最終更新日:2025/6/19
定款変更の費用はどのくらい?司法書士に依頼する場合の費用や登録免許税について解説!

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 定款変更の費用
- 司法書士の選び方
- 変更登記と定款変更の違い
会社を運営していくなかで、事業目的や本店の住所、社名などを変更するケースがあります。そのような変化に合わせて定款を変えるのが「定款変更」です。
定款を変更するためには株主総会の特別決議が必要で、変更内容によっては法務局での登記申請が必要となる場合もあります。さらに、手続きを自分で行うか、司法書士に依頼するかによって費用も大きく異なります。
この記事では、定款変更にかかる費用の内訳や定款変更をするときの注意点を詳しく解説します。
定款変更の費用はどのくらいかかる?
定款変更の費用はどの程度が目安なのでしょうか。必要な費用は「誰が手続きを行うか」や「登記が必要か」によって異なります。また、登記の有無でも大きく異なります。
自分で定款変更する場合
自分で定款変更の手続きをする際には費用はかかりません。株主総会を開催し、特別決議で定款変更を可決します。そして、その特別決議の議事録を作成して定款と一緒に保管すれば完了します。
定款変更のみであれば、会社内部の手続きだけで完結するため、ほぼ費用はかからないといえます。ただし、登記が必要な内容(商号や本店所在地など)の変更がある場合には、別途登録免許税がかかります。
司法書士に依頼する場合
定款変更は、司法書士に依頼できます。司法書士に依頼する場合は登録免許税とは別に依頼料が必要です。
定款変更の手数料の相場ですが、弊社では1万5,000円(議事録の作成)からお受けしています。登記が絡むケースでは、新たな現行定款を作成するため3万円となります。
ご依頼から登記完了までの目安はおよそ3〜4週間です。
司法書士の選び方
定款変更を司法書士に依頼する場合の選び方を解説します。資格を持った専門家であれば誰に依頼しても同じというわけではなく、付帯するサービスが異なります。
リマインドサービスの有無
司法書士のなかには、リマインドサービスを行っているケースがあります。リマインドサービスとは、定款変更や登記が必要なタイミングで、司法書士がリマインド(事前連絡)をしてくれるというものです。
たとえば、取締役の任期は最大で10年です。設立から10年という長い時間が経過すると、取締役の任期のタイミングを忘れてしまうことも珍しくありません。このような必ず手続きが必要なタイミングを教えてくれるサービスがあると、うっかり登記懈怠(けたい)になるリスクが下がるため、司法書士を選ぶ際のひとつの目安になります。
大手と個人事務所の違い
司法書士事務所には、個人で運営している事務所と大手の司法書士事務所があります。どちらも専門家であるという点では同じです。ただ、個人の司法書士事務所の場合、多忙により新規の飛び込み依頼をなかなか受けられないというケースもあるかもしれません。
司法書士に依頼する場合は、依頼を受けてもらえるかを問い合わせしましょう。


定款変更の流れ
定款変更は、会社の基本ルールを見直す大切な手続きです。スムーズに進めるためにも変更の流れを把握しておきましょう。
株主総会の決議が必要
定款変更をするためには、株主総会での特別決議が必要です。特別決議での可決には、議決権の過半数を持つ株主の出席と、その議決権の3分の2以上の賛成が求められます。
株主総会の議事録を作成する
定款変更をするために株主総会を開催した場合は、議事録を作成します。この議事録は、変更の内容と決議日、出席者などを記録した重要書類となります。
定款変更が可決された株主総会の議事録は原始定款とともに保管する必要があり、後述する登記申請の添付書類でもあるため必ず作成しましょう。
内容によっては変更登記が必要
定款変更を行う項目によっては、法務局での登記申請が必要になります。以下のような項目に該当する場合は注意しましょう。
会社名(商号)の変更
会社名(商号)を変更する場合は、定款変更だけでなく変更登記が必要です。新しい商号に変更した日(株主総会の特別決議で可決された日)から2週間以内に登記申請を行う必要があります。
事業目的の変更
新たな業種に参入する場合に、定款の事業目的を追加するケースがあります。事業目的の追加は法務局での変更登記が必要です。
本店所在地の変更
会社の本店の住所も登記すべき事項であるため、定款変更した場合は必ず変更登記が必要です。
登記の変更をせずに放置すると登記懈怠という状態になり、最大で100万円の過料が科される可能性があります。
発行可能株式総数の変更
事業拡大などで発行可能株式総数を超えた株式の発行が必要になった場合は、定款変更と変更登記のどちらも必要です。
株主総会の特別決議を行い、新しい発行可能株式総数を登記します。
株式の譲渡制限の変更
株式の譲渡制限の変更には、定款変更と変更登記の両方が必要です。
たとえば株式の譲渡制限をなくす場合は公開会社となるため、取締役の任期など、他の決まりについても変更する必要があるかもしれません。
資本金の変更
増資して資本金が増えた場合は定款変更は必要ありません。ですが、発行済株式総数が変更された場合は、必ず変更登記が必要です。
登記が不要なケースもある
定款変更をしても、登記が必要ないケースもあります。この場合は、社内の手続きのみで定款変更が終了します。
たとえば、取締役の任期変更は、法務局での登記を必要としません。そのため、株主総会の議事録を定款とともに保管しておくだけで問題ありません。
定款変更の際に必要な書類
定款変更には、株主総会の開催や登記申請などの場面ごとに必要な書類があります。ここでの定款変更の必要書類について解説します。
定款変更の必要書類一覧
定款変更のために必ず作成すべき書類は、株主総会議事録です。
定款変更のみをする場合は、議事録を定款と一緒に保管するだけで他に必要な書類はありません。
ただし、法務局での変更登記が必要な場合は、以下の書類を用意します。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
必要書類をそろえて2週間以内に法務局で変更登記を行います。この場合は登録免許税がかかります。
株主総会の議事録のひな形
株主総会の議事録と言われてもイメージがつかみにくいかもしれません。
株主総会の議事録は、定款変更の際に必ず必要なものであるため、ひな形からどのようなものかをイメージするといいでしょう。
定款変更をするときの注意点
会社の成長や環境の変化に伴った定款変更には、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、とくに見落としがちなポイントを3つに分けて解説します。
原始定款に手を加えない
会社設立時に作成・認証された「原始定款」は、公証人の認証を受けた正式な書類です。定款変更を行う際に、この原始定款の内容を直接書き換えたり、上から書き加えたりすることは認められていません。
どのような変更であっても、原始定款には手を加えないのがルールです。
定款変更を行う際には、株主総会の特別決議を経て変更内容を確定し、その後「株主総会議事録」を作成します。そして、原始定款自体はそのまま保存し、定款変更の決議をした議事録を一緒に保管するのです。定款変更の決議をした議事録とともに保管することで、原始定款を上書きしたことになります。
原始定款と一緒に議事録を保管する
定款を変更する場合は、必ず株主総会の特別決議が必要です。特別決議では、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の3分の2以上の賛成が必要とされます。
このときに作成する「株主総会議事録」は、定款変更の手続きのなかで非常に重要な書類です。変更登記が必要なケースでは、法務局に提出することになります。
公証役場に行く必要はない
会社設立時には、原始定款を公証役場で認証してもらう必要があります。しかし、定款変更では新たに公証人に認証してもらう必要はありません。
定款変更の手続きはあくまで会社内部の手続きです。株主総会を開催し、特別決議で可決されることで効力が生じます。ただし、変更内容によっては変更登記が必要で、法務局には行かなければならないケースがあります。
たとえば商号や本店所在地、事業目的などを変更する場合は、定款変更のほか、法務局に登記申請を行う必要があります。登記申請の期限は、株主総会で決議された日から2週間以内です。この期間を過ぎると、過料が科されることもあるため注意しましょう。
変更登記が必要な定款変更であっても、再度、公証人の認証を受ける必要はありません。
定款の基礎知識
最後に、定款とはそもそもどんなものなのかという「定款の基礎知識」について解説します。
定款とは何か
定款とは、会社の基本的なルールを定めたものです。会社設立時に発起人によって作られ、公証人が認証した定款は「原始定款」といいます。
定款には、この「会社がどこにあってどんな目的で誰が作ったのか」という基本的な情報と、役員の任期や資本金、株式の取引などに関するルールが記載されています。
会社は「定款の範囲内」で運営するのが原則です。
定款変更はいつでも何度でもできる
公証人によって認証された定款は、会社の実情に合わせていつでも変更できます。社名や事業目的といった重要事項についても変更可能です。
定款は、一度作ってしまったら、二度と修正できないわけではありません。正しい手続きを踏めば何度でも変更できます。
定款の記載事項
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、記載が義務ではない「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。
絶対的記載事項
絶対的記載事項は、定款に必ず記載しなければならない以下の事項です。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名(法人の場合はその名称)と住所
定款に記載する「目的」は、会社がどのような事業を行うのかを示すもので、設立の目的や活動内容を明確にします。
「商号」は会社の名称です。作成前にあらかじめ決めておく必要があります。
「本店所在地」は会社の住所で、番地までの正確な記載でも、最小行政区画(東京23区およびその他の市町村)までの記載でも可能です。
「出資財産の価額または最低額」は出資金のことで、発起人が会社設立時に支払う資金を指します。
「発起人」とは出資や設立手続きをする人・団体で、設立後は株主になります。定款には発起人の氏名や住所などを記載します。
絶対的記載事項が抜けていたり、正しく記載されていない場合は、定款が成立しません。
相対的記載事項
相対的記載事項については、記載がなくても定款は成立します。ただ、取締役会に関する記載、監査役や委員会の設置など、会社運営に関わる重要事項であって「記載しないと効力が生じないこと」でもあります。
任意的記載事項
任意的記載事項も相対的記載事項と同様、記載がなくても定款は成立します。任意的記載事項は「はっきりさせておきたいこと」で、定款に書いておきたい事項を記載します。
たとえば、事業年度や株主総会の議長についての記載などが任意的記載事項に該当します。
定款変更の費用の相場は3万円程度!自分ですれば節約できる
定款変更は、会社の成長やそれに伴う変化に柔軟に対応するための大切な手続きです。内容によっては法務局での変更登記が必要となり、登録免許税や司法書士への報酬などの費用が発生します。
自分で手続きを行えば費用を抑えられるというメリットがある一方、ミスのリスクが伴います。確実に進めたい場合は、司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。手続きの正確さと今後の法務管理の安心感を得るためにも、専門家の知識を活用しましょう。