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最終更新日:2026/6/26

バーチャルオフィスの勘定科目は?経費にするための仕訳方法を税理士が解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

バーチャルオフィスの勘定科目は?経費にするための仕訳方法を税理士が解説

近年は起業する際に、バーチャルオフィスという選択肢が身近になってきました。
利用料金が安く、かつ事業用の住所を確保できるバーチャルオフィスはとても便利なサービスですが、月額利用料を経費にするためには「仕訳」を行う必要があります。

しかし、バーチャルオフィスは場所そのものではなく住所を貸し出すという特殊なサービスのため、「どのような勘定科目を使えばいいのか?」と悩む方が非常に多いです。

この記事では税理士が、月額利用料の勘定科目と仕訳の書き方に加えて、オプション利用料、入会金、デポジット、会社設立前に支払った場合の処理まで、バーチャルオフィスに関する費用を項目ごとに解説します。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

バーチャルオフィスの月額利用料の勘定科目は「支払手数料」

バーチャルオフィスは、建物や部屋そのものを借りる賃貸借契約ではなく、住所の利用や郵便物の転送といったサービスの提供を受ける契約です。

ここでの支払いの対象は「スペースの賃料」ではなく「サービスの対価」にあたるため、各種サービスの利用料を計上する「支払手数料」が勘定科目として最も実態に即しています。

「地代家賃」「賃借料」を使わない理由

バーチャルオフィスは「オフィスを借りる」サービスであるため、地代家賃や賃借料で処理するべきようにも見えます。
しかし、どちらもバーチャルオフィスの勘定科目としては適切ではありません。

地代家賃は、土地や建物を賃借する場合に使う勘定科目です。
レンタルオフィスやシェアオフィスのように物理スペースを借りる契約であれば地代家賃が適切ですが、バーチャルオフィスは建物の一部を占有しているわけではありません。
そのため、地代家賃は実態に合わない科目となります。

賃借料は、コピー機や車両といった実在する物品のレンタルに使われる科目で、こちらも同様にバーチャルオフィス代の性質とは合致しません。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

仮に地代家賃や賃借料で計上していたとしても、それだけで経費としての損金算入が否認されることはありません。

これは、勘定科目の選択自体が直接的に課税額を変えるわけではないためです。

月額利用料の仕訳の書き方

たとえばバーチャルオフィスの月額利用料5,000円を普通預金から支払った場合、仕訳は以下のとおりになります。

借方 金額 貸方 金額 摘要
支払手数料 5,000円 普通預金 5,000円 バーチャルオフィス月額利用料(◯月分)

クレジットカードで支払いを行っている場合は、カードの利用時と引き落とし時で、仕訳が2件必要になります。

カード利用時

借方 金額 貸方 金額 摘要
支払手数料 5,000円 未払金 5,000円 バーチャルオフィス月額利用料(◯月分)

カード引き落とし時

借方 金額 貸方 金額 摘要
未払金 5,000円 普通預金 5,000円 クレジットカード引き落とし

摘要欄には「バーチャルオフィス月額利用料」のように、支出の内容がわかる記載をしておきましょう。
バーチャルオフィスのサービス名や拠点名まで併記しておくと、あとから帳簿を確認する際にも内容を把握しやすくなります。

オプション・付帯サービスの勘定科目

バーチャルオフィスでは、月額利用料のほかに郵便転送や電話代行などのオプションサービスを利用することがあります。
これらのオプション利用料も事業のために支出する費用であれば、全額を経費として計上できます。
ただし、原則としてオプションはサービスの内容に応じて勘定科目を使い分ける必要があります。

代表的なオプションと対応する勘定科目は以下のとおりです。

オプションの内容 勘定科目 理由
郵便物の転送サービス 通信費 郵便・配送に関する費用のため
電話転送サービス 通信費 電話回線の利用に関する費用のため
電話秘書代行 通信費 電話対応業務を外部に委託する形のため
貸会議室の利用 会議費・賃借料 会議・打ち合わせのための利用であるため
書類保管用ロッカー 支払手数料 オフィス機能に付随するサービスの対価であるため

内訳が細かく分けて記載されている場合は、上記の表に沿って科目を分けるのが正確な処理です。
ただし、オプション利用料が少額であれば、実務上はすべて「支払手数料」に含めて処理しても問題ありません。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

科目を細かく分けるかどうかは、記帳の正確性と手間のバランスで判断してください。

ただし「初月は科目を分けたが、翌月からまとめて支払手数料にした」のように処理が揺れると、帳簿の一貫性が崩れてしまいます。

最初に処理方針を決め、それを継続するようにしましょう。

入会金や保証金(デポジット)などの勘定科目

バーチャルオフィスの契約時には、月額利用料とは別に入会金や保証金(デポジット)の支払いが発生することがあります。
これらは毎月のサービス利用料とは性質が異なるため、勘定科目もそれぞれ分けて処理する必要があります。

判断のポイントは、その支払いが「返還されないもの」か「返還されるもの」かという点です。

費用 返還の有無 勘定科目 経費になるか
入会金・事務手数料 返還されない 支払手数料 ◯(支出時に経費計上可)
保証金・デポジット 契約終了時に返還される 差入保証金 ✕(資産として計上し返金時に取り崩す)

入会金・事務手数料の処理

バーチャルオフィスの入会金や初期事務手数料は、契約時に支払い、解約しても返還されない費用です。
これらはサービスの利用を開始するための事務手数料であり、「支払手数料」として、支払った期にそのまま経費計上できます。

入会金1万円を普通預金から支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 金額 貸方 金額 摘要
支払手数料 10,000円 普通預金 10,000円 バーチャルオフィス入会金

デポジット・保証金の処理

バーチャルオフィスによっては、契約時にデポジット(保証金)の支払いを求められることがあります。

デポジットは契約終了時に返還されることが前提の預け金であるため、支払った時点では経費にはなりません。

勘定科目は「差入保証金」を使い、資産として計上します。

デポジット3万円を普通預金から支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 金額 貸方 金額 摘要
差入保証金 30,000円 普通預金 30,000円 バーチャルオフィスデポジット

解約時にデポジットが返還された場合は、資産計上していた差入保証金を取り崩します。

借方 金額 貸方 金額 摘要
普通預金 30,000円 差入保証金 30,000円 バーチャルオフィスデポジット返還

一方、解約時に利用料の未払い分などが差し引かれ、全額返還されないケースもあります。
返還されなかった部分は、その時点で費用として処理します。

たとえばデポジット3万円のうち5,000円が差し引かれ、2万5,000円が返還された場合、仕訳は以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額 摘要
普通預金 25,000円 差入保証金 30,000円 バーチャルオフィスデポジット返還
支払手数料 5,000円 デポジット充当分(未払利用料相殺)

差し引かれた金額の勘定科目は、その内容に応じて判断します。
未払い利用料との相殺であれば「支払手数料」、違約金であれば「雑損失」など、差し引きの理由に合った科目を選んでください。

会社設立前・開業前に支払った場合の処理

バーチャルオフィスを法人の登記住所として利用する場合、会社の設立登記よりも前にバーチャルオフィスを契約し、費用を支払うことになります。
個人事業主の場合も、開業届の提出前からバーチャルオフィスを使い始めるケースがあります。

こうした設立前・開業前に支払った費用は、通常の「支払手数料」としてではなく、「創立費」や「開業費」として処理します。

創立費・開業費はいずれも繰延資産に分類され、経費に算入するタイミングを自分で選べるという特徴があります。

法人の場合:「創立費」または「開業費」

法人のバーチャルオフィス代は、支払ったタイミングによって使う勘定科目が変化します。

支払ったタイミング 勘定科目
会社設立の登記が完了する前 創立費
設立登記の完了後、事業を開始するまでの間 開業費
事業開始後 支払手数料

創立費は、法人の設立のために支出する費用のうち、その法人が負担すべきものを指します。
法人登記には本店所在地の届出が必要であり、登記住所を確保するためのバーチャルオフィス代は、設立に直接関わる支出として創立費に該当します。

開業費は、法人の設立後から事業を開始するまでの間に、開業準備のために特別に支出する費用を指します。
設立登記が済んだあと、事業開始前に支払ったバーチャルオフィスの月額利用料はこちらに該当します。

創立費・開業費はいずれも繰延資産として資産計上し、その後の事業年度で償却して経費に算入します。
税務上は「任意償却」が認められており、好きなタイミングで好きな金額だけ償却することが可能です。
たとえば、初年度は赤字が見込まれるため償却せず、黒字化した期にまとめて全額を経費に算入する、といった使い方ができます。

設立前にバーチャルオフィスの月額利用料5,000円を個人が立て替えて支払い、設立後に法人から精算した場合の仕訳は、以下のようになります。

個人の立替時

借方 金額 貸方 金額 摘要
創立費 5,000円 未払金 5,000円 バーチャルオフィス利用料(設立前・◯月分)

法人から個人へ支払った時

借方 金額 貸方 金額 摘要
未払金 5,000円 普通預金 5,000円 設立前費用の精算

償却時(任意のタイミング)

借方 金額 貸方 金額 摘要
繰延資産償却 5,000円 創立費 5,000円 創立費の償却

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

設立前に発生した費用は、個人が立て替えて支払い、設立後に法人から精算する形になります。

立替払いの事実を証明するために、バーチャルオフィスの契約書・請求書・支払いの記録は保管しておきましょう。

もっとも、少額の仕訳であれば創立費などにせず、支払手数料として処理したとしても問題にはなりません。

個人事業主の場合:「開業費」

個人事業主が開業届を提出する前に支払ったバーチャルオフィスの費用は、「開業費」として処理できます。
開業費は、事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用が該当します。

開業費に該当するかどうかの基準は、開業届の提出日ではなく、実際に事業を開始した日です。
実務上は開業届に記載した開業日を基準にするケースが多いですが、開業届の提出が遅れていても、すでに事業を開始している場合は通常の「支払手数料」として処理します。

法人の場合と同様に、個人事業主の開業費も繰延資産として任意償却が可能です。
開業初年度に売上が少なく所得が低い場合は、償却せずに翌年以降に繰り越し、所得が増えた年にまとめて経費に算入することで節税効果を得られます。

開業届の提出前に支払ったバーチャルオフィスの月額利用料5,000円を、開業費として計上する場合の仕訳は以下のようになります。

開業時(資産計上)

借方 金額 貸方 金額 摘要
開業費 5,000円 元入金 5,000円 バーチャルオフィス利用料(開業前・◯月分)

償却時(任意のタイミング)

借方 金額 貸方 金額 摘要
繰延資産償却 5,000円 開業費 5,000円 開業費の償却

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

開業届の提出日と、実際にバーチャルオフィスの利用を開始した日が異なる場合もあります。

「開業届の前に契約したバーチャルオフィス代を経費にしてよいのか」と不安に思う方もいますが、事業の準備として必要な支出であれば開業費に含めることができます。

いつ・いくら支払ったかを後から説明できるよう、請求書や支払い記録を整理しておくことが大切です。

経費計上で押さえておきたい実務上のポイント

ここまで、バーチャルオフィスに関する費用ごとの勘定科目と仕訳方法を解説しました。
最後に、勘定科目の選び方以外で、日々の記帳や確定申告の際に知っておきたい実務上のポイントを整理します。

勘定科目は途中で変更しない(継続性の原則)

一度選んだ勘定科目は、合理的な理由がない限り、翌期以降も同じものを使い続けてください。
これは「継続性の原則」と呼ばれる会計上の基本ルールです。

たとえば、バーチャルオフィスの月額利用料を初年度は「支払手数料」で計上していたのに、翌年度から「外注費」に変更すると、帳簿の一貫性が損なわれます。
年度間の経費の比較が難しくなるだけでなく、税務調査の際に勘定科目の変動額が大きい科目として重点的にチェックされやすくなります。

科目を変更すべき合理的な理由(契約内容の大幅な変更など)がある場合は別ですが、そうでなければ最初に選んだ科目をそのまま継続しましょう。

補助科目を設定しておくと管理しやすい

「支払手数料」は、バーチャルオフィスの利用料だけでなく、銀行の振込手数料や各種事務手数料なども含む勘定科目です。
そのままではバーチャルオフィスにいくら支払っているのか、帳簿からすぐに把握しにくくなることがあります。

こうした場合は、「支払手数料」の下に「バーチャルオフィス利用料」などの補助科目を設定しておくと便利です。
補助科目を設定しておけば、月々のバーチャルオフィス代を帳簿上で簡単に確認でき、コスト管理にも役立ちます。

年払い(一括払い)でも経費にできる

バーチャルオフィスの利用料を年払いで一括して支払った場合、支払い対象期間のうち翌期以降に対応する部分は、原則として「前払費用」として資産に計上し、翌期以降にサービスの提供を受けた分だけ経費に振り替えます。

ただし、支払日から1年以内にサービスの提供を受けるもので、かつ毎期継続して同じ処理を行うなどの要件を満たす場合は、「短期前払費用」として支払時に全額を経費計上できる特例が認められています。

参考:No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合|国税庁

年払い6万円(月額5,000円✕12カ月分)を普通預金から支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 金額 貸方 金額 摘要
支払手数料 60,000円 普通預金 60,000円 バーチャルオフィス利用料(年払い)

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

短期前払費用の特例は要件が細かく、適用の可否は契約内容や金額によって異なります。バーチャルオフィスの年払い額は数万円~十数万円程度のことが多いため、判断に迷う場合は月払いに切り替えて毎月の経費として処理するのが最もシンプルです。

特例の適用を検討する場合は、税理士に相談のうえ判断することをおすすめします。

この記事のまとめ

バーチャルオフィスの月額利用料は、「支払手数料」で経費計上するのが一般的です。
物理的なスペースの賃貸借ではなくサービスの対価であるため、地代家賃や賃借料ではなく支払手数料が実態に合った勘定科目です。

郵便転送や電話代行などのオプションは、サービスの内容に応じて通信費・外注費・会議費などを使い分けます。
請求書に内訳がない場合は、まとめて支払手数料で処理して問題ありません。

月額利用料以外にも、入会金は支払手数料、デポジットは差入保証金と、費目ごとに科目が異なります。
会社設立前や開業届の提出前に支払った費用は、創立費や開業費として処理することで、黒字化した期に経費として算入できます。

バーチャルオフィスの経費処理は、正しい科目を知っていれば難しいものではありません。ただし、会社設立前後は届出や経理体制の整備など、勘定科目以外にも判断に迷う場面が多い時期です。

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