東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
交通事故では、当事者の双方に事故原因について何らかの過失がある場合がほとんどです。
双方の過失を数値化し、どちらにより責任があるかを表したものを過失割合とよびます。
過失割合は、一般的に10対0や6対4、90%対10%や55%対45%などと表記され、その数値が大きい当事者を事故の加害者、少ない方を被害者と呼んでいます。
交通事故の当事者は、自分の過失によって相手方に損害を与えているので、これを賠償しなければならない民法上の責任があります。
そして、当事者それぞれの過失割合をもとに過失相殺がなされて、最終的に支払わなければならない賠償金額が決定されます。
このため、被害者であっても過失があれば加害者へ賠償しなければならず、過失相殺によって自身が受け取れる賠償金が減額されることになります。
過失割合は、交通事故を処理した警察が定めるものではなく、事故の当事者が示談交渉の中で過去の裁判事例にもとづき、確定することになります。
加害者との示談交渉では、被害者の過失割合が高くなるように話し合いを進めてくることもありますが、これに被害者が納得できないときは、示談を成立させず交通事故紛争処理手続きや裁判所の手続きで争うこともできます。
交通事故の当事者で示談交渉がうまくいかない場合、その多くは裁判所へ訴訟を提起して解決が図られることになります。
交通事故裁判は、一般的に被害者が加害者に対して、民法上の不法行為責任による損害賠償を求めることになるので、原告である被害者が加害者の過失などを積極的に証明しなければなりません。
このとき、証拠資料としてドライブレコーダーの記録映像を被害者から提出することもありますが、これを証拠として採用するか否かは、担当する裁判官の判断に委ねられることになります。
また、ドライブレコーダーの映像記録は、当事者の主観ではなく事故当時の状況を客観的に映しているものなので、民事訴訟の証拠能力が高いものと一般的に捉えられています。
ドライブレコーダーの映像記録は、次のようなケースにおいて積極的に活用すべきものだといえます。
ドライブレコーダーの映像記録が証拠として役立つケース
それでは1つずつ見ていきましょう。
交通事故では、当事者の双方が「相手方が信号を無視したから事故が起こった」と主張するなど、事故が発生したときの状況について加害者と被害者の証言が噛み合っていないことが多くあります。
このときは、ドライブレコーダーの映像記録を確認、また必要があれば専門家に鑑定してもらうことで、どちらの主張が事実である可能性が高いかを判断することができます。
交通事故の被害者が事故によって死亡したときや意識不明の重体などの場合、被害者が事故の発生状況を説明できないので、加害者が一方的に被害者の過失割合が高くなるよう主張することがあります。
このときもドライブレコーダーの映像記録を積極的に活用して、加害者の一方的な主張を否定することができる場合があります。
交通事故が発生したにもかかわらず、加害者が事故現場から逃走してしまうことを、当て逃げ事故(物損)・ひき逃げ事故(人身)と呼びます。
この場合、ドライブレコーダーの映像記録に逃走した加害車両のナンバープレートが残されていると、加害者の特定に繋がりやすくなります。
また、人身事故であるひき逃げに比べて物損事故である当て逃げ事故については、警察の捜査がうまくいかないことも多いと言われており、ドライブレコーダーの映像記録を活用できると犯人の特定が早まります。
ここでは、目撃者のいない状況での車両同士の事故について、ドライブレコーダーの映像記録を積極的に活用したことで過失割合をゼロに変更できた事例を紹介します。
加害車両が右側車線から被害車両を追い越した直後に車線変更をしたときに、加害車両の左側後部分と被害車両の右側前部分が衝突した事故が起こりました。
目撃者はいませんでした。
示談交渉では加害者側保険会社が過失割合を譲歩することはなく交渉が決裂したので、被害者が弁護士へ依頼して、交通事故紛争処理センターへあっせんの申立てをしました。
依頼を受けた弁護士が被害車両のドライブレコーダーの映像記録を専門家に鑑定してもらうと、加害者がウィンカーを出していなかったこと、被害者が急加速をしていなかったことが確認されました。
この鑑定結果を被害者側の弁護士が交通事故紛争処理センターへ提出すると、過失割合が100%対0%とする被害者側の主張が認められて解決に至りました。
この事例のような走行中の車両同士の事故では、加害者側が主張していた過失割合が70%対30%で認定されることが一般的で、被害者の過失割合がゼロになることは非常に稀なことです。
事故の目撃者がなく、ドライブレコーダーの映像記録も活用されていない段階では、加害者側保険会社が被害者の過失を強く主張して譲歩しないことは当然のことだと考えられます。
映像記録は、素人が見てわからないことでも専門家の鑑定にかかれば新たな証拠が発見される可能性があるので、積極的に活用しましょう。
ここからは、ドライブレコーダーの映像記録を積極的に活用するための注意点をいくつか紹介します。
ドライブレコーダーの映像記録を活用するための注意点
それでは1つずつ見ていきましょう。
ドライブレコーダーは、価格帯・性能の異なる様々な製品が発売されていますが、映像の画質が高いものでないと、加害車両のナンバープレートが読み取れないことがあるので注意してください。
また、ドライブレコーダーは、最低限の機能としてエンジンキーのオンで録画を開始してオフになると停止しますが、一部の製品ではエンジンキーをオフにしていても録画ができる駐車監視機能を備えたもあり、駐車中の当て逃げ事故対策にもなります。
被害者がドライブレコーダーを装備していなくて映像記録を利用できない場合でも、加害車両にドライブレコーダーが装備されていることがあります。
これを活用できれば被害者に有利な内容となる解決が図れる可能性もありますが、示談交渉の中で加害者に強制的に映像記録の提出をさせることはできないので注意が必要です。
ただし、交通事故裁判になれば、裁判所から提出命令を出してもらって加害者へ映像記録の提出を強制することが可能になることもあります。
ドライブレコーダーの映像記録は、素人が見ても証拠として活用できるか判断できないこともあるので、交通事故に精通した弁護士への依頼も検討しましょう。
また、必要があれば映像記録を物理的に鑑定できる専門家へ依頼して、自分の主張が裏付けられる証拠資料となるか判断してもらうことも可能です。
ドライブレコーダーは、当事者の主観にかかわりなく、事故発生の前後を客観的に記録しています。
この記録からは、主に次の様なことがわかります。
ただしこれらの記録は、被害者であっても不利な証拠となる可能性もあり、交通事故裁判になれば強制的に提出させられることに注意しましょう。
ここまで、交通事故の被害者がドライブレコーダーの映像記録を積極的に活用して、自身に有利な結果で解決が図れるメリットについて説明してきました。
しかし一方で、少なからずデメリットもあることを理解しておく必要があります。
被害者にとって有利な内容で賠償問題を解決するためにも、交通事故問題の解決実績のある弁護士へ依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。