最終更新日:2026/2/4
シニア起業の始め方|年金・保険の注意点や必要な準備について税理士が解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- シニア起業のメリット・デメリット・注意点
- 起業したら保険や年金がどうなるのか
- シニア起業の始め方や利用できる融資
- 起業に関する相談先
人生100年時代とも言われる近年、定年後の収入源や日々のやりがいのために、起業という道を選ぶシニア世代が増えてきています。
50代後半、定年を迎えたあとなどに起業することを、近年は「シニア起業」と呼びます。
これまでの経験やスキルを活かしたいと考える人や、ずっとやってみたかった業種に挑む人など、シニア起業への思いや取り組む姿勢は人それぞれです。
しかし、どのようなビジネスで、どんな点に注意して起業するべきかを知っておかないと、思わぬミスで老後の資金を失ってしまう危険性もあります。
この記事では、シニア起業をする際に知っておきたい注意点や始め方などについて、税理士が詳しく解説します。
失敗のリスクを最小限に抑え「やってみてよかった」と思えるシニア起業を実現するため、ぜひ一度目を通してみてください。


目次
シニア起業とは?個人事業主で始める人が多い理由
シニア起業とは、一般的に50代後半から60代以降、定年退職前後やセカンドキャリアのステージで自ら事業を興すことを指します。
「起業」と聞くと大掛かりな準備や資金投資が必要になると感じがちですが、現代のシニア起業は、自身のこれまでのスキルや人脈、趣味を活かし、無理のない範囲で起業するスタイルも多くなっています。
また、起業とは必ずしも「会社を立ち上げること」を指すわけではありません。
より手軽に、管理しやすく、リスクを抑えられる「個人事業主」としての起業が、シニア起業では選ばれることが多いです。
シニア世代が個人事業主として起業するメリットは、主に以下の3点です。
- 初期投資と維持コストを抑えられる
- 公的年金への影響が少ない
- 事務負担が軽い
特に2番目の公的年金への影響については、シニア起業で重要となる部分です。
詳しくは「働き方で年金が変わることがある」の節を先にご確認ください。
ここからは、シニア起業のメリットとデメリットについて解説します。
シニア起業のメリット
- これまでの貯蓄や退職金、年金などで自己資金をまかないやすい
- 定年がない
- 日々にやりがいが生まれる
- 事業所得を得られる
シニア起業には、金銭面やスキルにおいて、若年層の起業よりも有利な点が多いです。
これまでに貯めてきた自己資金や、月々に得られる年金は、生活を維持しつつ起業するうえで非常に有用です。
また長年培ってきたスキルや知識、人脈があることも、0からのスタートになりがちな若年層の起業と比べて大きなアドバンテージになります。
また、自分で起業した場合には当然ながら「定年」が存在しません。
自分の体力や気力がある限り、何歳まででも働き、収入を得ることができます。
ビジネスを行うことで社会とのつながりも生まれ、やりがいを持って日々を過ごせるという点も、シニア起業の大きなメリットです。
さらに経済面においても、年金とは異なる「事業所得」を得ることは、インフレ局面において重要な意味があります。
年金は基本的に毎月定額のため、物価が上昇すると生活水準を維持することが難しくなるケースもあります。
しかし、起業した場合は基本的に自ら価格を設定できるので、インフレする市場に合わせて収益を多くすることも可能です。
年金と事業所得という複数の収入源を持つことは、心のゆとりにもつながるでしょう。
シニア起業のデメリット
- 体力や健康の管理をしないといけない
- これまでの経験がうまく活かせない場合もある
- 老後の資金を失ってしまう可能性もある
シニア起業で注意したいのが、労働による「時間的拘束」と「健康リスク」のバランスです。
事業を始めると、仕事と休みの境界が曖昧になりやすい点に注意が必要です。
自身の趣味や家族との時間を犠牲にしすぎないよう、あらかじめ「週に何日、1日〇時間まで」というように、働く時間を自分で決める自律性が求められます。
若年層の起業とは異なり、シニア期には体力的な限界が確実に訪れます。
過度な受注や、自身の稼働のみに依存するビジネスモデルは、休息時間を削り、結果として医療費が増大する本末転倒な状況を招く恐れがあります。

とくにシステム開発などは、納期の遅れによって多額の損害賠償が発生するリスクもあるので、シニア起業ではあまり風呂敷を広げすぎず、責任の範囲を小さくすることも重要です。
また、これまでの会社生活で培ってきた「意思決定のスタイル」が仇となる場合もあります。
起業すると、それまであった組織の後ろ盾は失われ、すべての契約やトラブルに対して自分自身が責任を負わなければなりません。
特に、自身の知識への自信から、客観的な市場調査をせず、独りよがりなサービスを展開してしまうと、短期間で運転資金が枯渇してしまうリスクも生じます。
シニア起業で必ず押さえるべき「準備」と「注意点」
起業する際にはさまざまな準備を行うべきですが、シニア起業の場合、若年層の起業と比べて条件が異なる部分もあるため、それにあわせた準備が必要になります。
シニア起業を行う際には、主に以下の点に注意しましょう。
- 生活資金を守る
- 固定費を小さくする
- 撤退ラインを決めておく
- 事前検証をしたうえで小さく始める
- 悪質な勧誘に注意する
具体的にどのような点に注意するべきかについて、詳しく解説します。
その1:生活資金を守る|事業資金と家計を分ける
20代や30代の起業と異なり、シニア起業は経営に失敗した際のリカバリーが難しい傾向があります。
若いうちであれば再就職などによって資産を再構築する時間が残されていますが、シニア期にはその猶予が確保できないケースも少なくありません。
シニア起業においては、まず最初に「自分の今後の生活にいくら必要なのか」というライフプランを考えることから始めるべきです。
たとえば65歳の方が、90歳ごろまでのライフプランを考える場合を想定してみましょう。
総務省の調査では、高齢無職世帯の1カ月の平均支出は、夫婦で約25万7,000円、単身世帯で約14万9,000円とされています。
家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯) 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)についてみると、実収入は252,818円、可処分所得は222,462円となった。 消費支出は256,521円、平均消費性向は115.3%となった。
中略
3 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯) 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)についてみると、実収入は134,116円、可処分所得は121,469円となった。 消費支出は149,286円、平均消費性向は122.9%となった。
単身世帯を想定し、月々の生活費を15万円とすると、年間で180万円、25年間で4,500万円の資金が必要になります。
年金でその一部をカバーできるとしても、突発的な病気などの支出も考えると、一定以上の貯蓄は確保しておく必要があると言えるでしょう。
シニアが起業する際には、こうした生活資金を確保しつつ、それ以外の部分を事業資金として活用する「守り」の設定が非常に重要です。
そのためには、必要な生活資金の額を把握するだけでは不十分です。
必ず、それまで利用していた個人口座と事業用の口座を分け、事業に使うお金とプライベートのお金を区別させましょう。
その2:固定費を小さくする|店舗・在庫・人件費に注意する
シニア起業で起きがちなのが、前々からの夢だったという理由で飲食店や雑貨屋などを始めるケースです。
自分がやりたいことを仕事にするのは、やりがいという点でも非常に重要ですが、こうした店舗や在庫が必要なビジネスは、毎月必ず発生する「固定費」の負担が大きくなりがちです。
飲食店を例にあげて考えてみましょう。
店舗の家賃を月額15万円、水道光熱費や通信費を約5万円と設定し、さらにアルバイト1名を時給1,100円で1日5時間、月20日雇用した場合、売上がゼロであっても毎月約31万円の固定費が発生します。
また、流行の変動や自身の体調不良によって売上が減少しても、家賃や人件費は減額されません。
こうした固定費の支払いは、守るべき生活資金を急速に浸食していく最大の要因となります。
起業する時点で、固定費はできる限り削減する意識を持ちましょう。
「せっかく起業するならおしゃれな店舗や内装を整えたい」という思いもあるかもしれませんが、最初のうちは自宅や、月額で利用できるシェアスペースなどを利用するなどして、月々の支払いを抑える工夫が必要です。
その3:撤退ラインを決めておく|赤字や心身の状態を見逃さない
シニア起業において、事業の「始め方」以上に重要なのが「辞め方(撤退基準)」を事前に設定しておくことです。
現役時代と異なり、失敗によって失った資産を労働で取り戻す時間が限られているシニア層にとって、うまくいかない事業の深追いは、老後破綻に直結する危険な行為となります。
仕事への情熱があるほど、赤字が出ても「来月こそは好転する」という期待にすがってしまいがちです。
冷静な段階で撤退基準を定め、いざという時に必ずそれを守る潔さも、経営者として欠かせない素質の1つです。
撤退ラインの定め方は、人それぞれの考え方やライフスタイルによって変化しますが、一般的には「金額」と「期間」を軸に考えるといいでしょう。
事業のために用意した自己資金300万円のうち、損失が150万円に達した時点で事業を停止する、あるいは6カ月以上連続で営業利益が0もしくは赤字だった場合に撤退するなど、具体的な数字を設定しておくことで「あと少しだけ続けよう」という誘惑を断ち切ることができます。
また、シニアの方の場合は自身の肉体的、精神的な健康状態も重要です。
定期的に検診を行い、心身の異常を見過ごさないようにしましょう。
その4:事前検証をしたうえで小さく始める|自分の経験を過信しない
シニア起業において、現役時代の経歴や専門知識は強力な武器になる一方で、時として判断を見誤らせる要因にもなり得ます。
大企業での成功体験は、会社のブランドや組織のリソースがあったからこそ成立していた側面が強く、個人事業主として市場に直接対峙する際は、過去の勝ちパターンが通用しないことが珍しくありません。
また自分では長年の経験があると思っている分野も、実は知識が古くなっていたり、関わりが薄かった部分の業務に手間取ってしまうケースもあります。
自身の主観に基づき、多額の資金を投じて一気に事業を立ち上げるのではなく、まずは小規模なテストマーケティングによって、世の中にその需要が実在するかを確認する工程が不可欠です。
その5:悪質な勧誘に注意する|シニアを狙った詐欺や無意味なコンサルも多い
シニア起業家が保有する退職金や老後の備えは、悪質な事業者にとって格好の標的となります。
近年、シニア起業ブームに乗じて、実態のないノウハウを高額で売りつけるケースや、シニア層の社会貢献意欲を逆手に取った投資詐欺が散見されます。
一度こうした被害に遭うと、多額の資金を失うだけでなく、精神的なダメージにより再起が困難になるため、強い警戒が必要です。
専門家としての視点から助言すれば、こうした悪質業者から身を守るためには、第三者の目を入れることが最大の防御策です。
家族や友人に相談するのもいい対策ですが、起業には専門的な知見が必要になることも多く、相談された相手も判断できないケースもあります。
事業計画に無理がないか、その投資額が自身の資産規模に対して適切かどうかなどについては、税理士や公的機関(商工会議所など)に客観的な意見を求めてください。
シニア起業に失敗したらどうなるのか?
どれほど努力し、綿密な事業計画を立てたとしても、起業が必ず成功するわけではありません。
万が一シニア起業に失敗し、これ以上は事業を続けられないとなった場合にどうなるのかについて、知っておきましょう。
個人事業主の場合|廃業するのは容易だが無限責任
個人事業主は開業するのも簡単ですが、廃業するのも簡単です。
税務署へ廃業届を提出するだけで公的な手続きは完了し、特に費用などは発生しません。
しかし、個人事業主は業務上の債務に対して「無限責任」を負います。
これは事業で発生した負債や損害賠償義務が、事業主個人の人格と完全に一体であるということを指します。
具体的には、事業で発生した借金は、たとえ廃業したとしても自分の個人的な財産から返済しなければいけません。
老後資金や年金、場合によっては車や家など、個人の財産すべてが弁済の対象となります。
無限責任については、以下の記事で詳しく解説しています。
法人の場合|廃業には手間と費用がかかるが有限責任
法人の場合、廃業するためには個人事業主よりも複雑な手続きが必要になります。
具体的には法務局での解散登記や清算人の選任、官報への解散公告、清算結了の登記などを行いますが、これらの手続きには数カ月を要するものもあります。
また、登録免許税として解散+清算人選任で3万9,000円、清算結了で2,000円が必要になります。
これに加えて官報公告費用もかかるため、ある程度のコストが発生する点にも注意してください。
起業に失敗した際の手続きなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ただし、法人は事業主と別人格として扱われます。
そのため、万が一事業が行き詰まり廃業(破産)することになっても、出資者としての責任は自身が出資した金額の範囲内に限定される「有限責任」となります。
具体的には、創業時などに出資した出資金は返ってきませんが、事業で発生した負債については、個人的な財産から返済しなくてもいいという扱いになります。
有限責任については、以下の記事で詳しく解説しています。
シニア起業の年金・保険で損しないコツ
シニア起業において、売上をいくら上げるか以上に重要なのが、手元にいくら残るかという「実質所得」の視点です。
現役時代は会社がすべて計算してくれていた社会保険料や税金ですが、起業後は自身でこれらをコントロールしなければなりません。
特に年金受給世代にとって、働き方の違いが、受け取れるはずの年金額が大きく減少してしまうリスクもあります。
専門家の視点から、年金と保険の最適化戦略を解説します。
働き方で年金が変わることがある
起業して収入を得る際、最も注意すべきなのが「在職老齢年金」のしくみです。
これは働きながら老齢厚生年金を受給する場合、月々の年金額と報酬の合計が一定の基準を超えると、年金の一部または全額が支給停止される制度です(老齢基礎年金は対象外)。
記事執筆時点での基準額は月額51万円に設定されていますが、2026年4月以降は月額62万円に引き上げられます。
ここで決定的な違いを生むのが、個人事業主として働くか、法人を設立して役員報酬を受け取るかという選択です。
個人事業主として得る事業所得は、厚生年金保険法上の「報酬」に該当しません。
そのため、たとえば月々の年金受給額が20万円、事業での利益が月額50万円ある場合、合計額は70万円となりますが、年金は1円もカットされず全額受給可能です。
一方、法人として自身に支払う役員報酬(給与)は「報酬」に該当します。
法人を設立して自身に月額50万円の役員報酬を支払う場合、年金と報酬の合計が51万円を超えるため、超過分の2分の1に相当する金額(この例では月額約9万5,000円、年間で約114万円)の年金が支給停止となります。
自身の状況において、年金がいくらカットされる可能性があるのかは、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」や、年金事務所で事前に試算が可能です。
事業計画を立てる段階で、単なる売上目標だけでなく、年金を含めた世帯収入の最大化を考えることが、賢明なシニア起業の第一歩となります。
保険の入り方で負担が変わる
退職後に個人事業主として起業する場合、健康保険の選択肢は主に3つあります。
- かつての勤務先の健康保険を継続する「任意継続」
- 自治体が運営する「国民健康保険」
- 家族の「扶養」に入る
この選択肢を誤ると、年間で数十万円単位の保険料の差が生じるため、自身の事業計画に合わせた慎重な判断が求められます。
最も負担を抑えられるのは、年間収入が180万円未満(60歳以上の場合)であり、家族の扶養に入るケースです。
この場合、自分自身の健康保険料負担は0になりますが、事業所得が基準を超えると扶養から外れ、自ら保険料を納付する義務が生じます。
その際、前年の所得に応じて保険料が決まる「国保」と、退職時の給与水準で保険料が固定される「任意継続」のどちらが有利かを試算する必要があります。
なお、法人を設立して役員報酬を受け取る場合は、公的な「社会保険(健康保険・厚生年金)」への加入が法律で義務付けられます。
シニア起業のはじめ方
シニア起業を成功させる鍵は、大きなリスクを取らずに「小さく、着実に」形にすることにあります。
具体的なシニア起業を始める流れは、以下のとおりです。
- 起業する内容とライフプランを決める
- 小さく検証する
- 事業計画を作る
- 開業届と青色申告を税務署に提出する
- 3カ月ごとに計画と実績を見直す
自身の資産と生活の質を守りながら、無理なく事業を軌道に乗せるための具体的な5つのステップを順に解説します。
ステップ1|起業する内容とライフプランを決める
まずは「何をビジネスにするか」という点と、それを支える「お金の現実」を直視することから始めます。
まず最初にするべきなのが、そもそも今後の人生でいくらの資金が必要になるのか、そして起業した場合にどれくらいの利益を目指すのかという、ライフプランの設定です。
これを明確にしておかないと、事業にかけられる資金の額や、事業の目的が曖昧になってしまいます。
家計の収支予想表を作成し、どの程度の現金が今後の人生で必要なのか、おおよその目処を立てます。
金融庁が公開している「ライフプランシミュレーター」を利用したり、より具体的に計画を立てたい場合はファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみましょう。
また、起業する内容をすでに決めている人も多いかもしれませんが、この段階で一度立ち止まって考えてみましょう。
起業する内容は、主に以下の4つの要素を考慮する必要があります。
- 自分がやりたいこと・好きなこと
- 自分ができること・得意なこと
- 市場のニーズがあること
- それをするだけの資金があること
これはシニア起業にかぎらず、多くの成功している起業家が最初に考える部分です。
自分が情熱を持って取り組むことができ、かつ経験もある分野でも、市場に個人として入り込む余地がなかったり、始める資金が足りなければ、起業は難しいと言わざるを得ません。
より具体的な起業のアイデアの考え方については、以下の記事をご確認ください。
ステップ2|小さく検証する
事業のアイデアが固まったら、いきなり起業するのではなく、まずは「本当に世の中に需要があるか」を最小限のコストでテストします。
友人や知人、交流会で知り合った人や、できればインターネット上で幅広い人に対し、自身の考えた商品やサービスを安価に提供しましょう。
ここでの反応や意見をもとに価格設定や内容を調整し、改善を重ねることで、より成功しやすい形での起業が可能になります。
ステップ3|事業計画を作る
検証ができたら、次に本格的な事業計画を作成します。
起業する際の事業計画を作る際に便利なのが、日本政策金融公庫が公開している「創業計画書」のテンプレートです。
これは公庫から創業融資を受ける際に作成するものですが、これから始めるビジネスの強みやターゲット、必要になる資金や収支計画がしっかり決まっていないと作成できません。
起業する前の計画書として非常に有用なので、融資を受ける予定がない人もぜひ一度作成し、ビジネスの解像度を上げてみてください。
具体的な書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ステップ4|開業届と青色申告を税務署に提出する
計画が固まったら、実際に事業を始めたタイミングで、税務署へ開業届を提出しに行きましょう。
開業届とは「個人事業を開業して確定申告をします」と税務署に知らせるための書類です。
この書類を提出することで、公的に個人事業主として認められることになります。
また、節税効果の高い青色申告で確定申告するための「青色申告承認申請書」も、開業届と同じタイミングで税務署に提出することをおすすめします。
青色申告の最大のメリットは、最大65万円の所得控除が受けられる点にあります。
たとえば、事業所得が年間で200万円の場合、この控除を適用することで課税対象額を135万円まで圧縮できます。
青色申告承認申請書の提出期限は、開業日の翌日から2カ月以内、あるいはその年の3月15日のどちらか早い日までと厳格に決まっています。
手続きが1日でも遅れると、その年は自動的に白色申告になるので、注意してください。
ステップ5|3カ月ごとに計画と実績を見直す
事業を開始したあとは、およそ3カ月に1回の頻度で計画と実績の対比を行い、事業の継続可否を冷静に判断する機会を設けてください。
シニア起業において最も避けなければならないのは、サンクコスト(すでに支払った費用)に執着し、赤字を垂れ流しながら老後資金を枯渇させてしまうことです。
その3:撤退ラインを決めておく|赤字や心身の状態を見逃さないで解説したように、撤退ラインをあらかじめ定め、遵守するようにしましょう。
法人化(法人成り)を検討するタイミングと判断基準
撤退ラインを確認することも重要ですが、もし事業がうまくいき、多くの利益が出た場合や、取引相手から法人格を求められた場合は、株式会社などの設立(法人成り)を検討してみましょう。
法人は個人事業主とくらべて起業するのに手間がかかるほか、支払う税金の種類や社会的信用、節税できる範囲など、さまざまな違いがあります。
税理士としての経験上、個人事業主としての年間の所得が500万円を超えたあたりから法人に切り替えることで、トータルで支払う税金などのコストが安くなる可能性があります。
ただし、シニア起業での法人化は、先述したように年金との兼ね合いや廃業時の手間なども考慮する必要があります。
悩んだときは、会社設立の経験が豊富な税理士などに相談してみてください。
法人のメリットについては、以下の記事でより詳しく解説しています。
シニア起業で利用できる融資や支援金とは
一般的に、シニア起業であまり大きな融資を受けることは推奨されません。
多額の融資はリスクが大きいうえ、融資を行う側の金融機関も、長期のスパンで融資額の返済計画を練りにくいシニア世代への融資には慎重な傾向があるためです。
しかし近年では、シニア起業の広がりにより、国や自治体は生涯現役社会の実現や地域経済の活性化を目的として、シニア層に向けた支援枠を拡充しています。
ここでは、シニア起業で特に利用しやすい融資制度「新規開業・スタートアップ支援資金」と「女性・若者・シニア創業サポート2.0」を紹介します。
新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
シニア起業家がまず検討すべき制度が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」です。
参考:新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)|日本政策金融公庫
この制度は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人のうち、女性や35歳未満、55歳以上を対象に、基準よりも低い利率で融資を行うものです。
また、創業期(新たに事業を始める人または事業開始後の税務申告を2期終えていない人)は、原則として無担保・無保証人でこれらの融資制度を利用できます。
女性・若者・シニア創業サポート2.0(東京都内)
東京都内で事業を開始する場合、都独自の強力な資金支援制度である「女性・若者・シニア創業サポート2.0」を活用できます。
この制度は、東京都と地域の信用金庫・信用組合が連携し、低利融資とアドバイザーによる伴走支援をパッケージ化したものです。
最大のメリットは、年利が1.0%以内という圧倒的な低コストにあります。
さらに、返済期間は最長10年、うち据置期間(元本の返済を待ってもらえる期間)を最長3年まで設定できるため、事業が軌道に乗るまでのキャッシュフローを安定させることができます。
また、個人事業主であれば保証人は不要です。
ただしこの制度は「地域の需要や雇用を支える事業」を対象としているため、いかに地域社会に貢献するかという視点を事業計画に盛り込むことが採択の鍵となります。
このような地域に根ざした事業は、その地域ごとに支援金や補助金が出ることもあります。
地域の商工会議所やよろず支援拠点などに相談するか、中小企業基盤整備機構が運営する国内最大級の支援情報ポータルサイト「J-Net21」などを活用し、利用できる制度がないかを確認してみてください。
参考|支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
信頼できる相談先の選び方
シニア起業において、すべての判断を自分だけで行うことは、非常に大きなリスクを伴います。
現役時代に管理職や専門職として活躍してきた人ほど、自身の経験に基づいた判断を過信し、外部の助言を遠ざけてしまう傾向があります。
しかし、個人事業主としての経営は、組織のルールに守られた会社員時代の業務とはまったく別物です。
適切な相談先を確保することは、単に知識を得るためだけでなく、自身の主観を客観的な視点で修正し、老後の資産を守るための防波堤となります。
シニア起業家が活用すべき主な相談先は、公的な支援機関と、実務を担う士業専門家の2種類に分けられます。
それぞれの相談先をどのように使い分けるべきかについて、解説します。
なお、起業の相談先についてより詳しく知りたいときは、以下の記事をご確認ください。
商工会議所など公的機関の使いどころとは
「起業する際に準備するべきものはなにか」「自分が考えたビジネスモデルにおかしなところはないか」「確定申告などの税務はどうやればいいのか」など、起業に関するさまざまな悩みを無料で相談できる公的機関が、日本全国に用意されています。
商工会・商工会議所やよろず支援拠点などは、基本的な起業に関することであれば、幅広く相談することができるので、まずは地元のこれらの機関を訪れ、相談してみましょう。
ただし本格的な相談は予約制となっていることが多いので、事前に電話やWebサイトから予約をしてください。
参考:経営相談|日本商工会議所
参考:よろず支援拠点|よろず支援拠点全国本部(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
税理士など専門家に頼むメリットとは
税理士などの士業専門家に依頼する最大のメリットは、経営判断に直結する正確な「数字の可視化」と、制度の隙間にある「リスクの回避」にあります。
無料の公的機関が一般的なアドバイスに留まるのに対し、税理士はシニアの方それぞれの資産状況や年金受給額、将来の相続までを見据えた、専用の最適解を提示できます。
「より確実に起業したい」という人や「記帳や確定申告についてもプロにサポートしてほしい」という場合は、税理士に相談してみましょう。
シニア起業のまとめ
シニア起業は、これまでの経験を社会に還元し、人生の後半戦を豊かにするための挑戦です。
しかし「負けないこと(資産を減らさないこと)」をしっかり考え、安定した経営を行うことが求められます。
成功の確率を上げ、豊かな老後を確実に守るためのポイントを改めて整理します。
- 生活資金を死守する:事業資金と生活費を完全に分け、退職金には安易に手をつけない
- 固定費を極限まで抑える:店舗や在庫、人件費をできるだけ削る
- 撤退ラインを数値で決める:感情に流されず、損失や赤字期間などが一定に達したら潔く退く準備をしておく
- 制度を味方につける:在職老齢年金や健康保険、青色申告の優遇措置を正しく理解する
- 客観的な視点を持つ:過去の成功体験に固執せず、市場の反応を小規模なテストで確認する
シニア起業のゴールは、事業の拡大そのものだけではなく「社会との繋がりを持ち続けながら、経済的・精神的に自立した生活を送ること」にもあります。
無理のない範囲で、まずは一歩を踏み出してみましょう。
シニア起業について悩みや不安があれば税理士にご相談ください
シニア起業には、税務・会計だけでなく、年金、社会保険、そして将来の相続まで含めた、ライフプラン全体を俯瞰した視点が欠かせません。
「この事業計画で、老後の資金は本当に大丈夫だろうか?」 「年金がカットされるのが怖くて、一歩が踏み出せない」
こうした不安を抱えているときは、まずは税理士の無料相談を利用し、起業についての悩みを打ち明けてみてください。
ベンチャーサポート税理士法人では、個人事業主の方へ向けた起業相談や、確定申告のサポートを行っております。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているため、さまざまな内容の案件にもワンストップで対応が可能です。
事業をより発展させるための「会社設立」や、創業計画書の作り方、融資を受けるためのサポートなども行っています。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。




















