最終更新日:2026/2/13
会社員をしながら社長はできる?バレるリスクや保険について解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること
- 会社員が社長になってもいいのか
- 会社にバレる定番の理由
- 会社員が社長になった場合の保険や税金
会社員を続けながら、自分の会社を立ち上げて社長になりたいと考える人は少なくありません。現実にも、会社員をしながら社長として起業している人はいます。
一方で「会社員を続けながら社長になっても問題ないのか」「起業したことが会社にバレたらどうなるのか」と、不安を感じる人も多いでしょう。
この記事では、会社員を続けながら社長を務めることが法律上認められるのか、注意すべきポイントは何かを解説します。あわせて、会社員が起業して社長になった場合の社会保険や住民税の扱い、会社設立の流れなどもわかりやすく紹介します。


目次
会社員をしながら社長をしてもいい
会社員をしながら自分の会社を設立し、社長として活動することには特に法律上の問題はありません。ただし、勤務先の就業規則や副業禁止規定に反していないか、利益相反にならないかなどといった注意点はあります。
ここでは、会社員をしながら社長になる場合に守るべきルールを説明します。
会社員と社長の両方をしても法律的には問題ない
まず、会社員が別の会社の社長になることは法律上ほとんど問題ありません。
従業員としてある会社と雇用契約を結びながら、別の会社の社長をすることは可能です(公務員など、法令により営利企業の役員就任が制限される職種は例外)。
会社法にも、労働基準法にも「会社員と社長を兼務してはいけない」という規定はありません。そのため、法律だけを見れば、会社員をしながら社長をしても何も問題はないのです。
ただし、会社員をしながら社長をする場合、勤務先の会社との関係においては注意が必要です。
たとえば、同じ業種で会社を立ち上げると、利益相反や企業秘密の持ち出しといった問題が生じる恐れがあります。その場合、民法上の信義則違反や損害賠償の問題に発展したり、不正競争防止法に抵触したりする恐れがあるため、慎重な検討が必要です。
会社員をしながら起業するケースはある
会社員をしながら社長になるケースは決して珍しくありません。将来的に独立を視野に入れている人が、会社員として働きながら副業として小さな会社を作り、少しずつ事業を育てていくケースです。
この場合、会社員としての給与収入を維持しながら事業にチャレンジできるため、収入面のリスクを抑えられます。
一方で、勤務先の就業規則で副業が制限されているケースもあります。つまり「法律上は可能でも、勤務先のルールには従う必要がある」ということです。
会社員をしながら社長になったらバレる?その原因は?
会社員をしながら社長になる人の中には、何もやましいことがなくても「会社にバレたくない」と考える人も多いです。
実は、まったく痕跡を残さずに社長を続けることは難しく、社会保険や住民税の通知、登記情報などからバレてしまうケースは多く見られます。
しかし、必ずバレてしまうというわけではありません。ここでは、会社員が社長になったときに勤務先の会社にバレるきっかけ、そのリスクを下げるために確認しておきたいポイントを整理します。
副業禁止規定がないかチェック
会社員が社長になる場合に、まず確認したいのが勤務先の就業規則と雇用契約です。
勤務先の会社が、副業禁止規定や、競業を禁じる条項を就業規則で定めている場合、社長として活動することが会社のルール違反になる可能性があります。特に同業種で起業する場合は、競合行為とみなされるリスクが高いため要注意です。
就業規則で明示されていなくても、内規や雇用契約書で制限されていることもあります。「知らなかった」では済まない場合もあるため、起業を検討する前に、書面で内容を確認することが重要です。
ただし、会社の規定は法律ではないため違法にはなりません。とはいえ、契約上の義務違反になる可能性はあるため、必ず確認しましょう。
社会保険の通知
会社員をしながら社長になると、社会保険の扱いが変わる可能性があります。
勤務先の会社で健康保険・厚生年金保険に加入したまま自分の会社で役員報酬を受け取ると、条件によっては2つの事業所で社会保険の加入対象となります。
このような場合「二以上事業所勤務被保険者」として扱われ、「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」が発行されます。
この通知書は事業所あてに送付されるため、勤務先の担当者が通知を目にすると「他の事業所でも社会保険に加入している」「別の会社に役員や従業員として所属している」という事実に気づくきっかけになります。
会社の登記簿謄本
会社の設立には、法務局での法人登記が必要です。登記事項が記載される登記簿謄本(現在事項証明書など)は、誰でも取得できる「公開情報」となります。
登記簿謄本には、基本的に代表取締役の氏名や住所も記載されるため、ここからバレる可能性は否定できません。なお住所については、株式会社では一定要件のもと「代表取締役等住所非表示措置」により、登記事項証明書などで代表者住所を一部非表示にできる制度があります。
何らかの理由で勤務先の関係者や取引先が謄本を取得した場合、代表取締役の氏名が記載される「役員に関する事項」から起業が判明することがあり得ます。
特に注意したいのが、勤務先と同じ業界で会社を立ち上げる場合です。同業他社として市場に出ていくと、競合先の情報を調べる過程で登記情報を確認される可能性があります。
会社員を続けながら社長をするなら、登記簿から勤務先に知られる可能性があることを理解しておく必要があります。
住民税の通知
会社員の住民税は、勤務先が毎月の給与から天引きして納付する「特別徴収」が一般的です。
会社員としての給与に加えて社長として役員報酬を受け取っている場合、合計所得が増えて住民税も増加します。特別徴収の場合、「昇給や賞与に大きな変化がないのに住民税だけが大きく増えている」という点から、経理担当者や総務にバレることがあります。
このリスクは、住民税を自分で納める「普通徴収」を選択することで軽減できますが、給与が複数ある場合、給与分だけを普通徴収に分けられない自治体もあります。
会社に知られたくない場合、普通徴収の選択が効くのは「給与所得以外」(事業所得・雑所得など)の収入に限られる点に注意してください。
つい話してしまう
意外なことに、自分がつい話してしまってバレるケースはよくあります。
同僚との何気ない会話の中で「実は会社を立ち上げていて…」と話したことで、社内に情報が広まり、上司の耳に入ってしまうパターンもあります。
起業の発覚は、社内での立場や信頼関係に影響することもあります。勤務先に知らせない方針の場合は、プライベートな会話にも注意が必要です。
会社にバレないようにする方法
会社に社長をしていることを知られたくない場合、バレるリスクを下げる工夫が必要です。
ただし、リスクを完全にゼロにするのは難しく、どうしても知られたくないなら「起業の方法を変える」という選択も重要です。
ここでは、できるだけ会社に知られるリスクを減らす方法を紹介します。
報酬を受け取らず会社の資産にする
1つ目の方法は「代表取締役としての役員報酬を受け取らず、利益を内部留保にする」というものです。
役員報酬がなければ社長としての新たな所得が発生しないため、住民税から発覚するリスクを抑えられます。
ただし、自分の生活費については会社員としての給与に依存することになります。代表をしている会社からお金を自由に引き出せず、収入アップにつながらない点には注意が必要です。
個人事業主として起業する
もう1つの方法として、法人化しないという選択肢もあります。いきなり会社を設立せず、まずは個人事業主としてスタートするのです。
個人事業主としての起業であれば、法務局での登記は不要です。そのため、登記簿から起業が発覚するリスクはありません。まずは、小さく事業を始め、売上が安定してから法人化する方法もあります。
ただし、個人事業主の場合、報酬はすべて自分のものになります。当然、確定申告をしなければならず、住民税の増加で会社に知られてしまうリスクはあります。
その場合は住民税の「普通徴収」を利用して、住民税を自分で納付することがリスク回避につながります。
会社員をしながら社長をした場合の保険は?
会社員をしながら社長になる場合、社会保険の取り扱いがどう変わるのかも大きなポイントになります。役員報酬の有無や金額によって、保険料の負担額や加入先が変わることがあるためです。
ここからは、役員報酬がある場合とない場合で、保険の扱いがどう変わるのかを整理します。
役員報酬で変わる
基本的に、会社員として勤務先で健康保険・厚生年金保険に加入している場合でも、自分の会社で役員報酬を受け取ると、その会社でも社会保険の加入対象となります。
一方、役員報酬を受け取らなければ、自分の会社では社会保険の加入義務が発生せず、勤務先の社会保険だけに加入し続ける形になるケースもあります。
どちらの保険に加入するか、両方の事業所で加入するかは、役員報酬の有無や働き方によって変わります。
役員報酬がない場合
自分の会社で役員報酬を受け取らない場合、原則として新たに社会保険に加入する必要はありません。
会社員として勤務先の社会保険に加入していれば、そのまま継続できます。この場合、社会保険の面から勤務先に起業が知られる可能性は比較的低くなります。
ただし、将来役員報酬を設定したり従業員を雇ったりして適用対象になれば、社会保険の手続きが発生します。
役員報酬がある場合
自分の会社から役員報酬を受け取る場合、原則、自分の会社でも社会保険に加入します。そして、勤務先の会社での社会保険もかけ続けることになります。
両方の勤務先で社会保険の適用対象になると、「新規適用届」や「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」などの提出が必要です。後者の届出では主たる事業所を選択し、標準報酬月額は各事業所の報酬を合算して決定されます。
手続きや通知の過程で勤務先に知られる可能性がある点に注意してください。
会社員をしながら社長をするメリットとデメリット
会社員を続けながら社長を務めることには、メリットとデメリットがあります。
会社員としての安定収入を維持しつつ、将来に向けて事業の土台を作れる一方、時間的・精神的な負担は大きくなります。ここでは、代表的なメリット・デメリットを整理します。
メリット
会社員を続けながら社長をする最大のメリットは、収入源を複数持てることです。
起業直後に事業が軌道に乗らなくても、会社員としての給与があるため生活費は賄うことができます。いきなり退職して起業する場合と比べると、これは大きな安心材料です。
また、会社員の経験を活かせるという利点もあります。将来の起業を見据え、経験を積むために会社員になるケースもあります。
将来の完全独立に向けてリスクを分散しながら会社を育てられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
もちろん、会社員と社長を兼ねることにはデメリットもあります。
まず、労働時間が長くなり、肉体的・精神的な負担が増えます。平日は本業の業務をこなし、プライベートタイムで会社運営をしなければなりません。そのため、過労や体調不良に陥るリスクも大きく、スケジュール管理と健康管理が課題になります。
さらに、会社設立には登録免許税などの設立費用がかかります。設立後も、社会保険などの各種届出、決算や税務申告などの手続きが必要です。これらのコストや手間を軽く考えてしまうと、想像以上に負担が大きく感じられるかもしれません。
最悪の場合、勤務先との関係で懲戒処分や信頼関係の悪化なども起こり得ます。メリットだけでなく、これらのデメリットも踏まえて判断することが大切です。
会社設立の流れ
会社員をしながら社長になる場合は本業と並行して準備を進めることになるため、スケジュールに余裕を持つことが重要です。
ここでは、会社設立の大まかな流れが把握できるよう、会社設立の5つのステップを紹介します。
会社設立のステップ
一般的な株式会社設立の流れは、次のとおりです。
- 商号(会社名)や事業目的など、会社の基本事項を決める
- 会社の印鑑を作成する
- 定款を作成し、公証役場で認証をしてもらう
- 出資金を払い込む
- 設立登記申請を行う
このほか、社会保険・税金関係の届出や法人口座の開設、事業によっては許認可申請なども行います。また、設立にあたって助成金や補助金を利用する場合は、別途手続きをしなければなりません。
会社員をしながらこれらを1人で進めるのは負担が大きいですが、税理士や社労士、司法書士などの専門家に手続きの一部を依頼すれば、時間と労力は大きく削減できます。
会社員が社長をしても問題ない!知られたくない場合は要注意
会社員をしながら社長を務めることは、法律上は禁止されていません。実際に、給与収入を維持しながら自分の会社を立ち上げる人も増えています。
一方で、就業規則の副業禁止規定や、社会保険・住民税・登記情報などから勤務先に知られてしまうリスクもあります。会社に知られたくない場合は特に、慎重な準備と情報収集が必要です。
また、会社設立の手続きは専門的な部分も多く、自己判断だけで進めると、思わぬミスでスムーズに進まないこともあります。
会社員を続けながら会社を設立するなら、税理士や社労士、司法書士などの専門家に相談し、自分の状況に合った進め方を検討することが大切です。
しっかりと準備を整えたうえで、一歩ずつ着実に起業への道を進んでいきましょう。


















