記事の要約
- 不動産の相続税評価額の計算方法(土地・建物・マンション別)と、相続税額を4ステップで算出する手順
- 小規模宅地等の特例・減額補正・配偶者控除など、不動産の相続税を適正に抑えるための節税ポイント
- 相続した不動産を売却する場合の譲渡所得税と、税負担を軽減できる「相続税の取得費加算の特例」の活用方法
不動産は、評価額が数千万円規模に及ぶことも珍しくない高額な財産です。遺産に不動産が含まれる場合、相続税が高額になるケースが多く、評価方法や計算方法を正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、不動産の相続税評価額の計算方法から相続税の具体的な計算手順、節税ポイント、売却時の税金まで、税理士が詳しく解説します。
目次
不動産の相続に相続税はかかるのか?
不動産を相続した場合、必ずしも相続税が発生するわけではありません。相続税がかかるかどうかは、遺産の総額と相続税の基礎控除額を比較することで判断します。
相続税がかかるかの判断にはすべての遺産を把握する必要がある
相続税は、不動産だけを対象に計算するものではありません。現金・預貯金、有価証券、不動産、生命保険金など、被相続人が保有していたすべての財産を合算した「遺産総額」をもとに計算します。
そのため、まずは相続財産の全体像を把握することが、相続税の有無を判断する第一歩となります。
不動産などの相続財産は評価額を計算する
現金や預貯金はそのままの金額が財産評価額となりますが、不動産・株式・車など現金以外の財産は、相続税を計算するための「相続税評価額」を算出する必要があります。
不動産の相続税評価額は、実際の取引価格(時価)とは異なります。国税庁が定める「財産評価基本通達」に従って計算した評価額が用いられ、一般的に時価の70〜80%程度になるよう調整されています。
遺産総額が基礎控除額を下回る場合、相続税はかからない
すべての相続財産を合算した遺産総額が、相続税の基礎控除額を下回る場合は、相続税はかかりません。相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求めます。
基礎控除額
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は次のようになります。
計算例
この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
なお、不動産の評価額は数千万円を超えることも多く、土地の評価額だけで基礎控除額を超えてしまうケースも少なくありません。不動産が遺産に含まれる場合は、早めに評価額を把握しておくことをおすすめします。
不動産を相続したときにかかる税金の種類
不動産を相続した際にかかる主な税金は、相続税・登録免許税・固定資産税の3種類です。それぞれの概要を確認しておきましょう。
相続税
相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した場合に課される税金です。遺産総額が基礎控除額を超えた場合に課税され、相続の発生を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納付する必要があります。
相続税は累進課税方式を採用しており、課税される遺産総額が大きいほど適用税率も高くなります。不動産が遺産に含まれる場合は特に注意が必要です。
登録免許税
不動産を相続した場合、被相続人から相続人へ名義を変更する「相続登記」の手続きが必要です。この申請の際に、登録免許税がかかります。
税額は「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算します。
なお、2024年4月の法改正により相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に手続きを行わなければなりません。正当な理由なく期限を超えた場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過去に相続した未登記の不動産も対象となるため、注意が必要です。
固定資産税
不動産を相続して所有し続ける限り、毎年固定資産税が課されます。固定資産税は相続税とは別に、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して市区町村から課税されるものです。
税額は「固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)」で計算します。不動産を相続した後は、この固定資産税も継続的なコストとして見込んでおく必要があります。
不動産の相続税評価額の計算方法
相続税を計算するにあたり、不動産の相続税評価額を算出する必要があります。不動産は土地・建物・マンションでそれぞれ評価方法が異なります。
土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)
土地の相続税評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」のいずれかで算出します。どちらを使用するかは、土地の所在地域によって決まります。
路線価方式
路線価方式は、主に市街地など路線価が定められている地域の土地に適用される評価方法です。
路線価とは、道路に面する土地1㎡あたりの評価額のことで、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認できます。路線価図上には「300C」「400D」といった形で表記されており、数字が1㎡あたりの価額(千円単位)、アルファベットが借地権割合を示しています。
路線価方式による評価額の基本的な計算式は以下のとおりです。
相続税評価額(路線価方式)
ただし、土地の形状・奥行き・間口などの状況に応じて、補正率による増減額が発生します。奥行きが長すぎる土地・形状がいびつな土地・間口が狭い土地などは減額補正の対象となるため、正確な評価額は個別に確認する必要があります。
また、土地の利用区分によって評価方法が異なります。
| 利用区分 | 計算方法 |
|---|---|
| 自用地(自己使用) | 路線価 × 補正率 × 面積 |
| 借地権(他人から借りている土地) | 自用地評価額 × 借地権割合 |
| 貸宅地(他人に貸している土地) | 自用地評価額 ×(1 - 借地権割合) |
| 貸家建付地(貸家の敷地) | 自用地評価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地に適用される評価方法です。農村部や郊外の土地はこちらに該当することが多いです。
相続税評価額(倍率方式)
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。評価倍率は、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で地域ごとに確認することができます。
建物の評価方法
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま用います。
ただし、アパートや賃貸マンションなど他人に貸し付けている建物(貸家)の場合は、以下の計算式で評価します。
貸家の相続税評価額
借家権割合は全国一律30%です。相続発生日時点で満室の場合、自己使用の建物と比べて評価額が30%低くなります。空室がある場合は、その床面積の割合に応じて評価額が上がる点に注意が必要です。
マンション(区分所有建物)の評価方法
区分所有マンションの相続税評価額は、「敷地利用権(土地部分)」と「区分所有権(建物部分)」を合算して計算します。
2024年1月以降の評価方法の改正について
従来、区分所有マンションは路線価をもとにした評価額が実際の市場価格より大幅に低くなるケースが多く、節税目的での購入が問題視されていました。これを受けて、2024年1月1日以降の相続・贈与分からマンションの評価方法が改正されました。
改正後は、「区分所有補正率」を用いて評価額を補正する仕組みが導入されています。具体的には、市場価格と相続税評価額の乖離率に応じた補正率が掛け合わされます。
乖離率が2倍以上のマンション(主に都市部の高層マンションや築浅マンション)では、従来より評価額が大幅に上がる可能性があります。マンションを相続する場合は、改正後の評価方法を踏まえた計算を行うことが重要です。
相続税の計算方法(4ステップ)
相続税の額は、不動産だけを切り離して計算することはできません。すべての遺産を合算した総額をもとに、以下の4ステップで計算します。
STEP1|遺産総額の計算

相続税の計算における遺産総額は、単に被相続人が死亡時に所有していた財産だけではありません。死亡保険金や生前贈与財産など相続税の対象となる財産をすべて合算したものが、相続税計算上の遺産総額となります。
遺産総額
- ※
- 令和6年1月1日以後の贈与から、加算期間は段階的に7年へ延長されています。相続開始日によって対象期間が異なるため、実際の申告では確認が必要です。
死亡保険金・死亡退職金は民法上は相続財産ではありませんが、相続税の課税対象となります。ただし「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があるため、この金額を差し引いて加算します。
- 現預金4,000万円、自宅不動産(評価額4,000万円)
- 法定相続人:配偶者・子ども2人(計3人)
計算例
不動産の相続税評価額の計算
遺産総額を計算する際、不動産については前述の路線価方式・倍率方式などで算出した相続税評価額を用います。実際の購入価格や固定資産税評価額をそのまま用いるわけではない点に注意が必要です。
STEP2|課税遺産総額の計算

遺産総額から相続税の基礎控除額を差し引き、実際に課税される「課税遺産総額」を算出します。
課税遺産総額
計算例
課税遺産総額:8,000万円 - 4,800万円 = 3,200万円
STEP3|相続税の総額の計算

課税遺産総額を、法定相続分に応じて各相続人に振り分け、それぞれに税率を適用して合算します。これにより「相続税の総額」が算出されます。
法定相続分は民法で定められており、配偶者と子どもが相続人の場合は「配偶者1/2・子ども全員で1/2(均等に分割)」となります。
No.4155 相続税の税率
相続税の速算表 法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% - 1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円 3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円 5,000万円超から1億円以下 30% 700万円 1億円超から2億円以下 40% 1,700万円 2億円超から3億円以下 45% 2,700万円 3億円超から6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 引用元 国税庁
計算例
配偶者の取得分:3,200万円 × 1/2 = 1,600万円 → 税額:1,600万円 × 15% - 50万円 = 190万円
子ども1人あたりの取得分:3,200万円 × 1/4 = 800万円 → 税額:800万円 × 10% = 80万円
相続税の総額:190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
STEP4|各人の相続税額の計算

相続税の総額を各相続人が実際に取得した遺産の割合に応じて按分し、個人ごとの相続税額を確定します。
各人の相続税額
この金額から、該当する場合は以下のような税額控除を適用します。
計算例
配偶者の按分税額:350万円 ×(4,000万円 ÷ 8,000万円)= 175万円
→ 配偶者の税額軽減を適用(取得財産4,000万円 < 1億6,000万円)→ 相続税額:0円
子ども1人あたりの按分税額:350万円 ×(2,000万円 ÷ 8,000万円)= 87.5万円
子ども2人の合計:87.5万円 × 2人 = 175万円
この事例では、配偶者控除の適用により配偶者の相続税は0円となり、子ども2人が合計175万円を納付することになります。
不動産の相続税を抑える節税ポイント
不動産の相続税評価額は高額になりやすいため、適切な節税対策を講じることが重要です。主な節税方法を以下に解説します。
小規模宅地等の特例を活用する
小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。適用できる場合には、相続税を大幅に軽減できる非常に有効な特例です。
主な対象と減額の内容は以下のとおりです。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(被相続人の自宅) | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等(被相続人の事業用土地) | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等(アパートなどの敷地) | 200㎡ | 50% |
たとえば、評価額5,000万円の自宅の土地が特定居住用宅地等の要件を満たす場合、評価額を1,000万円まで圧縮することができます。
ただし、特例を受けるためには取得者ごとに細かい要件があります。被相続人と同居していたかどうか、申告期限まで居住・保有を継続しているかなど、適用条件を事前に確認することが重要です。
不動産の評価を専門の税理士に依頼する
不動産の相続税評価額の計算は複雑であり、適用できる補正や特例を見落とすと、本来より高い評価額で申告してしまうリスクがあります。逆に、専門の税理士が適切な評価を行うことで、評価額を正当に引き下げられる可能性があります。
たとえば、路線価方式で土地を評価する際には、土地の形状や立地条件に応じた減額補正が適用できる場合があります。これらの補正を見落とすと相続税を過大に申告するリスクがある一方、すべてを正確に適用するには専門的な知識が必要です。
また、以下のようなケースでは税理士への依頼が評価額の適正化に特に有効です。
- 形状が複雑な土地や、複数の路線に面した土地を相続した場合
- 賃貸物件や農地・雑種地など、特殊な利用区分の土地を相続した場合
- 市場価格と路線価が大きく乖離しているエリアの土地を相続した場合
相続税の申告経験が豊富な税理士であれば、財産評価基本通達に基づく正確な評価はもちろん、不動産鑑定士との連携による鑑定評価の活用など、依頼者の状況に応じた最適な対応を提案することができます。
なお、VSG相続税理士法人では無料面談にて土地の評価に関するご相談を承っております。不動産の評価額に不安がある方は、お気軽にお問い合わせください。
賃貸マンション・アパートの建築・購入を検討する
多額の現預金を保有している場合、その資金で賃貸用不動産を取得することで相続税を節税できる可能性があります。
現預金は評価額がそのままの金額ですが、賃貸不動産は他人に貸し出すことで処分が制限されるため、評価額が低くなります。土地は「貸家建付地」として評価され、建物は「貸家」として評価されるため、それぞれ現預金よりも評価額を圧縮することができます。
ただし、賃貸経営は空室リスク・修繕コスト・将来の不動産価格下落リスクなどを伴う事業です。相続税の節税効果だけを目的とするのではなく、収益性や資産全体のバランスを十分に検討したうえで判断することが重要です。
配偶者控除と二次相続への影響を考慮する
配偶者が不動産を相続する場合、「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」を活用することで、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額まで相続税が非課税となります。
ただし、配偶者控除を最大限に活用して一次相続の税負担を抑えすぎると、配偶者が亡くなった際の二次相続で子どもたちに対する相続税が高くなるケースがあります。
一次相続と二次相続を合算した税負担が最小になるよう、遺産分割の方法を総合的に検討することが重要です。不動産の分割方法(単独取得・共有・代償分割など)も含めて、長期的な視点で計画を立てることをおすすめします。
相続した不動産を売却する場合の税金
相続した不動産を売却する場合、相続税とは別に譲渡所得税が課税されます。売却を検討している場合は、事前に税額の概算を把握しておくことが重要です。
譲渡所得税の計算方法
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して、所得税・住民税・復興特別所得税が課されます。
譲渡所得
- 取得費:不動産の購入価格や建築費用(相続で取得した場合は被相続人の取得費を引き継ぐ)
- 譲渡費用:仲介手数料・登記費用など売却に要した費用
税率は不動産の所有期間によって異なります。
| 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 9% | 39.63%(復興税含む) |
| 5年超(長期譲渡所得) | 15% | 5% | 20.315%(復興税含む) |
なお、所有期間は被相続人が取得した日から起算するため、被相続人が長年保有していた不動産を相続した場合は、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されることがほとんどです。
相続税の取得費加算の特例とは
相続税を支払った相続人が、相続した不動産を一定期間内に売却した場合、相続税の一部を譲渡所得の取得費に加算できる特例があります。これを「相続税の取得費加算の特例」といいます。
加算できる金額
取得費が増加することで譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税の負担を軽減することができます。
適用要件は以下のとおりです。
- 相続または遺贈によって財産を取得した者であること
- 取得した財産について相続税が課されていること
- 相続開始日の翌日から3年10カ月以内に売却していること
不動産の売却を検討している場合は、この特例の適用期限を意識したスケジュールで進めることが重要です。
不動産の相続税に関するよくある質問(FAQ)
Q1.相続税が払えない場合はどうすればいい?
- 延納(分割払い)
- 一定の要件を満たす場合、最長20年(不動産が多い場合)の分割払いが認められます。ただし利子税がかかります。
- 物納
- 延納によっても納付が困難な場合、不動産などの財産そのもので相続税を納める「物納」が認められる場合があります。物納できる財産には順位があり、不動産は比較的認められやすい財産です。
- 不動産の売却による納税
- 相続した不動産を売却して納税資金を確保する方法です。前述の「相続税の取得費加算の特例」が活用できる場合があります。
- 金融機関からの借り入れ
- 銀行などの金融機関から相続税納税資金を借り入れる方法です。延納と異なり、借入期間や返済方法を柔軟に設定できる場合があります。相続した不動産を担保として融資を受ける「相続ローン」を取り扱っている金融機関もあります。ただし、審査が必要なうえ利息の負担も生じるため、延納・物納・売却などの方法と比較検討したうえで判断することをおすすめします。
Q2.相続不動産の売却にはどのくらいの期間がかかる?
Q3.相続登記をしないとどうなる?
Q4.相続放棄で不動産の管理義務は免れる?
Q5.不要な不動産だけを手放すことはできる?
まとめ|不動産の相続税でお悩みなら税理士に相談しよう
不動産の相続税は、土地・建物・マンションそれぞれの評価方法が複雑であり、適用できる特例や補正を正しく把握しなければ、相続税を過大に納めてしまうリスクがあります。一方で、適切な評価と節税対策を講じることで、税負担を大幅に軽減できるケースも少なくありません。
特に以下のような場合は、早めに相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
- 遺産に不動産が含まれており、相続税がかかるかどうか判断できない
- 土地の形状が複雑で、適切な評価額の算出に自信がない
- 小規模宅地等の特例など、節税特例の適用可否を確認したい
- 相続した不動産の売却を検討しており、税額の概算を把握したい
VSG相続税理士法人は、年間3,500件超の相続税申告実績を持つ日本最大級の相続税専門税理士法人です。不動産評価の専門知識を持つ税理士が、お客様の状況に応じた最適な申告・節税対策をご提案します。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。


