最終更新日:2025/6/13
法人印とは?印鑑の種類や会社での使い分け・それぞれのハンコの違いを解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
会社を設立した際には、法人としての業務のために、法人印を作成します。
しかし法人印は数種類あり、それぞれ使い分けなければいけません。
同じ印鑑にいくつも呼び名が付いている場合もあり、慣れないうちは混乱してしまいがちです。
この記事では、法人印にはどんな種類があるのか、それらの特徴と使い分けについて詳しく解説します。
それぞれのハンコの違いや、法人印についてのよくある質問にも回答しているので、法人印を作ろうと考えている方はぜひ目を通してください。
目次
法人印とは何か
法人印とは、企業や団体などの法人が組織を運営するうえで使用する、法人用の印鑑です。
法人は金融機関や公的機関、取引先など、さまざまな相手とやり取りを行います。
その際に法人印が1本しかないと、紛失や盗難の際のリスクが大きくなります。
また、法人が成長して従業員が増えた場合、使用できる法人印が少ないと業務が滞る原因にもなります。
そのため多くの法人は、複数の法人印を使い分けて、紛失した際などのリスクを抑えつつ業務をスムーズに行えるようにします。
法人印にはどんな種類があるのか
法人印は、主に3種類(会社代表者印・銀行印・角印)を用意することが多いです。
法人によっては、それらに加えて利便性の観点からゴム印などの印鑑を用意することもあります。
ここでは、よく使われている5種類の法人印について解説します。
会社代表者印(会社実印・法人実印・丸印)について
会社代表者印(以下、代表者印)は、法人印のなかで最も重要な印鑑です。基本的には1つの法人につき、1本だけ所持しています。
代表者印は印影を法務局に登録する必要があり、法人の実印としての法的効力を持つので「会社実印」や「法人実印」と呼ばれることもあります。
重要な契約や、公的機関への届出などで使用する印鑑であり、普段の業務には代表者印以外の法人印を使い、リスクを分散させます。
代表者印にはサイズに関しても明確な規定があり、「印影が1cmから3cmの正方形に収まる大きさであること」が求められます。
多くの場合、18mmあるいは21mmの丸形が、定番のサイズとして選ばれます。
- 基本は1つの法人につき1本だけ
- 会社実印や法人実印、丸印とも呼ばれる
- 重要な場面で使う印鑑
- サイズにも規定がある
銀行印について
銀行印はその名のとおり、銀行に関わる業務で使用する印鑑です。
法人口座を開設するときに金融機関に登録する印鑑であり、1つの銀行口座につき1本が原則となります。
預金の引き出しや、小切手などの発行を行うこともできる印鑑ですので、代表者印(会社実印)の次に大切な印鑑ともいえます。
銀行印は代表社印で代用することも可能です。
しかし、万が一紛失したり盗難の被害にあった場合を考慮して、銀行印を作成してリスクを分散させておきましょう。
サイズに関しては金融機関ごとに規定が違います。
多くの場合は12mmか13.5mmの、会社代表者印よりもひと回り小さいサイズを選んでおけば問題ありません。
しかし、地方銀行や信用金庫に口座を開く際は、あらかじめ規定のサイズについて窓口やウェブサイトで確認しておきましょう。
- 銀行に関わる業務で使う
- 口座を開いた金融機関ごとに登録する
- 会社の資金に関係する印鑑なので重要度が高い
- サイズの規定は金融機関ごとに異なる
角印(社印・会社印)について
角印は社印、あるいは会社印とも呼ばれ、名前のとおり四角形の印影が特徴的な印鑑です。
法人の認印としての役割が強く、請求書や領収書、社内への通達書などに使用します。
角印は法務局などへの登録は不要で、サイズや所持本数に制限もありません。そのため事業所ごとに1本ずつ用意しておくケースもあります。
じつは印影が1cmから3cmの正方形に収まる大きさであれば、角印を代表者印(会社実印)として登録することも可能です。
もっとも、銀行印と同じくセキュリティの観点から、代表者印と角印はそれぞれ使い分けるのが一般的です。
- 角印は法人の認印として使う
- 登録は不要で、サイズや所持本数も自由
- 代表者印としても登録できるが、それぞれ分けたほうがいい
ゴム印(住所印)について
ゴム印は角印と同じく、法人の認印として使用しますが、印字面がより広く、ゴム製なのが特徴です。
封筒など、会社名や住所、電話番号などを一気に記入したい場合に使用します。
ゴムなのでうっかり落としてしまった場合も印字面が欠けにくく、きれいに押印しやすいので、角印よりも気軽に使用することができます。
ただし、ゴムは衝撃には強いものの、経年劣化や摩耗しやすい素材です。
そのため、印面が変形しやすいといったデメリットもあります。
業務に必須な印鑑ではありませんが、住所や電話番号を記入する機会が多い場合は作成しておくと便利でしょう。
- ゴム印は認印として、住所や電話番号まで記入したい場合に使う
- ゴムなので衝撃に強く、押印しやすい
- 印面は変形しやすい
- 業務に必須な印鑑ではない
会社認印について
会社認印は、法務局に登録をしていない代表の印鑑のことです。
印鑑証明書の添付が不要な書類に押すのが基本で、代表者印(会社実印)の代わりに使用します。
サイズは代表者印と同じにしつつ、印影のデザインは変えて作成します。
法人印のよくある質問
法人印の使い分け方や登録の必要性など、よくある質問に回答します。
法人印は種類が多く混乱しがちなので、ぜひ一度目を通してください。
法人印は必ず作らないといけませんか
2021年に商業登記規則が改正され、オンラインで登記申請をする場合は印鑑届書の提出が任意になりました。
これにより、代表者印を作らなくても会社設立は可能となっています。
しかし、実際に法人として業務を行う上では、最低でも代表者印は必須といえます。
余計なトラブルを回避するためにも、代表者印は作成しておきましょう。
代表者印と会社認印にはどのような違いがありますか
代表者印(会社実印)は法務局に印影を登録し、公的機関への書類提出や重要な契約の際に使用する印鑑です。
一方で会社認印は、見た目は代表者印とよく似ていますが、法務局への印鑑登録を行っていないので、代表者印が必要な場面では使用できません。
しかし万が一、会社認印の印影を写し取られ、偽造された場合でも、代表者印とは印影が異なるため悪用されるリスクを抑えることができます。
そのため、印鑑証明書が必要ない日常業務で気軽に使用できる印鑑といえます。
法人印はどのように使い分ければいいのですか
法人印は、それぞれ使用すべきシーンが分かれています。
代表者印はいかなる場面でも使用できる印鑑ですが、その重要性の高さから、公的機関への書類や重要な契約書に限定して用いる場合がほとんどです。
銀行印は金融機関ごとに登録して、取引の際に使用します。
角印・ゴム印はそれぞれ認印として、普段の業務で使用します。
登録が必要なのはどの法人印ですか
登録が必要なのは、代表者印と銀行印の2種類です。
代表者印は法務局で、銀行印は法人口座を開設した金融機関で登録を行います。
法務局での印鑑登録は、「印鑑(改印)届書」を提出して行います。
提出の際には、代表者印だけではなく「提出者の個人実印」と「3カ月以内に取得した個人実印の印鑑証明書」が必要になるので注意しましょう。
それぞれの法人印の持つ法的効力にはどのような違いがありますか
実は、法人印が持つ法的効力に違いはありません。
たとえば契約書を交わす場合、その契約は署名あるいは押印のどちらかがあれば、法的効力があると認められうるとされます。
このとき、代表者印ではない印鑑で押印されたとしても、その契約自体は有効です。
とはいえ、押印された印鑑の種類は、契約内容に関してトラブルが起きた場合の、第三者から見たときの契約の有効性や立証のしやすさに大きく関わります。
厳重に管理されるべき代表者印での押印があれば、合意のうえで契約が行われたという事実を証明しやすくなります。
また、代表者印は法務局に印影が登録されているので、照合が可能です。
そのため、押印自体の信頼性も担保されています。
しかし、これが複製が比較的容易な角印だった場合、その契約書の有効性が低く見られてしまう原因になり得ます。
法人印が持つ法的効力は同じですが、信頼性は異なるため、使い分けは慎重に行いましょう。
代表者印を個人印で代用できませんか
会社設立の際に代表者印の準備が間に合わない場合、個人印を使うこと自体は可能です。
しかし、代表者印は契約書などの重要書類に押印するものです。
これをいつまでも個人印で代用していると、取引先から経営状態がずさんと見られかねません。
取引自体を拒否されてしまう可能性も十分にありますので、個人印での代用はあくまでも一時的な処置として考えておきましょう。
まとめ
法人印は法人が業務で使用する印鑑です。
主に代表者印(会社実印)、銀行印、角印、ゴム印、会社認印などがあり、場合によって使い分けます。
代表者印さえあれば、ほかの法人印がなくても業務上の問題はありませんが、リスクや利便性を考えて数種類の法人印を用意するのが一般的です。
ゴム印などは便利な印鑑ですが、業務に必須というわけではありません。
どの法人印を作成するかは、法人ごとの業務を考慮したうえで判断しましょう。
素材や書体の選び方など、具体的な法人印の作成に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
法人印の作成や使い方で困ったら税理士や司法書士に相談しよう
法人印は会社の意思決定にも関わる印鑑なので、適切に管理して運用しなくてはいけません。
代表者印や銀行印は、関係する機関に登録を行う必要もあります。
初めて会社を設立するときは「印鑑登録はどうやればいいのだろう」「自分の会社の規模や業務で必要になる法人印はどれなんだろう」といった疑問を持つこともあるでしょう。
法人印の作成や使い方で困ったときは、税理士などの会社設立の専門家に相談してみてください。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立・運営に関する無料相談を実施しています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。
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