最終更新日:2026/6/17
起業したら税金はどうなる?個人事業主・法人の税金の疑問を解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- 起業後にかかる主な税金
- 個人事業主と法人の税金の違い
- 税理士に相談する目安
起業する場合は、売上を伸ばすだけでなく、税金の管理も重要です。
起業時にはさまざまな作業が必要になるため、多くの人は税金についてつい後回しにしてしまいます。しかし、個人事業主でも法人でも、起業した場合には税金に関する業務を避けて通ることはできません。
また、税金のルールは複雑で、専門知識がない場合は難しく感じられることもあるでしょう。
この記事では、個人事業主と法人にかかる税金の違いや、納税資金の管理のポイントをわかりやすく解説します。


目次
起業したらまず知っておきたい税金の基本
起業すると、税金を自分で管理する場面が増えます。まずは、起業後の税金は誰が管理するのか、個人事業主と法人で何が違うのかといった基本を押さえておきましょう。
起業後の税金は自分で管理する
会社員として働いている場合は、所得税は給与から源泉徴収され、住民税も給与から天引きされるケースが一般的です。自分で税金に関する業務をすることはほぼありません。
一方、起業して個人事業主になると、原則として自分で所得を計算して確定申告を行うことになります。法人を設立した場合も、会社として決算を行い、法人税などを申告・納付しなければなりません。
つまり、起業後は自分でお金を管理して納税することになります。
税金は個人事業主と法人で異なる
起業後にかかる税金は、個人事業主と法人で異なります。
個人事業主には、主に所得税、住民税、消費税、国民健康保険料、国民年金などがかかります。法人には、法人税(国税)、法人住民税・法人事業税・特別法人事業税(地方税)、消費税、社会保険料がかかります。
個人事業主は、事業で得た所得に対して個人として税金を納めます。法人は、会社の利益に対して法人として税金を納め、役員報酬を受け取る役員個人に対しては別途所得税や住民税がかかります。
期限管理と資金管理が重要
起業後の税金で特に注意したいのは、申告期限と納税資金です。
税金は、申告書の作成だけで終わりではありません。会社員のときのように、給与から天引きされ、会社側で納税してもらえるわけではなく、自分で期限までに申告・納付する必要があります。
法人が支払う法人税や地方法人税、消費税の申告・納付期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。
つまり、納税を見据えた資金管理をしていないと、売上があっても納税の際に現金が足りなくなることもあり得ます。税金は事業を続けるうえで最初から見込んでおくべき支出です。
所得と売上の違い
税金を考える際は、売上と所得の違いを理解しておく必要があります。
売上は、商品やサービスを提供して得た収入のすべてです。一方、所得は売上から必要経費などを差し引いた金額です。
たとえば、売上が800万円で経費が500万円かかっている場合、所得は300万円となります。税金は基本的に売上そのものではなく、所得をもとに計算されます。
起業したら税金は自分で納める
起業後は、会社員時代のように勤務先が税金の手続きをしてくれるわけではありません。個人事業主も法人も、自分で税金のしくみを理解して、期限までに申告・納付する必要があります。
起業したら会社員のときと税金のしくみはどう違う?
会社員として働いている場合、給与を受け取る際に所得税が源泉徴収されます。源泉徴収されすぎた税金も、年末調整で勤務先が精算して従業員に還付されるのが一般的です。
一方、起業した場合は以下のようになります。
個人事業主として起業した場合は、1月1日から12月31日までの1年間の売上や経費を自分でまとめて計算して確定申告を行います。自分ですべての計算を行い、納税や還付を受けるという形です。
また、法人化している場合は、会社で決算を行い、法人税や法人住民税などを申告するという流れです。従業員を雇用している場合や役員報酬がある場合は、給与として源泉徴収や年末調整の対応も必要になります。
申告期限に遅れるとどうなる?
申告期限や納付期限に遅れると、延滞税や加算税などが発生する可能性があります。納税は義務であり、納付が遅れるほど負担が増えるため必ず期限を守りましょう。
個人事業主の所得税の確定申告は、原則として1月1日から12月31日までの売上や所得について翌年2月16日から3月15日までに行います。
3月15日が土日祝日にあたる場合は、次の平日が申告期限になります。消費税の申告が必要な場合は、原則として3月31日までに申告・納付を行う必要があります。
法人の場合、原則として事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に申告・納付しなければなりません。

代表税理士
森 健太郎
法人の場合、2事業年度(2期)連続で申告期限に遅れると、青色申告の承認が取り消されます。個人についても、期限に遅れると承認が取り消され、55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円の青色申告特別控除が受けられなくなる場合があります。期限後申告は融資審査でも不利に働くため、申告期限の厳守は徹底しましょう。
参考:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
参考:個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
起業後にかかる税金一覧
起業後にかかる税金は、個人事業主と法人で異なります。税金がどの程度になるのかは、どちらで起業するかを決める1つの要素でもあります。
ここでは、それぞれにかかる主な税金を比較して解説します。
| 区分 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 所得・利益にかかる税金 | 所得税 | 法人税、地方法人税 |
| 地方税 | 住民税、個人事業税、償却資産税、固定資産税、自動車税 | 法人住民税、法人事業税、償却資産税、固定資産税、自動車税 |
| 消費税 | 課税事業者の場合に発生 | |
| 申告時期 | 原則として翌年2月16日から3月15日(消費税は原則3月31日まで) | 原則として事業年度終了後2カ月以内 |
個人事業主にかかる主な税金一覧
個人事業主として起業した場合にかかる主な税金(および社会保険料)は、以下のとおりです。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
- 個人事業税(一定の業種で所得が290万円を超える場合)
- 消費税(基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合やインボイス登録をしている場合など)
- 国民健康保険料
- 国民年金
所得によって税率や税金の種類が変わるため、起業する際には、どの程度の売上を見込んでいるのか、利益はどのくらいになる予定かを考える必要があります。
そのうえで、翌年に支払う可能性がある税金分の資金を確保しましょう。
法人にかかる主な税金一覧
次に、会社を設立して法人化した場合にかかる主な税金について解説します。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
- 消費税(基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合やインボイス登録をしている場合など)
- 源泉所得税
- 住民税(特別徴収)
- 社会保険料(健康保険・厚生年金保険料)
- 労働保険料(労災保険・雇用保険料)
法人の場合、赤字であっても法人住民税の均等割が発生するため、利益が少ない場合でも税負担があることを事前に見込んでおくことが大切です。
個人事業主と法人どちらが有利?
起業するにあたって、個人事業主と法人のどちらが税金面で有利かは、所得、事業規模、取引先、社会保険の有無などによって変わります。
個人事業主か法人かを決めるときには、税金だけでなく、事務的な負担も含めて判断しましょう。
個人事業主が向いているケース
個人事業主としての起業は、起業の費用を抑えたい人や、副業としてスタートしたい人、1人で起業したい人に向いています。
個人事業主は、法人に比べて開業手続きが簡単です。基本的に税務署に開業届を提出するだけで開業は可能なため、手続きに費用がかかりません。
会計処理も法人に比べると比較的シンプルで、青色申告を活用すれば一定の控除を受けられます。
法人が向いているケース
法人が向いているのは、利益が安定しているケースや、すでに個人事業主として起業していて取引先から法人化を求められているケースです。
また、雇用を検討する場合や、取引先からの信用や資金調達を重視する場合も法人のほうが適していることがあります。
ただし、法人には設立費用や決算申告の負担が発生します。また、赤字でも法人住民税の均等割がかかるため、慎重に検討しましょう。
迷ったときの判断フローチャート
個人事業主と法人のどちらが向いているか迷ったときは、総合的に判断することが大切です。以下のフローチャートを参考にしてください。
迷ったときは、税金の額だけでなく、社会保険料、事務負担、取引先との関係、将来の事業計画をあわせて判断することが大切です。
収益帯別!起業後の税金のイメージ
起業後の税金は、所得や形態によって大きく変わります。
たとえば、個人事業主やフリーランスでも、所得300万円の場合と所得500万円の場合では、税金や社会保険料の負担感が異なります。
法人を設立する場合は、個人事業主のままとどちらが税負担を軽くできるかを事前にシミュレーションしましょう。
所得300万円で個人事業主の場合
所得300万円の段階では、法人化するよりも個人事業主のまま事業を続けたほうが、税負担と事務処理の負担を抑えやすいといえます。
個人事業主の場合、各種控除を差し引いた課税所得に対して所得税がかかります。所得税は累進課税で、課税所得が300万円の場合の税率は10%、控除額は9万7,500円です。
一方、法人税の税率は、資本金1億円以下の中小法人の場合、所得800万円以下の部分に軽減税率が適用されます(本則税率19%に対し、租税特別措置により軽減)。
また、事業所得が290万円を超えると、超えた分に対して3~5%の個人事業税がかかります。そのほか、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料が発生します。
ただし、売上が今後大きく伸びる見込みがある場合や、取引先から法人化を求められている場合は法人化を検討してもよいでしょう。
所得500万円の個人事業主の場合
所得500万円のフリーランスは、法人化を具体的に検討するタイミングです。所得が500万円前後になると、所得税や住民税、個人事業税の負担が大きくなります。
所得税の税率は20%となり、住民税や国民健康保険税なども前年の所得に応じて負担が増えるため、法人化したほうが節税になるケースがあります。
また、法人化するメリットとして、法人に利益を残す、または役員報酬として個人に支払うといった形で資金の配分ができるという点があります。
ただし、法人化すれば税率の差で必ず手取りが増えるわけではありません。法人には法人税、法人住民税、法人事業税などがかかります。さらに、役員報酬を受け取った役員にも所得税や住民税がかかります。
加えて、社会保険料や税理士報酬などの負担も発生します。
そのため、所得500万円のフリーランスは、法人化を前提に、税金・社会保険料・事務負担を含めて具体的に試算することが重要です。自分で判断するよりも、税理士に相談して法人化のタイミングを決めたほうがよいでしょう。
法人で役員報酬を取る場合
法人化した1期目で役員報酬がある場合は、法人と個人それぞれの税金について把握する必要があります。
まず、法人に対して、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などがかかります。一方、役員報酬を受け取った個人には、所得税や住民税がかかります。
つまり、会社と個人の両方で税金が発生するため、綿密なシミュレーションが必要です。
法人は、会社に残す資金と役員報酬の額を把握したうえで、それぞれにかかる税金と社会保険料の負担をあわせて考えなければなりません。
役員報酬の金額や法人化の可否は、税理士に相談して判断するとよいです。
ベンチャーサポート税理士法人の無料相談では、個人事業主か法人かの判断のサポート、最適な役員報酬と法人税のシミュレーションを実施しております。
起業後にやっておきたい納税資金の残し方
起業後は、納税資金を分けて管理することが大切です。税金の支払いはあとで必ず来るものと考えて資金を残しておきましょう。利益をすべて使ってしまうと納税時期に資金繰りが苦しくなることがあります。
税金専用の口座を分ける
納税資金を計画的に残すために、税金専用の口座を作って資金を分けるという方法があります。
事業用口座、生活費用口座、税金用口座を分けると、使ってよいお金と残すべきお金を見分けやすくなります。
税金用口座に入れたお金は、原則として納税以外に使わないお金として管理しましょう。
消費税は使ってよいお金と考えない
消費税の課税事業者になった場合、受け取った売上には消費税が含まれています。また、支払った経費にも消費税が含まれています。
課税制度の選択(本則課税・簡易課税)によって計算方法は異なりますが、重要なのは事前の納税予測です。毎月の経過とともに消費税額を試算し、計画的な納税準備を進めましょう。
税理士に依頼するかどうかの判断基準は?
起業後の税金は、すべて自分で管理することもできます。ただし、税理士に相談したほうが自分の負担を軽減でき、計算ミスや判断ミスも予防できます。
起業初期こそ相談する
税理士への相談は「利益が大きくなってから」と考える人もいます。しかし、起業初期に税理士に相談するメリットは大きいです。
青色申告のルール、会計処理の方法、経費の判断、インボイス対応、法人化のタイミングなどは、最初に税理士に相談して方向性を決めておくと後々楽になります。
特に、以下に当てはまる場合は早めの相談がおすすめです。
- 売上が1,000万円を超える見込み
- 法人化のタイミングで迷っている
- 役員報酬の決め方がわからない
- インボイス登録をするか迷っている
- 経費にできるものの判断に不安がある
- 事務処理の負担を減らしたい
- 所得が500万円を超える見込み
税理士に依頼すると費用がかかりますが、事務処理の負担が激減したり、申告ミスや納税資金不足を防げたりといったメリットがあります。
起業に関する税金のよくある質問
起業した場合の税金は個人事業主と法人で違いがある
起業した場合にかかる税金は、個人事業主として事業を始めるか、法人を設立するかによって異なります。
個人事業主には、所得税、住民税、個人事業税、消費税などがかかります。一方、法人には、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などがかかります。
法人の場合、会社にかかる税金とは別に、役員報酬を受け取る個人にも所得税や住民税がかかります。
個人事業主と法人のどちらが税金の面で有利かは、所得金額、事業規模、取引先との関係、社会保険料、今後の事業展開によって変わるため、個別の判断が必要です。不安がある場合は早めに税理士などの専門家へ相談しましょう。

















