記事の要約
- 遺産分割協議に法的な期限はないが、相続税申告の「10カ月」の期限から逆算すると「半年」が理想的な目安
- 最初の3カ月で財産の調査・評価まで済ませ、残りの3カ月で協議をまとめるスケジュール感を持っておくとよい
- どうしても期限に間に合わない場合は、「未分割申告」や「相続人申告登記」で暫定的に対応できる
「遺産分割協議は、いつまでに終わらせないといけないの?」
結論からお伝えすると、遺産分割協議に法的な期限はありません。
民法第907条にも、「いつでも」協議によって遺産を分割できると定められています。
民法
(遺産の分割の協議又は審判)
第907条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。引用元 民法|e-Govポータル
ただし、遺産分割協議の後に行う相続手続きには、期限が定められているものもあるため、放置するとさまざまなデメリットが生じます。
この記事では、「遺産分割協議をいつまでに終わらせるのが理想か」をお伝えしたうえで、「スムーズに終わらせるためのポイント」や「期限に間に合わないときの対応策」までわかりやすくお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
遺産分割協議を終わらせる目安は「半年」

冒頭でもお伝えしたとおり、遺産分割協議そのものに法的な期限はなく、極端な話、亡くなってから何年後に行っても有効です。
しかし、だからといって後回しにはせず、被相続人が亡くなってから「半年」を目安に協議をまとめることをおすすめします。
遺産分割協議を「半年」で終わらせるべき理由には、次の2つがあります。
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
理由1:相続税の申告期限に間に合わせるため

相続税の申告が必要な場合、その期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」と定められています。

この10カ月の期限までに、遺産の分け方を決めるだけではなく、以下のような作業もすべて完了させなければなりません。
このうち、「税務署への提出」の際には、遺産の分け方をまとめた「遺産分割協議書」の写しが添付書類として必要になります。
つまり、10カ月の期限内で「遺産分割協議を終える → 協議書を作成する → 申告書を仕上げる → 提出・納税する」という一連の流れを完了させなければなりません。
こうしたスケジュールを考えると、遺産分割協議自体は半年くらいを目安に終わらせるのが理想です。
理由2:相続税の申告が不要でも、放置するデメリットは大きいから

相続税の申告が不要な場合でも、遺産分割協議を終えないまま放置しておくと、次のようなデメリットが生じます。
- 故人の銀行口座は凍結されたままで、預貯金を引き出すことができない※1
- 不動産は使うことも売ることもできず、固定資産税だけがかかり続ける
- ※1
- 「相続預金の仮払い制度」を利用することで、遺産分割協議の前でも、一定額までであれば金融機関の窓口で引き出すことが可能
さらに、2024年4月からは、相続で取得した不動産の「相続登記」が義務化されました。
不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
補足
ただし、協議がまとまった後に、あらためて正式な相続登記をし直す必要があります。
以上のように、相続税の申告が必要なくても、遺産分割協議を放置して得をすることはありません。
そこで、相続税申告の有無に関わらず、「半年」を1つの目安にして協議を進めてみてはいかがでしょうか。
参考
協議を半年で終わらせるためのポイント

ここまでお読みいただき、「協議は半年で終わらせたほうがいいのはわかったけれど、具体的にどうすればいいの?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
遺産分割協議の一般的な進め方については、下記の記事で詳しくお伝えしていますので、ぜひご覧ください。
そのうえで、遺産分割協議をスムーズに終わらせるためのポイントには、次の3つがあります。
以下では、この3つのポイントについて詳しく見ていきます。
ポイント1:相続人全員と早めに連絡を取っておく

遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。1人でも欠けていると、協議そのものが無効になってしまいます。
このため、まずは相続人全員に「相続が発生した」という事実を早めに伝えておくことが大切です。
特に注意したいのが、疎遠になっている相続人がいるケースです。
この場合、連絡先を調べるだけで数カ月かかることもあります。連絡が遅れるほど協議の開始が後ろ倒しになり、半年の目安に間に合わなくなるリスクが高まります。
そこで、「相続が起きたこと」と「遺産の分け方について話し合いたいこと」を、できるだけ早いタイミングで、相続人全員に共有するようにしましょう。
ポイント2:最初の3カ月で「相続人の確定」と「財産の調査・評価」を済ませる

遺産分割協議を始めるには、その前に「誰が相続人なのか」と「どんな財産がいくらあるのか」を確定させておかなければなりません。
そこで、以下の3つの作業を「最初の3カ月」を目安に進めていきましょう。
| やるべきこと | 概要 |
|---|---|
| 相続人の確定 | ■ 亡くなった方の「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」を取り寄せる ■ 過去の婚姻歴や養子縁組なども含め、法定相続人を漏れなく確認する |
| 相続財産の調査 | ■ 預貯金、不動産、株式、自動車などの「プラスの財産」も、借入金などの「マイナスの財産」もすべて洗い出す |
| 相続財産の評価 | ■ 把握できた各財産の「評価額」を算出する |
この3つが終わっていないと、何をどう分けるかの話し合いに入ることができません。
なお、「被相続人が亡くなってから3カ月」という期間は、相続放棄の期限とも重なります。
相続放棄をしたい場合は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
そこで、3カ月以内に「財産調査」までを終わらせ、借入金が多いとわかったときは、相続放棄も視野に入れて検討しましょう。
ポイント3:分割方法の「たたき台」を準備してから協議に臨む

財産の全体像が見えてきたら、「誰が・何を・どれくらい引き継ぐか」のたたき台を準備してから話し合いに臨むのがおすすめです。
何も準備がないまま協議を始めると、話が散らかりやすく、なかなかまとまりません。
一方、下記のような簡単な「分割方法のたたき台」があるだけでも、議論に軸ができて、話し合いがスムーズに進みやすくなります。

たたき台をもとに相続人全員で話し合い、合意に至ったら「遺産分割協議書」を作成しましょう。
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。

なお、遺産分割協議の土台となる「財産の評価」には、専門的な知識が求められます。
特に「土地」は、評価額をめぐってトラブルになりやすいため、相続専門の税理士に確認することをおすすめします。
私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で承っておりますので、下記からお気軽にご連絡ください。
各種手続きの期限に間に合わないときの対応

「半年で終わらせたいけれど、どうしても協議がまとまらない……」というケースも、現実には起こり得ます。
そのような場合でも、期限のある手続きに対しては暫定的な対応策が用意されています。
それぞれの対応策について、見ていきましょう。
相続税の申告が必要なら「未分割申告」をする

遺産分割協議がまとまっていなくても、相続税の申告期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月)は待ってくれません。
この場合は、いったん法定相続分で分割したと仮定して、相続税を申告・納付する「未分割申告」を行います。
未分割申告をする際は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を併せて提出しましょう。
この書類を出しておけば、後日、遺産分割が成立したときに「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの制度を適用し、払いすぎた税金の還付を受けられます。
なお、還付を受けたいときには、遺産分割協議や遺産分割調停が完了してから4カ月以内に「更正の請求」をする必要がある点にご注意ください。
不動産がある場合は「相続人申告登記」をする

相続登記の期限(不動産を相続したことを知った日から3年以内)までに遺産分割協議がまとまらない場合は、「相続人申告登記」を行うことで、いったん登記義務を果たしたとみなされます。
相続人申告登記は、相続人が1人でも手続きができるため、ほかの相続人の協力が得られない場合にも利用できます。
ただし、これはあくまでも暫定的な措置です。遺産分割協議が成立した後は、あらためて正式な相続登記を行う必要があることは忘れないようにしましょう。
話し合い自体がまとまらないなら「遺産分割調停」へ

根本的に話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。
この調停では、裁判官や調停委員が間に入り、相続人同士の話し合いを進めてくれます。
ただし、遺産分割調停は時間がかかることが多く、1年以上かかるケースも珍しくありません。
なお、調停に入るときには、弁護士のサポートを受けながら手続きを進めることが多いです。
遺産分割協議の期限に関するよくある質問
最後に、遺産分割協議の期限に関する、次の質問にお答えします。
Q1:遺産分割協議「書」には、有効期限はある?
遺産分割協議書の書類そのものに、有効期限はありません。何年前に作成した協議書であっても、内容が有効であれば相続手続きに使うことができます。
ただし、協議書に添付する「印鑑証明書」については、提出先によって「3カ月以内に発行されたもの」などの期限が設けられていることがあります。
このため、提出前に窓口に問い合わせて確認しておきましょう。
Q2:協議が終わるまで、財産の所有権はどうなる?
遺産分割協議が成立するまでの間、故人の財産はすべて「相続人全員の共有」になります。
「不動産」については、各相続人が法定相続分に応じた「持分」を持っている状態になり、法的には「自分の持分だけ」を第三者に売却することも可能です。
もし、相続人の誰かが持分を売ってしまうと、その後は不動産の利用がしづらくなるおそれがあります。
こうしたトラブルを避けるためにも、遺産分割協議はなるべく早く終わらせることが大切です。
Q3:協議が終わる前に、相続人が亡くなったらどうなる?
遺産分割協議が終わらないうちに相続人の1人が亡くなった場合、その人が持っていた相続権は、その人の相続人(配偶者や子どもなど)に引き継がれます。
これを「数次相続」といい、遺産分割協議に参加する人数がさらに増えることになります。
当事者が増えるほど全員の合意を得るのが難しくなり、協議がますます複雑化するため、こうした事態を防ぐためにも、早めに協議を終わらせることが重要です。
Q4:協議を後回しにしても問題ないケースはある?
相続人のなかに未成年者がいる場合は、その方が成年(18歳)を迎えるのを待ってから遺産分割協議を行うケースはあります。
これは、未成年者が協議に参加する場合は「特別代理人」の選任が必要になるなど、手続きが複雑になるためです。
ただし、協議を後回しにしている間も、財産は相続人全員の共有状態のままです。
手続きを先送りするデメリットは残るため、可能であれば早めに進めることをおすすめします。
遺産分割協議は「半年」を目安に、早めの一歩を
この記事では、遺産分割協議の期限について、以下の内容をお伝えしました。
- 遺産分割協議に法的な期限はないが、相続税申告の「10カ月」の期限から逆算すると「半年」を目安にするとよい
- 最初の3カ月で「相続人の確定」「財産の調査・評価」を済ませ、残りの3カ月で協議をまとめるスケジュール感で進めるのがおすすめ
- どうしても期限に間に合わない場合は、「未分割申告」や「相続人申告登記」で暫定的に対応できる
大切な人を亡くされた直後は、気持ちの整理もつかないなか、やるべきことが次々に押し寄せてきます。
もし、何かご不安なことが出てきたら、一人で抱え込まず、まずは私たちVSG相続税理士法人にご相談ください。
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