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最終更新日:2026/3/17

夫婦で起業は本当にうまくいく?メリット・失敗例・後悔しない始め方

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

夫婦で起業は本当にうまくいく?メリット・失敗例・後悔しない始め方

この記事でわかること
  • 夫婦で起業する場合のメリット
  • 夫婦で起業した人の失敗例
  • 事前に決めるべきルール

夫婦で起業する場合、配偶者であるという信頼関係を土台にスタートできるため、外部のパートナーの場合と比べて意思決定や実行のスピードを高めやすいというメリットがあります。

日常的に会話もでき、方向性のすり合わせや戦略の見直しも素早く行えます。開業直後は人手や資金が限られるため、夫婦で起業して役割を補い合える点は大きな魅力です。

一方、夫婦での起業にはデメリットもあります。

生活と事業の基盤が一緒であるため経営状態がそのまま生活に影響すること、役割分担や報酬設計があいまいなまま進めると無償労働や評価基準の不一致が起こることなどが、その一例です。これらは事業運営の問題だけでなく、夫婦関係の摩擦にもつながります。

夫婦で起業を成功させるには、関係性ではなく計画が重要です。この記事では、夫婦で起業する際のメリット・デメリット、よくある失敗例、事前に決めるべきポイントを整理します。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

夫婦で起業するメリット

夫婦で起業すると、生活基盤が一緒であるため、意思決定の速度と実行力が高まりやすいといえます。日常会話の延長で事業の相談ができるため、スピード感を持って進められます。

ここでは、夫婦で起業するメリットを解説します。

意思決定がスムーズ

夫婦で起業する大きなメリットは、事業の前提となる生活状況や目指す方向をしっかりと共有した状態で話を進められる点です。日常会話の中で状況を更新できることも意思決定の速さにつながります。

たとえば、価格の見直しや新しいサービスの導入などの場面でも、改めて打ち合わせの時間と場所を用意する必要がありません。

また、トラブルが起きた際も情報共有までの時間を最小限にでき、迅速に対応できます。

価値観を共有しやすい

夫婦で起業する場合、ビジネスに関する価値観も共有しやすくなります。

たとえば、短期的な利益を優先するのか、将来のために投資を増やすのかといった判断も、生活設計と結びつけて設定できます。

売上が安定するまで報酬を抑えるという選択や、設備投資を行うタイミングなども、経営の方向性がそろっていれば建設的な対話が可能です。価値観の共有は、経営判断のブレを軽減することにつながります。

メリットがデメリットになる瞬間

夫婦で起業する場合、細かなルールを決めなくても日常の延長で事業を進められます。これはメリットでもあり、デメリットでもあります。

本来は業務上の問題であるはずのことが、夫婦関係の問題として受け止められてしまうこともあるのです。

責任の押し付け合いになるケース

担当の業務と権限の範囲がはっきりしていない場合、トラブルの原因になることがあります。

たとえば、売上が伸びない理由や経費が増えた原因を客観的に判断できなくなり、責任の押し付け合いになるといったケースです。

そのような状態で話し合いをすると、仕事内容そっちのけで相手に対する感情が爆発してしまうこともあるでしょう。経営上の改善点を検討するはずの場面が感情的な対立に変わってしまうと、解決が難しくなります。

仕事と家庭の境界が消える問題

夫婦で起業すると、仕事と生活の場所・時間が重なることが多くなります。お互いに仕事とプライベートの境界を意識しない限り、ずっと業務が続いているような感覚になることもあるでしょう。

食事中や就寝前にも仕事の話が出ると、気持ちを切り替える時間がなくなり精神的に追い詰められてしまう可能性もあります。

夫婦で起業するデメリット・よくある失敗

夫婦で起業することはメリットがある一方でデメリットもあります。ここでは、夫婦で起業した場合のデメリットやよくある失敗を解説します。

夫が代表者の場合

夫婦で起業して、夫が代表者になる形は多く見られます。経費の最終判断が代表者となると、夫婦間で価値観のズレが生じるケースがあります。

たとえば、広告費を増やしたい、外注を入れて作業時間を確保したいと考えても、その都度説明が必要になり、妻に理解してもらえないといった状況になることがあります。

特に新しい機材やシステムの導入、接待費などがトラブルになりやすいです。1つ1つは小さな積み重ねでも、代表者が「自分で決めて動けない」という状態が続くのはよくありません。

妻が代表者の場合

妻が代表者になる場合、仕事上の責任を担いながら、家事や育児などをしているケースがあります。仕事量が増えているのに家庭内の役割が変わらないと、休息の時間がなくなってしまいます。

また、資金繰りや売上の不安、取引先とのやり取りを抱えたまま日常生活を回すことになるため、思っている以上に体力と気力は消耗します。

代表者の決定と同時に、家庭内の役割もセットで見直すことが必要です。

共同代表の場合

共同代表は対等で理想的に見えるかもしれません。

共同代表のリスクは会社形態によって異なり、株式会社で複数の代表者を置くと、対外行為の統制が難しくなることがあります。

また、合同会社で業務執行社員が2名(50:50)の場合は多数決ができず膠着しやすくなります。 そのため、最終決裁権、職務分掌、重要事項の決定ルールを定款や社内ルールで明確にしておくことが必要です。

夫婦で別の会社をそれぞれ起業する場合

夫婦で起業するには、1つのビジネスを夫婦で行う形式だけでなく、夫婦がそれぞれ別のビジネスで起業する形もあります。

それぞれが代表者になるため、どちらかの売上が落ちても、もう一方で家計を支えられる点は大きな安心材料です。

また、夫婦がそれぞれ法人を設立している場合は、法人間の業務委託契約として取引でき、役割と報酬が明確になります。ただし、夫婦がともに個人事業主の場合、生計を一にする親族間の取引は所得税法上の制約があるため注意が必要です。

参考:所得税法 第五十六条|e-Gov 法令検索

収入が不安定になりやすい

夫婦で起業すると、毎月決まった給与が入る状態ではなくなり、売上がない月が続く可能性もゼロではありません。経営状態が生活に直結するため、大きなプレッシャーがかかります。

収入が不安定になり、それがストレスになってミスを誘発することもあります。

夫婦関係が壊れる典型パターンとは

夫婦で起業すると、最初は「一緒に頑張ろう」という空気でスタートします。しかし、立場やお金の話をあいまいにしたまま走り出すと、少しずつズレが積み重なることがあります。

その典型例の1つが、役割があいまいな状態が続くパターンです。

営業や企画、バックオフィス、家事・育児など、それぞれが「何をどこまで担当するのか」「その対価をどう評価するのか」を決めないまま進めてしまうと、お互いに「自分ばかり大変」という感覚が生まれます。

特に事務作業やサポート、家事など、お金に直結しにくい仕事を担っている人ほど、貢献が見えにくくなるものです。

また、評価と感謝が消えていくことも夫婦関係を壊す原因になります。

一緒に仕事をしていると「やってくれて当たり前」の範囲がどんどん広がり、最初は感謝していたことでも意識しなくなります。売上や成果が落ちたときに「どちらが悪いか」という視点で考えるようになり、これまで我慢してきたことが一気に噴き出すケースもあります。

離婚・別居時に想定されるトラブル

夫婦で起業すると、その後で離婚に至った場合にトラブルが発生することがあります。

夫婦で起業して作った会社は、法律上「夫婦のもの」ではなく、独立した人格を持つ「法人」となります。そして、夫婦それぞれが50%ずつ株を持っている場合、どちらも同じだけの決定権を持つ状態となります。公平ではありますが、離婚や別居の場面では、これが意思決定の行き詰まりの原因になります。

夫婦で起業するなら絶対に決めるべきこと

夫婦で起業すると「何となく話が通じるから」「その場その場で決めれば大丈夫」と考えたくなります。

しかし、代表者、お金、役割、決定権、やめる基準などは、あらかじめ明確にしておくべきです。

代表者はどちらか

夫婦で起業するとき、まず決めておきたいのは「代表者は誰か」です。

代表者は、銀行や取引先への窓口になり、契約や借入れの責任も負います。代表者は「名前だけ」の立場ではなく対外的な会社代表者です。

重要な立場であるため、どちらが代表者になるかは起業前から話し合って決めておきましょう。

お金に関するルール

お金に関するルールも決めておくべきです。

事業の売上から「いくらを生活費にして、いくらを事業に残すのか」や「夫と妻の取り分はどう決めるのか」を話し合っておきましょう。

夫婦で起業する場合、事業が生活に直結するため不満が出やすくなります。また、お互いが「こんなに働いているのに自分のお金が全然増えない」という不満を抱えることもあるため、事前の取り決めは重要です。

役割分担と最終決定権

夫婦で起業する場合、役割分担を明確にする必要があります。営業、制作、経理、集客などをどちらが担うのかを決めておくと、判断のスピードが落ちにくくなります。

あわせて、意見が割れたときの最終決定権も決めておきましょう。日々の業務は担当者が判断するとして、事業の方向性や大きな支出をどちらが最終判断するのかまで決めておくとよいです。

会社を設立する場合は、持株比率も重要です。株式会社では、定款変更や事業の全部譲渡などの重要事項には、株主総会の特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。夫婦で50%ずつ株式を保有すると、意見が対立したときに意思決定が滞ってしまいます。

夫婦であっても仕事の立場を守る

夫婦で起業すると、家庭の延長で仕事の会話をしてしまうことがあります。しかし、仕事の場面では、家庭とは異なる役割に基づいてやり取りをすることが必要です。

業務の指摘は感情ではなく内容に対して行い、成果や貢献を意識して言葉にすることで相手の立場を尊重できます。夫婦であっても、仕事での評価は継続して働くうえで大きな支えになります。

また、仕事の時間と家庭の時間を分ける意識も必要です。

事業をやめるときの基準

夫婦で起業する際は、続ける基準だけでなくやめる基準も決めておくとよいです。状況が悪化しても判断を先送りしないようにある程度のルールを作っておきましょう。

目安としては、2期連続で赤字になった場合や、来期も黒字の見通しが立たない場合が撤退の基準になり得ます。あわせて、家賃や人件費などの固定費が売上に対して重すぎていないかも判断材料になります。

あらかじめ撤退のラインを決めておくことで、感情ではなく事業の状況に基づいて判断できます。

夫婦で起業しやすい事業

夫婦での起業には、固定費が低く、役割分担をしやすい事業が向いています。

初期投資が大きい事業は資金面の負担が生活に直結するため、初期費用が少ない事業のほうが始めやすいでしょう。ここでは、夫婦で起業しやすい事業をご紹介します。

コンサルタント

コンサルティング業は、大きな設備投資が不要なため夫婦で起業しやすい事業です。

専門知識を提供する形になるため、片方が実務を担当し、もう片方が営業や資料作成、経理を担うといった分担もしやすくなります。夫婦それぞれが違うスキルや経験を持っている場合は、お互いの強みを活かして多角的なコンサルタント業務も展開できます。

オンライン対応が可能な業種であれば、場所に縛られずに運営できるのもメリットです。

小規模サービス業

飲食店や小売店などの小規模サービス業も夫婦で起業しやすい分野です。顧客との関係性を重視する業種のため、夫婦で役割分担しながら継続しやすい点も特徴といえます。

夫婦で飲食店などを経営しているケースは多いため、参考にしやすい事例が多いのもメリットです。

オンラインショップ

オンラインショップの運営は初期費用を抑えやすく夫婦で起業する際の負担を最小限にしやすいビジネスの1つです。

ハンドメイド作品などの趣味を活かして起業するケースや、前職の経験を活かして起業するケースもあります。まずは、小規模事業からスタートして、売上の状況を見ながら段階的に規模を拡大できます。

自宅でできる事業

自宅を拠点にできる事業は、家賃などの固定費を抑えられるため収支が安定しやすくなります。

前述のオンラインショップに加え、WebライティングやWebデザイン、動画編集なども自宅でスタートしやすいビジネスの1つです。

通勤時間が不要になることで作業時間を確保しやすい点もメリットです。

夫婦で起業するまでのステップ

夫婦で起業する際は、事業形態によって準備の流れが異なります。

個人事業主として始めるのか会社を設立するのかによって手続きや費用は変わるため、事前に確認しておきましょう。

個人事業主の場合

個人事業主として始める場合は、税務署へ開業届を提出して事業をスタートします。あわせて青色申告承認申請書を提出しておくと、節税面で有利になります。

なお、青色申告承認申請書には提出期限があり、原則として開業日から2か月以内(1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで)に提出する必要があります。期限を過ぎるとその年は青色申告ができません。

参考:A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

夫婦の一方が個人事業主で、もう一方が事業に専従する場合、「青色事業専従者給与」として配偶者への給与を必要経費にできます。届出書の提出が必要なため、開業届・青色申告承認申請書とあわせて準備しましょう。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

また、事業用の銀行口座を私用と分けて作成することで、お金の流れを把握しやすくなります。あらかじめ、収入と経費の管理方法を決めておくことが重要です。

会社設立する場合

会社を設立する場合は、会社形態を決め、定款を作成し、設立登記を行います。

会社設立時には、株式会社の場合は持株比率、代表者、役員報酬などを決める必要があります。極めて重要なポイントであるため夫婦で十分に話し合うことが大切です。

法人化にはコストや手間がかかりますが、社会的信用が高まるため、融資や取引の面で有利になる場合があります。

夫婦での起業でよくある質問

Q:夫婦で起業すると外注コストを抑えられますか?

A:外注コストや初期費用は抑えやすいですが、コストカットのために無償労働を強いることがないよう注意が必要です。
Q:夫婦で起業すると離婚時にトラブルになりませんか?

A:事前の取り決めがなければ、トラブルになるリスクは大きいです。
Q:夫婦で起業する前に、必ず決めておくべきことは何ですか?

A:お金・役割・決定権・撤退ラインの4つです。

夫婦で起業する場合は話し合いとルール作りが大切

夫婦での起業は、意思決定の速さや役割を補い合える点が強みです。

一方、代表者、持株比率、お金の管理、役割分担、最終決定権などははっきりさせる必要があります。ここがあいまいになると、事業上のトラブルがそのまま夫婦関係の問題になってしまう可能性があります。

特に会社を設立する場合、株式の持ち方や役員報酬の設計が、あとで意思決定に大きく影響するため慎重に判断しましょう。

また、制度や手続きの面では専門的な判断が必要になるため、税理士や司法書士などの専門家に相談しながら進めることで、将来のトラブルを防ぎやすくなります。

夫婦での起業を成功させるポイントは、十分な話し合いとお互いが納得できるルール作りです。

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