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最終更新日:2025/11/27

定款の絶対的記載事項とは?絶対的記載事項の基礎を徹底解説します

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

定款の絶対的記載事項とは?絶対的記載事項の基礎を徹底解説します

この記事でわかること

  • 定款の絶対的記載事項とは
  • 相対的記載事項と任意的記載事項について

会社を設立する際には、必ず「定款(ていかん)」という会社の基本ルールを定めた文書を作成します。

定款の記載事項のなかでも絶対的記載事項は、定款に必ず書かなければならないと会社法で定められている重要な情報です。

事業目的、商号、本店所在地、出資金、発起人の情報などが絶対的記載事項に該当し、省略はできず、例外もありません。絶対的記載事項を正しく記載しなければ定款は効力を持たず、会社設立も進められないことになります。

この記事では、絶対的記載事項の意味や具体的な項目、記載すべき理由、さらに相対的記載事項や任意的記載事項との違いまで解説します。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

定款の絶対的記載事項は必ず記載しなければならない

絶対的記載事項を定款に記載しなければならないというルールは、国内のすべての会社に適用される会社法という法律で決まっています。

会社を新しく作るときには、必ず絶対的記載事項が正しく書かれた定款を作ることになります。

会社法 第二十七条

第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所

引用元 e-Gov 法令検索

会社法で決まっている5つの絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、会社を設立する際に、必ず定款に盛り込まなければならない項目です。これらは会社という法人の最も重要な情報であり、記載漏れがあると定款が成立しません。

ここでは、絶対的記載事項の各項目の意味と実務上の注意点を解説します。

事業目的

事業目的とは、会社がどのようなビジネスを行うかという活動内容を指します。

これは単に「こんなことをしています」という説明文ではなく、定款で定めた範囲内でビジネスを行うという活動範囲を表すものです。事業目的の記載がなければ、会社はその活動を行う法的権限を持たないと解されることもあります。

たとえば、事業目的に「飲食店の経営」と書かれている場合、飲食業は可能ですが、ITサービスを始めようとしたときには目的の追加が必要になります。

かといって「いつか始めるかもしれない」と、事業内容を広く記載しすぎると「何をしている会社かわからない」と金融機関や取引先から不審に思われることもあります。

そのため、現実的に行う事業を中心にしつつ、近い将来に拡大する予定の事業も考慮して書くのが一般的です。目的の記載例や書き方については、以下の記事でより詳しく解説しています。

商号

商号とは、会社の名称、つまり「社名」のことです。

会社のイメージを決定づける部分であり、取引先や顧客が最初に接する会社の情報でもあります。

商号の決定にはいくつかのルールがあります。まず、同じ所在地に同一の商号・事業目的を持つ会社は登記できません。また、公序良俗に反する名称や他社と混同してしまうような名称も禁止されています。

ただし、それ以外であれば基本的に自由で、ブランド戦略や将来の展開を見据えて自分で好きな名前をつけることができます。

本店の所在地

本店所在地とは、会社の「本店」がある住所のことです。登記簿に記載される情報であり、この住所は会社の所在地として公開されます。

所在地は、最小行政区画(市区町村まで)を指定すればよいとされていますが、番地まで正確に記載しても問題ありません。

また、会社の信頼性や銀行口座開設の審査に影響する可能性もあるため、実際の事業活動の場所と本店所在地は一致させておくのが望ましいです。

設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」とは「出資金」のことです。これは、発起人が会社のために拠出する資金のことです。つまり事業の元手となる資金です。

定款には出資金額などを明記しなければなりません。出資金の金額に法律上の下限はありませんので、実際には資本金1円の会社も設立可能です。

とはいえ、出資金は会社の規模や事業計画に見合った金額を設定するのがベストです。

たとえば、飲食店を運営する場合には店舗賃料や内装費、仕入れ資金などをまかなえる金額が必要になります。一方、IT系の小規模なスタートアップであれば少額でも運営できるかもしれません。

いずれにせよ、事業開始に必要な資金や金融機関からの信用を考慮して、ある程度の額を設定するのが一般的です。資本金は会社の信用力を示す指標として取引先や銀行も注目するため、形だけのものではありません。

発起人の氏名(法人の場合はその名称)と住所

発起人とは、会社の設立手続きを行う人や法人のことです。具体的には、出資を行い、定款を作成し、登記申請、設立時取締役の選任などを行う者を指します。

原則として、発起人は会社設立後に株主となり、会社の所有者としての権限を持つことになります。定款には、発起人の氏名(法人の場合は名称)、住所を必ず明記しなければなりません。

発起人は会社の持ち主になるため、会社の信用を左右する存在でもあります。取引先や金融機関は「どのような人物が会社を作ったのか」を確認することが多く、発起人の経歴や信頼性が会社の評価につながる点も意識しておくべきでしょう。

絶対的記載事項を書くべき理由

会社を設立する際、定款に必ず記載する「絶対的記載事項」ですが、法律で記載が義務づけられているのには理由があります。

絶対的記載事項を定款に記載するのは単なる形式上のルールではなく、会社の存在を社会に示し、健全な経営や安全な取引を支える大切な情報だからです。

ここでは、絶対的記載事項が必要な理由を解説します。

会社の方針を示すため

定款は、会社の基本方針を定めた文書です。定款は「会社のルールブック」や「会社の憲法」と呼ばれることもあります。

絶対的記載事項は、定款の記載事項のなかでも特に重要な情報です。「誰が設立した会社で、どこに拠点を構えていて、どのような事業を行うのか」を明確にしているのです。

取引先や関係者にとって、これらの基本情報は取引をする上での判断材料となります。絶対的記載事項は、会社の活動の枠組みを内外に宣言する役割を担っているのです。

株主と経営陣のパワーバランスを保つため

株式会社の中心は、会社の所有者である株主と、経営を任されている取締役などの役員とで成り立っています。

役員は会社の所有者ではないものの経営判断をする権限を持つため、もし定款がなければ株主を無視して自分の利益を優先した行動に走る危険もあります。

絶対的記載事項を含む定款は「株主総会の特別決議がないと変更できない」ため、株主と役員の健全なパワーバランスを維持する機能を持ちます。

大きな権限を持つ役員が自分の利益のために勝手なことをしないようにするためにも、株主総会の特別決議がないと変更できない定款の存在は重要です。

第三者の保護のため

絶対的記載事項には、第三者を守るという機能もあります。

取引先や金融機関など、会社と関わる外部の人々にとっては「どこの会社で、どんな活動をしており、誰が設立したのか」が明確であることが取引上の安心につながります。

絶対的記載事項は登記事項でもあるため、登記簿を通じて確認できます。第三者はリスクを避け、安心して契約や取引を結ぶことができるのです。

絶対的記載事項以外の記載事項

定款には、絶対的記載事項以外にも「相対的記載事項」と「任意的記載事項」があります。

必ず書かなければならないのは絶対的記載事項のみで、相対的記載事項や任意的記載事項は書かなくても定款として成立します。

ここでは、絶対的記載事項以外の2種類の記載事項を解説します。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、書かなくても定款は成立するものの記載がなければ効力が生じない事項です。

たとえば、取締役会に関する記載や、監査役や委員会の設置といった事項が相対的記載事項となります。相対的記載事項に関しては、可能な範囲で書いておくほうが設立後の会社運営がスムーズになります。

会社法 第二十八条

第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

引用元 e-Gov 法令検索

任意的記載事項

任意的記載事項は、絶対に記載しなければならないものではなく、また、相対的記載事項のように書かなければ効力がないという内容でもありません。

任意的記載事項は、書かなくてもいいけど最初からはっきりさせておきたい項目です。事業年度や公告の方法などが任意的記載事項に該当します。

定款の絶対的記載事項は変更可能

絶対的記載事項は定款の記載事項のなかでも特に重要なものですが、定款認証を受けて登記を完了させた後でも変更できます。

株主総会の特別決議

株式会社の定款を変更する場合は、株主総会の特別決議が必要です。取締役などの経営陣が自らの判断で勝手に定款を変えることはできません。合同会社の場合は、総社員の同意が必要です。

株主総会の特別決議とは、以下の条件を満たす決議を指します。

  • 議決権の過半数を持つ株主が出席する
  • 出席した株主の3分の2以上の賛成

株主総会の特別決議で可決されれば、絶対的記載事項でも変更できます。

変更登記が必要

定款を変更した場合、変更の内容によっては登記変更が必要になります。絶対的記載事項を変更する場合は、必ず法務局で登記変更の手続きが必要です。

また、相対的記載事項や任意的記載事項の変更であっても、内容によっては変更登記が必要になるケースがあります。

定款と登記は別のもの

会社設立をするときに「定款」と「登記」という言葉がよく出てきますが、両者はまったくの別物です。ここでは、定款と登記の違いを解説します。

定款とは「会社の基本ルール」を定めた内部文書

定款は「会社の基本ルール」です。そして絶対的記載事項は、会社の名前や所在地、何のために誰が作った会社なのかといった根本的な情報を記載した核のような部分です。

定款は会社の最も重要な文書であり、定款で定められた範囲で会社はさまざまな取引を行います。ただ、定款そのものは公的なものではありません。

株式会社の場合は定款認証という手続きを行なって「お墨付き」をもらいますが、あくまで定款は会社の内部文書です。定款そのものは公開されず、社内で保管します。

定款認証については以下の記事で詳しく説明しています。

登記は会社の実態を「公にする」方法

定款が会社の内部文書であるのに対し、登記は会社情報を公に開示する手続きです。登記された会社の基本情報は、登記簿という公的な帳簿に記録されます。

定款の一部の情報は「登記事項」として登記簿に記載されるため、公開情報となります。ただし、公開されているのはあくまで登記情報であり定款そのものではありません。

定款の一部の登記事項のみが「公の情報」となります。

定款の絶対的記載事項の作成方法

絶対的記載事項を含む定款は、どのように作成するのでしょうか。専門家に依頼する方法と自分で作成する方法について解説します。

専門家に依頼する場合

定款の作成や変更は、専門家に依頼できます。会社設立にはいくつものステップがあり、定款作成(に含まれる絶対的記載事項の検討)はその膨大な作業の一部に過ぎません。

特に、定款の絶対的記載事項は慎重に検討・記載する必要があります。変更する場合は株主総会の議事録を作成するほか、株主総会の決議にもルールがあるため決議の方法についても熟知し、株主の合意が得られるよう変更の内容を精査しなければなりません。

こうした作業を専門家に依頼することには、手続きの迅速化や効率化を行うという意味でメリットがあります。

司法書士

会社設立や定款変更は、司法書士に依頼できます。司法書士は、会社設立や定款変更などをすべて代行できるため、定款の絶対的記載事項の変更に伴う書類作成や登記手続きをすべて任せることができます。

会社を設立する際の手続きや書類の準備は極めて煩雑です。定款作成も含めて専門家に依頼すれば、手間を省いてスムーズに会社設立を行えます。

行政書士

定款の作成は、行政書士に依頼して代行してもらう選択肢もあります。

司法書士のようにすべての作業を任せることはできませんが、定款の作成や公証役場での認証手続きの代行は行政書士に依頼できます。

自分で作成する場合

定款は、絶対的記載事項を含めて自分で作成・変更しても問題はありません。その場合のポイントについて解説します。

決まったフォーマットはない

定款の絶対的記載事項は、記載すべき項目こそ会社法で決められていますが、フォーマットは自由です。公式のテンプレートでなければ認められないというものではありません。

作成にあたっては、WordやGoogleドキュメントなどの一般的な文書作成ツールを使用して問題ありません。

重要なのは、絶対的記載事項が漏れなく正しく定款に記載されているということで、フォーマットが重要なわけではありません。

自分で定款を作成したい場合には、以下の記事で定款の作成方法を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

自分で作成した場合の失敗事例

自分で定款を作る場合、最低限の法律知識が必要です。また、作成する定款は公証役場や法務局で認められる内容でなければなりません。

自宅を本店所在地にすることもでき、番地まで指定する場合は自宅の正式な住所の記載が必要です。普段使用している住所の略記では認められない可能性があります。

他にも、固有名詞を入れた商号が認められなかったというケースもあるため、必ず事前に確認しましょう。

税理士 森健太郎
税理士 森健太郎からひと言
自分で定款を作成したケースで、発行可能株式総数を決めておらず法務局で補正になった事例もありました。何となくこれでいいといった作り方ではなく、しっかりと内容を精査しましょう。

定款の絶対的記載事項は必ず記載する重要事項

定款の絶対的記載事項は、どのような会社でも必ず記載する事項です。これは会社法で定められたルールであり、絶対的記載事項が書かれていない定款は無効となります。

定款は会社の基本ルールを定めた重要な内部文書であり、株式会社を設立する際には認証を受けた定款が必要です。

定款の絶対的記載事項は定款の核ともいえる部分ですが、会社を設立した後でも株主総会の特別決議で変更できます。

定款の作成や変更は自分でもできますが、法律の知識が求められるため手続きが複雑に感じられるかもしれません。そのようなときには、司法書士や行政書士に依頼して手続きを代行してもらうこともできます。

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