東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
バック事故は「バックしてきた車にぶつけられた」視点と、「バックで駐車場などから出るときに通行中の車にぶつかられた」など逆の立場の視点もあります。
ここでは「バックしてきた車にぶつけられた」視点からの過失割合について解説します。
自車が完全に停車中にバックでぶつけられた場合は、0:100の過失割合になる可能性が高いです。
交通事故ではバック事故に限らず、停車中の車は過失0とみなされます。
自車が徐行中にバックでぶつけられた場合は、自車0~30:相手方70~100程度の過失割合になります。
相手車両がバックで来ることが予見できたのにも関わらず、停止せずに徐行で直進を続けたことが過失とみなされる可能性があります。
自車が公道を直進中に脇道からバックで出てきた相手車両との事故の場合、20:80程度の過失割合になります。
駐車場内の事故とは異なり、公道上を直進する車はスピードが出ている場合が多く、被害が大きくなる傾向があります。
自転車に乗っている時、あるいは道路や駐車場を歩いている時に、バックしてくる車に衝突されてしまうことがあります。
どのような状況であっても、自転車や歩行者が車にぶつけられた場合、車の過失割合が大きくなります。
仮に自転車や歩行者が急に飛び出してきたとしても、車の過失割合が大きくなることに変わりはありません。
バックしてきた車に自転車や歩行者がぶつけられた場合、過失割合は歩行者・自転車:車で10:90程度になります。
歩行者が小さな子供や障害者、高齢者などの場合、車の過失割合がさらに高くなり、車の過失割合が100%となることもあります。
示談交渉のとき、加害者は自分の過失割合を低くしようとして被害者の過失を主張してくる場合があります。
バック事故で加害者がよく主張する事例と、対処法を解説します。
自車が停車していたのに「動いていた」あるいは「徐行していなかった」など、加害者側が嘘をつく場合があります。
事故状況について双方の説明に食い違いがある場合には、証拠を示して反論しましょう。
ドライブレコーダーや駐車場内の監視カメラの録画などが証拠となります。
被害者側から「クラクションで警告してくれれば、気づいたのに」と主張される場合があります。
クラクションで警告する義務を怠ったという主張です。
警告する余裕があったのにクラクションで警告しなかった場合は、加害者の主張するように被害者にも過失があるとみなされます。
しかし、クラクションで警告する間もなくバックで当てられた場合、加害者の主張は通りません。
ドライブレコーダーや監視カメラの記録での事実確認が必要です。
加害者から「車が見えなかった」と主張される場合があります。
本当に見えなかったかもしれませんが、真偽のほどは不明です。
多くの場合が言い訳であり、被害者に過失を求める性質のものではないので気にする必要はありません。
しかし、事故状況の全般的判断で過失割合に影響がでそうな場合は、弁護士などに相談するといいでしょう。
バックしてきた車にぶつけられた時に、被害者側の車が完全に停車していたわけではなく、徐行していたと主張されることがあります。
これは、停車していた車にぶつけた場合は、被害者側にも一定の過失割合が認められる一方、停車していた車にぶつけた場合は加害者側の過失割合が100%となってしまうためです。
実際に加害者側の主張が認められれば、加害者側の過失割合は軽くなります。
実際に停車していた時にバックしてきた車にぶつけられたのであれば、自車が停車していたことを主張する必要があります。
ドライブレコーダーは、ぶつけられた時の状況を客観的に証明する証拠となります。
また、近くに目撃者がいたのであれば、その人に証言をお願いする必要があります。
バックしてきた車にぶつけられた場合に、被害者側の車の停止していた場所が悪いと主張されることがあります。
駐車場の枠をはみ出して停車していた、あるいは停車禁止の場所に停車していたといった内容です。
基本的に、停車していた車には過失割合は発生しませんが、本来の停車位置ではない場所に停車していた車の場合、加害者側の過失割合は軽減されます。
そのため、主張どおりの内容であれば、加害者側の主張が認められる場合があります。
被害者側としては、仮に駐車場の枠からはみ出ていたとしても、他の車の邪魔になるような停め方はしていないといった主張を行います。
駐車場で事故が発生した場合、加害者側が被害者側の車が進行方向を守っていなかったと主張することがあります。
駐車場によっては通路が狭いために、車両の進行方向を一方向に制限していることがあり、その指示に従っていなかったという場合です。
駐車場内で進行方向が指示されている場合、その指示に従う必要があります。
そのため、加害者側の主張が正しいものであれば、加害者側の過失割合は軽減され、被害者側にも一定の過失割合が発生します。
もし被害者側が進行方向を守っており、一切の非がない場合は、ドライブレコーダーの映像を提出して主張をする必要があります。
駐車場でのトラブルで多いのは、駐車中の車にぶつけた車が、そのまま逃げてしまう当て逃げです。
ぶつけた方が全面的に悪くなり、被害者側の車に乗っていた人や目撃者がいない場合、逃げてしまおうという心理が働きやすくなります。
もし当て逃げされた場合は、すぐに警察に被害届を提出するようにします。
加害者が逃げてしまった場合でも、後から名乗り出てくることはあります。
しかし、被害届を提出していないと、保険会社は保険金を支払ってくれません。
また、後になって被害届を出すと、事故にあった時の状況を説明するのが難しくなり、手続きが面倒になります。
そのため、できるだけ速やかに警察に届け出るようにしましょう。
バック事故の被害でもらえる賠償金はどのようなものがあるか、またその相場を賠償金の種類とともに解説します。
積極損害とは事故が原因で発生した出費です。
積極損害には下記のものがあります。
慰謝料などと異なり、実費でかかったものが賠償金の対象となります。
休業損害とは事故が原因で仕事を休まなければならず、減ってしまった給料などに対して支払われる賠償金です。
収入減少分の実費が賠償金の対象となります。
逸失利益は事故のために失われた将来の収入を指します。
会社員・公務員・アルバイト・契約社員など仕事に就いている人はもちろん、主婦や主夫などにも認められます。
また、仕事に就いてなくても子どもの場合は将来に収入を得られる見込みがあるため、逸失利益が認められます。
逸失利益の賠償金は、ケースによって基準となる金額が異なります。
【会社員の場合】
源泉徴収票の総支給額が基準になります。
【自営業の場合】
確定申告書の所得額が基準になります。
【主婦、主夫の場合】
「全年齢の女性の平均賃金」を基準とします。
男性であっても「全年齢の女性の平均賃金」が基準になります。
【子どもの場合】
男児の場合「男性の平均賃金」、女児の場合は「男女の平均賃金」が基準にします。
後遺障害が残った場合、労働能力喪失率にもとづいて逸失利益が計算されます。
ただし、職業の種類によって労働能力喪失率は変動します。
等級 | 労働能力喪失率 | 等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|---|---|
1級 | 100% | 8級 | 45% |
2級 | 100% | 9級 | 35% |
3級 | 100% | 10級 | 27% |
4級 | 92% | 11級 | 20% |
5級 | 79% | 12級 | 14% |
6級 | 67% | 13級 | 9% |
7級 | 56% | 14級 | 5% |
参考:労働基準局長通牒 昭 32.7.2 基発第 551 号
慰謝料は入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の三種類があり、人身事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
物損事故で支払われることはありません。
慰謝料の算定基準には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の三つの基準がありますが、今回は弁護士に依頼したときに適用される弁護士基準で賠償金の説明をします。
入通院慰謝料は、入院や通院した期間をもとに慰謝料額が決められます。
例えば以下の例で考えてみましょう。
事例入通院慰謝料の例
【自賠責基準計算の場合】
目安は168,000円になります。
計算方法は以下のいずれか日数の少ない方に4,200を乗じます。
(1)実治療日数を2倍した日数
(2)治療期間の日数
本例の場合
(1)20日×2=40日
(2)治療期間60日
で(1)が選択され、40日×4,200円=168,000円になります。
【弁護士基準計算の場合】
目安は603,333円になります。
計算方法は骨折等の重症の場合の入通院慰謝料表に基づき、
「治療期間が60日」に対する通院慰謝料+「入院期間が10日」に対する入院慰謝料+「入院日数」に対応する通院慰謝料
通院慰謝料から入院期間の通院慰謝料を引いたものになります。
(通院慰謝料の中に入院期間が含まれるため)
(1)「治療期間が60日」に対する通院慰謝料:520,000
(2)「入院期間が10日」に対する入院慰謝料:176,666
(2)「入院日数」に対応する通院慰謝料:93,333
520,000+176,666-93,333=603,333円になります。
事故によって負ったケガで後遺障害が残った場合は、等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
等級に応じた後遺障害慰謝料の相場は下記のとおりです。
等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
バック事故で不幸にも被害者が死亡した場合は、死亡慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料は亡くなった方の家族内の位置づけを基準にしており、相場は下記のようになります。
被害者 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
独身者・子ども | 2,000~2,500万円 |
バック事故では事故当時の状況によって過失割合が決まっており、それによって受けられる賠償金の種類や相場も異なります。
加害者によっては自身の過失割合を低くするために、被害者にも過失があったと主張してくる場合もあるので、示談交渉では証拠を示すなどして慎重に対応しましょう。
示談交渉でうまく対応できる自信がない、交渉そのものが心理的に負担と感じる場合は、記憶が鮮明なうちに弁護士へ相談することをおすすめします。
早い段階で弁護士に相談していれば、示談交渉で不利な同意をしてしまうことも防げるでしょう。