最終更新日:2025/6/19
定款変更のための株主総会を徹底解説!議事録のひな形や決議の種類は?

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 定款変更を株主総会の特別決議で行う流れ
- 定款変更に必要な決議の種類
- 定款変更と登記について
定款は会社の基本ルールをまとめた大切な書類であり、会社の実態に合わせて変更することが可能です。定款を変更する際には、株主総会の特別決議を経て、正しく手続きを進めなければなりません。
この記事では、定款変更に必要な決議の種類や、手続きの流れ、登記が必要な場合のポイントについてわかりやすく解説します。初めて定款変更をするという方に役立つ情報をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
定款変更は株主総会が必要
会社の基本ルールを定める定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。
これは、定款の記載事項が会社の基礎に関わる重大なものであり、その変更に株主の意思を反映する必要があるためです。
定款変更のフローチャート
定款を変更するには、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、定款変更がどのように進んでいくのか、流れをわかりやすくまとめていきます。実際に手続きを進めるときの参考にしてください。
取締役会(または代表取締役)が定款変更案を作成
↓
株主総会の招集通知(議案に定款変更案を明記)
↓
株主総会の開催
↓
特別決議による承認(議決権の3分の2以上の賛成)
↓
定款変更の効力発生
↓
法務局で変更登記手続き(必要に応じて)
ここで注意したいのが、定款変更と変更登記は別の手続きであるという点です。
- 定款変更が必要か
- 定款のどの部分を変更するのか
- 変更登記が必要か
上記のポイントを押さえておくとよいでしょう。
定款変更が必要でも、法務局で変更登記をする必要はないケースもあります。定款変更はあくまでも会社の内部文書の変更であるため、株主総会の議事録を作成すれば完了です。ただし、変更内容によっては定款変更後に変更登記が必要になります。


株主総会とは?
株主総会とは、株式会社の最高意思決定機関です。株式会社の場合、年に一度は必ず株主総会が開催されます。
株主総会で話し合うことは多岐にわたりますが、特に定款変更は重要な議題です。
定款変更の手続きは、以下のような順序で進めます。
- 取締役会で定款変更案を決議する
- 株主総会の開催通知を発送する
- 株主総会を開催し、特別決議を行う
- 議事録を作成し、代表者の署名押印を行う
- 必要に応じて法務局で登記手続きを行う
- 原始定款と議事録を会社で保管する
定款を変更する際には、まず取締役会で変更内容を協議し内容を決定します。
その後、株主総会を開催し、株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ることで、定款変更が正式に承認されます。
取締役会非設置会社の場合は、取締役会を経ることなく株主総会の特別決議を行います。
決議の内容は「株主総会議事録」として正確に残しておくことが必要です。
そして、変更内容に商号や本店所在地などの登記事項が含まれている場合には、株主総会の日から2週間以内に、所轄の法務局で登記申請を行う必要もあります。
議事録と原始定款は、保存文書として社内で保管し、必要に応じて使用します。
定款変更は特別決議が必要
株主総会の決議には大きく分けて3パターンあります。
このうち、定款変更をする際には必ず株主総会の特別決議が必要です。変更箇所が絶対的記載事項ではなくても、定款を変える場合は必ず特別決議を行います。
決議の種類 | 成立要件 | 主な議題例 |
---|---|---|
普通決議 | 議決権の過半数を持つ株主の出席と、出席している株主の議決権の過半数の賛成 | 役員選任、配当決定 |
特別決議 | 議決権の過半数を持つ株主の出席と、出席株主の議決権のうち3分の2以上の賛成 | 定款変更、合併、会社分割 |
特殊決議 | 要件は議案ごとに異なる(例:株主全体の過半数の同意+議決権の4分の3以上) | 譲渡制限のある株式の取得など |
普通決議
普通決議は、株主総会の決議のなかで最も一般的な決議方法です。
出席した株主の議決権の過半数の賛成により成立します。役員の選任や計算書類の承認など、日常的な議題で用いられます。
特別決議
定款変更は特別決議で行います。他にも合併や会社分割、解散など、会社の根幹に関わる事項を決定する際に必要です。
出席は議決権の過半数、その上で出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要とされるため、普通決議よりも厳しい基準が設定されています。
特殊決議
特殊決議は、決議の内容で可決の条件が異なります。
議決権を行使できる株主の「半数以上」の同意、かつ議決権を行使できる株主の議決権の「3分の2以上」の賛成で成立するケースや、総株主の「半数以上」の同意、かつ総株主の議決権の「4分の3以上」の賛成で成立するケースがあります。
定款変更のための株主総会の特別決議の流れ
定款を変更するためには、株主総会で特別決議を行い、議事録を作成する必要があります。ここでは、その基本的な流れをわかりやすく紹介します。
株主総会の議事録の作り方
定款を変更する際には、株主総会を開催し、その内容を記録した議事録を作成する必要があります。まずは、株主に対して会議の開催を知らせる「招集通知」を送ります。
次に、株主総会を開き、定款変更について審議と決議を行います。特別決議で可決されれば定款が変更されるため、その内容をもとに議事録を作成します。
議事録には、議長の氏名、議案の内容、決議の結果などを明確に記載し、議長および出席した取締役や監査役が署名・押印を行います。これによって正式な議事録となります。
作成した議事録は、定款変更の登記申請などで法務局など外部に提出するケースもあるため、形式や記載内容に不備がないよう注意が必要です。
株主総会の議事録のひな形
株主総会の議事録は、ひな形を利用して自分で作成することができます。
下図が、株主総会議事録のイメージです。ゼロから議事録を作るのは大変ですが、ひな形をベースにすれば問題なく自社の議事録を作れます。
定款変更はどんなときに必要?
定款変更はどのようなときに必要なのでしょうか。定款変更をすべきタイミングについて解説します。
定款の記載事項を変更する
定款の記載事項について追加や削除をする場合は定款変更をします。会社の実態が定款の内容と合わなくなった場合には、定款変更をして会社の実態と定款にずれがないようにする必要があります。
記載事項と会社の実態はイコール
定款は会社のルールブックですので、定款の記載事項と会社の実態は常にイコールでなければなりません。
特に、絶対的記載事項は会社の根幹をなすものであるため、変更が生じたら必ず定款変更をして、法務局での登記も済ませましょう。
本店の移転
会社の本店を移転した場合は、定款変更が必要です。ただし、定款に記載する本店所在地は最小行政区画(東京23区およびその他の市町村)まででもよいため、その範囲内での移動であれば定款変更は不要です。
役員人事の変更
役員の人数や任期を変更する場合は、定款を変更する必要があります。定款は、役員の人数や任期を含む会社運営に関する重要事項を定めているため、これらを変更するには株主総会の特別決議が必要です。
事業目的や商号の変更
会社の事業目的や商号を変更するには、定款変更が必要です。定款は会社の基本ルールを定めた文書であり、事業目的や商号は絶対的記載事項という重要な記載事項にあたります。
事業を拡大したい場合や商号を変えたいときには、株主総会の特別決議を経て、定款を変更しなければなりません。
定款変更を怠るとどうなる?
必要な定款変更を行っていない定款違反の状態になっても、直ちに行政罰が科されるわけではありません。しかし、リスクが生じる可能性があります。
たとえば、銀行融資や許認可の申請に影響が出たり、取引先からの信用が低下したりといったリスクが考えられます。このような事態を防ぐためにも、定款と会社の実態の整合性を保つことが重要です。
罰則はない
必要な定款変更をせずに事業を行っていても、罰則はありません。このような状態を定款違反といいます。
ただし、定款違反の状態が継続するのは好ましいことではないため、罰則がなくても定款変更はしなければなりません。
定款違反をしても取引は成立する
定款を変更せずに、事業目的にないビジネスをしてしまった場合でも、取引は成立します。定款にない事業であっても、契約の責任が発生しないわけではありません。
定款にない事業を行った場合の解説は以下の記事を参考にしてください。
定款変更と登記について
定款変更をしたら、変更内容によっては登記が必要になります。ただし、すべての定款変更で変更登記が必要というわけではありません。
登記が必要なのはどんなとき?
定款変更で登記が必要なのは、たとえば以下のような「登記事項」に変更があった場合です。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 発行可能株式数
- 株式の譲渡制限
法務局での登記は2週間以内
変更登記が必要な定款変更をした場合には、変更から2週間以内に法務局で登記する必要があります。
株主総会の特別決議で定款変更が可決された日から2週間以内が期限となるため、株主総会の日程を決めるときには変更登記の期限も考慮しておきましょう。
定款変更をしても登記が不要というケースもある
定款変更をしても、変更内容によっては登記の必要がないケースもあります。たとえば、役員の任期を延長する定款変更は役員の任期が切れていなければ登記は不要です。
株主総会の議事録は必ず作成する
定款変更をする場合は、必ず株主総会の議事録が必要です。
株主が自分だけというケースや、自分と家族のみというケースであっても議事録は必ず作らなければなりません。
登記懈怠は罰則がある
登記懈怠(けたい)とは、役員の任期満了などで変更登記が必要であるにもかかわらず、期限内に登記をしていない状態のことです。
登記懈怠は会社法の義務に違反している状態であり、最大で100万円の罰金が科される可能性があります。
定款変更の際の注意点
定款変更の際に間違えやすいポイントや注意点を解説します。
定款認証をやり直す必要はない
会社設立時には、公証人役場で定款の認証を受けてから登記をします。ですが、定款を変更した場合では、また改めて定款認証を受ける必要はありません。
原始定款と議事録を保管する
定款変更をしたら、原始定款と株主総会議事録を一緒に保管します。
「変更したから原始定款は不要」ということではなく、原始定款と株主総会議事録を一緒に保管し、株主総会議事録によって定款変更がされた履歴がわかるようにします。
原始定款を編集しない
定款変更をするときに、原始定款を書き換えたり編集したりしないようにしましょう。原始定款はそのまま引き続き保管し、定款変更が可決された株主総会の議事録を原始定款と一緒に保管することで「定款が上書きされた」ことになります。
原始定款を作り直したり編集したりする必要はありません。
定款変更は株主総会の特別決議で行う
定款変更は、会社の基本ルールに関わる重大な手続きであり、株主総会の特別決議を経て行われます。変更内容によっては法務局での変更登記が必要なケースもあり、定款変更から2週間以内に手続きをしなければ登記懈怠として罰則を受けるリスクもあります。
自分で定款変更をすることもできますが、その際には株主総会議事録の作成や原始定款の保管についての注意点を知っておく必要があります。定款変更を確実に進めるためにも、手続きの流れや注意点はしっかり押さえておきましょう。