最終更新日:2025/5/8
最短2日で会社設立するには?やるべき事前準備と具体的な手順を解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 最短2日で会社設立するための手順や事前準備
- 最短2日で会社設立する場合の注意点
- 会社設立を最短で行うサポートをしてくれる専門家
本来、会社の設立には複雑な手続きが必要です。 とはいえ「取引を継続するために速やかに法人化してほしいと取引先から言われた」「大安の一粒万倍日に法人としてスタートを切りたい」といった理由で、会社設立を最短期間で行いたい人もいるかもしれません。
ポイントを押さえれば、会社設立の手続きは最短2日で行うことが可能です。ただし、そのためには準備すべきことや注意点がいくつかあります。
この記事では、最短2日で会社を設立する手順や、準備すべきことについて解説します。法人登記に必要な書類のテンプレートも用意しているので、スムーズな会社設立手続きに利用してください。
目次
会社設立の手続きにかかる日数は最短2日
一般的に、会社設立には2週間~1カ月ほどかかるといわれていますが、ポイントを押さえて事前準備をしておけば、最短2日で会社設立を終わらせることも可能です。
ただし、最短2日でできるのはあくまでも法務局での法人登記申請までとなり、法人登記が完了するには1週間ほどかかります。
法人登記の完了後でないとできない法人口座の開設、税務署や都道府県税事務所への必要書類の提出、労働基準監督署や年金事務所への届出などは今回の記事には含まれていないという点にご注意ください。
まずは、会社設立をスムーズに進められるよう、手続きの流れを知っておきましょう。最短2日で会社を設立する流れは以下のとおりです。
- 発起人と役員全員の印鑑証明書を取得する
- 会社概要や設立要項を決定する
- 定款を作成し、公証役場で認証する(合同会社は認証不要)
- 資本金を払い込む
- 登記申請書を法務局へ提出する(法的な設立日)
最短2日で会社設立するには、資本金の準備をはじめ、定款の認証や法人登記申請に必要な書類などを漏れなく用意することが欠かせません。また、法務局へ法人登記申請をした日が会社設立日になるため、設立日にこだわりたい人は申請日にも気をつけましょう。
最短2日で会社設立するためのToDoリスト
最短2日で会社を設立するためには、1日目と2日目でやるべきことを分けて、時間のロスを減らすことが重要です。ここでは、会社設立を行うためのToDoリストを1日目と2日目に分けて、詳しくご紹介します。
■最短2日で会社設立するためのToDoリスト
To Do | 1日目 | 2日目 |
---|---|---|
・発起人と役員全員の印鑑証明書を取得する | ・公証役場で定款認証を受ける | |
・会社設立要項を決定する | ・銀行で資本金を振り込み、通帳に記帳する | |
・定款などの必要書類を用意する | ・法務局に法人登記申請をする | |
・公証役場の予約を取る |
1日目:発起人と役員全員の印鑑証明書を取得する
会社を設立するには、発起人と役員全員の実印と印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は、住所地を管轄する役所の窓口、またはマイナンバーカードがあればマルチコピー機のあるコンビニでの申請も可能です。
株式会社の設立では、公証役場と法務局の2カ所の手続きで必要になるため、発起人が役員も兼ねる場合は、自身の印鑑証明書を2部用意しておきましょう。
また、法人登記では会社の実印も必要となり、使用した実印は法務局に登録されます。会社の実印(会社代表者印)とは、会社名に加えて「代表取締役印」や「代表者印」といった役職名が刻印されているものです。
会社の実印の準備が間に合わなかった場合、個人の実印で法人登記しても問題はありません。特に会社設立のスピードを重視する場合には、いったん代表取締役個人の実印で登録して、後から変更するほうが設立までの期間を短縮できます。
なお、最初に個人の実印で登録した場合は、会社の実印ができた段階で、実印を変更する「印鑑(改印)届書」を法務局へ提出する手続きが必要です。書類は法務局のWebサイト「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」からダウンロードできます。
参考:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式|法務局
1日目:会社設立要項を決定する
株式会社でも合同会社でも、設立する際には会社の基本ルールを定めた定款(ていかん)という書類を作成しなければなりません。定款に記載すべき事項は会社法で定められているため、以下の項目は必ず決める必要があります。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 1株あたりの金額
- 発行可能株式総数
- 設立日
- 事業年度
- 発起人(出資者)
- 役員の構成や任期
定款に記載した項目は後から変更することも可能です。ただ、その場合、株主総会で定款変更の承認が必要になります。
また、設立要項のなかには設定を誤るとトラブルに発展するものもあります。資本金の設定や事業年度、役員の構成についてなど、不安な点がある場合は税理士などの専門家に相談しましょう。
定款の作成方法については、以下の記事もあわせてご確認ください。
1日目:定款などの必要書類を用意する
1日目に必要書類の収集や作成を行っておけば、2日目は提出するだけになるため無駄な時間を省けます。会社設立の手続きでは、以下のような書類が必要になります。
- 定款
- 発起人決定書(株式会社は必要)
- 就任承諾書(合同会社で定款に代表社員を記載した場合は不要)
- 本店所在地および資本金決定書
- 出資金の払込証明書(株式会社の場合は代表取締役、合同会社の場合は代表社員が発行)
- 会社実印の印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
- 設立登記申請書
- 登記すべき事項を記載した用紙(CD-Rなどの記録媒体でも可)
これらの書類の準備は、慣れていない場合、時間がかかります。また、書類に記載ミスがあると、会社設立ができないこともあります。
最短で会社設立を進めるには、書類作成の専門家である行政書士や、登記の専門家である司法書士に依頼することも検討してみましょう。
なお、会社設立に必要な書類一式のテンプレートは、以下よりダウンロードできます。ぜひ書類の準備に利用してください。
<会社設立を最短2日で行いたい人必見!>
会社設立時に必要な書類テンプレートはこちら(zipファイル 639KB)
1日目:公証役場の予約を取る
株式会社を設立する場合、会社の本店所在地を管轄する公証役場に定款を認証してもらう必要があります。事前予約がないと認証に時間がかかったり、その日のうちに認証してもらえなかったりする可能性があるため、遅くとも前日には公証役場の予約を取りましょう。
公証役場の予約は、電話やメールや問い合わせフォームで行います。本店所在地を管轄する公証役場は、日本公証人連合会のWebサイトで確認しましょう。
なお、合同会社の設立では、定款自体は必要ですが、公証人による認証は不要です。
2日目:公証役場で定款認証を受ける
2日目はまず、公証役場で定款の認証を受けます。
定款の認証手数料は、資本金が100万円未満かつ「発起人が3人以下、法人出資でない、出資者が発起人のみ、取締役会がない会社」の場合は1万5,000円です。資本金100万円未満でこれら4条件を満たさない場合は3万円となります。資本金が100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他の場合は5万円です。
前述のとおり、これらの公証役場での定款認証は、合同会社の設立では不要となります。
2日目:銀行で資本金を振り込み、通帳に記帳する
法人登記前は法人口座を開設できないため、資本金は発起人の個人口座に振り込むことになります。発起人が複数人いる場合は、代表者1人の個人口座に振り込みます。
資本金の払込みを証明するためには、口座残高ではなく振込みによる証明が必要となります。
したがって、すでに個人口座に資本金とするお金が入っている場合も、そちらを一度引き出してから改めて振り込む必要があるため注意しましょう。
振込みが完了したら、資本金の払込証明書の添付資料として、通帳の表紙と表紙の裏(見開きで支店名などが記載された1ページ目)、資本金の振込みが確認できるページをコピーします。
なお、資本金は会社設立の初期費用や運転資金に使うことができますが、払い込んだ後にプライベートな用途で使うことはできません。会社設立後の生活費分を確保した上で、資本金にできる金額を慎重に判断する必要があります。
資本金の額は、社会的な信用や融資審査、税金にも関わるため、金額の設定に不安がある場合は税理士に相談しておくと安心です。
2日目:法務局に法人登記申請する
資本金の払込証明書、公証役場で認証を受けた定款、法人登記に必要な書類を準備し、法務局で登記申請をします。法務局の窓口へ書面で提出、またはオンラインで申請する方法があります。
なお、法人登記には登録免許税がかかります。
株式会社の登録免許税は「資本金額×0.7%」もしくは「15万円」のどちらか高いほうの金額、合同会社の登録免許税は「資本金額×0.7%」もしくは「6万円」のどちらか高いほうの金額です。法務局の窓口にて現金か収入印紙、インターネットバンク、ATMのいずれかの方法で納めます。
ここまでが、最短2日で会社設立を行う流れです。1週間ほどで法人登記が完了したら、会社として活動することができます。
個人の実印で法人登記した場合は、登記完了後に、会社実印の用意や印鑑(改印)届書の提出を忘れないようにしましょう。また、法人口座の開設や税務、社会保険などの手続きも必要です。
最短2日で会社設立する際の注意点
最短2日間で会社を設立する際には、以下のような点に注意する必要があります。後から手間が増えたり設立ができなかったりしないよう、しっかり確認しておきましょう。
設立手続きは合同会社のほうが早いがデメリットもある
合同会社は、公証役場での定款認証が不要なため、会社設立にかかる時間は株式会社よりも短縮できます。また、認証手数料がかからず、法人登記の登録免許税も株式会社より安いため、費用を抑えることができます。
ただし、株式会社や代表取締役という称号が欲しい場合や、大規模な資金調達を検討したい場合は株式会社のほうが向いています。将来的に上場を目指したいという場合も、当然ながら株式会社であることが必要です。
合同会社から株式会社に変更することも可能ですが、手続きの手間や費用がかかるため、法人形態は設立にかかる時間だけで決めないように注意しましょう。
土日祝日を挟む場合は最短2日で設立できない
会社の設立日は、法人登記の申請日になります。法務局が休みの日は、会社設立ができないため注意しましょう。
法務局の窓口対応時間は、平日の午前9時~午後5時です。土日祝日、年末年始期間(12月29日~1月3日)は休業となります。
最短で会社設立するなら税理士と行政書士、司法書士に相談しよう
設立要項が決められなかったり、書類の準備が終わらなかったりすると、最短で会社を設立することはできません。また、定款に漏れや誤りがあるとやり直しになるほか、設立後のトラブルになることもあります。
こうした状況を回避するには、会社設立の手続きを代行できる専門家の力を借りることが大切です。
たとえば、定款など会社設立に関する書類の作成や、定款認証の代行は行政書士に依頼できます。また、登記申請書類の準備や申請の代行は司法書士に依頼できるため、振り分けて依頼しましょう。
あわせて、税理士に資本金の適切な金額設定や事業年度、役員の構成などを相談しておくと、会社設立後の節税対策やトラブルの回避につながります。
特に税理士には設立1期目の決算を依頼することになるため、設立段階から信頼のおける税理士を探しておくといいでしょう。税理士に相談すると、行政書士や司法書士と連携してもらえることもあるため、多くの士業が在籍するグループ法人などを検討してみるのもおすすめです。
専門家に依頼した場合の会社設立費用
専門家に代行を依頼すると費用がかかるため、自分で手続きしようという人もいるかもしれません。しかし、最短で会社設立を行うには、専門家の力は必要不可欠といえます。また、手続きの方法によっては、自分で手続きした場合と専門家に依頼した場合の費用に、大きな差が出ないことがあります。
たとえば、資本金100万円の株式会社を設立した場合、自分で行うときと専門家に依頼したときの費用の差は1万円です。内訳は以下の表のようになります。
■資本金100万円の株式会社を設立した場合の費用例
自分で会社設立を行う場合 | 専門家に依頼する場合 |
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合計:24万2,000円 | 合計:25万2,000円 |
なお、会社設立と税務を両方担える税理士事務所などでは、顧問契約を前提として会社設立時の手数料を無料にしていることがあります。会社設立後の税務を依頼することも考えると、会社設立の段階から税理士に依頼しておけばスムーズに手続きを進められるでしょう。
事前準備と専門家への依頼で、最短2日の会社設立を実現しよう
会社設立の手続きは煩雑ですが、事前準備と専門家の力を借りれば最短2日で法人登記申請までを行うことが可能です。今回紹介した流れや書類のテンプレートを参考に、適切な専門家のサポートを受けて会社設立をスピーディーに行い、ビジネスチャンスを逃さないようにしましょう。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立に関する無料相談を実施しています。税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。