会社役員とは?種類・仕事内容【株式会社設立に必要な役員は何人?】
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
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1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 会社役員とは何かがわかる
- 役員と役職の違いがわかる
- 株式会社の役員の種類がわかる
会社の役員とは、会社の経営方針を立てたり、会社の中心となって組織を動かす人のことをいいます。
また、会社の運営や業務が円滑に遂行されているか管理や監督を行う役割もあり、会社役員と一般社員では、雇用形態や給与、退職金などさまざまな点で違いがあります。
この記事では、会社役員の種類や役割、株式会社設立時に必要な役員数などをわかりやすく解説していきます。
また、会社役員に関するよくある質問や役員を決めるときの注意点などもご紹介しますので、会社役員についてくわしく知りたい方はぜひ参考にしてください。
会社役員とは
会社の役員とは、法律上は会社法の定める「取締役」「会計参与」「監査役」の三役を指す言葉です。
また会社法施行規則では、執行役も会社の役員に含め、広義の役員と呼ばれます。
会社の役員は、会社経営の中心的な役割を果たす者であり、会社の方向性を決めたり、事業運営上の重要な決定を行います。
日常の業務の中でも、実際に従業員を指揮して、会社の事業運営にあたっています。
また、会計参与や監査役などは、会社の運営上の問題がないか、管理監督を行う者です。
直接的に会社の運営を行うのではなく、取締役や従業員とは異なる立場から、取締役や従業員の監督にあたります。
会社役員と一般社員の違い
役員とは、取締役、会計参与、そして監査役を指します。
会社の経営方針を立てて方針に合わせた組織を作り、実際の業務を実行する責任があります。
そのため、会社が円滑に運営され、業務が遂行されているかのチェックを行うのも、役員の役割です。
一方、社員は給料をもらって、その会社の一員として働く従業員を指しています。
つまり、役員とは「会社側の人間=使用者」で、会社の中では機関と呼ばれる存在であり、社員とは、取締役が決定した方針に従って業務を行う「従業員=労働者」ということです。
では、役員と一般社員は具体的にどう違うのかをご紹介していきます。
雇用形態の違い
役員と社員の違いは、雇用形態が1番大きいでしょう。
社員は会社との間で雇用契約を結びますが、役員は、任用契約を結んでいます。
そのため、役員は労働基準法で定めるところの労働者に該当せず、雇用保険の対象にはなりませんし、労災保険の適用を受けることもありません。
ただし、上述のとおり、役員でありながら社員と同じように働いている場合には、社員としての業務範囲に限り、雇用保険や労災保険の対象となります。
給与と報酬の違い
労働の対価として社員に支払われるのは給与であり、支払われるものは全て損金として計上し、会社の経費として処理することができます。
一方、役員に支払われる金銭は、役員報酬と呼ばれるもので、以下の3つについてのみ会社の経費として非課税処理ができます。
定期同額給与 | 1か月以下の一定の期間ごとに支払われる給与。その金額がいつも同額であるもの |
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事前確定届出給与 | 事前に税務署に届け出が必要。 例えば半年に1度、決まった役員に対してボーナスとして支払うもの |
利益連動給与 | 業務執行役員に対し、その事業年度の利益に関する指標を基準にして支払われるもの。法人税の節税になるが、中小企業などでよく見られる同族会社では利用不可 |
上記以外の役員に対する金銭の支給は、会社の経費として処理することはできません。
会社に利益が多く出た場合などに、急遽役員に金銭を支給して経費を増やすことによって、法人税が高額になることを回避しようとするのを防止するためです。
退職金の違い
社員の退職金については、就業規則などに定めがあれば、勤続年数などに応じて支給しなければなりません。
一方、役員の退職金は退職慰労金と言われるもので、仮に退職慰労金についての定めがあったとしても、株主総会などで承認されなければ、支払われません。
責任の違い
会社に何らかの違法行為があったとしても、一般の社員が責任を追及されることはありませんが、役員は、自らに違法な行為がなかったとしても、その責任を追及される可能性があります。
なぜなら、役員には、会社が違法行為を行わないよう、適正に管理する義務があるからです。
この責任の追及は、株主代表訴訟と呼ばれており、株主から取締役や監査役に対し訴えを提起し、会社が被った損害について、会社に賠償するよう求めるというものです。
評価の違い
業績が評価されるか努力が評価されるかには大きな違いがあり、それを実感しているサラリーマンも多いのではないでしょうか。
販売ノルマなどがある営業マンのように、業績が重視される職種は別として、一般の事務職などは、残業をしたり休日出勤したりすると、仕事を頑張っていると一定の評価をされることが多いでしょう。
一方で、取締役など会社の経営陣の評価は、頑張って仕事をしているかということよりも、どれだけ業績を上げ、会社に利益をもたらしたかが重視されます。
結果でしか評価されないため、非常に責任の重いポジションと言えます。
役員と役職の違い
会社法で、「取締役」や「会計参与」「監査役」という3種類を役員を設置しなければならないことが定められています。
しかし、会社の種類や機関設計に応じて、どの役員を設置しなければならないかは異なります。
一方、役職は会社内で設置されるものです。
役員と役職の違いについて、詳しく見ていきましょう。
社長=役員とは限らない
役員の中にも、社長や専務、常務といった役職名がありますが、これらは会社が決定して設置するものであり、役員とは異なります。
ただし、日本では代表取締役が社長を兼務していることが多いので、社長が役員だという誤解を招いているようです。
「社長」や「専務」は、あくまでも会社内部での地位を表すものであって、法律に規定されている「役員」とは関係がありません。
CEOやCOOも役員ではない
CEOとはChief Executive Officerの略であり、日本語では「最高経営責任者」と呼ばれ、会社の経営方針を決定します。
COOとは、Chief Operating Officerの略で、「最高執行責任者」と呼ばれており、CEOが決めた会社の方針を実務レベルで実行に移す責任者です。
また、最近ではCFOという役職を耳にすることもありますが、これはChief Financial Officerの略で、「最高財務責任者」として財務に関する業務を統括する人のことです。
これらはいずれも「社長」や「専務」同様、会社内部の役職であり、法律上の役員ではありません。
会社の役員には、取締役と監査役、会計参与の3種類あるとお話ししましたが、実は、もう1つ「執行役」というものがあります。
これら各役員について、もう少し詳しくご説明します。
株式会社における役員の種類
会社によって必要な役員の種類には違いがあることから、どの役員を設置しなければならないのかを知ったうえで、それぞれの役員について確認しておきましょう。
取締役
取締役は、会社の経営を行うのが役割です。
通常は、前述のCEOとCOOを兼ねており、経営方針を決定し自らそれを実践に移します。
取締役は、設立時には発起人が、会社成立後は株主総会によって選ばれます。
任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時までですが、譲渡制限会社においては、定款に記載することにより、10年まで延長することができます。
取締役の人数の規定
どのような会社形態であっても、会社の役員の内1名は取締役を必ず設置する必要があります。
監査役や会計参与については、機関設計によって義務づけられている場合にのみ設置すれば良いです。
ですが、上場企業の場合は、上場の基準から必ず公開会社であるため取締役の最低人数は3名となっています。
また、取締役会と監査役会という機能のために監査役も3名以上が必要です。
どちらも、それぞれの構成員である取締役と監査役が3人以上いないと作ることができません。
大きな会社になればなるほど多くの役員がいますが、最大人数は何名になるのでしょうか。
最大人数に関しての制限はなく、必要と思われれば何人でも取締役を選任することができます。
取締役の人数は事業内容と密に関係しているので、定款に記載されています。
会計参与
会計参与は、会社法によって定められた役員で、財務諸表等の計算書類を作成し、会計参与報告書を作成します。
また、株主総会においてこれらの書類の説明を行う責任があるため、専門的な知識が必要です。
会計参与は、税理士、公認会計士またはそれらの法人が選任されることが決まっていますので、株主総会で決議します。
任期は2年間ですが、定款で定められている場合は最大10年まで延長することができます。
会計参与の会社に対する責任は、株主代表訴訟の対象となっているため、常に高い精度の計算書類を作成することが求められます。
原則として会計参与の設置は任意ですが、取締役会を設置して、かつ、監査役を設置していない会社については、会計参与を設置しなければならないとされています。
監査役
監査役は、会社法によって定められた役員の1つで、会社や取締役の活動が適正に行われているかを監督する役割を担っています。
監査役は株主総会で選任され、その任期は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。
取締役の原則2年の任期と比較すると、その任期は倍となっており、取締役とは一致しません。
ただ、譲渡制限会社の場合は、取締役と同じくその任期を最長10年まで延長することができます。
なお、監査役が行うべき監査の内容は、大きく2つに分けることができます。
- 会計監査
- 業務監査
会計監査は、取締役が作成した計算書類に不正や不備がないかをチェックするものであり、その名のとおり、会社の会計処理に関する監査となっています。
一方の業務監査は、取締役の指揮のもと行われている業務執行が適切になされているかをチェックします。
非公開会社の場合は、監査役の業務を監査役に限定することができますが、そのためには定款の変更などの手続きが必要となります。
執行役と執行役員
「執行役」と「執行役員」という、非常に紛らわしい言葉がありますが、これらは全く別のものです。
執行役
執行役というのは、委員会設置会社における業務執行機関で、取締役や監査役と同じように、法律上の役員の一種です。
委員会設置会社というのは、指名委員会・監査委員会・報酬委員会という3つの委員会を設置する会社のことで、業務の監督と執行を分離するために導入された制度です。
執行役員
執行役員は執行役とは異なり、役員ではなく社員です。
名前に役員とついていることから、こちらが法律上の役員だと誤解されやすいため、気をつけてください。
取締役会が経営方針や事業計画を決定し、それを受けて執行役員が業務を遂行します。
執行役員は、業務執行のトップという位置づけになります。
会社役員に関するよくある質問
どの会社にも、必ず役員を設置しなければなりません。
オーナー一族から役員を選任する場合もあれば、従業員から役員を選任する場合もあります。
また、会社を設立した時に選任するだけでなく、会社が設立された後に役員が変更になることもあります。
会社の役員を選任する場合に、よくある質問をご紹介します。
一般社員を役員にするには?
一般社員を役員にするには、まずは社員でなくなるため、会社を退職する必要があります。
退職金が支払われ、雇用保険等からはずれたうえで、役員に任命されます。
一般社員であれば、負うことのなかった責任やリスクも負うことになりますので、それに見合う待遇になります。
実際に行う手続きとしては、法人登記を確認し、定款の役員数などを必要に応じて変更します。
雇用保険に関しては、役員には雇用保険が適用されませんが、兼務役員であればそのまま雇用保険を維持できます。
そうでない場合は、資格喪失届を提出しなければなりません。
株式会社設立時に役員数は何人必要?
株式会社を設立する際には、会社の出資者にあたる株主が必ずいます。
複数の人が株主となって出資する場合もありますが、最低限株主が1人いれば株式会社を設立することができます。
また、株式会社を設立する時から、会社の役員を選任しておかなければなりません。
株式会社の役員の人数は、会社法において、「1人又は2人以上の取締役を置かなければならない」とされており、最低1人の役員がいればいいこととなります。
株式会社の株主=役員とは限りませんが、株主が役員となることはできます。
そのため、1人が株主になると同時に役員となって、株式会社を設立することも可能です。
会社設立時に役員を決めるときの注意点はある?
会社を設立する際に、役員を選任する必要がありますが、この時注意すべき点がいくつかあります。
まずは、、複数人で一緒に会社を立ち上げる場合に、全員が役員にならないことです。
創業メンバーが何人かいる場合、全員が横一線となるように役員にした方がいいという考え方もあります。
しかし、役員となった人は法人税の規定により、役員報酬を事前に決めておき、同一事業年度間はその金額を払い続けなければなりません。
業績に応じて、あるいは労働の対価として給料を支払うには、役員にせず従業員としなければなりません。そのため、創業メンバーが横一線となることにこだわらず、従業員として給料を受け取る人がいてもいいのです。
また、創業メンバーの家族に報酬を支払う場合、その人が実際に仕事をしていれば問題ありませんが、仕事をしていない場合もあります。
この場合は、、家族を役員にしていなければ、給料を支払って損金とすることができません。
役員となっていれば、非常勤役員として報酬を受け取ることができるのです。
まとめ
会社役員は会社の中心的な役割を担い、経営方針を立てて会社を存続させ、事業を円滑に運営する責任を負っています。
会社役員にはいくつか種類があり、それぞれ役割や権限が異なります。
取締役は、会社の経営を行うのが役割で、どのような会社形態であっても会社の役員の内1名は取締役を必ず設置する必要があります。
また、会計参与は財務諸表等の計算書類を作成し、会計参与報告書を作成する役割があります。
株式会社の役員は、会社法によって取締役・会計参与・監査役と定められています。
また、株式会社設立時には最低でも役員が1人必要です。
会社設立時の役員数や役員構成をどのようにしたら良いか、登記等はどうするべきか悩んだときは、ぜひ一度専門家に相談してみるのがおすすめです。
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