい場合は、合同会社や有限会社から株式会社に変更できます。
なお、現在では有限会社の新設こそできませんが、既存の有限会社は「特例有限会社」として存続しています。もちろん、合同会社と同じように、組織再編や体制変更が可能です。
新しく設立できる会社は4種類
現在、新たに設立できる会社形態は4種類です。それぞれに特徴があり、出資者の責任の範囲などが異なります。
株式会社
株式会社は、最も知名度が高い会社形態で、大企業から中小企業まで幅広く利用されています。
株式会社では株式を発行して資金調達を行うことができます。所有と経営が分離しており、出資者(株主)が取締役を選任し、経営を委任しています。
なお、株式会社の出資者は有限責任です。
合同会社
合同会社は、出資者が直接経営を行う会社形態で、所有と経営が同一です。そのため経営の自由度が高いのが特徴です。
設立時の費用が抑えられるため株式会社と比べて小規模なビジネスにも向いていますが、近年では大手企業の子会社としての設立も増えています。
合同会社の出資者(社員)も有限責任です。
合資会社
合資会社では、出資者が「無限責任社員」と「有限責任社員」に分かれていて、設立時には最低でも無限責任社員が1人、有限責任社員が1人必要です。
無限責任社員は会社の債務に対して無限の責任を負うためリスクが高くなりますが、経営への影響力も大きくなります。
合名会社
合名会社は、出資者の全員が無限責任社員となる会社形態です。設立数が非常に少なく、現在では制度だけが残されているといってもいいでしょう。
それぞれの略称と英語表記は?
それぞれの会社には、略称や英語表記があります。代表的なものを表にしました。
会社形態 (正式名称) |
略称 | 略字 | 英語表記 |
---|---|---|---|
合同会社 | 合同 | (同) | G.K.:GodoKaisha Inc.:Incorporated LLC:Limited Liability Company |
合資会社 | 合資 | (資) | GSK:GoShi Kaisha |
株式会社 | 株式 | (株) | Co., Ltd.:Company Limited Corp.:Corporation Inc.:Incorporated |
合名会社 | 合名 | (名) | limited partnership company |
合同会社のメリットとデメリット
合同会社は、起業初期の法人設立にも適した会社形態です。ここでは、そのメリットとデメリットを整理しておきましょう。
メリット
合同会社のメリットとしては以下の点があります。
まず、合同会社は、株式会社に比べて設立時のコストを抑えることができます。合同会社の場合は定款の作成は必要ですが「定款認証」が不要で、その分の経費が発生しません。初期投資を最小限に抑えて会社を設立したい人に適しています。
次に、経営の自由度の高さです。合同会社では、出資者自身が経営を行うため意思決定がスピーディーです。株式会社のように株主総会や取締役会がなく、シンプルで柔軟な運営が可能です。そのため、少人数で効率よくビジネスを展開できます。
最後に、税務面でのメリットです。合同会社では、利益分配のルールを出資比率に関係なく自由に定めることができるため、所得を分散させて節税できます。複数人で出資し、分配のバランスを工夫すれば、所得税や住民税の負担を軽減できるケースもあります。
デメリット
一方で、合同会社にはデメリットもあります。
合同会社は株式会社に比べると一般的な認知度が低いのが現状です。会社の規模感や信頼性が法人の種類で判断されることもあるため、ビジネスに影響を及ぼす可能性があります。
また、合同会社は株式を発行することができません。そのため外部から出資を受けて資金調達を行う場合に制約が生じます。中長期的に大規模な資金調達の予定があれば、組織変更が必要です。
有限会社は家族経営が多い
有限会社は、設立はできませんが運営はされています。もともと、中小企業向けの制度として設計されていたこともあり、家族経営の企業も多くあります。出資者数の上限や、株式公開ができない制約があるため、思わぬ外部からの干渉がなく経営を維持しやすい企業です。
そのため、家族や親族、仲間同士で出資・経営するスタイルに適しており、現在でも安定して経営を行っている企業があります。
特例有限会社について
2006年の法改正によって、有限会社は新設できなくなりました。ですが、それ以前に設立された有限会社は「特例有限会社」として現在でも存続しています。
特例有限会社には、以下のような特徴があります。
- 株式の発行ができる(非公開)
- 役員の任期がない
- みなし解散のリスクがない
株式会社では役員の任期の管理が必要ですが、特例有限会社では役員の任期がないため変更手続きが不要です。また、合同会社は株式を発行できませんが、特例有限会社は、非公開であれば株式の発行ができます。
また、株式会社にはみなし解散のリスクがありますが、合同会社と有限会社にはみなし解散のリスクはありません。
合同会社と有限会社には違いも共通点もある
合同会社と有限会社には、それぞれ特徴とメリットがあります。現在、新たに設立できるのは合同会社ですが、特例有限会社として運営を続ける企業も数多く存在します。
合同会社と有限会社には制度上の違いがあります。
合同会社は、設立が自由で柔軟な経営ができる反面、社会的な認知度が低い傾向があります。一方、有限会社は新設こそできませんが、特例有限会社として存続している有限会社は老舗企業と捉えられることもあります。
どちらも家族経営など安定志向の企業に適していますが、有限会社は新設できません。新しく会社を設立する場合は、現在設立できる4種類の法人から目的や経営方針に適した形態を選びましょう。