最終更新日:2026/7/3
マイクロ法人は本当に節税になる?個人事業主・会社員別にメリットと注意点を解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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- 個人事業主とマイクロ法人の違い
- マイクロ法人で節税する際の注意点
- マイクロ法人を検討するといいタイミング
マイクロ法人は、個人事業主や副業をしている会社員の間で、節税対策の1つとして注目されています。マイクロ法人を設立して事業を展開することで、所得税・住民税、社会保険料、消費税などの負担を軽減できる場合があるためです。
しかし、マイクロ法人の設立ですべての人が節税できるわけではありません。法人の設立には登記費用がかかり、維持にも費用が必要です。節税額よりも費用や手間が大きくなるケースもあります。
また、実態がない法人の場合は、社会保険に加入できない可能性もあります。
この記事では、マイクロ法人で節税できるケースや注意点、個人事業主・会社員が検討するといいタイミングを解説します。


目次
マイクロ法人ですべての人が節税できるわけではない
マイクロ法人で事業を行うことで、所得税や住民税、社会保険料、消費税などの負担を調整できる場合があります。個人事業主や副業収入がある会社員にとって、手残りを増やす方法の1つとして検討されています。
しかし、マイクロ法人の設立ですべての人が節税できるわけではありません。
ここでは、マイクロ法人の設立で節税ができるケースとできないケースの判断について解説します。
マイクロ法人が節税になるケース
マイクロ法人が節税になるのは、個人事業や副業の所得が一定以上の場合です。以下のようなケースではマイクロ法人の設立を検討する余地があります。
- 個人事業主として所得が増えてきた
- 副業収入が継続的に発生している
- 所得税や住民税の負担が重い
- 国民健康保険料の負担が大きい
- 法人として行う事業の実態がある
- 将来的に事業を拡大する予定がある
個人事業主の場合、所得が増えるほど所得税や住民税、社会保険料の負担が大きくなります。そこで、マイクロ法人を設立することで税負担を軽減できる場合があります。
ただし、法人として売上を立てる以上、実際に法人で事業を行っていることが前提です。マイクロ法人は、所得が増えている人や事業の実態がある人が、税金や社会保険料を調整する選択肢の1つになります。
マイクロ法人が節税にならないケース
マイクロ法人を設立しても、所得や事業内容によっては節税にならないことがあります。
主に、以下のようなケースでは注意が必要です。
- 所得が少ない
- 売上が安定していない
- 法人として行う事業の実態がない
- 節税だけを目的としている
- 設立費用や維持費を負担できない
- 会計処理や税務申告ができない
- 会社員で勤務先の副業規定に抵触する恐れがある
所得が少ない場合、法人化による節税額よりも、設立費用や維持費のほうが大きくなる可能性があります。
また、法人としての事業実態がない場合も注意が必要です。そして、会社員の場合は、トラブルを避けるために勤務先の就業規則も確認する必要があります。
マイクロ法人は、事業をするための会社組織です。所得が少ない人や節税だけが目的の人には向いていません。
判断の目安
マイクロ法人を設立するかどうかは、設立費用だけでなく、設立後に発生する費用や事務負担も含めて検討しなければなりません。
以下の項目を確認しましょう。
- 個人事業や副業の所得が安定しているか
- 継続的に売上が見込まれるか
- 設立費用と維持費を負担できるか
- 法人として行う事業の実態があるか
- 会計処理や税務申告に対応できるか
- 社会保険料の試算をしているか
マイクロ法人を検討する際は、節税額だけを見るのではなく、法人住民税、税理士費用、社会保険料などを含めて試算することが大切です。
マイクロ法人とは?
マイクロ法人とは、少人数で運営する小規模な法人を指す俗称であり、法律上の正式な名称ではありません。
マイクロ法人は、規模が小さくても「法人」であることに変わりはなく、法人税の申告、会計帳簿の作成、社会保険の手続きが必要になります。
ここでは、マイクロ法人とはどのようなものなのかを解説します。
少人数で運営する小規模の法人
マイクロ法人は、1人または少人数で運営する小規模の法人です。株式会社や合同会社として設立されることが多く、自宅を本店所在地にして事業を行うケースもあります。
ただし、規模が小さいからといって、税金の負担や、事務手続きが不要になるわけではありません。法人として事業を行う以上、税務申告や会計処理などを適切に行う必要があります。
マイクロ法人と個人事業主との違い
マイクロ法人と個人事業主は、どちらも小規模な事業を行う際に選ばれる起業形態で、法律上の扱いや税金、社会保険のしくみが異なります。
| 比較項目 | 法人 | 個人 |
|---|---|---|
| 開始手続き | 設立登記申請 | 開業届を提出 |
| 設立費用 | かかる | かからない |
| 税金 | 法人税、法人住民税など | 所得税、住民税など |
| 社会保険 | 原則として法人で加入 | 国民健康保険、国民年金が中心 |
| 会計処理・税務申告 | 非常に複雑で専門知識が必要 | 個人でも対応できる |
| 維持費 | 必要 | 比較的少ない |
| 信用力 | 法人名義で契約しやすい | 個人名義で契約する |
| 赤字の場合 | 法人住民税の均等割などが発生 | 税負担を抑えやすい |
| 向いている人 | 所得が増え、法人化の効果を見込める人 | 所得が少ない人、手続きの負担を抑えたい人 |
マイクロ法人で節税できるケース
マイクロ法人を設立すると、所得税・住民税、社会保険料、消費税などの負担を調整できるケースがあります。
ただし、設立すれば必ず節税できるわけではありません。ここでは、節税できる可能性がある主なケースを解説します。
所得税・住民税
個人事業主の場合、所得が増えるほど所得税や住民税の負担が大きくなります。所得税は累進課税であり、所得が高くなるほど税率が高くなるためです。
一般的には、所得が一定額を超えた場合は、マイクロ法人を設立して事業を法人に移すことで、所得税や住民税の負担を抑えられる可能性があります。
ただし、法人にも法人税や法人住民税がかかるため、個人の税金だけを見て判断せず、全体的なシミュレーションが必要です。
社会保険料
マイクロ法人を設立すると、役員報酬を設定できます。社会保険料は役員報酬の金額に応じて決まるため、報酬額を調整することで、社会保険料の負担を抑えられるケースがあります。
ただし、法人から役員報酬を受け取る場合は、健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。
昨今では、このしくみを使った過度な社会保険料の節約が問題視されています。
また、役員報酬を低くしすぎると、将来受け取る年金額が少なくなる可能性があるため注意が必要です。
社会保険料を抑える目的だけで役員報酬を設定するのではなく、事業実態、生活費、将来の年金を踏まえて判断しましょう。
参考:法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて|厚生労働省
消費税の免税
新設された法人は、原則として設立から2事業年度は消費税の納税義務が免除されます。
よって、消費税の課税事業者になっている個人事業主が別の事業を法人で始めると、法人側で2年間は消費税の負担を抑えられる可能性があります。
ただし、免税は資本金1,000万円未満であることなどが前提で、特定期間の売上・給与額によっては2期目から課税されます。
また、インボイス(適格請求書発行事業者)に登録すると課税事業者となり、免税は受けられません。取引先の状況を踏まえた判断が必要です。
マイクロ法人で節税する際の注意点
マイクロ法人は、税金や社会保険料の負担を調整できる場合がありますが、節税効果だけを見て設立するべきではありません。
ここでは、マイクロ法人で節税する際の注意点を解説します。
マイクロ法人は節税が主な目的ではない
マイクロ法人は、あくまで法人として事業を行うためのものです。節税は、結果的に生じ得るメリットの1つではありますが、マイクロ法人の主たる目的ではありません。
法人を設立する以上、法人として売上を立て、契約を結び、事業活動を行うという事業実態が必要です。
また、節税だけを目的に法人を設立すると、法人の事業内容や取引の必要性を説明しにくくなります。国保逃れのための形式的な法人と判断されれば、社会保険に加入できなくなる可能性もあります。
マイクロ法人を設立する際は、節税効果だけでなく、法人として事業を行う必要性があるかを見極めることが大切です。
設立と維持に費用がかかる
マイクロ法人を設立するには、登記費用や定款作成費用がかかります。そして、設立後も、法人住民税、税理士費用などの維持費や事務的な負担が発生します。
つまり、個人事業主のままであれば発生しない費用が、法人化すると毎年かかるのです。そのため、節税できる額よりも設立費用や維持費のほうが大きくなるケースもあります。
マイクロ法人の設立費用と維持費の目安を見ていきましょう。
| 費用項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 合同会社の登録免許税 | 6万円から | 合同会社を設立する際にかかる登記費用 |
| 株式会社の登録免許税 | 15万円から | 株式会社を設立する際にかかる登記費用 |
| 定款認証費用 | 1万5,000~5万円程度 | 株式会社で必要になる費用 |
| 定款用収入印紙代 | 4万円 | 紙の定款を作成する場合に必要 |
| 法人住民税の均等割 | 年間7万円程度から | 赤字でも発生する場合がある税金 |
| 社会保険料 | 役員報酬に応じて変動 | 会社負担分と本人負担分が発生 |
事務的な負担が増える
マイクロ法人を設立すると、個人事業主よりも事務的な負担が増えます。
法人では、日々の会計処理だけでなく、決算書の作成、法人税の申告、地方税の申告、源泉所得税の納付、社会保険の手続きなどが必要です。
また、銀行口座や請求書・契約書、経費精算書類なども、個人のものと分けて管理する必要があります。
マイクロ法人は規模が小さくても「法人」です。設立する際には、会計・税務・社会保険の管理を適切に行うための事務負担も考えなければなりません。
節税額だけで判断しない
マイクロ法人を設立するかどうかは、節税額だけで判断しないことが重要です。マイクロ法人の設立について迷う場合は、以下の項目を総合的に比較しましょう。
- 個人事業主のままの場合の税金と社会保険料
- マイクロ法人を設立した場合の税金と社会保険料
- 法人の設立費用
- 法人の維持費
- 税理士や社会保険労務士に依頼する費用
- 事務作業にかかる時間と負担
- 法人化後の手残り
マイクロ法人は節税のために設立するものではありません。事業実態や今後の事業拡大など総合的な判断が必要です。
マイクロ法人を検討するといいタイミング
マイクロ法人の設立は、個人事業主や会社員の副業の所得が増えてきたタイミングで検討されることがあります。事業の利益が大きくなると、所得税・住民税・社会保険料の負担も重くなりやすいのがその背景です。
ただし、所得が増えたからといって、すぐにマイクロ法人を設立すれば節税になるわけではありません。法人化による節税効果だけでなく、設立費用、維持費、事務負担、事業の継続性も含めて判断する必要があります。
ここでは、マイクロ法人を検討するといい代表的なタイミングを解説します。
個人事業主で所得が増えてきた
個人事業主として所得が増えて一定額(目安は500万円程度)を超えた場合は、マイクロ法人を検討するタイミングといえます。
累進課税で税率が決まるため、所得が増えるほど所得税や住民税、国民健康保険料が高くなります。
所得が増えて税率が上がったタイミングで、マイクロ法人を設立し、事業を法人で行うことで、税金や社会保険料の負担を抑えられる場合があるのです。
個人事業主で所得が増えてきた場合は、法人化した場合と個人事業主の場合の試算をしたうえで、マイクロ法人を検討しましょう。
副業収入が大きい会社員
会社員で副業をしていて、その収入が大きくなってきたときも、マイクロ法人の設立を考えるタイミングです。
これは、役員報酬の金額を調整することで、個人にかかる税金や社会保険料の負担を抑えられる可能性があるためです。
ただし、会社員がマイクロ法人を設立する際は、勤務先の就業規則を確認する必要があります。副業や法人役員への就任が禁止または制限されていないかをチェックしましょう。
事業を拡大する予定
今後、事業を拡大する予定がある場合はマイクロ法人を検討するタイミングです。事業の内容や、相手方によっては法人化によって事業を進めやすくなることがあります。
将来的に事業を大きくしたい場合は、信用力や契約面のメリットも含めてマイクロ法人を検討しましょう。
マイクロ法人が向かないケース
マイクロ法人は、所得や事業内容によっては向いていないケースもあります。法人化の検討では、勢いで設立しない慎重さも大切です。
ここでは、マイクロ法人が向かないケースの代表例を解説します。
所得が少ない
個人事業主としての所得が少ない場合は、マイクロ法人を設立しても節税効果を得にくいです。
法人を設立すると、利益が少ない場合でも法人住民税の均等割が発生します。税金以外にも、会計ソフト代や社会保険料などの費用に加え、各種の事務手続きも発生します。
そのため、所得が少ない段階で法人化すると維持費が負担になってしまうのです。
所得別の判断目安は、以下のとおりです。
| 所得の目安 | 判断 |
|---|---|
| 100万円未満 | 法人化のメリットは小さい傾向があります |
| 100万円から500万円程度 | 維持費を考えると慎重な判断が必要です |
| 500万円から800万円程度 | 税金や社会保険料を試算するタイミング |
| 800万円超 | 法人化によるメリットがある可能性がある |
上表はあくまで目安です。実際は、経費の金額、扶養の有無、社会保険の加入状況、役員報酬の設定、事業内容を総合的に判断する必要があります。
マイクロ法人の設立や節税額についてわからないことがあれば、専門家に相談しましょう。
節税だけが目的
節税だけを目的としてマイクロ法人を設立するのはおすすめできません。
マイクロ法人は、法人として事業を行うためのものです。よって、法人としての売上、契約、業務内容、経費の支払いなどの実態が必要です。
マイクロ法人を設立する際は、節税効果だけでなく、法人として事業を行う経済的な合理性があるかを確認しましょう。
【FAQ】マイクロ法人の節税に関するよくある質問
マイクロ法人は節税だけのために設立しない
個人事業主や副業をしている会社員がマイクロ法人を設立することで、所得税・住民税、社会保険料、消費税などの負担を調整できる場合があります。
しかし、すべての人がマイクロ法人で節税できるわけではありません。法人を設立すると、設立費用や維持費、会計処理、税務申告、社会保険の手続きなどの負担が発生するため、シミュレーションが必要です。
また、節税だけを目的に法人を設立すると、法人としての事業実態を説明しにくくなる可能性があります。実態のない法人と判断されると、社会保険に加入できなくなるケースもあります。
マイクロ法人は、あくまで事業をなすための法人であることを念頭に置きましょう。
そして、税金や社会保険の扱いは、所得や働き方、事業内容によって変わります。マイクロ法人を設立するか迷っている場合は、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。


















