最終更新日:2026/7/7
サラリーマンはマイクロ法人で節税できる?サラリーマンがマイクロ法人を作るメリットとデメリット

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
【公式】ベンチャーサポートグループチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:【公式】ベンチャーサポートグループチャンネル
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- サラリーマンでもマイクロ法人を作れるのか
- サラリーマンがマイクロ法人を作るメリットとデメリット
- 勤務先に確認するポイント
- マイクロ法人設立前のチェックポイント
サラリーマンでも、副業や資産管理などを目的としてマイクロ法人を設立することができます。
マイクロ法人を活用すると、経費計上できる範囲が広がったり、所得や利益の管理がしやすくなったりというメリットがあります。副業収入が多い人や、将来的に独立を考えている人にとっては、法人化を検討する価値は大きいです。
しかし、マイクロ法人を作ると、法人設立費用、法人住民税の均等割、税務申告、会計処理、社会保険の手続きなどが発生します。勤務先に知られるリスクや、副業規定との関係にも注意が必要で、必ずしもメリットを受けられるとは限りません。
この記事では、サラリーマンがマイクロ法人を作るメリットとデメリット、社会保険料や節税に関する注意点、マイクロ法人設立前のチェックポイントを解説します。


目次
サラリーマンでもマイクロ法人は作れる
サラリーマンでも、マイクロ法人を設立することは可能です。
ここでは、サラリーマンがマイクロ法人を設立できる理由、どのような場合に節税になるのか、そしてマイクロ法人を設立しないほうがいいケースについて解説します。
マイクロ法人の設立は可能
サラリーマンであっても、マイクロ法人を設立することは可能です。
会社員として働いていることが法人設立の法律上の妨げになることはありません。サラリーマンがマイクロ法人を設立して、代表取締役や代表社員になることも可能です。
ただし、サラリーマンの場合は勤務先の就業規則に注意が必要です。法律上は法人を設立できるとしても、勤務先が副業を禁止している場合や、役員就任を制限している場合は、あとで社内で問題になる可能性があります。
特に、勤務先と同じ事業や、取引先と関係している事業を行う場合は注意しましょう。
節税になるのか
サラリーマンがマイクロ法人を作ると、副業の所得にかかる税金の節税につながる場合があります。
たとえば、副業収入が増えている場合や、法人として経費や利益を管理したほうが合理的という場合は、個人事業主のままよりも税負担を抑えられる可能性があります。
ただし、マイクロ法人を作れば誰でも必ず節税できるわけではありません。法人を設立すると、設立費用、法人住民税の均等割、税理士費用、会計ソフト代、決算申告の負担などが発生します。
また、副業の所得区分(事業所得か雑所得か)によっても節税効果は変わるため、実際に節税が見込めるかは税理士などに確認することが重要です。
個人事業主のままのほうがよいケースも多い
サラリーマンが個人事業主として副業をしているという場合は、個人事業主のままのほうがよいケースも多くあります。
特に、副業収入がまだ少ない段階では、マイクロ法人を設立してもメリットが少ないのが事実です。法人を設立すると、利益が少なくても法人住民税が発生し、決算申告や会計処理の負担も増えます。
たとえば、副業所得が年間数十万円程度の場合、設立費用や維持費を考えると、個人事業主のままのほうが手残りが多くなる可能性があります。
副業を始めたばかりの人、売上が安定していない人、経理や申告の手間を避けたい人は、まず個人事業主としてビジネスを続けるのも良い方法です。
マイクロ法人とは?
マイクロ法人とは、一人社長や少人数で運営する小規模な法人の通称です。
実は「マイクロ法人」という会社形態が法律上あるわけではなく、少人数で運営している小規模な法人を、一般的にマイクロ法人と呼んでいます。
サラリーマンが副業や資産管理のために法人を設立する場合も、少人数で運営していればマイクロ法人と呼ばれることがあります。
マイクロ法人は小規模な法人
小規模の法人として知られる「マイクロ法人」は、法律用語ではないため明確な定義を持ちません。
マイクロ法人は、「マイクロ」という言葉のイメージから、簡単に運営できると思われることがあります。しかし、法人である以上、通常の会社と同様の管理が必要です。
マイクロ法人は小規模な会社ではありますが、「手続きや管理が簡単な会社」ではありません。
個人事業主との違い
マイクロ法人と個人事業主の大きな違いは、事業主体が法人か個人かという点です。
個人事業主は、個人で事業を行います。売上や所得は個人のものとなり、確定申告も個人で行います。
一方、マイクロ法人は、法人として事業を行います。法人は個人とは別の存在として扱われるため、法人名義で契約し、法人名義で請求書を発行し、法人口座で入金を受ける必要があります。個人の財産と法人の財産も明確に区別されます。
| 個人事業主 | マイクロ法人 | |
|---|---|---|
| 事業主体 | 個人 | 法人 |
| 開始手続き | 開業届など | 法人登記が必要 |
| 税金 | 所得税・住民税など | 法人税・法人住民税など |
| 会計処理 | 比較的シンプル | 高度な会計スキルが必要 |
| 申告 | 個人の確定申告 | 法人の決算申告 |
| 契約名義 | 個人または屋号 | 法人 |
| 維持費 | 比較的少ない | 法人住民税や税理士費用などが発生 |
| 信用面 | 個人としての信用 | 法人としての信用 |
株式会社と合同会社を比較
マイクロ法人を設立する場合、株式会社または合同会社のいずれかを選択するケースがほとんどです。合資会社や合名会社を選ぶケースはほとんどありません。
株式会社と合同会社はどちらも会社法上の法人ですが、その性質は大きく異なります。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 会社の性質 | 株主が出資し、経営者が業務を行う会社 | 出資者である社員が原則として経営も行う会社 |
| 出資者の呼び方 | 株主 | 社員 |
| 経営者の呼び方 | 取締役、代表取締役など | 業務執行社員、代表社員など |
| 所有と経営 | 分離しやすい | 原則、一致 |
| 意思決定 | 株主総会・取締役など会社法上の機関設計に従う | 定款で比較的自由に決めやすい |
| 設立費用 | 高め。登録免許税は原則15万円以上 | 低め。登録免許税は原則6万円以上 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 資金調達 | 株式発行による資金調達が可能 | 株式発行はできない |
| 上場 | 可能 | 不可 |
| 利益配分 | 原則、株式数に応じる | 定款で柔軟に決められる |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
どちらの形態を選ぶかはビジネスの展望や、会社設立時にかけられる費用などで判断します。
法人を設立した場合「国税庁」で公表される
法人を設立すると、国税庁から法人番号が指定されます。法人番号が指定されると、国税庁の法人番号公表サイトで法人の基本情報(商号・所在地・法人番号)が公表されます。
サラリーマンがマイクロ法人を作る場合は、税金や節税の面だけでなく、法人情報が公表されることによる勤務先への影響や個人情報の扱いも確認しておきましょう。
サラリーマンがマイクロ法人を作る主なメリット
サラリーマンがマイクロ法人を作ると、経費、税負担、赤字の繰り越し、信用力などの面でメリットがあります。
ここでは、サラリーマンがマイクロ法人を作るメリットを解説します。
経費として計上できる範囲が広がる可能性
サラリーマンがマイクロ法人を作ると、法人の事業に必要な支出を経費計上できる可能性があります。
- 業務で使うパソコンや周辺機器の購入費
- 会計ソフト代
- Webサイト制作費
- 広告宣伝費
- 専門家の相談料
- 事業用の通信費
- 法人名義の事務所費用
もし、自宅で開業するという場合は、自宅の一部を法人に賃貸するという形にもできます。
税負担を抑えられる可能性
サラリーマンがマイクロ法人を作ることで、税負担を抑えられる可能性があります。
会社員としてもらっている給与所得に副業収入が加わると、課税所得が増えて所得税率が高くなることがあります。
そのような場合に、マイクロ法人を設立すると、法人として売上や利益を管理できます。法人に利益を残して、広告費、外注費、設備投資などに使うこともできるわけです。
個人ですべての利益を受け取るのではなく、法人の資金として管理することも可能です。
ただし、法人にも法人税や法人住民税がかかるため、必ず節税になるわけではありません。マイクロ法人の設立で節税できるかはケースバイケースです。わからない場合は税理士に相談しましょう。
取引先からの信用が高まる
マイクロ法人は小規模であっても法人です。そのため、個人事業主より取引先からの信頼が高まる可能性もあります。
もちろん、すべてのビジネスで信用力が上がるわけではありませんが、個人より法人のほうが安心して取引できると判断されることはよくあります。
サラリーマンがマイクロ法人を作るデメリット
サラリーマンがマイクロ法人を作る場合は、節税や信用面のメリットだけでなく、デメリットも確認する必要があります。
ここでは、サラリーマンがマイクロ法人を作るデメリットを解説します。
設立費用がかかる
マイクロ法人を作る場合、法人設立のための費用がかかります。
個人事業主であれば、開業届などを提出するだけで事業を始められます。そして提出に費用はかかりません。
一方、法人を設立する場合、定款の作成や法人設立登記が必要です。登録免許税のほか、株式会社の場合は定款認証の費用(1万5,000~5万円)もかかります。
また、司法書士などの専門家に法人設立を依頼する場合は、別途費用が必要になります。
赤字でも均等割がかかる
法人を設立すると、赤字であっても売上がなくても法人住民税の均等割がかかります。
法人住民税の均等割は、利益の有無にかかわらず発生します。売上が少ない場合や赤字の場合でも、法人が存在している限り支払いをしなければならないのです。
そのため、副業所得が少ない人や、売上が安定していない人は注意が必要です。
税務申告・経理の負担
マイクロ法人を設立すると、税務や経理の負担が増えます。
個人事業主の場合、基本的には個人の確定申告のみでよいため比較的シンプルな作業となります。一方、法人の場合、法人として決算を行い、法人税、法人住民税、法人事業税などの申告をしなければなりません。
また、法人と個人のお金を明確に分けて管理することも必要です。法人名義の口座や請求書、領収書、契約書などを整理し、帳簿に記録します。
会社員として働きながら、副業のために設立した法人の経理や申告に対応するのは大きな負担になる場合があります。
社会保険の手続きが発生する
サラリーマンがマイクロ法人を作る場合は、社会保険の手続きが必要です。すでに勤務先で健康保険・厚生年金保険に加入している場合でも、マイクロ法人から役員報酬を受け取ると、二以上事業所勤務に該当する可能性もあります。
二以上事業所勤務に該当する場合は、健康保険・厚生年金保険の届出が必要です。こういった手続きの負担も考慮しましょう。
勤務先に知られる可能性
マイクロ法人を設立すると、勤務先に法人設立したことを知られる可能性があります。
法人設立登記が行われ、法人番号が発行されると、国税庁の法人番号公表サイトで法人の基本情報を確認できる状態になります。
会社の人に知られたくない場合や、副業を会社が禁止している場合は注意しましょう。
辞めるときには解散か休眠になる
マイクロ法人をやめる場合、法人である以上、解散の手続きが必要です。
個人事業主であれば、廃業届を出すだけで事業をやめることができます。特に費用などもかからず、いつでも廃業できる状態です。
一方、法人の場合、仮にビジネスをすべてやめたとしても、解散しないかぎり法人格が残ります。
会社を休ませる休眠という手続きもありますが、休眠会社が不正利用されるケースもあるため、長期間休眠会社を放置することにはリスクがあります。
活動実態のない休眠会社が、取り込み詐欺に悪用されたという事例もあるため、再開する予定がない休眠会社については解散の手続きを検討したいところです。
参考:取り込み詐欺の舞台再演、休眠会社の「前科」込み信用力|産経ニュース
サラリーマンはマイクロ法人で社会保険料を節約できる?
マイクロ法人は社会保険料の節約とセットで語られることも多いですが、マイクロ法人で社会保険料を節約できるかどうかは慎重に判断する必要があります。
特に、サラリーマンはすでに勤務先で健康保険や厚生年金保険に加入しているため、個人事業主とは前提が異なります。
マイクロ法人と社会保険料の詳しいしくみは、こちらの記事で解説しています。
個人事業主とサラリーマンでは前提が違う
個人事業主は、原則として国民健康保険に加入します。前年度の所得で保険料が決まるため、所得が高くなると国民健康保険料の負担は大きくなります。
一方、サラリーマンは勤務先で健康保険と厚生年金保険に加入しています。給与から社会保険料が天引きされていて、勤務先も保険料の半分を負担しています。
このように、個人事業主とサラリーマンでは前提が異なるため、個人事業主で語られる「社会保険料の節約(二刀流)効果」は、すでに勤務先で社保に加入しているサラリーマンには基本的に当てはまりません。
役員報酬を受けると二以上事業所勤務になる
サラリーマンが勤務先とは別にマイクロ法人を設立し、そのマイクロ法人から役員報酬を受け取っている場合は、二以上事業所勤務に該当する可能性があります。
二以上事業所勤務とは、2カ所以上の事業所で社会保険の加入要件を満たしているという状態です。
社会保険料削減だけを目的に設立するのは危険
マイクロ法人を作る場合、社会保険料の削減だけを目的にするのは本来の法人の目的とかけ離れていると言わざるを得ません。
また、マイクロ法人を作ったからといって必ず国民健康保険料の負担が軽くなるということでもないのです。
マイクロ法人を設立する際は、社会保険料だけでなく、事業実態があるか、税金の支払い、法人の維持費、勤務先への影響を含めて総合的に判断しましょう。
マイクロ法人設立前のチェックリスト
サラリーマンがマイクロ法人を作る場合は、税金、設立費用、維持費などの総合的な判断が必要です。
マイクロ法人を設立するか迷っている場合は、設立前にチェックリストで確認しておきましょう。
マイクロ法人を作るか迷ったときのチェックリスト
マイクロ法人を作るか迷ったときは、以下の項目を確認しましょう。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 副業収入 | 副業収入が十分あり、法人の維持費を差し引いてもメリットが残るか |
| 設立費用 | 合同会社や株式会社の設立費用がどのくらいかかるか |
| 法人維持費 | 法人住民税、税理士費用、会計ソフト代などの見積もり |
| 勤務先の規定 | 副業禁止や役員就任の制限がないか |
| 社会保険 | 役員報酬を受け取った場合の社会保険の手続きと対応 |
| 事業実態 | 法人の事業実態があるか(契約、請求、入金、業務を行えるか) |
| 経理処理 | 法人と個人のお金を分けて管理する体制が整っているか |
| 税務申告 | 法人決算や申告に対応できるか |
| 情報公開 | 法人名や所在地が公表されることを理解しているか |
| 将来の方針 | 事業の予定や目標が定まっているか |
| 専門家への相談 | 税理士や社会保険労務士に相談する内容の整理 |
サラリーマンがマイクロ法人を作ったほうがいいケース
サラリーマンがマイクロ法人を作ったほうがいいのは、以下のようなケースです。
- 副業収入が多い
- 経費や利益を法人で管理したい
- 法人名義で契約したい
- 取引先から法人化を求められている
- 将来的に独立を考えている
- 事業拡大を予定している
- 法人の信用力を活用したい
- 税理士や社会保険労務士に相談しながら運営できる
上記のような場合は、マイクロ法人を設立することでメリットがある可能性があります。ただし、マイクロ法人を設立するほうがいいかはケースによるため、専門家に相談することをおすすめします。
サラリーマンがマイクロ法人を作らないほうがいいケース
サラリーマンがマイクロ法人を作らないほうがいいケースは、以下のとおりです。
- 副業収入がまだ少ない
- 社会保険料の節約だけが目的
- 勤務先が副業を禁止している
- 役員就任が就業規則で制限されている
- 申告や経理の手間を避けたい
- 法人としての事業実態を作れない
- 短期的な節税だけを目的にしている
- 法人の維持費を負担したくない
このような場合は、法人設立ではなく個人事業主として事業を展開したほうがいいでしょう。
【FAQ】サラリーマンのマイクロ法人に関するよくある質問
サラリーマンがマイクロ法人を設立するなら総合的な判断が必要
サラリーマンがマイクロ法人を設立することは法律上可能です。
副業収入が増えている人や、法人名義で取引をしたい人、将来的に独立や事業拡大を考えている人は、マイクロ法人を作ることでメリットを得られる可能性があります。
ただし、マイクロ法人を作れば必ず節税になるわけではありません。また、勤務先が副業を禁止している場合や、役員就任を制限しているケースもあります。
そのため、サラリーマンがマイクロ法人を設立する際は、勤務先の就業規則、法人維持費、社会保険、勤務先への影響、事業実態を総合的に判断することが大切です。
サラリーマンで、マイクロ法人を作るべきか迷っている人は、勢いだけで法人設立をせず、まずは税理士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。


















