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最終更新日:2024/1/30

【法人化による社会的信用】会社設立のメリット・デメリットについて

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 法人化すると個人事業と社会的信用に違いがあることがわかる
  • 法人化することのメリットとデメリットがわかる
  • 個人事業から法人化するタイミングの考え方を知ることができる

個人事業主の中には、その規模が大きくなってくると法人化を考える方がいます。

法人化すると、信用面で違いがあるといわれますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

また、法人化にはメリットとデメリットがあるので、その内容を確認しておきましょう。

法人化するのはどのようなタイミングがいいのか、その考え方についても解説していきます。

法人と個人の社会的信用の違い

個人事業主として事業を行ってきた人が法人化した場合、その事業の内容には変化がなくても、社会的信用は高まります。

どうして、法人化すると社会的信用が高まるといわれるのでしょうか。

その理由を考えてみます。

法人は登記簿謄本に記載される

法人化して株式会社や合同会社を設立すると、法務局で会社の情報を登記しなければなりません

登記するのは、会社の名称や本店所在地、事業の目的、役員の氏名、発行済株式数など非常に多くの情報です。

これらの情報は、会社に関係のない人でも、登記簿を取得すれば見ることができます。

会社が登記されているということは、公的機関においてその存在が確認されていることを意味します。

一方、個人事業主の場合は、実際に事業を行っていることを証明する書類はありません。

そのため、法人と比較すると信用は劣ることとなります。

法人=組織と認識される

法人化すると、その会社は第三者から見た時、1つの組織として認識されます

実際には1人だけで運営している会社も少なくないのですが、あくまで組織として認識され、個人事業とは区別されます。

組織として運営されていると認識されることで、サービス品質やアフターフォローへの安心感、トラブル時の対応、不正防止の仕組み等が行われていると考えられます。

そのため、同じ事業を行っている個人事業主より、信頼を得やすくなります。

また、法人の場合は後継者を探せば、その事業を継続することができます。

個人事業主の場合は、現在の事業主が亡くなってしまうとその事業を継続することができないため、取引先にとっての不安は解消されません。

責任の範囲の違いに注意

法人を設立した場合、その出資者の責任は出資額が限度となります。

仮に会社の経営に行き詰った場合、出資額はゼロになる可能性があるものの、それ以上の責任を負うことはありません。

一方、個人事業主の場合、その責任は無限責任となり、取引先に対して発生する責任に限度はありません。

システム開発業や化粧品販売業など、トラブル発生時に大きな損害賠償が発生するリスクがある業種では、社会的信用が高く、かつ、責任の範囲も明確な法人が適切と考えられます。

法人化するメリット・デメリット

個人事業主の方が法人化することには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

その内容を解説していきます。

法人化のメリット

法人化することには、いくつかのメリットがあります。

それぞれのポイントについて解説していきます。

信用が高まる

法人化するメリットとしてあげられるのは、すでに紹介したとおり、社会的信用が高まることです。

社会的に信用されるようになると、個人事業主として事業を行っていた場合より、新規取引先を獲得することや、取引金額を増やすことが容易になります。

中には、個人事業主との取引を制限し、法人としか取引しない会社もありますが、そのような制限を受けることもありません。

また、社会的信用が高まると、銀行からの融資も受けやすくなり、さらに事業を発展させることも視野に入るでしょう。

節税になる

法人化すると、利益に対する税金を少なく抑えることができます

これは、法人に対して課される法人税と、個人に対して課される所得税の税率の違いによるものです。

法人税の最高税率は23.2%となっていますが、所得税の最高税率は45%となっており、所得が大きくなると税負担も大きくなります。

利益の金額が大きくなるほど節税効果が大きくなることから、法人化のメリットはより大きくなります。

また法人でしか活用できない節税もあるため、税金対策の面では法人が有利になります。

消費税が免税になる期間がある

個人事業主が法人化した場合、最長で2年間、消費税が免税になります

個人事業主であり続けると毎年消費税を納税しなければならない場合でも、法人化することで免税となることがあります。

ただし2023年10月に開始したインボイス制度により、インボイスを発行する必要がある場合は、消費税の免税メリットは受けることができません。

インボイスを発行しない事業主の場合は、消費税が免税となることで、大きな金銭的メリットが生まれます。

法人化のデメリット

法人化には、メリットだけでなくデメリットもあるため、注意しなければなりません。

会社の登記にコストがかかる

法人化するデメリットとしてあげられるのは、会社の登記を行う際にコストが発生することです。

設立の際には、登録免許税や司法書士に依頼する費用がかかります。

また、会社を運営していく中で、登記事項に変更があれば再度登記を行う必要が出てきます。

税務申告の費用が高くなる

会社を運営するにあたって、毎年の申告にかかる費用が高くなってしまいます

これは、法人と個人では税務署に提出する申告書が異なり、法人の方が申告書類の内容が複雑なためです。

その結果、申告を税理士に依頼する際の費用は、法人の方が高くなるので注意が必要です。

赤字でも税金が発生する

法人の場合、利益が出なくて赤字になっても税金が発生します

税額は毎年7万円程度ですが、赤字の会社にとっては大きな負担です。

個人の場合は、赤字になれば税金は発生しないため、大きな違いがあります。

社会的信用を得るために法人化するタイミング

個人事業主が法人化することには大きなメリットがありますが、デメリットもあります。

少しでもメリットを多く受けとるためには、法人化するタイミングも大事です。

そこで、どのようなタイミングで法人化を検討するといいのか、その時期をいくつかご紹介します。

所得金額が500万円を超えたとき

個人事業主(青色申告)として1年間の利益(所得)が500万の場合、この所得にかかる税金は合計で約110万円になります。

一方で法人の場合は、利益から役員報酬を経費として取ることになります。

上記と同じく500万の利益が出て役員報酬を500万に設定した場合、役員報酬と法人にかかる税金の合計は、約60万円となります。

実際には役員報酬の設定には時期などの要件がありますが、年間の所得が500万を超えると法人化を検討すると良いでしょう

年間売上高が1,000万円を超えた時

年間の売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税義務が生じます。

しかし、消費税の納税義務が生じた後に法人化すると、法人化した年から2年間は消費税の納税義務は生じません。

そこで、年間の売上高が1,000万円を超えた時に法人化し、消費税の負担を免れるという考え方があります。

ただし、インボイスを発行する必要がある事業者は、インボイス登録をすることで消費税の納税義務が発生します。

資金調達を行う時

事業の拡大のために資金調達を行いたい場合、まずは金融機関からの融資を受けようとするでしょう。

金融機関からの融資を受ける際、法人と個人では審査の通りやすさや融資額に違いが生じ、法人の方が審査に通る可能性が高くなります

そこで、資金調達を行う際には法人化した上で、金融機関に申し込みをすることで希望の融資を獲得する可能性を高めましょう。

まとめ

個人事業主の方が事業を継続する上で、法人化するとメリットがあるということはご存知の方も多いでしょう。

しかし、実際にどのような点でメリットがあるのか、詳しく知っている方は少ないかもしれません。

まずは、法人化するメリットとデメリットを確認しておき、自身にはどのような点がポイントになるのか確認しておきましょう。

その上で、いつどのような時期に法人化を検討するのか、あらかじめイメージしておくといいでしょう。

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