最終更新日:2026/2/4
学生起業の失敗|大学生が起業に失敗したらどうなる?失敗例と対策を税理士が解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- 学生起業に失敗したらどうなるのか
- 学生起業でよくある失敗例と対処法
- 起業の失敗を防ぐための対策
- 学生起業で気をつけるべき扶養や税金のしくみ
- 学生起業のよくある質問と回答
「学生のうちに起業して稼ぎたい」
「起業したら就活のガクチカにも活かせそう」
そんな理由で学生起業を考えたとき、真っ先に気になるのが「失敗したらどうなるのか」ではないでしょうか。
起業に失敗すると聞くと、多額の借金を負ってしまい、食べるものにも困る生活になるのではないかと不安になる人もいるでしょう。
しかし実際には、融資や借入れをしない、あるいは保証を付けない形でスタートできれば、想定外の借金リスクは大きく抑えられます。
ビジネスは、最初から大きな資金を投じなくても、手元の資金の範囲で小さく始めることが可能です。
さらに個人事業であれば、うまくいかなかったときの撤退(廃業)も、法人に比べて手続きのハードルは低めです。
本記事では、学生起業家が陥りやすい具体的な失敗パターンと、手遅れになる前に気付くべき早期警戒サインを紹介します。
また、万が一うまくいかなかった場合にどうするべきかの備え方や、多くの学生が不安に感じる就活・扶養などへの影響についても、税理士が詳しく解説します。
起業に対する「なんとなく怖い」という思いを「具体的に備えられる」に変えることができれば、起業はぐっと現実的になります。
まずはこの記事で、失敗の不安を整理し、安心して一歩目を踏み出すための判断軸を手に入れてください。
なお、学生起業のアイデアの探し方や始め方などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。


目次
学生起業の失敗とは?「いい失敗」と「悪い失敗」の違い
学生起業における失敗という言葉は、しばしば「多額の借金」や「人生の破綻」といった極端なイメージで語られがちです。
しかし、ビジネスの現場において、事業の撤退や方向転換は決して珍しいことではありません。
重要なのは、起業経験が自身の将来に対して経験・スキルとなるのか、それとも金銭的債務や信用の毀損としてマイナスになるかという点です。
再起可能な範囲での撤退は、むしろ実社会における貴重な学習機会となり、その後の就職活動やキャリア形成で高く評価されます。
一方で、社会人としてのスタートラインに立つことさえ困難になる、絶対に避けるべき失敗も存在します。
まずは、この2つの違いを明確に理解し、漠然とした不安を「管理可能なリスク」へと変えていきましょう。
キャリアにつながる失敗とは
キャリアにつながる失敗とは、論理的に撤退を決断したケースを指します。
たとえば、自己資金を投じて起業し、個人事業主として半年間活動したものの、収益の目処が立たずに事業を畳むといった事例です。
このプロセスにおいて、学生は開業届の提出から事業用口座の開設、日々の記帳(経理)、場合によっては確定申告まで、ビジネスの実務を一通り経験することになります。
これは就活において、一般的なアルバイトなどの「時間を提供して給与をもらう」という経験よりも、より貴重かつ実践的なものと見なされやすいです。
単に「失敗しました」ではなく「個人事業主として数値目標を立て、PDCAを回し、論理的に撤退した」と語れる学生は、企業にとって「経営者視点を持った即戦力候補」として魅力的に映るでしょう。
絶対に避けたい失敗とは
一方で、絶対に避けなければならないのは、多額の借金を背負ったり、法令違反を犯すなどの失敗です。
こうした形で事業に失敗すると、その後のライフプランに大きな影響が及んでしまいます。
事業の借金についてですが、個人事業主として開業した場合、事業は個人が行っているとみなされるため、事業で発生した債務(借金)はすべて学生に返済義務が生じます。
これを「無限責任」と呼びます。
たとえ個人事業主を廃業したとしても債務は残るため、その返済に多くの時間と経済的な負担が発生します。
一方で法人(特に株式会社や合同会社)を設立した場合、会社は法的に個人とは別の存在となるため、会社が倒産しても学生が失うのは会社設立時に用意した資本金のみで、個人の預金や財産まで没収されることはありません。
これを「有限責任」と呼びます。
しかし、融資を受ける際に「経営者保証」を付けた場合は、その融資に関しては会社が倒産した場合も、経営者である学生個人が全額を返済しなくてはならなくなるので注意してください。
有限責任・無限責任については、以下の記事でより詳しく解説しています。
また、たとえ借金をせずに起業する場合でも、利益が出ているのに所得税や法人税などの支払いをしない脱税・無申告行為は絶対に避けましょう。
後々になって本来の税額に最大40%程度の重加算税や延滞税が上乗せされる可能性があるうえ、信用情報にもキズがついてしまいます。
また「名義だけ社長になってくれれば、分け前を渡せる」といった誘いに乗り、実態のない会社の社長になる「名義貸し」という行為にも注意してください。
たとえ経営に関わっていなかったとしても、取締役や代表社員にはさまざまな責任が課せられます。
名義を貸した会社が犯罪行為などを行った場合は、取り返しのつかない事態に陥ることもあるため、たとえ友人や親戚同士でも名義貸し行為は決して行わないようにしましょう。
会社設立における名義貸し行為については、以下の記事でも詳しく解説しています。
こうしたリスクを認識したうえで起業し、万が一失敗しても大きな問題とならない経営をすることが、学生起業において非常に重要です。
【原因別】学生起業の失敗パターンと早期警戒サイン
ここからは、実際に多くの学生起業家がつまずく具体的な失敗事例と、致命傷になる前に感知すべき「早期警戒サイン」を解説します。
以下の5つの観点で整理したので、「自分たちは大丈夫」と思う人も、冷静にチェックしてください。
| 失敗パターン | 失敗の内容 | 早期警戒サインの一例 |
|---|---|---|
| 金銭・リソース | 入金のタイムラグや税金の支払いなどによる資金ショート | ・ランニングコストが月々の粗利を上回る状態が長期間続いている ・現預金残高が「毎月の固定費の3カ月分」を下回った |
| 人間関係・チーム | 友人との関係破綻による離脱や経営マヒ | ・「言いにくいこと」を避けるようになり、重要な課題が先送りされている ・メンバーの誰かが就活やゼミを理由に、タスクの納期を守らなくなってきた |
| 市場選定・アイデア | 市場調査不足によるニーズの見誤り | ・競合調査をしていなかったり、差別化を図っていない ・ターゲット顧客へのヒアリング数が不十分 |
| 学業など学生特有の事由 | ビジネスに集中しすぎて卒業や進級ができなくなる | ・授業やゼミの欠席日数が増えている ・試験期間など忙しい時期もビジネスを止められない |
| 外部要因・リテラシー不足 | 悪質な契約による搾取や法令違反に巻き込まれる | ・契約書を作成せずに仕事を請け負っている ・相手の会社の登記情報や評判を調べていない |
その1:金銭・リソースの失敗
学生起業で多いのが「売上が立つ前に資金が尽きる」あるいは「利益は出ているはずなのに現金がない」というパターンです。
これは事業計画の甘さや、公私混同した資金管理(どんぶり勘定)に起因します。
オフィスの賃料や従業員への支払いなどの固定費が膨れ上がったり、売上が入金されるまでに時間がかかり、その間に資金不足に陥る「黒字倒産」などが、学生起業で特によくある失敗例です。
また、事業で得た利益には所得税や住民税が発生します。
これを忘れ、手元の資金をすべて使ってしまうと、いざ納税を行うときにその分の資金が足りないという事態に陥ります。
事業用の資金や売上を管理する銀行口座と、プライベートで使う口座を分けずに運用すると、入出金の把握が難しくなり、将来支払うべき税金や仕入れ資金を使い込んでしまうリスクが高まります。
必ず事業用とプライベートの口座は分けるようにしてください。
以下のような状態のときは、資金管理を見直し、場合によっては撤退も検討しましょう。
- ランニングコスト(固定費)が、月々の粗利(売上総利益)を上回る状態が長期間続いている
- 現預金残高が「毎月の固定費の3カ月分」を下回った
- 個人の貯金を取り崩して、事業の支払いに充てる回数が増えた
その2:人間関係・チームの失敗
仲の良い友人と起業すること自体は悪いことではありません。
しかし、「友情」と「ビジネスの契約」を混同したままスタートすると、後々になってトラブルに発展するリスクがあります。
特に学生の場合、学部の違いや試験期間、就活の時期などに、メンバー間の事業へのコミットメント量に差が生まれがちです。
「自分はこれだけビジネスに貢献しているのに、あいつは忙しいからという理由で大して働いていない」という状態だと、メンバー内で不満が溜まりやすくなります。
この段階で「とりあえず利益は山分け」など曖昧な取り決めをしていると、金銭的な不満も加味され、大きな争いに発展することもあります。
また、株式会社を設立した際には、自社株式の保有比率も問題になります。
起業当初は「2人で起業するから半分ずつ持っておけばいいだろう」と考え、安易に50%ずつ持ち合うケースが散見されます。
しかし会社法上、経営の意思決定には過半数、定款変更など重要事項の決定には3分の2以上の議決権が必要です。
自分と友人の株式保有率が50%ずつの場合、意見が対立したときに議決に必要な過半数を確保できず、会社の意思決定が完全にストップしてしまう事態に陥ります。
こうなると、新たな資金調達や業務提携といった前向きな話はもちろん、働かなくなった相手を役員から解任することさえできなくなります。
友人同士であっても代表者を定め、その人が最低でも3分の2以上の株を保有するように運用しましょう。
利益配分や、辞めるときの取り決めなども、口約束ではなく書面に残し、署名したうえで大切に保管するといった運用も重要です。
以下のような現象が起き始めたときは、チーム内での不満や全体の雰囲気に注意してください。
- ミーティングの時間が、意思決定ではなく雑談や愚痴で終わるようになった
- 「言いにくいこと」を避けるようになり、重要な課題が先送りされている
- メンバーの誰かが就活やゼミを理由に、タスクの納期を守らなくなってきた
その3:市場選定・アイデアの失敗
「素晴らしいアイデアを思いついた!」という高揚感だけで走り出し、誰も欲しがらないものを一生懸命作ってしまうパターンもよくあります。
これは「プロダクトアウト(作り手本位)の失敗」と呼ばれます。
実際に良質なものを作れたとしても、そもそも顧客が質を求めていなかったり、市場規模自体が小さい場合、事業として成り立たせることは困難です。
アイデアを思いついたときには、実際に商品を開発したり事業を始める前に「ちゃんとこのアイデアは売れるのか」という市場のニーズ調査を行いましょう。
また、自分では革新的なアイデアだと思っていても、すでに競合他社が同じコンセプトで商品を展開していたり、場合によってはそのコンセプトでうまく行かずに撤退したりしているかもしれません。
市場のニーズだけでなく、競合の調査も十分に行うようにしましょう。
以下のような状態のときは、ビジネスのアイデアや競合調査、価格設定などを見直しましょう。
- アイデアや試作品は高評価だが、商品として予約注文が受けられない(有料だと売れない)
- 競合調査をしていない・競合との差別化を図っていない・競合が存在しない(過去に誰かが挑戦して撤退している可能性が高い)
- ターゲット顧客へのヒアリング数が不十分
その4:学生特有の失敗(時間・学業)
学生には「学業」という本分があります。
事業に集中するあまり学業が疎かになり、卒業できなくなるケースも、学生起業家には散見されます。
特に大学の試験期間と、ビジネスの繁忙期やトラブル対応が重なった場合、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
大学を留年するなどの事態に陥れば、学費の追加コストが発生するうえ、就活にも大きな影響が出てしまうでしょう。
「自分はこのビジネスで食べていくんだ」と考え、大学中退を決断する人もいますが、すでに月商で数百万単位の安定した利益が出ていない限り、推奨できません。
退路を断つという言葉は聞こえがいいですが、学生起業においては「退路(卒業資格)を確保しながら戦う」のが賢い戦略と言えます。
卒業後は、事業の継続だけでなく、廃業や会社の売却を経ての就職など、多くの道があります。
これらの多様な選択肢を確保するためにも、起業と大学の卒業は分けて考えましょう。
以下のような状態のときは、ビジネスと勉強のバランスを見直すことをおすすめします。
- 授業やゼミの欠席日数が増え、単位取得に不安を抱き始めた
- 睡眠時間が削られ、日中の集中力が著しく低下している
- 試験期間など忙しい時期もビジネスを止められない・一時的に任せられる相手がいない
その5:外部要因・リテラシー不足の失敗
社会経験の少ない学生起業家は、法律や契約の知識(リテラシー)がないことを突かれ、不利な条件を押し付けられたり、詐欺に巻き込まれたりすることがあります。
「実績になるから」といった理由で、最低賃金を下回るような単価で仕事を負わされたり、出資や人脈などをエサに高額なコンサルや情報商材を買わせるといったケースも後を絶ちません。
また、学生自身の知識不足から、特定商取引法の表記漏れや著作権侵害、源泉所得税の納付漏れが発生することもあります。
迷ったときは、大学の起業支援室や商工会議所・よろず支援拠点などの公的機関、税理士・弁護士などの公的資格を持つ専門家に相談してください。
以下のような契約や取引などを持ちかけられたときは、一度落ち着いて内容を確認してみてください。
- 「契約書は後で作るから、先に作業を始めて」と言われた
- 「経験や実績になるから」といった理由で極端に低い報酬を提示された
- 相手の会社の登記情報や評判を調べていない
起業に失敗しない・失敗の影響を小さくするための鉄則
ここまでは「失敗の原因」を見てきましたが、ここからは「どうすればその失敗を防げるか」という具体的な対策を4つ紹介します。
- 原則として自己資金だけでスモールスタートする
- 固定費を可能な限り削減する
- 開始前に「撤退ライン」を決めておく
- 友人との間であっても「契約書」を作成する
自分を守るためのしくみを、今のうちにルールとして定めておきましょう。
その1:原則として自己資金だけでスモールスタートする
学生起業において、最も効果的なリスク対策は「借金をせず、自己資金の範囲内でビジネスをする」ことです。
学生のうちは自己資金を貯めるのが難しいため、融資による資金調達を考えることもあるでしょう。
近年では政府のスタートアップ支援強化により、経営者保証(代表者個人の連帯保証)を不要とする融資制度も増えています。
しかし、売上の見通しが立っていない段階ではなかなか融資審査などを通過することはできません。
仮に借りられたとしても、毎月の返済が固定費としてのしかかってきます。
資金が足りない時は、安易に借りるのではなく「今あるお金で実現できるサイズまで事業を縮小する」ことを検討しましょう。
どうしても追加の資金が必要なときは、返済義務のない(あるいはリスクの少ない)資金調達方法も模索してみてください。
- 自己資金(貯金・バイト代)
- 親族からの出資・援助
- クラウドファンディング
- ビジネスコンテストやピッチイベント
起業する際に「まずは絶対に売れるものを作ろう」と考える学生起業家も数多くいます。
確かに商品やサービスのクオリティは重要ですが、それらを作り上げるまでに時間とお金がかかるという点を忘れてはいけません。
苦労して作り上げた商品が、いざ市場に出してみたら全然売れなかった場合、それまでに費やしたコストが無駄になってしまいます。
まず最初に市場のニーズと競合の調査、そして顧客の課題を解決できる最小限の機能だけを持った商品、通称「MVP(Minimum Viable Product)」を準備し、市場の反応を見てみましょう。
その2:固定費を可能な限り削減する
起業準備を行う際には、最初から大きく事業に投資するのではなく、まずは徹底的にコストを削ぎ落とし、利益が出やすい状態を作ることが生存率を高めます。
特に重要なのが、毎月必ず出ていくお金である「固定費」の最小化です。
固定費が高ければ高いほど、損益分岐点(黒字になるライン)が上がり、利益を出すことが難しくなります。
オフィスを契約するのではなく、自宅や大学の作業スペースを活用し、ITツールなどを使用する場合は学生割引や学生優遇のサービスがないかを探してみましょう。
その3:開始前に「撤退ライン」を決めておく
人間には、一度投資したお金や時間を惜しんで、ズルズルと損失を拡大させてしまう心理傾向があります。
事業がうまくいっていないときも、多くの人が「あと少し頑張れば一気に好転するかもしれない」という根拠のない希望にしがみつき、余計に時間と資金を浪費してしまいます。
こうした事態を防ぐために、精神的に余裕のある起業前の段階で、赤字の額や期間、残りの資金など具体的な数字に基づく撤退ラインやピボット(事業転換)ラインを定めておきましょう。
具体的には「起業してから6カ月経っても売上目標を達成できなかったら事業を見直す」「資金が当初の20%以下になったら撤退する」などです。
撤退ラインは定期的な見直しも必要ですが、基本的には必ず守るべきボーダーラインとして遵守しましょう。
その4:友人との間であっても「契約書」を作成する
口約束での起業は、事業がうまくいかなかった時の喧嘩別れの原因になるだけでなく、逆に事業がうまくいきすぎた時にもトラブルになります。
「自分のほうが働いているから報酬も多くもらう権利がある」「そもそものアイデアは自分が考えたものだ」といった争いは、一定以上の利益が出た段階で高確率で発生します。
共同創業する場合は、以下の事項などを定めた「創業者間契約書(覚書)」を作成し、全員が署名・捺印して保管してください。
- 責任範囲:誰が最終決定権を持つか(代表者となるか)
- 役割分担:各々が担当する業務は原則として何なのか
- 報酬の分配ルール:利益が出た場合、どのような比率で分配するか
- 撤退・解散の条件:撤退ラインに達した際、余った資産の分配などをどうするか
- 脱退時の株式などの扱い(法人の場合):途中で辞めるメンバーは、保有している株式や持分を経営に残るメンバーに譲渡(売却)して去ること
弁護士や行政書士に依頼して正式な書面を作るのが理想ですが、まずは自分たちで上記の項目を明文化することから始めましょう。
「紙に残す」というプロセス自体が、チーム全員の覚悟を問い、単なる友人関係からビジネスパートナーへと意識を切り替える重要な儀式にもなります。
学生起業する際に気をつけておきたい「扶養・税金」について
学生が起業するときに気をつけるべきことの1つが、事業がうまくいった結果、親の扶養から外れないかという点です。
ここでは学生起業家が絶対に押さえておくべき「2つの壁」について要点をお伝えします。
学生(19〜22歳)が税法上、親の扶養に入っている場合、親は特定扶養親族として扶養控除を受けられます。
しかし学生のアルバイトや事業所得などの合計所得金額が58万円を越えると、親が受けられる控除は「特定親族特別控除」となり、控除額が学生の所得に応じて段階的に減少します。

参考:No.1177 特定親族特別控除|国税庁 を加工して作成
次に学生本人の年間収入が150万円を超えたときは、学生は親の健康保険の扶養から外れることになります。
この場合、学生は自分で「国民健康保険」と「国民年金」に加入し、保険料を収めなくてはいけません。
国民健康保険料は年間で数万から十数万円、国民年金保険料は2025年時点で年額21万120円(毎月納付の場合)が必要になるため、非常にインパクトの大きい出費になります。
このように、学生起業で稼ぎすぎると、世帯全体の手取りが減ってしまい、親と揉める原因にもなります。
事前に「今年はこれくらい稼ぐ予定だ」と家族で話し合い、了承を得ておきましょう。
学生起業の失敗に関するよくある質問
借金や就活への影響、親バレのリスクなど、多くの学生起業家が抱える不安に関する、よくある質問をまとめました。
- 個人事業主と法人のどちらで起業すればいいのか
- 起業にはどれくらい資金が必要なのか
- 廃業にもコストはかかるのか
- 起業に失敗して借金が返せないとどうなるのか
- 起業に失敗すると就活で不利になるのか
- 親にバレずに起業することはできるのか
個人事業主と法人のどちらで起業すればいいのか
学生起業の場合、まずは個人事業主としての起業をおすすめします。
法人には有限責任などのメリットもありますが、たとえ赤字でも年間約7万円の法人住民税の均等割という税金が発生したり、社会保険への加入が義務となったりなど、コスト面でのデメリットも数多くあります。
年間で500万円以上の所得がある場合は、個人事業主よりも法人のほうが、支払う税金の額を安くできる可能性があります。
それに満たない場合は個人事業主として起業したほうがメリットが大きいでしょう。
しかし法人にも、社会的信用の高さや経費にできる範囲の広さなど、個人事業主にはないさまざまなメリットがあります。
具体的な会社設立のメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
起業にはどれくらい資金が必要なのか
起業にかかる資金は、事業形態やビジネスモデルによって大きく異なります。
日本政策金融公庫が毎年公開している新規開業実態調査によると、2025年時点では開業資金の平均値は975万円、中央値は600万円です。
しかし250万円未満で起業している事業者も約2割いることから、必ずしも多額の資金が必要というわけではないことも読み取れます。
2025年度新規開業実態調査
開業費用の分布をみると、「250万円未満」(20.1%)と「250万~500万円未満」(21.7%)で4割以上を占める(図-13)。
「1,000万~2,000万円未満」や「2,000万円以上」の割合は、長期的にみると低下傾向にある。
開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円であり、長期的にみると少額化の傾向にある。
個人事業主として開業するのであれば、税務署に開業届を提出するだけなので、コストは発生しません。
しかし法人の場合、合同会社は最低でも約6万円、株式会社は約20万円が、登録免許税などで必要になります。
また、飲食業や小売業などは仕入れや店舗の家賃などの固定費が大きいため、必要になる初期費用も高額になりがちです。
一方でコンサルタントやWebライター・デザイナーなどは、所持しているパソコンだけで事業を始めることも可能です。
いずれにせよ、学生が起業する場合は多額の借入れなどを避け、可能な限り自己資金の範囲でビジネスを行うことが、リスク管理において重要です。
融資や借入れなどは、一定以上の利益を継続的に出せるようになった段階で検討することをおすすめします。
少ない資金でも始められるビジネスの見つけ方などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
廃業にもコストはかかるのか
個人事業主の場合、廃業するためには原則として税務署や都道府県税事務所に、個人事業の開業・廃業等届出書などの書類を提出する必要があります。
これらの作成や提出にはコストはかかりません。
しかし、株式会社などの法人を廃業(解散・清算)するためには、登録免許税や官報公告費として最低でも約8万円ほどのコストが発生します。
また、債権者保護手続きなど複雑な手続きも必要です。仮に司法書士などにサポートを依頼した場合、報酬によってさらにコストが嵩むでしょう。
起業に失敗して借金が返せないとどうなるのか
融資や買掛金など、事業を営むなかで借金(返さなければならない借入れ)を行ったものの、それが返せない場合、法人か個人事業主かでリスクが異なります。
有限責任となる法人の場合、会社が破産したら、返済義務は会社とともに消滅します。
代表者である学生個人が借金を肩代わりする必要はなく、個人の貯金や財産も守られます。
しかし無限責任となる個人事業主や、経営者保障(連帯保証)付きで借入れを行っていた場合は、たとえ廃業しても借金は全額残り、学生自身が返済する義務を負います。
もしどうしても返済できない場合は、「自己破産」などの債務整理手続きをとることになります。
自己破産をすれば借金は原則として帳消しになりますが、クレジットカードが数年間作れなくなる、官報に名前が載るといった社会的デメリットが発生します。
また、自己破産したとしても税金の支払い義務は残ります。
起業に失敗したときの手続きや対策などについては、以下の記事でより詳しく解説しています。
起業に失敗すると就活で不利になるのか
起業に失敗したとしても、就活で不利になることは、基本的にはありません 。
個人事業主や法人を廃業したという過去があっても、そうした履歴は学生自身が明かさない限り、企業側に知られることはまずありません。
仮に自己破産をしていた場合でも、官報や信用情報には履歴が残りますが、企業側がこれらをくまなく調べることは稀です(ただし弁護士や税理士、警備員など一部の職業は、自己破産してから一定期間は「欠格事由」と見なされ、その仕事ができなくなります)。
むしろ、ベンチャー企業や商社、外資系コンサルティングファームなどでは、挑戦した事実そのものが好意的に受け止められる傾向があります。
単に「失敗した」で終わらせず、「なぜうまくいかなかったのか」を論理的に分析し、学びとして語ることができれば、その経験はほかの学生にはない強力な武器になるでしょう。
親にバレずに起業することはできるのか
法的には、親の同意なしで起業および廃業することは可能ですが、完全に隠し通すことは困難です。
親に起業がバレるケースで最も多いのが、税金のしくみによる発覚です。
学生が事業で年間58万円を超える所得を得た場合、親はあなたを「扶養親族」として申告できなくなります。
もし、学生が黙って扶養に入り続けた状態で確定申告を行うと、税務署と市町村から親の勤務先へ「扶養是正の通知」などが届きます。
これにより親は過去に遡って不足分の税金を給与から天引きされることになり、学生の起業の事実が発覚します。
ただし、個人事業主として開業届を出し、最大65万円の青色申告の特別控除を利用すれば、所得が123万円(58万+65万円)までなら扶養内にとどまることも可能です。
とはいえ親に隠れて起業した場合、あとになってから発覚すると大きなトラブルに発展する可能性もあります。
特別な事情がない限りは、親には事業モデルや資金計画を伝え、起業の許可をあらかじめ得ておくことをおすすめします。
この記事のまとめ:事前に対策することで学生起業に失敗したとしてもやり直せる
起業を過度に恐れる必要はありません。
学生起業における失敗の多くは、正しい知識と事前の対策によって予防できます。
学生起業の取り返しのつかない失敗とは、連帯保証人付きの多額の借入れや法令違反、修復不可能な人間関係の断絶などです。
これらは契約書の締結や撤退ライン(損切り基準)の策定、スモールスタートの徹底といった具体的なルールを定めておくことで、回避可能なリスクです。
たとえどれほどいいアイデアのもと、経営に注力したとしても、ビジネスが必ず成功する保証はありません。
だからこそ起業する段階でリスクを把握し、失敗してもダメージが少なく、逆にキャリアとして利用できる形にしておくことが重要です。
適切なリスク管理のもとで行う起業経験は、結果に関わらず、今後の人生において極めて有益な資産となるでしょう。
起業について悩みがあれば税理士などに相談しよう
「ビジネスモデルの適法性に不安がある」
「共同創業時の契約書作成について助言が欲しい」
「扶養範囲内での経営シミュレーションを行いたい」
このような具体的な懸念がある場合は、一人で判断せず、会社設立や起業支援の専門家である税理士への相談をおすすめします。
専門家のアドバイスを受けることで、自身の状況に最適なリスク回避策を講じることができます。
ベンチャーサポート税理士法人では、個人事業主の方へ向けた税務相談や確定申告、会社設立・運営に関する無料相談など、起業に関するさまざまなサポートを行っています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているため、さまざまな内容の案件にもワンストップで対応が可能です。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。


















