最終更新日:2022/12/22
退職後の会社設立で再就職手当をもらうには?申請方法や必要書類について
この記事でわかること
- 退職後の会社設立で再就職手当をもらう条件がわかる
- 退職後の会社設立でもらえる再就職手当の金額がわかる
- 会社設立による再就職手当の申請方法・必要書類がわかる
- 会社設立で失業等給付の基本手当が受給停止になる理由がわかる
サラリーマンやOLが独立して会社設立する場合、開業資金はもちろん、開業までの生活資金も必要になります。
退職後は雇用保険の失業等給付もありますが、「次の仕事が決まったら支給されない」という認識が一般的でしょう。
しかし、一定条件を満たしていれば、失業保険は給付されなくても再就職手当をもらえる可能性があります。
当面の生活資金として有効活用できますが、起業のタイミングにも関係するため、再就職手当の支給条件も理解しておくとよいでしょう。
今回は再就職手当をもらえる条件や金額、申請方法などをわかりやすく解説します。
目次
退職後の会社設立で再就職手当をもらう条件
原則として、会社設立が退職理由であれば再就職手当はもらえませんが、失業保険の受給資格と就職活動の履歴があり、以下の条件も満たせば支給対象になります。
- 就職日の前日までに認定を受け、支給残日数が給付日数の1/3以上ある
- 1年超の雇用が認められる
- 採用の内定が受給資格決定日以降である
- 待機期間経過後に就業している
- 離職理由により給付制限を受けた場合、待期満了後の1ヶ月間はハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介により就職したこと
- 離職前の事業主や関連事業主による雇用ではない
- 過去3年以内の就職について再就職手当や常用就職支度手当を受給していない
- 雇用保険の被保険者資格を取得している
退職後の会社設立でもらえる再就職手当の金額
再就職手当の金額は以下のように計算します。
- 再就職手当の金額:基本手当日額×基本手当の支給残日数×6/10(基本手当を2/3以上残していた場合は7/10)
- 基本手当日額には6,105円の上限(60歳未満の場合)があり、賃金日額に80/100または50/100を乗じて計算します。
また、「退職前の6ヶ月間に支払われた賃金÷180」が賃金日額になります。
では、60歳未満の人が以下の条件で受給する場合の金額を計算してみます。
- 基本手当日額:5,500円
- 基本手当の支給日数:90日
- 支給残日数:50日(残日数は50/90。1/3≦残日数<2/3となるので給付率は6/10)
- 再就職手当の金額:5,500円×50日×6/10=16万5,000円
会社設立による再就職手当の申請方法・必要書類
再就職手当はハローワークに申請しますが、所在地や連絡先がわからないときは以下のリンクを参照してください。
具体的な申請手順は次のようになるので、必要書類も漏れなく準備しておきましょう。
1)勤めていた会社から離職票を受け取る
再就職手当を申請するときは、前提として失業保険の受給資格を取得する必要があります。
退職時には会社から離職票が交付されるので、ハローワークに提出して求職申込みをしてください。
2)失業認定を受ける
求職申込みを終えた後は、ハローワークの雇用保険説明会に出席してください。
雇用保険説明会では、失業保険をもらうために必要な書類(雇用保険受給資格者証明など)が交付され、初回の失業認定日も指定されます。
初回の失業認定日には再度ハローワークに出向き、失業認定を受けることにより、再就職手当や失業保険を受け取る条件が整います。
3)待期期間が経過してから会社設立を行う
詳細は後述しますが、待期期間の経過と失業給付の給付は密接な関係があります。
会社を設立する場合、待期期間は設立の準備期間としておきましょう。
4)法人の登記申請と登記簿の入手
会社設立で再就職手当をもらう場合、法人登記が完了していなければなりません。
法人登記は法務局へ申請するので、以下の書類を準備してください。
- 設立登記申請書
- 会社の定款
- 登録免許税納付用台紙
- 発起人決定書(発起人議事録)
- 代表取締役の就任承諾書(取締役が1名のみで、代表取締役も兼任している場合は不要)
- 取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書(監査役を設置した場合)
- 取締役の印鑑証明書
- 印鑑届書
- 出資金の払込証明書
- 登記事項を保存した記録媒体(CD-Rなど)
登記申請は1週間~10日程度で完了するので、完了したら履歴事項全部証明書を取得しておきましょう。
なお、税務署に開業届を提出したときは開業届けの写しも必要です。
5)再就職手当申請書等の提出
失業認定や会社設立が完了したら、会社設立日の翌日から1ヶ月以内に再就職手当の支給を申請します。
申請の際には、以下の書類をハローワークに提出してください。
- 再就職手当支給申請書
- 会社の履歴事項全部証明書
- 開業届けの写し
- 雇用保険受給資格者証明
- マイナンバーカード(なければ顔写真付きの本人確認書類~運転免許証やパスポートなど)
- 業務を行っていることがわかる書類(業務委託契約書など)
- 印鑑
再就職手当支給申請書はハローワークの窓口、またはハローワークインターネットサービスから入手できます。
なお、ハローワークに出向く時間がないときは、上記の書類を郵送しても構いません。
参考:再就職手当支給申請書(ハローワークインターネットサービス)
6)再就職手当の審査と振込み
再就職手当の支給を申請したときは、概ね1ヶ月後に会社の事業継続を確認されます。
受給要件を満たしているかの審査になりますが、事業継続が確認できれば1週間程度で指定口座へ再就職手当が振り込まれます。
【補足】会社設立で基本手当の受給は停止される
雇用保険の失業等給付の中には基本手当や求職者給付があり、一般的には基本手当が失業保険のイメージとなっています。
基本手当を受給する場合、失業状態が通算7日間になっていなければなりませんが、給付前に会社を設立すると、基本手当は受給できなくなるので注意してください。
また、再就職手当についても、不正受給した場合は全額返還が必要となり、年5%の延滞金も加算されます。
返還に応じないときは財産の差し押さえもあるので、受給要件は正確に把握しておきましょう。
雇用保険の基本手当を受給できる要件
雇用保険の基本手当については、以下の要件を満たした場合に受給できます。
- 失業状態にあること(ハローワークに求職申込みをしているが、就業できていない状態)
- 退職日から2年前の被保険者期間が通算12ヶ月以上ある、または倒産や解雇により離職した特定受給資格者や特定理由離職者であり、離職日の1年前に被保険者期間が通算で半年以上ある
なお、支給期間は離職理由や被保険者期間、年齢が考慮されるため、90~360日の間で決定されます。
基本手当の日額にも上限があり、離職日から6ヶ月前の収入の50~80%(60~64歳は45~80%)となっており、賞与は含まずに計算します。
まとめ
会社設立には数ヶ月かかるケースが一般的であり、事業を始めてもすぐに利益が上がるとは限りません。
当面の生活費は自己資金から捻出することになるため、場合によっては枯渇する可能性もあるでしょう。
そこで活用したいのが失業手当や再就職手当ですが、原則として、会社設立を理由とした離職では支給されないので注意してください。
あくまでも他企業への再就職が前提であり、途中で会社設立に軌道修正した場合が支給対象となります。
したがって、定款の作成や法人登記よりも、失業認定や就職活動の実績づくりを優先しなければなりません。
定款の作成日や法人登記の日付を偽って受給したときは、全額返還はもちろん、最悪の場合は詐欺罪として刑事告訴される可能性もあります。
再就職手当をもらいたいが要件に不安がある、という方は、起業や経営の専門家にも相談してみましょう。