最終更新日:2026/2/12
会社のお金で私物を買う社長は違法?横領と経費について解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること
- 社長は会社のお金で私物を買えるのか
- 経費になる支出・ならない支出
- 私的流用が犯罪になるケース
社長になったら会社のお金で好きな物を買ってもいいのでしょうか。実は、社長であっても会社のお金を自由に使えるわけではありません。会社のお金は会社の資産であり、社長個人のお金とは別の扱いなのです。
事業と関係のない支出は経費として認められず、私物の購入や私的な旅行などを会社の費用として処理すると、脱税や横領などの犯罪に該当する可能性もあります。
経費にできる支出には明確な基準があり、事業との関連性を客観的に説明できることが重要です。この記事では、経費の判断基準、私的流用が問題となる理由、犯罪に該当するケースなどをわかりやすく解説します。


目次
社長は会社のお金で私物を買っていいのか?
社長は会社のトップであるため、会社のお金を自由に使えるイメージがあるかもしれません。しかし実際は、そうではありません。
社長であっても、会社のお金で私物を購入することはできません。会社と社長は法律上まったく別の存在で、会社の利益は会社の資産となるため、事業のために必要な支出でなければ経費として処理することもできません。会社の資金管理は厳格に行う必要があります。
会社のお金の私物化はできない
会社のお金は、会社の財産です。社長個人の生活費や私的な買い物に使っていいお金ではありません。
会社という法人では、会社と社長を含む役員は完全に別の人格として扱われるため、会社の資金を個人的な目的で支出すると「会社のお金の私物化」と判断されます。
会社のお金で自宅の家電を買う、家族とのプライベートな食事代を接待費として処理する、私用の旅行代金を会社の経費にするなど、事業と関連性のない支出に会社のお金は使えません。
会社の支出には、その目的と事業が関連していることが求められます。社長個人の私物の購入は事業とは無関係であり、会社のお金を使う正当な理由にはなりません。
社長は経営判断を行う会社の上層部ですが、同時に会社の資産を適切に管理する義務も負っています。社長だから会社のお金を好きに使っていいというのは間違いであり、むしろ経営者こそ会計の透明性を確保しなければなりません。
会社の資産と個人資産は別
会社の資産と社長個人の資産は別々に扱われます。これは、会社が「法人」として独立した存在であるためです。
法人には法律上の人格が認められ、個人とは異なる主体として権利や義務を持ちます。だからこそ会社の名前で契約を行い、銀行口座を持つことができるのです。
たとえ社長が会社の株を所有していても、会社の資産は会社のものであり、社長個人の所有物ではありません。
ひとり社長でも同様
ひとり社長の場合でも、会社と社長個人は法律上別の存在であるため、会社のお金を私的に使うことは認められません。自分しかいない会社だから自由に使っても問題ないというわけではないのです。
ひとり社長だろうと、会社の資金は会社の資産であり、個人的な支出には使えません。
会社の経費とは?
会社の経費とは、事業を継続し、収益を得るために必要な支出のことです。
経費として認められるには、支出が会社の活動に直接または間接的に関係している必要があります。つまり、事業の運営や将来の収益獲得に必要な費用であることが求められます。
社長の生活費や趣味の費用など、事業との関係が説明できない支出は会社で負担することはできません。
ここでは「経費」について解説します。
事業のために必要な支出
事業のために必要な支出とは、会社の売上を生み出す活動にかかる費用を指します。たとえば、取引先との打ち合わせ費用、業務に使うPCやプリンターの購入費、事務所の家賃、通信費などです。
一方、社長の私物の購入費は経費として認められません。個人的な私物は事業との結びつきが説明できないからです。「仕事で必要だった」と主張するだけでは足りず、客観的に見ても事業のための支出だと判断できることが求められます。
経費になるかの基準
経費になるかどうかは、その支出が事業に関連しているかで判断します。ポイントは、誰と、どこで、何のために使ったかという点です。
事業との関連性が薄い支出は経費として認められにくく、特に社長個人がプライベートで使用するものは経費になりません。金額の大小よりも用途が重要であり、私的な支出であれば少額でも経費にはできないのです。
事業との関連性
「支出が経費になるのか」の基準は、事業との関連性です。その支出が会社の活動に役立つのか、客観的に判断することが重要になります。
たとえば、取引先との会食は接待費として説明できますが、家族とのプライベートの食事は事業との関連性がないため経費にはなりません。
また、スーツや時計などの装飾品は、事業で着用するとしても私的利用の面が大きいと判断され、法人では経費にできない場合がほとんどです。支出が事業活動とどう結びついているかを説明できることが、経費として認められるための重要ポイントです。

ただし、普段はスーツを着用しない社長が、テレビ取材や講演会など特定の業務の目的のために購入した場合、衣装としての性格が強く、例外的に経費として認められるケースもあります。ただ、これはあくまで例外的な取扱いであり、衣類や装飾品を経費で購入する場合は、業務専用であることを客観的に説明できるかが重要です。
経費として認められる具体例
では、どのような支出であれば経費として認められるのでしょうか。もちろん、ケースバイケースではありますが、一般的な視点で「何が経費なのか」の具体例をご紹介します。
| 項目 | 社長(役員) | 社員 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 〇 取引先や会社関係者との飲食代は経費にできる |
〇 取引先や仕事関係者との飲食代は経費にできる |
回数は関係なく「誰と」「何の目的で」飲食したかが重要。家族や友人との飲食は原則✕ |
| 旅行費用 | ✕ 原則経費にならな(出張部分のみ〇) |
✕ 原則経費にならない(出張部分のみ〇) |
観光や私的な旅行は✕。出張の場合も、観光部分とビジネス部分を分けて処理する |
| 車関連費用(車体メンテナンス・ガソリン・保険など) | 〇 仕事で使用する部分のみ経費にできる |
〇 仕事で使用する部分のみ経費にできる |
事業用と私用が混在する場合は、走行距離などを基準に按分。完全な私用は✕ |
| スーツや時計、バッグなどの購入費 | ✕ 原則経費にならない(役員報酬で負担する前提) |
✕ 原則経費にならない |
身だしなみ一般とみなされやすく、事業専用とは認められにくい。例外として、制服的な仕事着や衣装の場合のみ、検討の余地がある |
事業で使う備品や消耗品
事業で使用する備品や消耗品はすべて経費にできます。具体的には、コピー用紙や筆記用具、PC、プリンターなどです。
ただし、PCやプリンターなど高額な備品は固定資産として減価償却が必要になる場合があるので注意しましょう。

その際は、誰に・いくら・何の目的で渡したかを明確にし、記録を残しておくことが重要です。
接待交際費
取引先との会食や贈答など、事業上の付き合いのために支出したものは、接待交際費として経費にできます。
一定の飲食費は、要件を満たせば交際費等から除外されますが、1人あたり1万円以下などの条件と、年月日・相手先・人数・店名等の記録保存が必要です。
中小法人では交際費等の損金算入に上限(例:800万円枠等)があるため注意してください。
参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
支出を経費にする理由
会社が支出を経費計上するのには理由があります。
正確な収支管理を行うことは、会社の事業運営の実態を反映した決算書を作成するためにも非常に重要です。経費は、事業のために必要な支出だと明示する役割があり、健全な財務管理を行ううえで欠かせない要素といえます。
節税
経費を正しく計上することは、結果として税負担の適正化につながる重要なポイントの1つです。
法人税は利益に応じて計算されるため、事業に必要な支出を適切に経費処理すれば、課税対象となる利益が減り、最終的に納税額が下がります。
打ち合わせの飲食代や事務所の家賃、備品購入費など、事業のために必要な支出を正しく処理することで、必要以上の税金を支払わずに済み、資金繰りの安定にもつながります。
収支の把握
経費を正しく計上することには、会社の収支を正確に把握するという目的もあります。
どのような支出が事業に必要で、どの費用が利益を生み出しているのかを把握できると、今後の経営判断に役立ちます。
- 利益率の改善
- 不要な支出の見直し
- 資金管理
経費処理は、単なる節税ではなく、経営を把握し健全に運営するための手段でもあるのです。
経費にならない費用を経費にしてしまった場合
経費として認められない支出を誤って経費計上してしまうことも珍しくありません。この場合、誤りに気づいたタイミングによって対応方法が変わります。
決算前に誤りに気づいた場合、 決算修正を行い、該当の支出を経費から外すなど、正しい処理に修正します。
一方、決算後に誤りに気づいた場合は、前期の決算内容を修正する処理が必要になることがあります。
会社のお金で社長が私物を買った場合は、私的な支出を経費にしてしまったケースに該当します。そのまま放置すると、税務調査で給与(賞与)と見られる可能性があります。
役員への支出が給与や経済的利益と判断されると、税務上は経費として認められないケースも多く、追加の税負担が発生することがあります。
判断を誤ると影響が大きいため、早めに税理士などに相談することが重要です。
社長の私的流用は犯罪になる可能性がある
ここまで説明してきたとおり、会社のお金で社長の私物を買うことはできません。そのような行為がある場合は、脱税や刑法・会社法上の犯罪になる可能性もあります。
経費の不正使用は脱税になる可能性
経費に該当しない支出を経費と扱った場合、脱税になる可能性があります。
経費は、課税される収益から差し引かれるため、社長が私物を購入した費用を経費にすると「脱税」につながってしまうのです。
脱税は犯罪であり、会社の信用に大きなダメージを受けることになります。
業務上横領罪
会社のお金で私物を購入すると「業務上横領罪」に該当する可能性があります。
業務上横領罪とは「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」に対して、10年以下の拘禁刑が科されるというものです(刑法253条)。
会社という「他人」から預かっているものを自分のものにした場合、業務上横領となる可能性があります。
背任罪と特別背任罪
会社の財産を私物化した場合に該当する可能性があるのが、背任罪と特別背任罪です。
背任罪は「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた」というものです(刑法247条)。
背任罪は、法定役員(取締役など)ではない従業員などが会社のお金を使い込んだ場合に適用されます。法定刑は、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
一方、特別背任罪は「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたとき」に該当します(会社法960条)。
従業員ではなく、発起人や設立時取締役、設立時監査役、会社法上の役員(取締役、会計参与、監査役)などが背任した場合です。
法定刑は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方で、背任罪より重くなります。
背任罪と特別背任罪は、違法な行為をした人の立場によって罪の重さが変わる犯罪です。
詐欺罪
詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させ」る罪で、相手を騙してお金や物を受け取るというものです(詐欺で騙された相手は、奪われるのではなく自分から財物を差し出しています)。
詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑です(刑法246条)。
法人と個人事業主の違い
法人(会社)と個人事業主には、大きな制度上の違いがあります。社長という呼称は、会社の存在があって初めて成立します。会社は会社の権利義務を持ち、社長個人とは独立した存在です。
一方、個人事業主は「事業の主体」と「事業を行う本人」が同じです。そのため、利益も責任もすべて本人に帰属し、資産管理や税務処理の考え方も法人とは異なります。
会社の収益は会社の資産
法人化して会社になると、会社と社長は法律上明確に区別されます。会社の売上や利益は、社長個人の財産ではなく、あくまで会社の資産です。
そのため、社長であっても会社のお金を自由に使うことはできません。会社からは役員報酬という形で収入を受けるしくみとなっています。
資産が分けられているため、財務管理がしやすく、会社名義での契約や融資ができるというメリットが法人にはあります。取引先や金融機関からの信用力が高まりやすいのもメリットです。
個人事業主の場合は収益は自分の財産となる
個人事業主の場合、事業で得た利益がそのまま個人の財産になります。法人のように「事業資産」と「個人資産」を区別する必要がないため、収入と支出の流れがシンプルです。
簡単にいうと「自分で働いて得たお金はすべて自分の利益」というイメージです。裏を返せば、事業の責任もすべて本人が負うことになります。
もちろん、未払いや負債、その他のトラブルをすべて個人で負うというデメリットもあります。社会的信用の面では法人に比べて弱く、融資審査が厳しくなりやすい点も理解しておきましょう。
また、個人事業主でも、生活費などの家事上の費用は原則経費になりません。家事・業務の両方に関わる家事関連費は、取引記録等に基づき業務上必要部分を区分できる金額に限り経費にできます。
社長だからといって会社の経費で私物を買うことはできない
社長であっても会社の資産を私的に使うことは認められていません。
会社のお金は事業用の資金であり、私物の購入や生活費に利用すると、経費として認められないだけでなく、脱税や横領、特別背任罪などの犯罪に発展する恐れがあります。
経費にできる支出には明確な基準があり、事業との関連性が客観的に説明できることが必要です。
会社の資金管理については経営者自身が透明性を確保する責任があり、判断に迷う場合は税理士などの専門家に相談すると正しい経費処理ができます。


















