最終更新日:2025/12/18
大学生起業のアイデアとやり方|税金・扶養の壁まで税理士が解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

大学生活のうちに何か大きなことを成し遂げたい、自分の力で稼ぐ経験をしたいなどと考えたとき、大学生の起業(学生起業)は、非常に魅力的なキャリアの選択肢です。
しかし同時に「起業するためには革新的なアイデアが必要なのではないか」「もし失敗したら多額の借金を負わなければならないのか」など、漠然とした不安が渦巻いていないでしょうか。
また「売上が出たら親の扶養はどうなるのか」「税金はどう払うのか」という現実的なお金の疑問が、最初の一歩を阻んでいるかもしれません。
この記事では、税理士の専門的な視点から、大学生におすすめの具体的な起業アイデア10選、アイデアを検証するMVPの構築方法、そして学生起業家が必ず直面する税金の壁と社会保険の壁の違いなどについて徹底的に解説します。
大学生の起業で気をつけるべきことを網羅していますので、学生起業に興味のある方はぜひ計画の参考にしてみてください。


目次
「起業=会社設立」ではない!まずは「個人事業主」から始めよう
「起業」と聞くと、立派なオフィスを構え、「株式会社」の看板を掲げる姿を想像するかもしれません。
しかしその認識は、大学生のスタートアップにおいては現実的ではありません。
結論から言えば、起業を目指す学生のほとんどは会社設立ではなく、まずは「個人事業主」としてスタートするべきです。
個人事業主とは、法人を設立せず、個人として事業を営む形態を指します。
税務署に開業届という書類を1枚提出するだけで、法的な事業として認められます。
まずはこのシンプルなステップから始めることが、リスクを最小限に抑えつつ、アイデアを最速で実行に移す鍵となります。
なぜ「個人事業主」から始めるべきなのか?
学生が起業するうえで最大の課題は、リソース(資金・時間・経験)の制約です。
個人事業主は、その制約のなかで活動する学生にとって、株式会社などの法人に比べて有利な条件を備えています。
具体的な違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 個人事業主 | 会社 |
|---|---|---|
| 設立手続き | 税務署に「開業届」を提出するのみ | 定款の作成、法務局への登記申請などが必要 |
| 設立費用 | 0円 | 約6万円〜25万円 |
| 赤字の場合の税金 | 所得税・住民税は0円 | 法人住民税(均等割)が年間で約7万円発生 |
| 社会保険 | 従業員5人未満等は加入義務なし(任意) | 社長1人でも原則として強制加入 |
表のとおり、法人は設立するだけで数万円の費用が必要です。
さらに、たとえ事業が赤字で利益が0円だったとしても「法人住民税の均等割」として、年間およそ7万円の税金を納める義務があります。
これは、その地域で事業を行うための場所代のようなもので、事業の成果に関わらず発生します。
一方で個人事業主は、所得(売上から経費を引いた儲け)がなければ、所得税や住民税は発生しません。
この「赤字なら税負担ゼロ」というしくみは、事業を始めたての学生にとって、大きなセーフティーネットとなります。

節税効果が最も高い青色申告(最大65万円控除)を利用するには、事業開始から原則2カ月以内にこの申請書を提出する必要があります。
事業拡大のための「法人成り」とは?
個人事業主から、株式会社や合同会社といった「法人」へ変更することを「法人成り(ほうじんなり)」と呼びます。
これは個人事業主としての事業が軌道に乗り、利益が安定的に出てきたタイミングで検討する選択肢です。
法人成りのメリットは、主に「社会的信用」と「節税」の2点です。
信用面では、法人名義でないと契約が難しい大企業との取引や、金融機関からの融資が受けやすくなります。
節税面では、自身への給与を「役員報酬」として会社の経費にできるなど、個人事業主ではできないさまざまな節税対策が可能になります。
また、個人の所得税は所得が上がるほど税率も上がりますが、法人税率は一定のラインで安定しています。
そのため、年間の所得が約500万円を超えると、法人化したほうがトータルの税負担が軽くなるケースが多いです。
法人成りを行う前には、税理士などの専門家と相談し、メリットとデメリットを総合的に判断することが不可欠です。
より詳しい法人と個人事業主の違いについては、以下の記事をご確認ください。
大学生におすすめの起業アイデア10選(カテゴリ別一覧表)
大学生の起業において、最初に取り組むべきは「低リスク」かつ「大学生活と両立可能」な事業を選ぶことです。
具体的には、大きな初期投資や在庫を必要としないタイプの事業(スモールビジネス)から始めるといいでしょう。
ここでは、大学生が持つ潤沢な時間や専門知識といったリソースを最大限に活かせる起業アイデアを10個厳選し、その特徴を表にまとめます。
| アイデア | 活かせるスキル・知識 | 大学生が活かせる強み・注意点 |
|---|---|---|
| 1|Web制作(プログラミング) | HTML、CSS、JavaScript、WordPressの知識 | 理系学生は講義の知識が直結する。文系でも独学やスクールで習得可能 制作単価は1件10万円から30万円程度が目安 |
| 2|Webデザイン | UI/UX知識、Figma、Adobe XD、Photoshop | デザインツールは学割で安価に利用できる トレンドへの感度の高さが武器になる |
| 3|動画編集 | Adobe Premiere Pro、After Effectsの操作技術 | 動画サイトの普及により、需要が非常に高い 自身のSNSがポートフォリオ(実績集)になる |
| 4|SNS運用代行 | Instagram、X(旧Twitter)、TikTokの運用ノウハウ、分析力 | 企業が求める若年層のトレンド感覚を「専門家」として提供できる 契約は月額5万円程度からが相場 |
| 5|Webライティング | SEO(検索エンジン最適化)の知識、文章構成力 | 自身の学部の専門知識や、受験・留学経験そのものが、高い専門性を持つ記事の材料になる |
| 6|ブログ・アフィリエイト運営 | SEO、マーケティング知識、継続力 | すぐに収益は出ないが、学業と並行して長期的に「資産(メディア)」を構築できる |
| 7|ネット物販(せどり・D2C) | 商品リサーチ力、資金管理能力 | プラットフォームを利用すれば容易に開店可能 ただし在庫リスクが常につきまとうため、綿密な資金計画が必須 |
| 8|オンライン家庭教師 | 自身の受験経験、特定の教科の専門知識 | 特定の大学への合格実績など自身の成功体験が大きな価値を持つ |
| 9|イベント企画・運営 | プロジェクト管理能力、集客・広報スキル | 大学のサークルやゼミの人脈を活用でき、テストマーケティングが容易 |
| 10|キャンパス・サポート事業 | ニーズ発見力、実行力 | 留学生向けの翻訳・生活サポート、PC設定支援、大学周辺の出張サービスなど、当事者だからこそ気づく「不便」を解決する |
【アイデアの注意点】「革新的なアイデア」を追い求めることの危険性
多くの学生が「起業」と聞いて、「まだ世の中にない、革新的なアイデア」を思いつかなければならないと考えてしまいがちです。
しかし、「誰もやったことがない」アイデアは、裏を返せば「誰も求めていない(市場が存在しない)」可能性が非常に高いです。
もし市場が存在したとしても、ゼロから需要を掘り起こし、顧客にその価値を理解してもらうには、膨大な広告宣伝費と時間が必要となります。
学生起業家にとって、資金や時間、信用といったリソースは限られています。
その限られたリソースで、革新的なアイデアの追求というハイリスクな賭けに挑むのは、非常にハードルが高いと言えます。
「既存のアイデア×自分の付加価値」を見つけよう
大学生の起業で目指すべきは「革新」ではなく「改善」です。
すでに市場が存在し、お金を払う人がいる「既存のアイデア」をベースに、自分なりの「付加価値」を掛け合わせることから始めましょう。
たとえば、「Web制作ができます」だけでは、無数の競合に埋もれてしまいます。しかし、そこに大学生ならではの強みを加えることで、独自の価値が生まれます。
| 既存のアイデア | 付加価値 | 独自のアイデア |
|---|---|---|
| 動画編集 | 自身の専門知識 (例:理系学部在籍) |
「研究内容の紹介」や「実験のデモンストレーション」など、専門的で難しい内容を視覚化することに特化した動画編集サービス |
| Webライティング | 自身の原体験 (例:地方からの大学受験) |
地方の高校生や保護者の不安に寄り添い、首都圏の大学情報や受験ノウハウを発信するWebメディアの記事執筆代行 |
| SNS運用代行 | ターゲットとの近さ (例:現役学生) |
企業が直接はリーチしにくい「10代後半〜20代前半の若年層」に刺さるTikTokやInstagramの企画・運用サポート |
| プログラミング | 大学の人脈 (例:サークル・ゼミ) |
大学のサークルや研究室が直面する「スケジュール管理」や「名簿管理」の非効率を解消する小規模なツール開発 |
このように、すでに需要が確認されている市場に、自分だけが提供できる独自の価値をかけ合わせることで、大企業やフリーランスのベテランとは異なる土俵で戦うことが可能になります。

若く、同じ学部であれば共通した専門分野を修めている人材を大勢集められることは、ビジネスにおいては非常に強力な優位性になります。
実際に起業する学生も、この強みを生かしている人が多い印象がありますね。
アイデアは実行(MVP)して初めて価値を持つ
どれほど素晴らしいビジネスプランをノートに書き溜めても、それが市場(顧客)に公開されていない限り、そのアイデアに事業価値はありません。
まずは実行してみなければ、なにも始まらないのです。
ここで重要になるのがMVP(Minimum Viable Product:最小実用製品)という考え方です。
MVPとは、顧客に提供したい「核となる価値」を検証するために、最小限の機能だけを実装した製品やサービスの試作品を指します。
たとえば、飲食店向けに新しい予約管理システムを開発するとします。
そこで、最初から多機能で完璧なソフトウェアを目指し、1年かけて開発したとしましょう。
しかし、リリースしてみると「欲しい機能がない」「既存の予約サイトで十分」といった声が上がるかもしれません。
その場合、膨大な開発費と時間が無駄になってしまいます。
こうした失敗を防ぐためにあるのが、MVP(Minimum Viable Product)の考え方です。
MVPでは、最初から完璧な製品をつくるのではなく、「顧客が本当にお金を払ってでも解決したい課題はあるのか?」「自分たちの解決策はその課題を正しく解決できるのか?」という事業の根幹となる仮説を検証します。
このプロセスを通じて、市場のニーズを的確に把握し、成功確率の高い事業計画を立てることができるのです。
MVPのやり方とは
前項でMVP(最小実用製品)の重要性を解説しました。
しかし実際にMVPを行うとなると、数日がかりの作業を想像し、「難しそうだ」と感じてしまうかもしれません。
ですが、MVPの目的である「アイデアに対し、お金を払いたいという反応があるか」という確認は、コストを掛けずに検証することができます。
MVPの流れは、以下のとおりです。
- アイデアを「140文字のサービス概要」にする
- 未来の顧客候補に直接アプローチする
- 反応を分析する
具体的なやり方について、詳しく解説します。
Step1:アイデアを「140文字のサービス概要」にする
まず、自身が考えたアイデアを、「誰の、どんな悩みを、いくらで、どう解決する」という要素を含んだ「サービス概要文」に落とし込みます。
- オンライン家庭教師の場合
〇〇大学の受験生限定。英語の長文読解が苦手な人へ。現役〇〇大学生(TOEIC 900点)が、オンラインで「解釈の型」を指導します。初回相談60分 1,000円。興味ある方DMください
- SNS運用代行の場合
大学近辺のカフェ限定。Instagramの集客に困っていませんか? 現役大学生の視点で、来店につながる「映える」写真撮影と投稿を代行します。月額5,000円〜。お試しプランあります
ここでは、サービスの本質が相手に伝わるように、簡潔にまとめることを意識しましょう。
Step2:未来の顧客候補に直接アプローチする
ステップ1でサービス概要が作成できたら、そのサービスを必要としていそうな人に直接発信します。
友人知人や後輩を顧客とする場合は、およそ10人ほどを具体的にリストアップし、メールなどで「こういうサービスをこの値段で考えてるんだけど、使ってみたい?」と、直接送信します。
ターゲットがお店や企業の場合は、自身のアイデアで助けられそうなお店のホームページやSNSを探し、お問い合わせフォームやDMから、ステップ1の概要文を元にした「営業メール」を数件送ってみましょう。
Step3:反応を分析する
複数人へ直接アプローチしたあとは、48時間以内の反応を分析します。
これは次の行動を決めるうえで最も重要なプロセスです。
反応がゼロだったとしても失敗ではありません。
「伝え方」や「アイデアそのもの」がターゲットに響かなかったという、有益なデータが得られたと考えられます。
たとえば、課題設定は合っていても提示した解決策が魅力的でない、価格設定が不適切、といった可能性があります。
また、そもそもターゲットがその課題にお金を払いたいと思っていないという、より根本的な問題もあり得ます。
一方で何らかの反応があった場合、それは強い関心の証拠です。
「どこまで対応してくれるのか?」という質問があればサービス内容が不明瞭だということが、「高すぎる」と言われれば価格が障壁になっていることが分かります。
こうした具体的なフィードバックをもとに、ステップ1で作成した「140文字のサービス概要」を修正し、可能なら再度テストします。
この実行→分析→改善のサイクルを回すことで、MVPを効率的かつ低リスクで磨き上げ、事業の成功確率を高めることができます。
【重要】学生起業とバイトの「扶養・税金」全解説
学生が起業するとき、必ず理解しておかなければならないのが、扶養と税金の問題です。
「親の扶養から外れると、どうなるのか?」「いくら稼ぐと、親の税金がどれだけ増えるのか?」「自身で保険料を払う必要が出てくるのか?」
これらの疑問を放置したまま事業を続けると、ある日突然、親の会社や自治体から通知が届き、想定外の金銭的負担が発生する可能性があります。
この章では、学生起業家が安全に活動するために知るべき扶養と税金のしくみと、その具体的な「壁」となる基準額について解説します。
「税金の壁(所得税)」と「社会保険の壁(健康保険)」は別物
前提知識として「扶養」という言葉が指す2つの異なる制度を区別しなければなりません。
多くの学生が扶養の壁を一括りにしていますが、実際には親の税金(所得税・住民税)に影響する「税法上の扶養」と、自身の健康保険に影響する「社会保険上の扶養」の2種類が存在します。
それぞれの比較を表にしてまとめてみました。
| 比較項目 | 税法上の扶養(税金の壁) | 社会保険上の扶養(社会保険の壁) |
|---|---|---|
| 影響する相手 | 親(扶養者) | 学生本人 |
| 主な影響 | 親が支払う所得税・住民税が増額する | 学生本人が国民健康保険料と国民年金を自身で支払う義務が生じる |
| 管轄 | 国(国税庁)、都道府県・市区町村 | 親が加入する健康保険組合、日本年金機構 |
| 基準となる金額 | 合計所得58万円 | 年間収入150万円 |
| 判定対象 | 1月1日〜12月31日の「所得」 | 将来1年間の「収入(売上)」見込み |
このように、2つの制度は管轄する役所も、基準となる金額の計算方法も異なります。
これらを正確に区別できていないと、重大な判断ミスにつながります。
次の項目から、それぞれの「壁」の具体的な計算方法と、学生起業家が特に注意すべき点を詳しく解説していきます。
税金の壁「合計所得58万円」
学生起業家が最初に意識すべき「税金の壁」は、親(扶養者)が「扶養控除」という税制優遇を受けられるかどうかの境界線です。
具体的には、学生(19~22歳)が親の扶養に入っている場合、親は「特定扶養親族」として63万円の所得控除を受けています。
これにより、親の課税される所得が63万円減り、税金が安くなっているのです。
この扶養控除を受けるための条件が、学生本人の「合計所得金額」です。
従来、この基準は48万円(給与収入のみなら103万円)まででしたが、税制改正により2025年から「合計所得58万円以下まで」に引き上げられました。
4 扶養親族等の所得要件の改正
上記1⑴の基礎控除の改正に伴い、次のとおり、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました。
扶養親族及び同⼀⽣計配偶者の合計所得⾦額の要件 : 58万円以下(改正前:48万円以下)
引用:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
起業した学生が「青色申告」という税務手続きを行えば、事業の売上から経費を引いたあと、さらに最大65万円を控除できます。
たとえば売上が200万円、経費が80万円だった場合、その起業家の所得は「200万円-80万円-65万円=55万円」となり、扶養の範囲内に収まります。
もし、起業とアルバイトを両立している場合は、両方の所得を合算した「合計所得」で判定します。
この合計が58万円を超えた瞬間に、親は63万円の扶養控除を使えなくなります。
仮に親の所得税率が20%だった場合、子が扶養から外れると、所得税だけで63万円×20%=12万6,000円、住民税(税率約10%)で63万円×10%=6万3,000円、合計で年間約18万9,000円もの税負担が親にのしかかる計算になります。

親の扶養判定とは一切関係がないため、混同しないよう注意が必要です。
社会保険の壁「年間収入150万円」
税金の壁よりも、さらに深刻な金銭的負担を伴うのが「社会保険の壁」です。
これは学生が、親が加入している会社の健康保険組合などの「被扶養者」でいられるかどうかの境界線です。
基準となるのは、学生本人の「年間収入が150万円を超えるかどうか」です。
この金額を超えると、学生は親の健康保険の扶養から外れ、自分で「国民健康保険」と「国民年金」に加入し、保険料を全額負担する必要があります。
ここでの注意点は、さきほど解説した「税金の壁」は所得で判定されるのに対し、こちらは収入で判定されることです。
さらに個人事業主にとって厄介なのが、親の加入している健康保険組合によって、収入の計算基準が異なるという点です。
一般的な組合では、売上から経費を引いた額を収入とみなします。しかし一部の組合では、売上の全額をそのまま収入とみなすことがあります。
ここで学生の年間収入が150万円以上あると判定されると、国民健康保険料として年間数万から十数万円、国民年金保険料として2025年時点で月額1万7,510円の支払いが発生します。
非常に大きな額となるので、自身の「収入」の計算方法については、必ず親の会社を通じて、健康保険組合に「個人事業主の場合の収入認定基準」を事前に確認しておきましょう。

古い記事などでは130万円のままになっていることもあるので、気をつけてください。
参考:19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります|日本年金機構
学生にとっての「壁」の早見表
大学生が起業するとき、あらかじめ把握しておくべき所得や収入の壁をまとめました。
| 合計所得 (税金の壁) |
合計収入 (社会保険の壁) |
解説 |
|---|---|---|
| 58万円以下 | 150万円以下 | 親の扶養(税金・社会保険)に入ったまま活動できる。 学生自身に税金・社会保険料の負担は原則発生しない。 |
| 58万円超 | 150万円以下 | 親の税金(扶養控除)に影響が出る。 学生自身は確定申告と所得税の納税が必要。ただし社会保険は親の扶養のまま。 |
| (問わず) | 150万円超 | 親の社会保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険・国民年金に加入・支払う義務が発生する。 |
この2つの基準を理解し、自身の事業活動がどれだけの所得・収入となるかを常に把握することが、学業やアルバイトと両立しながら安全に起業するためには重要になります。
確定申告はいつから必要になるのか
親の扶養から外れるかどうか(扶養の壁)の問題と、学生本人が「確定申告」を行う義務があるかどうかは、まったく別の問題です。
学生起業家にとって、重要な判断基準は「20万円ルール」です。
アルバイト先などで年末調整を受けている(=給与所得者である)場合、アルバイトの給与以外の所得、つまり起業した事業で得た所得が年間で20万円を超えた場合に、確定申告の義務が発生します。
アルバイトをしていない、あるいはしていても年末調整がされていない場合は、事業所得や給与所得などを合算した「合計所得金額」が、基礎控除(2025年分からは最低58万円)などの各種所得控除の合計額を上回る場合に、確定申告が必要になります。
個人事業主がアルバイトをした場合の、具体的な確定申告の方法などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

確定申告をすれば、その情報が自動で市役所などに連携されるため、住民税の申告は不要になります。
しかし所得税の申告をしない場合は、別途、お住まいの自治体の窓口で住民税の申告手続きを行う必要があるため、注意してください。
大学生の起業は強力な「ガクチカ」になる
大学生で起業する人のなかには、就職面接でよく聞かれる「学生時代に力を入れたこと」、通称ガクチカのために起業するケースも少なくありません。
実際に起業経験は、就職面接で有利に働くことが多いです。
たとえ規模が小さかったとしても、売上や費用の管理や顧客とのコミュニケーション、就労意識の高さは企業から見ると大きな加点ポイントになり得ます。
ただし、ガクチカのために起業するのであれば、就職したあとの事業の取り扱い方については考えておきましょう。
就職してしまえば、時間的な制約から、自分の事業に注げる労力は著しく少なくなります。
また、入社した会社が副業を禁止していた場合、それまでの事業を取り止めなければいけなくなるでしょう。
こうした場合は、個人事業主の場合は「廃業」を、会社設立を行っていた場合は「休眠」や「清算」を行います。
詳しくは以下の記事をご確認ください。
副業として事業を続ける場合の税金などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
大学生起業に共通する失敗パターンと回避チェックリスト
これまでの章で、起業のアイデアや税金・扶養といった法制度上の重要な知識について解説しました。
これらは、事業を始める前のハードルと言えます。
しかし、無事に事業を開始できたとしても、次に事業を運営するうえでのリアルな失敗のリスクが待ち受けています。
学生起業家が事業に失敗する原因としては、共通するいくつかのパターンが存在します。
- 学業との両立破綻
- 共同経営者(友人)との金銭・方針トラブル
- どんぶり勘定での資金ショート・税務トラブル
これらの失敗パターンを事前に知り、具体的な回避策を準備しておくことは、事業を継続させ、成功確率を高めるために非常に重要です。
ここでは、多くの学生起業家が陥りがちな3つの失敗パターンと、それを未然に防ぐための「回避チェックリスト」を紹介します。
失敗1:学業との両立破綻
大学生起業家が直面する典型的かつ深刻な失敗が、学生の本分である「学業」との両立破綻です。
起業活動が軌道に乗り始めると、自身の行動が売上という成果に結びつくため、大学の講義やゼミの優先順位が下がりがちです。
この状態が続いた結果、結果として単位不足や留年、最悪の場合は退学に至るケースもあります。
学生という身分は、失敗が許容され、多くの支援を受けられる「特権」です。
その特権を失うリスクを自覚しなければなりません。
- 事業に投下する時間は「週20時間まで」など、明確な上限ルールを設けているか
- 自身の大学の「休学制度」の条件(費用、期間、復学プロセス)を正確に把握しているか
- 履修登録の際に、必修単位と事業の時間を天秤にかけるような、無理なスケジュールを組んでいないか
- 1年間留年した場合の、追加の学費と1年分の推定生涯賃金などの機会損失を計算したか
失敗2:共同経営者(友人)との金銭・方針トラブル
サークルやゼミの延長で、仲のいい友人と一緒に起業するケースは非常に多いですが、これは慎重になるべきポイントです。
事業が順調なときは問題になりませんが、売上が立たない、作業負荷が高いといった困難な局面に直面したとき、友情のみで成り立っているビジネスは大きなトラブルに発展しがちです。
こうした対立は、報酬や役割分担に関する明確な取決めがないために発生します。
口約束だけで始めると、事業が失敗するだけでなく、大切な友人を失うという最悪の結果にもなりかねません。
- スキルや人脈が補完関係にあるなど、友人と組む理由が明確にあるのか
- 利益分配の比率を、契約書で合意しているか
- どちらが最終決定権を持つかなどの意思決定ルールは明確か
- 事業を辞める場合のルールを定めているか
失敗3:どんぶり勘定での資金ショート・税務トラブル
多くの学生が、普段から使用している銀行口座に、そのまま事業の売上を入金させてしまいます。
生活費の引き出しと事業の経費の支払いが同じ口座で行われると、何が事業の支出で何が個人の支出なのか、瞬く間に区別がつかなくなります。
この状態では、事業がどれだけ儲かっているのかを正確に把握することが困難になります。
また、事業が軌道に乗って売上が入金されるようになると、その全額を利益だと勘違いしがちです。
しかし実際は、その売上を得るためにかかった経費を差し引いた額が、事業で得られた本当の利益です。
この2つの勘違いが合わさると、いざ税金の納付や次の仕入れを行う段階で、手元に現金が残っていないという、深刻な資金ショートと税務トラブルを引き起こすリスクがあります。
- 事業専用の銀行口座と、事業専用のクレジットカードを作成したか
- すべての領収書や請求書を保存し、会計ソフトで記帳する体制を整えたか
- 「売上」と「所得」の違いを理解しているか
- 所得を得た場合、翌年にいくらの税金と社会保険料が発生するかを試算し、その分のお金を確保しているか?
大学のリソースを最大限に活用する手引きと相談先
起業を志す学生にとって、大学は単なる学びの場ではなく、活用すべきリソースの宝庫です。
社会人がゼロから起業する場合と比較して、学生は「大学の信用」や「専門知識を持つ教員」「無料の施設」といった、非常に有利な資産に囲まれています。
しかし、多くの学生がその価値に気づかず、学外の怪しげなセミナーや高額なコンサルティングに頼ろうとしてしまいます。
まずは自身が所属する大学の資産を徹底的に活用することが、低リスクな起業を実現する鍵となります。
大学生が利用するべき大学のリソースは、大きく分けて以下の3つです。
- 学内の相談窓口
- 教員やOB・OG
- 起業講座やビジネスコンテスト
これらの具体的な活用方法について解説します。
その1:学内の相談窓口を利用する
起業のアイデアが固まっていなくても、まずは学内の専門窓口を訪ねてみましょう。
近年、多くの大学がイノベーション創出や学生のキャリア支援の一環として、起業専門のサポート体制を強化しています。
それらは「キャリアセンター」「インキュベーション・オフィス」「産学連携推進センター」「アントレプレナーシップ支援室」など、大学ごとに呼び名が異なります。
これらの窓口を利用する最大のメリットは、無料で、かつ学生の事情を理解した専門家のアドバイスを受けられる点です。
彼らは学業との両立の難しさを熟知しているため、現実的な事業計画の立て方を指導してくれます。
さらにこれらの窓口は、個人ではアクセスしにくい外部の専門機関や専門家へ「大学のお墨付き」という信頼を添えて繋いでくれます。
地域の商工会議所や、弁護士や税理士といった士業関係者、融資を行う日本政策金融公庫など、大学との提携により紹介を受けられる相談先はさまざまです。
まずは、自身の大学のポータルサイトや学生課の掲示板で「起業相談」や「アントレプレナー」といったキーワードで検索し、担当部署の場所と連絡先を特定することから始めてください。
個人の力だけで進めるよりも、はるかに安全かつ効率的に第一歩を踏み出すことができるはずです。
その2:教員やOB・OGに相談する
学内の専門窓口が「公的な支援」だとすれば、教員やOB・OGとの繋がりは「人的な支援」の入り口です。
ゼミの担当教員や、自身の事業アイデアに関連する学部の教授にアポイントを取り、話を聞いてもらいましょう。
教授陣は、その分野の専門家であると同時に、多くが企業との共同研究やコンサルティングを通じて業界の「生きた情報」を持っています。
彼らに事業計画を話すことで、技術的な実現可能性を検証したり、業界のキーパーソンを紹介してもらえる可能性があります。
さらに強力なリソースが、OB・OGのネットワークです。
特に探すべきは「自身と同じ大学出身の先輩起業家」です。
彼らは、学業との両立や学生という立場で信用を得る方法など、学生起業家が直面する特有の悩みをすべて経験してきています。
キャリアセンターや学内の支援窓口を通じて、こうした先輩起業家を紹介してもらえないか相談してみてください。
同じ大学の後輩というだけで、多忙な経営者であっても無下にはせず、貴重なアドバイスをくれるケースは非常に多いものです。
その3:起業講座やビジネスコンテストを活用する
大学が提供する講座やビジネスコンテストなどのイベントは、最も実践的なリソースです。
多くの大学では、商学部や経済学部だけでなく、全学部生向けに「ベンチャー経営論」や「起業実践」といった単位認定される正規の講義を提供しています。
外部の高額なセミナーに参加する前に、まずは学内で体系的にビジネスについて学べないか、シラバスを確認してみましょう。
また、大学によっては学生に向けてビジネスコンテストなどのイベントを開催しています。
これに参加することで、審査員として参加する現役の経営者や、税理士・弁護士といった専門家と、無料で事業アイデアの壁打ちができます。
さらに学内コンテストであっても、入賞やファイナリスト選出という実績を得れば、融資を受ける際や外部の提携先を探す際に「大学から一定の評価を受けたアイデア」として社会的信用につながります。
大学生起業のまとめ:起業について悩みや疑問があれば税理士に相談しよう
本記事では、大学生が起業する際の具体的なステップと、回避すべき落とし穴について網羅的に解説してきました。
これまでの内容を読んで、「この支出は経費として認められるのか?」「どんぶり勘定を抜け出すための具体的な帳簿の付け方は?」といった、具体的な疑問や不安が湧いてきた方も多いはずです。
特に、税金や社会保険の問題は非常に複雑で、法律や制度の改正も頻繁に起こります。
もし申告漏れや納税漏れがあれば、本来納めるべき税額に加え、延滞税といった追加の税金が発生してしまいます。
このような実務的な悩みは、その内容に応じて税理士などの専門家に相談するのが確実です。
ベンチャーサポート税理士法人では、個人事業主の方へ向けた税務相談や、確定申告のサポートを行っております。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているため、さまざまな内容の案件にもワンストップで対応が可能です。
事業をより発展させるための「会社設立」や、創業計画書の作り方、融資を受けるためのサポートなども行っています。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。


















