東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
信号機は交通の安全を確保して事故を防ぐためのものです。
信号機の表示を守らないことは、重大な事故につながる可能性があり、信号機表示のルールを守らなかった場合は大きな過失割合が加算されます。
信号機表示を守らなかった場合の事故は、車両の進行方向や信号機の色の組み合わせで多くのパターンがあるので、ケース別に解説していきます。
進行方向がお互いに直進で事故が発生した場合、以下のように信号機の色別に過失割合が定められています。
事故状況 | 過失割合 |
---|---|
Aが赤信号で交差点に進入し、Bが青信号で直進 | A:B=10:0 |
Aが赤信号、Bが黄色信号で交差点に進入 | A:B=8:2 |
Aが赤信号、Bが黄色信号で交差点に進入しすぐに赤信号に変わった | A:B=7:3 |
A・Bともに赤信号で交差点に進入した | A:B=5:5 |
信号機のある交差点では、信号機の表示に従って通行することが基本です。
赤信号側の車両は、交差点に進入してはいけません。
赤信号で交差点に進入して、青信号の車両と事故が起きた場合過失割合は基本的に10:0、赤色で進入した車両が100%の過失割合になります。
ただし、青色側の車両に著しい過失(前方不注意、携帯電話の通話)があった場合には10%程度、重過失(酒酔い運転など)があった場合20%程度の過失割合の修正要素が適用され、過失割合が加算される場合があります。
信号機が黄色の場合は、安全に停止できない場合除いて交差点に進入してはいけません。
相手が赤信号を無視して事故が発生した場合でも、黄信号を無視した側にも過失割合が加算されます。
赤信号側8:黄信号側2の過失割合になり、さらに黄信号側が交差点に進入してすぐに赤に変わった場合には赤信号側7:黄信号側3の過失割合になります。
双方が危険な赤信号無視で5:5の過失割合になります。
一方に「著しい過失」や「重過失」があった場合には過失割合の修正要素として過失割合がさらに加算されます。
交差点で右折する場合、赤信号になってもそのまま進行することができます。
ただし、青信号で進行できる車両の進行を妨害してはいけません(道交法施行令2条)。
また、右折車両は直進車両や左折車両の進行を妨害してはいけません(道交法37条)。
右折車両と直進車の場合、直進車優先のルールがあるので、事故発生の場合は上記の直進車同士の過失割合とは違う過失割合になります。
事故状況 | 過失割合 |
---|---|
直進車Aが赤信号、右折車のBが青信号で交差点に進入し右折 | A:B=10:0 |
直進車Aが赤信号、右折車のBが黄色信号で交差点に進入し、赤信号に変わったあとに右折 | A:B=7:3 |
直進車が黄色信号で進入し、右折車が青信号で交差点に進入し右折 | A:B=7:3 |
直進車が黄色信号で進入し、右折車も黄色信号で交差点に進入し右折 | A:B=6:4 |
直進車・右折車ともに赤色信号で交差点に進入 | A:B=5:5 |
直進車が赤信号で進入し、右折車が右折の青矢印で進入 | A:B=10:0 |
この場合は基本的に10:0で赤信号無視の直進車の過失割合になります。
ただし、青信号で交差点に進入した右折車が赤信号になってから右折した場合は、赤の直進車9:青の右折車1の過失割合になる可能性があります。
この事例では、どちらも信号無視になります。
赤の直進車7:黄で右折車3の過失割合が基本になります。
この場合、青信号の右折車には過失がないように思われますが、直進車の動きを予測することは容易であるとみなされます。
黄色の直進車7:青の右折車3の過失割合の可能性が高いです。
この場合、双方がルール違反ですが、直進車の優先が基本なので黄の直進車4黄の右折車6の過失割合になります。
この場合、共に重大なルール違反となりますので、上記の互いが黄信号の場合と異なり、5:5の過失割合になります。
この場合は、直進車の信号無視であり直進車が100%の過失割合になります。
歩行者の信号無視による人身事故は非常に多いです。
自動車を運転するときは信号を守る人でも、歩行者という立場になった場合には信号を守ろうとする意識が低くなることも多いようです。
歩行者が信号無視をして交通事故被害に遭った場合、過失割合が加算され、賠償金の受取額が減ってしまいます。
また、歩行者の信号無視が事故を誘発して、損害が発生した場合には歩行者に損害賠償が請求される場合があります。
では、具体的に見ていきましょう。
信号のある横断歩道での歩行者と直進車との過失割合を信号の状態別に説明します。
事故状況 | 過失割合 |
---|---|
青信号の歩行者(A)と赤信号の直進車(B)の事故 | A:B=0:10 |
赤信号の歩行者(A)と赤信号の直進車(B)の事故 | A:B=2:8 |
赤信号の歩行者(A)と青信号の直進車(B)の事故 | A:B=7:3 |
青で横断を開始し、途中で赤に変わった歩行者(A)と青信号の直進車(B)の事故 | A:B=2:8 |
信号のある横断歩道での歩行者と右左折車との過失割合を信号の状態別に説明します。
事故状況 | 過失割合 |
---|---|
青信号の歩行者(A)と青信号の右左折車(B)の事故 | A:B=0:10 |
黄信号の歩行者(A)と青信号の右左折車(B)の事故 | A:B=3:7 |
赤信号の歩行者(A)と青信号の右左折車(B)の事故 | A:B=5:5 |
黄信号の歩行者(A)と黄信号の右左折車(B)の事故 | A:B=2:8 |
赤信号の歩行者(A)と黄信号の右左折車(B)の事故 | A:B=3:7 |
赤信号の歩行者(A)と赤信号の右左折車(B)の事故 | A:B=2:8 |
信号無視による交通事故でもらえる賠償金には積極損害、休業損害、逸失利益、慰謝料などの損害に対する賠償金があります。
その相場はどうなっているのかを賠償金の種類とともに解説します。
積極損害とは事故が原因でかかった出費で実費が賠償金の対象になります。
休業損害は、事故が原因で休業した給与の減少分(実費)が賠償金の相場になります。
逸失利益とは事故のため失われた、将来の収入です。
仕事に就いている人はもちろん、主婦や主夫などにも認められます。
子どもの場合は将来に収入を得られる見込みがあるため、逸失利益が認められます。
後遺障害が残った場合、労働能力喪失率にもとづいて逸失利益が計算されます。
職業の種類によって喪失率表よりも喪失率が高いと判断される場合があり、逆に喪失率が低いと判断される場合もあります。
労働能力喪失率がそのまま適用されるわけではありません。
慰謝料は入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の三種類があり、人身事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
慰謝料は人身事故の時に支払われ、物損事故では支払われることはありません。
慰謝料の算定基準には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の三つの基準がありますが、今回は弁護士に依頼したときに適用される弁護士基準で賠償金の説明をします。
入通院慰謝料は入院や通院した期間をもとに慰謝料額が決められます。
弁護士基準の場合は算定表があり、それを基準に計算していきます。
この計算式は若干複雑ですので、今回は目安のみをお伝えします。
事故により後遺障害が残った場合は等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
等級に応じた後遺障害慰謝料の相場は下記のとおりです。
等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
玉突き事故で不幸にも被害者が死亡した場合、死亡慰謝料が請求できます。
死亡慰謝料は亡くなった方の家族内の位置づけで変わり、相場は下記のようになります。
被害者 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
独身者・子ども | 2,000~2,500万円 |
信号無視による交通事故で加害者が信号無視を認めない場合はむやみに主張を続けるのではなく、事実を証拠として提示する必要があります。
証拠となるものについては下記のものがあります。
自車にドライブレコーダーがついていればいいのですが、ついていない場合には相手方のドライブレコーダーのデータ提出を求めましょう。
また、周囲の車のドライブレコーダーの記録を提供してもらう場合もあります。
事故現場周囲のコンビニやパーキングに設置してある監視カメラのデータを供出してもらうこともあります。
信号の色の切り替わりのサイクルを調べることによって、自車の信号の色がわかっている場合には相手方の信号の色を特定することができます。
事故現場の目撃者の証言を集めて記録することも有効です。
事故から時間が経過すると困難なので、早いうちに証言集めをすることが重要になります。
警察の実況見分調書や供述調書を取り寄せて、どのように記録されているかを確認します。
これらすべてを集めるのは一般市民には困難なことですので、弁護士に依頼することをおすすめします。
歩行者にも交通ルールを守る義務があり、道交法等が適用されます。
交通事故で被害者になった場合、信号無視の違反があれば賠償金は少なくなってしまいます。
そればかりか、歩行者の信号無視が原因で事故が誘発された場合、歩行者は損害賠償請求される場合もあります。
歩行者の違反が大きな事故を誘発した場合、道交法違反として罰金を課されることや、刑事上の責任を問われる可能性もあります。
信号無視による事故の過失割合はどうなるのかを説明してきましたが、信号の状態により多くのパターンがあります。
さらに、個々の事故状況により過失割合が修正されることもご理解いただけたのではないでしょうか。
また、歩行者の交通ルールに対する意識の低さから、横断歩道での信号無視が多く見受けられます。
歩行者であっても道交法が適用され、歩行者の信号無視は大きなペナルティを受ける可能性があることも覚えておきましょう。