最終更新日:2026/2/13
ITエンジニアとして起業する前に知っておくべきこととは?注意点などを解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- フリーランス・法人・スタートアップなど、自分に合った起業スタイル
- エンジニア起業のメリットと、独立前に知っておくべきリスクや注意点
- 準備から資金調達、開業手続き、最初の案件獲得までのロードマップ
- 「技術はあるのに稼げない」を防ぐためのビジネスモデルと必須スキル
IT人材不足が叫ばれる現在、エンジニアの起業は「低リスク・高リターン」が狙える非常に恵まれた状態にあります。
しかし、どれほど優秀なエンジニアであっても、契約リスクや資金繰りといった「ビジネスの落とし穴」を知らなければ、事業を長く続けることはできません。
本記事では、エンジニアの起業のメリットやデメリット、自分に合ったビジネスモデルの選び方、そして開業までの具体的な手順などを網羅的に解説します。
エンジニアとしての起業を考えている方は、ぜひご確認ください。


目次
エンジニアの起業スタイル3パターン
エンジニアが独立や起業を検討する際、目指すべきゴールによって最適な法人形態や事業の進め方は異なります。
エンジニアの起業において代表的なパターンは、以下の3つです。
- フリーランス・個人事業主型
- スモールビジネス・ひとり法人型
- スタートアップ型
それぞれの特徴と収益構造の違いについて解説します。
パターン1:フリーランス・個人事業主型
フリーランス・個人事業主型とは、自身の技術力を提供し、その対価として報酬を得るスタイルです。
主にSES契約(準委任契約)や請負契約を通じて、クライアント企業のプロジェクトに参画します。
このスタイルの最大の特徴は、開業の手軽さと税務申告のシンプルさにあります。
個人事業主は税務署へ開業届を提出するだけで事業を開始でき、法人設立のような複雑な手続きや、登録免許税などの初期費用は発生しません。
税金は所得税などを支払うことになります。
所得税は、課税所得が多くなると税率も高くなる「累進課税」方式ですが、青色申告による特別控除などで負担を抑えることもできます。
エンジニアの場合も、まずはフリーランスや個人事業主として独立し、売上規模が拡大した段階で法人化(法人成り)を検討するケースが一般的です。
パターン2:スモールビジネス・ひとり法人型
スモールビジネス・ひとり法人型とは、自分1人、あるいは少数のパートナーと共に法人を設立し、堅実に利益を積み上げていくスタイルです。
受託開発で安定したキャッシュフローを確保しながら、自社サービスの開発や運用を行うハイブリッドな事業展開が多く見られます。
法人は個人事業主に比べて、経費にできる範囲が広く、さまざまな節税対策を施すことができます。
また資本金が1億円以下であれば、法人税は年間の課税所得に対し800万円までの部分に15%、それ以上の部分に23.2%が課税されます。
税率が固定されているため、一定以上の課税所得がある場合は、個人事業主よりも法人のほうが税負担は軽くなります。
また、大手企業との直接取引などを目指す場合、取引条件として法人であることを求められるケースも多いため、商流を上げるための戦略としても法人化は有効です。
パターン3:スタートアップ型
スタートアップ型とは、自己資金だけでなく、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から資金調達を行い、短期間での急激な市場シェア拡大を目指すスタイルです。
SaaSプロダクトやプラットフォーム事業など、初期投資が多く必要なものの、損益分岐点を超えれば多くの利益が期待できるビジネスモデルが該当します。
一般的な受託開発中心の起業とは異なり、技術力だけでなく、市場の課題を発見するプロダクトマネジメント能力や、投資家を納得させる事業計画の策定能力も問われます。
自身の開発したプロダクトで、大きなインパクトを与えたいという野心的なエンジニアが選ぶ道です。
エンジニアの起業は成功しやすいのか
ITエンジニアの起業は、ビジネスモデルの構造上、ほかの業種にはないさまざまなメリットがあります。
具体的なエンジニア起業のメリットは、主に以下の3点です。
- 市場規模が大きい
- 初期費用を抑えてスタートできる
- AIやクラウドツールが進歩している
それぞれについて詳しく解説します。
市場規模が大きい
エンジニア起業の大きなメリットは、需要が供給を上回る「売り手市場」が長期的に続いている点です。
情報処理推進機構が公表した「DX動向2025」では、DXを推進する人材の量の確保状況について、2024年時点で「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の合計が85.1%となっています。

引用:DX動向2025|IPA独立行政法人 情報処理推進機構(PDF) を加工して作成
こうしたIT人材の不足は深刻な状況ですが、エンジニアとして起業する際には、さまざまな案件を受けやすいというメリットに繋がります。
一般的な起業では「顧客を見つけること」が最初の壁となりますが、エンジニアの場合はエージェントに登録するだけで、即座に複数の案件紹介を受けられるケースも珍しくありません。
初期費用を抑えてスタートできる
エンジニアの起業は、他業種と比較して開業資金が安いケースが多いというメリットがあります。
たとえば飲食店や美容室を開業する場合、店舗の取得費や内装工事費、設備の購入費などで、初期費用として数百万から数千万円の資金が必要です。
これに対し、エンジニアに必要な初期費用は、多くの場合でパソコン代や通信環境の整備費用、ソフト代などで収まります。
もちろん案件によっては人員の確保や設備の設置などに多額の費用が必要になることもありますが、自分の資金にあった案件を選びやすいため、起業のハードルは比較的低いと言えるでしょう。
また、エンジニア起業は家賃や在庫管理費などの固定費(毎月必要になる費用)を低く抑えやすいというメリットもあります。
固定費が高いビジネスは、売上が下がった段階で資金ショートを起こしやすいので、そうしたリスクが低い点も、エンジニア企業の魅力の1つです。
AIやクラウドツールが進歩している
技術の進化、特にクラウドインフラと生成AIの普及によって、エンジニア起業のハードルは劇的に下がっています。
まずインフラ面では、AWS(Amazon Web Services)やGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドサービスが標準化したことで、物理サーバーを購入・管理する必要がなくなりました。
初期費用ゼロで、アクセス数に応じた従量課金で利用できるため、スモールスタートに最適な環境が整っています。
さらに、開発プロセス自体の生産性も飛躍的に向上しています。
GitHub CopilotやChatGPTといったAIツールを活用することで、コーディング、デバッグ、ドキュメント作成の工数を大幅に圧縮できます。
定型的なコード記述やエラー調査をAIに任せれば、エンジニアはコア機能の設計や顧客価値の追求に集中できます。
これにより、従来はエンジニアが複数必要だったプロジェクトを、自分1人で、しかも短期間でリリースすることも不可能ではありません。
こうした技術革新は、組織力を持たない個人起業家にとって非常に強力なレバレッジと言えるでしょう。
事前に知っておくべきデメリットやリスク
エンジニアの起業はメリットが大きい反面、会社員時代には会社が守ってくれていた法的責任や経営リスクを、すべて自分で背負うことになります。
特に注意すべき現実的なリスクは、以下の3つです。
- 契約形態(請負・準委任)による責任や賠償リスク
- 特定の1社に依存する経営リスクや「偽装請負」のリスク
- 開発以外の業務によるリソース圧迫
それぞれについて詳しく解説します。
契約形態(請負・準委任)による責任や賠償リスク
エンジニアがクライアントと結ぶ契約には、主に「請負契約」と「準委任契約(SES契約)」の2種類があり、どちらを選ぶかによって負うべき責任の重さが異なります。
請負契約は「仕事の完成」を約束するものであり、成果物を納品しなければ原則として報酬は支払われません。
さらに、納品後にバグや不具合が見つかった場合、民法上の「契約不適合責任」を負うことになります。
これは、修正が完了するまで無償で対応しなければならないだけでなく、納期遅延によってクライアントに損害が生じた場合、報酬額を超える損害賠償を請求される可能性があるという重い責任です。
一方で準委任契約は、業務の遂行そのものに対して対価が支払われます。
善管注意義務と呼ばれる、プロとして期待される注意を持って業務を行っていれば、成果物が未完成であっても報酬を受け取ることができ、バグに対する修正義務も請負ほど重くありません。
エンジニアとして起業した際には、仕事を受注する際に、自身の契約がどちらに該当するのか、契約書の条文(特に検収条項や損害賠償の範囲)を必ず確認してください。
特定の1社に依存する経営リスクや「偽装請負」のリスク
独立直後のエンジニアに多いのが、前職の会社や特定のエージェントから紹介された1社のみと取引を行うケースです。
売上の100%を1社に依存する経営状態は、先方の業績悪化や方針転換で契約が終了した瞬間、収入がゼロになるという致命的なリスクを抱えています。
また、特定の1社に常駐し、社員と同じように指揮命令を受けて働いている場合、労働者派遣法における「偽装請負」となるリスクがあります。
形式上は業務委託契約(請負や準委任)であっても、実態として以下のような状況であれば、それは違法な労働実態の可能性があります。
- 始業・終業時間が指定されている
- クライアントから直接細かい作業指示を受けている
- 休日取得に承認が必要
リスク回避のためには、複数のクライアントと取引を行って売上を分散させること、そして「注文主から独立して業務を遂行している」という実態を保つことが重要です。
開発以外の業務によるリソース圧迫
会社員時代、エンジニアは「開発」に業務時間の多くを使うことができます。
しかし、独立後は「経営者」としての業務が必ず発生します。
具体的には、新規案件を獲得するための営業活動や毎月の請求書発行、入金確認、経費の領収書整理と記帳、そして年に1度の確定申告や法人決算などです。
特に売上が立ち始めた時期は、これらバックオフィス業務の負担が急増します。
エンジニアとしての技術に自信があったとしても、こうした経理や営業活動がどうしても苦手で、事業に失敗するというケースも珍しくありません。
経理に関してはクラウド会計ソフトを利用したり、税理士などに外注して負担を軽減するなどのしくみを早期に整えておきましょう。
また、自分の苦手分野を補ってくれる人材の確保も重要になります。
起業後の経理に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
エンジニア起業における代表的なビジネスモデル
エンジニアのビジネスモデルは、いくつかの型に分類できます。
それぞれの収益構造やリスク、必要なリソースが異なるため、自身の志向や資金状況に合わせて最適なモデルを選択することが成功への第一歩です。
主なエンジニア起業でのビジネスモデルは、以下の3パターンです。
- 労働集約型
- ストック型
- ITコンサル・講師型
それぞれのモデルの特徴や注意点などについて解説します。

収益化が早い「労働集約型」(受託・SES)
労働集約型は、エンジニア起業において一般的なモデルです。
クライアントの依頼に基づいてシステム開発を行ったり(受託)、プロジェクトに常駐して技術支援を行うこと(SES)で対価を得ます。
このモデルの最大のメリットは、即金性と確実性です。
自分の労働時間や成果物に対して報酬が支払われるため、契約さえ取れれば売上がゼロになることはありません。
一方で、デメリットは自分が働かないと収入が止まることです。
病気や怪我で稼働できなくなった場合の対策や、年齢とともに単価を維持するためのスキルアップが不可欠です。
また、あくまで時間の切り売りであるため、自分1人の稼働で得られる年収には限界がある点も把握しておきましょう。
将来的な資産になる「ストック型」(自社サービス・アプリ)
ストック型とは、自社でWebサービスやスマホアプリ、SaaSを開発・運営し、利用料や広告収入を得るモデルです。
一度開発したシステムは、10人が使っても1万人が使っても、原価(サーバー代などの維持費)は大きく変わりません。
そのため、損益分岐点を超えれば利益率は極めて高くなり、自分が寝ている間も収益を生み出し続ける「資産」となります。
しかし、ストック型の難易度は非常に高いです。
開発期間中は売上が発生しないため、その間の生活費や開発費を自己資金などで賄う必要があります。
また、リリースしてもユーザーが集まらず、投資回収できないまま撤退するリスクとも隣り合わせです。
「当たれば大きいが、忍耐と資金力が必要なモデル」と言えます。
経験と専門知識を活かす「ITコンサル・講師型」(アドバイザリー・教育)
ITコンサル・講師型とは、コードを書くのではなく、自身の持つ「知見」や「経験」を提供するモデルです。
具体的には、企業のDX推進を支援する技術顧問、プロジェクトマネジメント支援、プログラミングスクールの講師などが該当します。
このモデルの特徴は、開発業務に比べて原価がかからない点と、時間単価が高い点です。
たとえば、スタートアップ企業の技術顧問となった場合などは、月1回の会議出席とチャット相談のみで高額な報酬を得られるケースも少なくありません。
バグ修正などの実装責任を負うリスクが低く、体力的な負担も比較的軽いため、ベテランエンジニアのセカンドキャリアや、受託開発と並行するサブの収益源として非常に優秀なビジネスモデルです。
ただし、コンサルや講師として選ばれるためには高度な知識と実績が必要になります。
実務未経験や駆け出しのエンジニアがいきなりこの分野で独立するのは、現実的ではありません。
また、逆にベテランのエンジニアであっても、最新の技術トレンドや市場の変化をキャッチアップし続けなければ、すぐに知識が陳腐化し、クライアントへの提供価値が失われてしまいます。
過去の実績にあぐらをかかず、常に学び続ける姿勢こそが、コンサルタントとして長く生き残るための必須条件です。
起業前に知っておきたい「よくある失敗」と対策
技術力に自信があるエンジニアほど、商品やサービスが売れるしくみやお金の管理を軽視してしまい、事業継続が困難になるケースが少なくありません。
- ニーズの検証不足
- 営業・マーケティングの不足
- 資金計画が甘い
- リソース管理に問題がある
これらの詳細と、回避するための具体的な対策について解説します。
ニーズの検証不足:市場の調査が甘い
典型的な失敗の1つが、顧客が本当に欲しいものではなく「自分が作りたいもの」や「不必要に高度なもの」を作ってしまうことです。
これは「プロダクトアウト(作り手視点)の罠」と呼ばれます。
例としては、最新の技術を駆使して高機能なツールを開発したものの、ターゲット顧客にとっては操作が難しかったり、そもそも高度な機能自体が求められていないので誰も使わなかったりといったケースです。
開発に時間と費用を費やしてからニーズがないことに気づくと、事業のリカバリーは非常に困難になります。
対策としては、いきなり完成品を作ろうとせず、「MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)」から始めることを推奨します。
まずはコアとなる機能だけを実装したプロトタイプを短期間で作成し、見込み客に使ってもらいましょう。
そこで「お金を払ってでも使いたい」という反応が得られて初めて、本格的な開発に着手すべきです。
コードを書く前に、少なくとも10人以上の想定顧客にヒアリングを行うことでも、失敗率を確実に下げられます。
営業・マーケティングの不足:「良いものなら売れる」という誤解
「品質の高いプロダクトやサービスを作れば、自然と評判になり顧客が集まる」というのは、エンジニアが抱きがちな誤解です。
実際のビジネスの世界においては、知られていない商品は存在しないのと同じであり、集客活動なしに売上が立つことはありません。
特に受託開発やコンサルティングの場合、待っているだけで案件が舞い込むことは稀です。
技術力そのものよりも、「その技術を使って顧客の課題をどう解決できるか」を言語化し、提案する営業力が求められます。
開発に没頭するあまり営業をおろそかにし、案件が途切れたタイミングで資金繰りが悪化するケースは後を絶ちません。
事業計画を立てる際には、マーケティングや営業活動の計画も必ず考えておきましょう。
自身のSNSでの発信、交流会への参加、あるいはエージェントとの関係構築など、開発の手を止めてでも「売るための活動」をルーティンに組み込むことが重要です。
資金計画が甘い:キャッシュフローの視点が抜けている
「帳簿上は黒字なのに、手元の現金がなくて倒産する」という、俗に言う黒字倒産は、多くの起業家が直面する資金管理の罠です。
黒字倒産の主な原因は、売上が計上されてから実際に入金されるまでのタイムラグにあります。
たとえば、末日締めの翌々月末払いという契約の場合、働いてから現金が手に入るのは実質3カ月後です。
しかし、その間も自身の生活費や外注費、社会保険料などの固定費は発生します。
利益が出ているからといって安心していると、支払いのタイミングを前にして現金が底をつき、事業停止に追い込まれてしまうのです。
対策として、およそ半年分の運転資金(売上がゼロでも会社を維持できる現金)を常に確保しておく必要があります。
また、契約時には単価だけでなく支払いの時期も確認し、長期的なキャッシュフローを把握しておくことが、安定した事業運営には欠かせません。
リソース管理に問題がある:すべて自分一人で抱え込んでしまう
責任感の強いエンジニアほど、開発から営業、経理、契約書のチェック、PCのセットアップまで、すべての業務を自分一人で完遂しようとする傾向があります。
しかし、経営者の時間は有限です。疲労によって本業のパフォーマンスが落ちれば、品質低下や納期遅延といったトラブルにも発展しかねません。
起業当初から「自分の単価に見合わない業務」は徹底してツール化、あるいは外部委託することを検討してください。
クラウド会計ソフトで経理を自動化する、税理士に申告業務を依頼する、契約書は法務サービスを利用するなど、月額数千円から数万円のコストで自分の時間を買えるサービスは多数存在します。
自分が最も付加価値を出せる「技術」と「事業推進」にリソースを集中させることが、生存率を高める鍵となります。
準備から開業まで:エンジニア起業のロードマップ
エンジニアが独立して事業を軌道に乗せるためには、勢いだけでなく計画的な準備が不可欠です。
失敗のリスクを最小限に抑え、最短で事業を開始するための標準的なロードマップを、以下の4つのフェーズで解説します。
- 会社員時代の準備(副業・事業検証)
- 退職手続きと開業・設立の選択
- 資金調達と事業用口座の開設
- 最初の案件・顧客の獲得
フェーズ1:会社員時代の準備(副業・事業検証)
現在会社員の場合、会社を辞めてから起業の準備を始めるのはリスキーです。
いきなり独立するのではなく、まずは週末や平日夜を活用した副業で、個人の力で稼ぐ経験を積んでください。
クラウドソーシングや知人の紹介で小規模な案件を受注し、「自分のスキルが市場でいくらで売れるのか」という単価感を把握します。
また、独立直後は売上が入金されるまでのタイムラグにより、手元の資金がショートする危険性があります。
売上がゼロでも半年間は生活できるだけの貯金を確保しておきましょう。
さらにクレジットカードやローン契約なども、注意しておきたいポイントです。
独立して個人事業主になると、たとえ年収が高くても社会的信用は一時的に低下し、クレジットカードや住宅ローンの審査に通りにくくなります。
カードの作成や不動産の購入予定がある場合は、会社員の肩書きがあるうちに手続きを行うことをおすすめします。
在職中の副業については、以下の記事でも解説しています。
フェーズ2:退職手続きと開業・設立の選択
退職日が決まったら、行政手続きと事業形態の選択を行います。
まず、退職に伴い社会保険から国民健康保険・国民年金への切り替えが必要です。
ただし、健康保険については最長2年間、会社の保険を継続できる「任意継続」という制度もあります。
こちらの方が保険料が安くなるケースもあるため、退職前に保険料のシミュレーションを行ってください。
次に、事業の開始手続きを行います。
個人事業主の場合、管轄の税務署へ開業届を提出します。
そのほかに提出しないといけない書類は原則としてありませんが、節税メリットの大きい青色申告を行う場合は、青色申告承認申請書の提出が必要になります。
法人の場合、定款の作成や法務局での登記申請、税務署などへの法人設立届出書の提出など、さまざまな手続きが必要になります。
株式会社の設立については、以下の記事で詳しく解説しています。
フェーズ3:資金調達と事業用口座の開設
事業を開始したら、事業用の銀行口座の開設を行いましょう。
個人のプライベート口座に事業用資金を入れてしまうと、経理処理が煩雑になるだけでなく、キャッシュフローも把握しにくくなります。
税務調査が入った際に不信感を持たれる原因にもなるので、かならず事業用口座を別に作り、プライベートの資金との住み分けを行ってください。
次に、資金調達です。
システム開発や機材購入でまとまった資金が必要な場合は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の活用を検討してください。
これは新たに事業を始める人を対象とした、無担保・無保証で利用できる融資制度です。
フェーズ4:最初の案件・顧客獲得
エンジニアの案件獲得には、主に3つのルートがあります。
最も即効性が高い方法は、フリーランスエージェントの活用です。
レバテックやMidworksなどのエージェントに登録すれば、自分のスキルセットに合った案件を紹介してもらえます。
手数料として単価の10〜20%程度が引かれますが、営業工数をかけずに安定して仕事を得られるのが最大のメリットです。
知人や前職の付き合いがあるところからの紹介なども、有効な案件獲得手段です。
信頼関係ができているため、商談がスムーズで、かつ中間マージンが発生しないため高単価になりやすいルートです。
ただし、長期的に案件を獲得できるとは限らないうえ、起業前に口約束で仕事を回すと言われていたのに、いざ起業したら反故にされてしまったというトラブルも少なくないため、注意してください。
SNSや技術ブログ、ポートフォリオサイトなどを通じて技術力を発信して問い合わせを待つ、あるいは企業のお問い合わせフォームへ直接提案を送るダイレクト営業も、随時行っていきましょう。
時間はかかりますが、成功すれば利益率の高い案件獲得手段にもなりえます。
技術力以外にエンジニア起業に求められるスキルや視点
「技術力があれば成功できる」というのは、エンジニア起業において非常に危険な誤解です。
コードが書けることと、事業を継続・拡大させることはまったく別の能力です。
エンジニア起業で重要となるスキルや視点は、以下の3つです。
- ポジショニングと経営戦略
- 会計・税務の基礎知識
- セルフマネジメント力
それぞれがどのように経営で重要となるのかについて解説します。
「勝てる領域」を見極めるポジショニングと経営戦略
エンジニア起業家として成功するためには「どこで戦えば自分が勝てるか」を見極める経営戦略的な視点が不可欠です。
起業直後はとにかく実績と収入を求め、さまざまなジャンルの案件に手を出しがちです。
しかし、自分の時間と技術というリソースをどこに投下するかについては、冷静に戦略を立てておかないと、成果物のクオリティやその評判、自分のスキルアップも中途半端なものになってしまいます。
「何でもできます」というゼネラリストとして営業するのではなく「技術✕特定の業界や担当フェーズ」といった掛け合わせを行い、自身の専門領域を確立することが、長期的な安定と収入の増加につながります。
こうした経営戦略も、起業をするうえでは非常に重要です。
数字で経営を把握する会計・税務の基礎知識
経営では、会計や税務の知識も必要になります。
「経理は税理士に丸投げすればいい」と考える人もいますが、経営者自身が自分のビジネスの損益分岐点やキャッシュフローの構造を理解していなければ、正しい経営判断は下せません。
日々の記帳作業や複雑な税務申告は専門家に任せるべきですが、ビジネスの共通言語である会計の基礎を習得することは、自分の会社を守るための防具となります。
納期と品質を守るセルフマネジメント力
組織に属していれば、進捗が遅れそうな時にPM(プロジェクトマネージャー)がアラートを出してくれたり、同僚がカバーしてくれたりします。
しかし、独立後は誰もそうした管理をしてくれません。
特にフリーランスやひとり社長が陥りやすいのが、体調不良やスケジュール管理の甘さによる納期遅延です。
クライアントにとって、納期を守れないエンジニアは、どれほど技術力が高くても経営上のリスクでしかありません。
一度でも納期を破れば、そのクライアントからの信用は地に落ちてしまうでしょう。
自分の作業スピードを正確に見積もり、適切な休息も確保して仕事のパフォーマンスを維持するセルフマネジメント力も、経営者には必要になります。
エンジニアの起業に関するよくある質問
起業の全体像はイメージできても、いざ自分のこととなると現実的な疑問が尽きないものです。
エンジニア起業でよくある質問について、解説します。
個人事業主と法人のどちらで起業するべきか
基本的には「個人事業主」からスタートし、事業が軌道に乗った段階で法人化することをおすすめします。
個人事業主は開業手続きが税務署への届出のみで完了し、費用もかかりません。
一方、法人は設立に費用がかかるほか、たとえ事業が赤字であっても「法人住民税の均等割」という、年間約7万円の納税義務が発生します。
また、社会保険料の負担も重くなる傾向があります。
まずは個人事業主としてリスクを抑えて開業し、課税所得が500万円を超え、法人化による節税メリットが出てきた段階で、税理士と相談して会社を設立するべきかを決めるといいでしょう。
ただし、取引を希望する企業が「法人契約必須」の条件を提示している場合や、優秀な人材を採用したいといった理由があれば、起業段階からの会社設立も検討してみてください。
技術や経験が少ない・未経験でもエンジニアとして起業できるか
エンジニアとしての起業に、原則として許認可などは必要ありません。
ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークの取得、医療・金融分野であればそれに関連する認可が求められることもありますが、これらを必要としない案件も数多くあります。
そのため、未経験であってもエンジニアとして起業することは制度上は可能です。
しかし、ビジネスとして成立させるのは非常に困難であり、推奨できません。
企業が外部のエンジニア(フリーランスや法人)に発注する際には、基本的に即戦力のスキルを求めています。実務未経験者に発注される案件は、極めて単価の低い単純作業に限られるのが現実です。
未経験であれば、まずは開発会社に就職し、給与をもらいながら実務経験を積むことを強くおすすめします。
現場で1〜3年ほど働き、開発フローやチームワーク、顧客との折衝経験を身につけてから独立する方が、結果として高単価な案件を獲得でき、エンジニアとしての寿命も長くなるでしょう。
エンジニア起業で経費として認められるものはなにか
原則として、経費とは「事業の売上を獲得するために直接要した費用」を指します。
エンジニアは飲食店や建設業のように原材料や在庫を持ちませんが、業務遂行に必要な投資や学習コストは正当な経費として認められます。
代表的なものでは、パソコンやモニターなどの消耗品費、インターネット回線やサーバー代、ドメイン更新料などの通信費、技術書や業務に関連する内容のWeb記事の購入などにかかる新聞図書費などが経費となります。
なお、個人事業主よりも法人の方が、経費として認められる範囲や選択肢は広くなります。
自宅をオフィスにする場合は、個人事業主であれば業務使用分のみを計算する「家事按分」が必要ですが、法人の場合は「社宅制度」を活用することで、家賃の大部分を会社の経費として計上できる可能性があります。
また、出張時の食事代などを補填する出張手当や、経営者自身に支払う役員報酬なども、法人であれば経費として扱うことが可能です。
自宅をオフィスとして使用しても問題ないのか
法人の場合、ビジネスを行う本拠地となる「本店所在地」を登記する必要があります。
本店所在地を自宅にすること自体は、法的に問題はありません。
しかし、実務上は「賃貸契約の制限」と「プライバシー」の2点において注意が必要です。
まず、一般的な賃貸マンションやアパートの契約は「居住専用」となっているケースが大半です。
大家さんや管理会社に無断で法人登記や事務所利用を行うと、契約違反とみなされ、最悪の場合は退去を求められるリスクがあります。
持ち家(分譲マンション)であっても、マンションの管理規約で事務所利用が禁止されていることが一般的です。
次に、プライバシーの問題です。法人の登記情報は一般に公開され、国税庁の法人番号公表サイトなどを通じて、誰でも閲覧可能な状態になります。
自宅の住所がインターネット上で特定されてしまうため、セキュリティ面や家族のプライバシーを懸念される方にはおすすめできません。
近年はこれらの問題を解決するため、物理的なスペースを持たず住所だけを借りるバーチャルオフィスを利用するエンジニアも増えています。
本店所在地の選択肢などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
この記事のまとめ:自分にあったスタイルでエンジニアとして起業しよう
エンジニアは、その需要の高さや市場規模の大きさ、AIなどの技術の発展により、起業しやすい職種の1つでもあります。
しかし、起業する際には契約形態による責任範囲や賠償リスク、経営者となることで発生するさまざまな業務への対応なども考慮しなければいけません。
市場のニーズ調査や自分の強みの棚卸し、キャッシュフローの把握など、いわゆるエンジニアとしてのスキルとは関係のない領域にも向き合う必要があります。
起業について悩みがあれば税理士に相談しよう
エンジニアにとって、時間は貴重なリソースです。
慣れない会計ソフトの入力や複雑な税務申告に大切な時間を費やすよりも、その時間を開発や営業に充てて売上を伸ばす方が、経営判断として合理的であるケースは少なくありません。
また独立・起業する段階でも「個人事業主と法人のどちらを選ぶべきか」「資金計画は適切か」「融資を受ける際にはどうすればいいのか」など、さまざまな不安や疑問を抱えることになります。
そうしたときは、起業家支援を専門とする税理士の無料相談を利用してみてください。
ベンチャーサポート税理士法人では、個人事業主の方へ向けた税務相談や、会社設立を行う方に向けたさまざまなサポートを行っております。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士、土地家屋調査士なども在籍しているため、複数の専門分野が絡む案件にもワンストップで対応が可能です。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。


















