最終更新日:2025/6/27
起業の相談はどこでする?無料の窓口や専門家・相談できる内容について解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
起業をするときは多くの人が情報収集から始めます。
しかし起業するうえで必要になる手続きや書類、ビジネスにおいての細かい注意点などは、ネット上で手に入る情報だけではよくわからないことも多いです。
そうしたときは、起業について無料で相談できる公的機関の窓口や専門家を利用しましょう。
この記事では、起業についてのさまざまな相談ができる窓口や専門家を紹介します。
具体的に相談できる内容やそれぞれの特徴、相談するうえで疑問に思いがちなよくある質問にも回答しているので、起業を考えている人はぜひ一度目を通してください。
起業の相談ができる専門家と相談内容とは
起業の相談ができる専門家は、主に以下のような士業の資格保持者です。
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
それぞれ専門とするジャンルが違うので、相談できる内容も異なります。
起業について相談する際は、さまざまな面からサポートを受けられる士業グループに相談するといいでしょう。
多くの事務所やグループで、初回の相談が無料になるサービスを行っています。
事務所によっては2回目以降も無料なので、あまり費用を気にせず気軽に相談できます。
それぞれの士業と、相談できる具体的な内容について解説します。
税理士【税務・書類作成・融資・経営アドバイスなど】
税理士は、起業時に必要な税務書類の作成や申請、経理体制の整備、さらに税制を活用した経営アドバイスを行う「税務」の専門家です。
税理士に相談すれば、会社運営に欠かせない経理業務や決算処理、税務署への申告書作成など、日々の実務についてアドバイスを受けることができます。
特に会社設立を専門とする税理士は、司法書士や行政書士と連携し、定款作成や登記申請書類の準備など、設立に必要な手続きを全面的に支援してくれます。
さらに、事業年度の設定や役員報酬の決定といった税務面で有利となる選択肢も提示してくれるでしょう。
融資についても豊富な知識を備えており、最適な融資制度の選定から申請方法、資金調達を成功させるための戦略立案まで、幅広くサポートしてくれます。
ビジネスプラン、補助金、助成金、融資など、起業に関わるあらゆる相談を一手に受けられる税理士は、起業家にとって最も相談するべき専門家といえるでしょう。
個人事業主としての起業・法人成りするべきかなども相談できる
税理士には、法人としての起業ではなく、個人事業主としての起業(開業)について相談することもできます。
また、すでに個人事業主として活動している人が法人成り(株式会社や合同会社を設立して、その法人に事業を引き継ぐこと)をするべきかについて、税務面などからアドバイスしてもらえるのも、税理士に相談するメリットの1つです。
司法書士【登記申請など】
司法書士は起業において、設立登記の書類作成や申請に関する「登記申請」の専門家です。
会社設立では登記申請が欠かせませんが、代理を頼めるのは司法書士の有資格者だけです。有資格者でない人が代理で手続きを行うと法律違反になります。
登記申請に関する疑問や不安については、司法書士に相談できます。
また定款の作成や認証についても、司法書士が代行可能です。
ただし、司法書士はあくまで登記申請の専門家であるため、税務の相談には乗れません。
司法書士に起業について相談するときは、税理士など他の士業とも連携している司法書士を選びましょう。
行政書士【許認可申請など】
行政書士は起業において、特定の事業を行うことを国に認めてもらう「許認可申請」の専門家です。
建築業や飲食業、宿泊業、酒類の販売業など、許認可が必要になる業態は数多くありますが、これらの申請の代行は行政書士しか行うことができない独占業務です。
また、外国人雇用の書類に関しても、行政書士が作成し申請を行うことができます。
こうした許認可や外国人雇用などに関わる疑問や不安は、行政書士に相談することで明確な回答を得られるでしょう。
さらに行政書士は、定款の作成や認証も代行できます。
許認可が必要な業態の会社を起業する際には、ルール作りの段階から行政書士に相談することで、間違いのない定款が作成できるでしょう。
ただし、行政書士もあくまで許認可申請の専門家なので、起業に関するより具体的な相談などには乗れないこともあります。
起業の相談が無料でできる公的機関の窓口と相談内容とは
「いきなり士業の人に相談するのは気が引ける」という人は、国や自治体などが運営する機関に相談してみるのもいいでしょう。
多くの地域でさまざまな起業家支援が行われており、起業の手続きだけでなく、融資制度などについて相談できる公的機関もあります。
セミナーなどを無料で受けられることもあるので、初めて会社設立を行う人は地元の起業家支援窓口を一度調べてみましょう。
起業の相談に無料で対応している公的機関の窓口には、主に以下のようなものがあります。
- 商工会・商工会議所
- しんきん創業の扉
- 日本政策金融公庫
- 中小企業基盤整備機構
ただしこれらの窓口は、会社設立の特定の分野についてしか相談できなかったり、相談できる時間が限られていることもあります。
また、書類の書き方についてのアドバイスなどは受けられても、記入の代行に関しては司法書士や行政書士の独占業務となっているため、自分で行わないといけないケースも少なくありません。
これらの窓口に相談したうえで、起業に関してまだ不安や疑問がある場合は、税理士や司法書士などに、より詳しい内容について相談することをおすすめします。
それぞれの公的機関の特徴と、相談できる内容について解説します。
商工会・商工会議所【会社設立全般】
商工会・商工会議所は、地域の商工業の振興と地域全体の福祉向上を目的とした、会員制の非営利団体です。
主にビジネスアイデアの棚卸しや事業計画の作成支援、融資や補助金の紹介、会員向けの保険の提供など、創業を考えている人に向けたさまざまな支援や相談に対応しています。
帳簿の付け方や決算、申告の方法など、基礎的な経理に関する指導も受けることができます。
ただし、より具体的な税に関する質問は税理士の独占業務となっているため、商工会や商工会議所では対応していないこともあります。
しんきん創業の扉【事業計画・資金調達など】
しんきん創業の扉は、日本各地の信用金庫で職員に無料相談ができる「創業相談窓口」というサービスを行っています。
「アイデアはあるけれど、具体的にどうやって起業すればいいのかわからない」など、事業計画を練る段階での相談も可能です。
制度融資などの紹介もしてくれるので、資金面からアイデアをより具体的に固めたいというときにも有力な相談先候補になります。
ただしエリアによって、その地域の信用金庫が行っている取り組みはさまざまです。
セミナーやイベントを行っている場合もあるので、気になる人は下記のサイトで近くの信用金庫のサービスを調べてみてください。
日本政策金融公庫【融資など】
日本政策金融公庫は、創業前支援として電話やオンライン、来店での相談に対応しています。
オンラインと来店での相談であれば、中小企業診断士などの相談員から事業計画のチェックや融資に関わるアドバイスを受けることができます。
また必要に応じて、同業種の事業者の売上などのデータを見せてくれるので、それらを踏まえた相談が可能です。
しかし、起業の手順や経理のやり方などの相談には対応していない部分もあります。
日本政策金融公庫では、起業相談以外にも、起業に役立つメールマガジンの配信やパンフレットの公開、セミナーなどの開講を行っています。
起業前や起業中だけでなく、起業してからのセミナーやビジネスマッチング、商談会の案内も行っているので、興味がある人は以下のサイトから確認してみてください。
参考:新たに事業を始めるみなさまへ創業支援|JFC 日本政策金融公庫
中小企業基盤整備機構【ビジネスなど】
中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)は、経済産業省を所轄官庁とする、日本の中小企業を支援するための独立行政法人です。
「スタートアップ挑戦支援事業」という取り組みを行っており、公認会計士や弁護士などの資格を持つアドバイザーから、事業計画のチェックや知財戦略のアドバイスをオンラインで1回1時間、無料で何度でも受けることができます。
ただし、この支援事業は、事業計画などがある程度固まった人に向けたものです。会社設立や変更登記そのものの相談には対応していません。
また「TIP*S」という取り組みでは、起業に関わるさまざまなセミナーやワークショップが日本全国で開催されています。
ただし「TIP*S」についても、起業家との短時間の面談などは受けられますが、会社設立に関する具体的な手続きの相談まで行うには難しい部分があります。
中小機構でできる相談は、あくまでビジネスに関するものです。
法務局や税務署での手続きなど、実務面に関して疑問がある場合は、税理士などの専門家に相談したほうがより具体的な回答を得られるでしょう。
起業ライダーマモルはサービス終了している
以前は中小機構のサイトから、AIを活用した「起業ライダーマモル」というサービスを無料で利用することができました。
「起業ライダーマモル」は、起業までの流れや準備に対する質問に24時間いつでも回答してくれる、起業相談専門の自動応答チャットBOTでした。
しかし2025年4月にサービスが終了してしまい、残念ながら現在は利用できません。
起業の相談に関するよくある質問
起業に関する相談は、さまざまな場所で無料で受けることができます。
しかし初めて相談をするときは「実際にはどんな相談ができるのだろう」と不安を抱く人も多いでしょう。
起業相談をする前によくある質問について、回答していきます。
商工会などの公的機関と税理士などの専門家のどちらに相談すればいいのか
起業に関する相談先は、内容によって使い分けることが大切です。
最終的には、商工会などの公的機関と税理士の両方を利用することをおすすめします。
商工会などの公的機関では、起業に関する基礎的な知識や融資の紹介、ビジネスのアドバイスなどを得られます。
しかし、書類の作成や提出などの実務面については自分で行わなければなりません。
コストを抑え、学びながら起業を進めたい人には公的機関への相談が適しています。
一方で税理士に相談すれば、税務上有利になる実務のアドバイスから、起業に必要な手続きや書類、融資の受け方など、さまざまな情報を得られます。
特に、早急に事業を立ち上げたい場合は、税理士の専門的な知識を活用するのが効率的です。
商工会でも、税理士による無料アドバイスを受けられる場合もありますが、専門的な内容に関しては無料相談の範囲を超えることが多いです。
そのため、特定の税務や法務の問題については、税理士に直接相談するのがいいでしょう。
また経理や決算は、会社設立後には欠かせません。
最終的には税理士との長期的な契約が必要になるケースが少なくないため、起業時に一度税理士の無料相談を利用して、自分に合ったパートナーを見つけておくことをおすすめします。
結論として、実務面では税理士、ビジネス全般については公的機関を活用するなど、相談先を上手に使い分けることが、最も効果的な起業の進め方です。
まだ具体的な起業の内容が決まってないけど相談していいのか
具体的な事業計画が決まっていない段階でも相談を受けることはできます。
しかし、やりたい事業へのビジョンを明確にしたい場合は、商工会などで行っているセミナーやワークショップの参加をおすすめします。
専門家や公的機関での相談の際には、ある程度のビジョンがないとうまく質問できず、アドバイスも曖昧なものになってしまいがちです。
相談する前には、自分の起業する目的や事業計画、事業資金の額や調達方法などはあらかじめイメージとして持っておいたほうがいいでしょう。
また、せっかく専門家や公的機関に相談するのであれば、起業に必要な手続きの大まかな流れなど、すぐに調べられる情報は事前に把握しておきましょう。
なお、株式会社や合同会社の設立手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。会社設立の全体像を知りたい人は、ぜひご参照ください。
税理士に相談したら何らかの契約を迫られたりしないか
契約の強制は、基本的には一切ありません。
税理士との相談は、顧問契約などはもちろん、書類の提出や次回以降の相談も相談者側の任意となっている場合がほとんどです。
万が一、強制的に契約などを迫られた場合は、毅然とした態度で断りましょう。
専門的な内容で理解できないのではないか
税理士などの会社設立の専門家、商工会、信用金庫などへの相談であれば、ほとんどの場合でわかりやすい説明が受けられます。
公的機関のなかには、ある程度の知識や経験がある事業者向けの相談会を開催しているところもあるので、自分が求める内容を相談できるかは事前にチェックしておきましょう。
また、専門用語を多用してわかりにくいアドバイスをする税理士や公的機関にあたったときは、あまり固執せずにほかの相談先を探すことをおすすめします。
一人会社などの小さな規模での起業でも相談できるのか
税理士や公的機関の方針によっては、ある程度以上の規模の事業者のみを対象とした相談やサービスを行っているケースもあります。
しかし一人会社の設立などの小規模な起業であっても、相談できる税理士や公的機関は数多くあります。
あらかじめWebサイトで、相談できる内容や評判などを確かめておくといいでしょう。
同じ担当者に何回も相談できるのか
専門家と公的機関のどちらについても、基本的に同じ担当者に継続して相談ができます。
ただし、公的機関だとそれぞれルールが異なるので注意が必要です。
たとえば商工会の場合、同じ指導員が継続して対応してくれる地域もあれば、シフト制になっていて相談できる相手が毎回違う地域もあります。
それぞれの担当者で引継ぎはされるので、相談内容についてはその都度説明しなくても大丈夫です。
しかし担当者との相性もありますし、より深い内容について相談したい場合は、同じ相手と継続して相談できる専門家や公的機関を選んだほうが便利でしょう。
この記事のまとめ
起業の相談は、税理士などの専門家や、商工会などの公的機関で無料で受けられます。
ただし、相談先によって相談できる内容は変わるので、「自分が何について相談したいのか」を明確にしなくてはいけません。
さまざまな知識や経験を身につけ、起業を自分の手で行いたいという人には公的機関での相談が便利です。
しかし、ゆくゆくは税理士に経理や決算を依頼する予定があるのであれば、起業の時点から税理士を探し、相談に乗ってもらったほうが効率的です。
いずれにせよ、初回の相談は無料なことが多いので、何について相談するかが決まったら気軽に予約を取ってみましょう。
起業について悩んだら税理士や司法書士への相談も考えよう
起業についての相談は、初めてのときは誰でも緊張するものです。
「知識不足を笑われたり、怒られたりしたらどうしよう」「自分の疑問にちゃんと答えてくれるだろうか」と不安な人も多いでしょう。
しかし、起業という大きなイベントを乗り切るためには、専門家や公的機関との相談は大きな助けとなります。
まずは一度、気になる相談先に連絡を取り、実際に相談を受けてみましょう。
そこでの相談相手との相性を見て、継続して相談に乗ってもらうか、別の相談先を探すかを決めることをおすすめします。
税理士や司法書士への相談に興味があれば、ぜひベンチャーサポート税理士法人にご連絡ください。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立・運営に関する無料相談を実施しています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。
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